概要
スペースシャトルとは、アメリカ合衆国のNASAが宇宙開発の一環として有人宇宙飛行のために使用していた宇宙船のことである。
スペースシャトルはオービターと呼ばれる軌道船本体及び固体燃料補助ロケット(SRB)と外部燃料タンク(ET)で構成される。オービター(飛行機のように翼のついた機体)は軌道上から滑空により帰還して再利用され、全機トータルで100回以上使用された。
また、SRB(外部燃料タンクの両脇に二本ある白い尖塔のような物体)も打ち上げ時に分離してパラシュートによって降下・海上に着水後、回収して再使用される。外部燃料タンク(オービターとSRBに囲まれた巨大な物体)のみ毎回投棄される使い捨ての部分となる。
このように、アポロ計画などのように、今まで一回ごとの使い捨てにしていた宇宙船を何回も利用することでコストダウンを狙っていたが、そのために、非常に高い品質と、綿密な整備を必要とすることが判明した。
また、オービターの配置方式にも問題があった。同様の計画には日本の「HOPE」があったが、既存のロケット(H-IIA)の上にオービターを配置して打ち上げるという方式だった。一見こちらのほうが無理筋の力技に見えるのだが、アメリカのスペースシャトルの配置は分離時に脱落パーツがオービターに衝突して損傷するリスクを抱え込むことになってしまった。
後に日本の「HOPE」はバブル崩壊によってバースト、アメリカと同様の配置を取ろうとしていたソ連の「ブラン計画」もソ連崩壊によりバーストした。フランス及び欧州宇宙機関(ESA)の「エルメス」も不景気の到来によりバースト、ホッパーも滑空試験のみで終了したが、エルメスを上に配置して打ち上げる為のロケット「アリアン5」が衛星打ち上げに使用されている。
また、使い捨て宇宙船にあるような脱出ロケットや射出座席のような脱出装置が装備されておらず、外部燃料タンクからオービターのメインエンジンに燃料を引き入れる構造上、緊急時に打ち上げを中止してオービターを分離するのにも時間がかかる設計だった。このため故障が即・死亡事故に結び付く安全性の低い宇宙船となっていた。さらに運用者たるNASAの技術過信・安全軽視の姿勢により2回の死亡事故を起こしコスト高のみならず安全性の面でも問題を露呈した。この事故でトータル2年もの運用停止を余儀なくされた結果、衛星打ち上げをスペースシャトルのみでやる方針で固めていたNASAにとって大きなダメージとなり、ジェミニ計画で余ったために倉庫に眠っていた旧式ロケットを改造したり空軍からICBMの任を解かれ退役していたタイタンロケットを引っ張り出す羽目にもなった。
結局、むしろ使い捨ての方が結果として安上がりだと判明し、使い捨て方式のソユーズが生き延びてスペースシャトルは引退に追い込まれた。
ちなみにロケットの再使用というコンセプトはその後形を変えて復活しており、スペースXのファルコン9ロケットは、分離した一段目を軟着陸させて回収・再利用することで大幅なコストダウンに成功している。スペースシャトルは少し未来を急ぎすぎたのかもしれない。
2011年7月8日アトランティスの打ち上げを以って全機引退、スペースシャトル計画の全飛行は終了した。
機体リスト
- OV-101エンタープライズ
- OV-102コロンビア
- 2号機
- 2003年2月1日の再突入時の事故による喪失、乗員7名全員が死亡。
- OV-099チャレンジャー
- 3号機
- 1号機と同時に製造された構造試験機だったが改装されてオービター化。そのため2号機よりも型番が若い。
- 1986年1月28日の打ち上げ直後の事故により喪失、乗員7名全員が死亡。
- OV-103ディスカバリー
- 4号機
- 2011年2月24日の打ち上げを最後に引退。
- OV-104アトランティス
- 5号機
- 2011年7月8日の打ち上げを最後に引退。
- OV-105エンデバー
- 6号機
- チャレンジャー号爆発事故の後に新造された。2011年5月16日の打ち上げを最後に引退。
この他、取り扱い確認模型のOV-098パスファインダー、実物大模型のOV-100インディペンデンス(旧名・エクスプローラー)、外観のみを再現した北九州スペースワールドに設置されたディスカバリーの1/1スケールモデル(2018年に解体)が存在する。