概要
本来は後漢～宋代に用いられた対騎兵用の武器であるが、近年の創作物の影響もあり、別物である大太刀や長巻と混同される場合が多い。
中国大陸で使用された、槍と刀の中間の長刀( なぎなた )の祖先とも呼べる武器で、馬に乗った敵を相手にする場合に用いられたとされる。
イメージ的には「ソウルキャリバー」シリーズのソン・ミナ( メインイラスト参照 )が持っている武器が形状的に一番近いかもしれない。
日本での利用
一方日本にはこのような名前の武器が存在したという資料は発見されておらず、大太刀や長巻のような大型の日本刀剣を斬馬刀と呼称した資料等も一切存在しない。
アニメやゲームのイラスト等に描かれている事が多い日本刀風の刀や、両手持ちの剣であるグレートソードは現実世界の斬馬刀としては誤った姿であり、あくまで創作物上の姿であることに要注意が必要である。基本的に中国では、刀といえば長刀( なぎなた )であり、青龍刀等と同じく日本の文化とは認識が違うために誤解が広まったとされる。
ただ、大型の野太刀や長巻は、中国の斬馬刀と同様に、馬の足を払うという戦法は存在した。
時代と形状
中国においては前漢時代この名前に類似した「斬馬剣」という武器( 長柄武器であり、両刃 )があることが資料に残されている。
また、唐時代にはこの武器から「大刀」という武器( 長い柄に片刃の大きな刃物が付いた武器 )が発展したとされる。
これらの武器は日本に伝来したか否かは不明であるが、大陸を渡った僧侶経由で日本に入り薙刀の元なったとの説もある。また唐～宋代にも「斬馬刀なる刀剣」があったとされているが、陌刀と呼ばれる上述の大刀の派生武器を発展したものとされ、長さ三尺柄は一尺余り( 一尺は30㎝足らず )の物だったと言われている。
余談
中国本来の斬馬刀との関係は不明であるが以下の記述が存在する。
- 明の将軍・戚継光は自著にて以下のように記述する。
- また、倭の真伝を得た者から刀術を習ったという少林僧・程宗猷が著したテキスト『単刀法撰』において使用される刀は刃渡り三尺( 柄を入れた全長は五尺 )のやはり大太刀( または長巻 )であり、刀を振るう倭寇に対しては長技( 長柄武器 )で戦っても毎回敗れてしまうとしている。
- 豊臣秀吉の朝鮮出兵当時の李氏朝鮮の領議政( 総理大臣 )であった柳成竜は、その著書『懲毖録』の碧蹄館の戦いの部分で、李如松将軍率いる明軍の北方騎兵が日本側の「三、四尺の、切れ味無比の」刀剣で攻撃され人馬の区別なく斬り倒されたことを記す。
これらを見る限りでは長尺の刀で馬を切る戦法も確かに行われてはいたようであるため、斬馬刀の一種であると言えなくもないが、だからと言って大太刀( 長巻 )を斬馬刀と呼称することは暴論であり中国本来の斬馬刀との関系性は不明となっている。
大事なことなので二回言いました。
創作での扱い
インパクトのある名前だけが先行し、単に現実の刀剣とは全くかけはなれた外見の武器が多い。巨大な剣という共通項はあり、腕力を自慢とするキャラクターが用いることが多い。
- 宮下あきらの漫画『魁!男塾』のキャラクター・二号生筆頭の赤石剛次の剣術・一文字流斬岩剣に使う日本刀が最初は普通サイズで「一文字兼正」の名称だったが、「天挑五輪大武會」に助っ人として再登場した際、刀を変えたのか巨大化しており、「七牙冥界闘」にて剣桃太郎に託した際に敵キャラの幽鬼之丞に「合戦用の斬馬刀とお見受けしたが如何かな？」と尋ねられている。
- 和月伸宏の漫画『るろうに剣心』のキャラクター相楽左之助が使用して一躍有名となる。ただし、外見は中国の斬馬刀というより、西洋の大剣をさらに大型化した形状となっている。なお、作中では応仁の乱の骨董品という設定であるが、現実の日本においては、このような大剣がその時代に存在した証拠はない。
- 永井豪の漫画『バイオレンスジャック』に登場する魔王・スラムキングの愛刀自体の名であり、彼の巨体にふさわしく刃渡り2メートルの大物。普段はキングに仕える太刀持ちの男が応援団の団旗の如く抱え持っている。後者が大太刀を斬馬刀と呼称した元ネタであると思われるがあくまでも大太刀の別名ではなく彼の所有する太刀自体に付けられた名前であることに要注意。
- 戦国無双2に登場する島左近(戦国無双)はこの名称の武器を用いる。ただしこの武器はバスターソードのような巨大な剣である。
- 子連れ狼では技の名前で、威力も「馬の足を断ち斬る事も可能」というリアル寄りのものである。
関連タグ
ドラゴン殺し…本来は全く非なるもの。創作上では頻繁に誤用される。
