概要
周囲に対する発言(大抵は注意・指摘・批判・非難)の内容がそのまま自分自身にも当てはまっていることの比喩表現。他人に言った言葉が自分に返ってくることをブーメランに例えたものである(実際のブーメランは命中したら戻っては来ないが)。
要は「お前が言うな」という意味である。
相手よりも自分の方が当てはまるようなものは、「自己紹介」とも呼ばれる。
特にインターネット上でこの言葉が用いられる場合、ある人が他人の失態や悪事を糾弾した後、当の本人が同じ失態や悪事を犯していたことが発覚した場面で多く用いられる。例えば、レスバトルにおいて相手の言ってることがそのまま本人にも当てはまるような場合に「ブーメラン」と言って煽ったりする。
他にも国会質疑や討議において、政治家が批判発言を行ったり何らかの主張を成した際に、発言した当人や所属政党にも当てはまるような内容だった際に「ブーメランが返ってきたな」「見事なブーメランだ」などと皮肉られる。政治的なブーメランは、対立陣営の発言を調査してメディアに流すリサーチ力、悪く言えば粗捜し能力とメディア操作力を披露するようなものであり、相手の一貫性を正す場合でのみ初めて有効だが、そうでない場合枝葉の話へと脱線したり、単なる中傷となっている時もなきにもあらずである。
また、過去の発言を持ち出す際にも、その発言時と現在の時勢の変化している場合もあるので、煽動的な見出しに釣られないよう一応の注意が必要である。あまりに古い発言の場合、発言者本人の考えや価値観が変化していることも十分にあり、それ自体悪いことではないのでいちいち掘り起こすのも野暮である。
政治文脈でのネットスラングとしてのブーメランの一例
2004年に政治家の年金未納問題が発覚し、当時民主党代表だった菅直人が麻生太郎、石破茂、中川昭一ら自民党議員3人を「未納三兄弟」と呼んで批判し、問題追及の構えを見せたが、追求者の菅自身に未納疑惑が浮上してしまった。実際のところは菅の未納は記録ミスという行政側の不届きであり、菅に非はなかったものの、当時は報道が過熱し「お前が言うな」状態になって菅直人は党代表を辞任した上で御遍路姿になって反省を表明するというパフォーマンスを披露した。前述の通り悪いのはドジをしでかした役所でブーメランではないものの、ブーメランと見做した世論によって進退に発展した一例である。とはいえ、この時期は政治家が発言の責任を取っていただけ令和よりはマシなのだろう。
実際には
確かにこういった考え方は実際の会話でもよく見られる。しかし、発言者の行動や性格は一般に議論の内容とは無関係であるため、こういった考え方は「お前だって論法/ワタバウティズム(Whataboutism)」と呼ばれる誤謬である。議論を人身攻撃にすり替える行為でもあり、建設的な議論にならないため慎むべきものである。人間には一般的に他者の一貫性の無さに怒りを感じる性向があるが、不一致の告発に快感を覚えるようになるとスカッとポルノになってしまい、真っ当な社会的関心からずれてしまう。論理的にはブーメラン発言であろうと、発言者の一貫性がなかろうと、発言内容が正しいかどうかとは関係ない。
レスバトルにおけるブーメランは、この言葉自体が使われ過ぎて陳腐化したのもあり、攻撃用の単語としては往時ほどの人気はなく、むしろ煽る側の頭が悪くて、相手のブーメランを見つけることに固執して針小棒大な偏向を行ったり、読解力の低さ、或いは勘違いなどでブーメランになってないのに相手をブーメランだと言って意味不明な状況になることがある。