概要
1967年から1968年にかけてピープロダクションが製作した特撮番組。
広告代理店の東急エージェンシーが100%出資し、本作のために京都郊外に設立した特撮映画製作会社「日本特撮株式会社」による初の特撮番組となる。
当初は「怪獣大作戦」というタイトルで海外の怪獣ものを意識して登場する怪獣はすべて実在した恐竜や古代生物の形態をもつことになった。これはハリウッドのテレビ映画配給会社「スクリーン・ジェムズ」からの仕事の依頼を聞きつけハリウッド相手のビジネスチャンスと踏んだ東急エージェンシー側の上島一男プロデューサーが代理店として介入。スクリーン・ジェムズ側が『ゴジラ』とはまた違う恐竜図鑑に出てくるブロントサウルスやティラノサウルスのような「恐竜」が登場するテレビシリーズを要望し、東急エージェンシーと「1年間52週分制作する」との契約が交わされた。アメリカ側の要望を受け、本作では「恐竜」と「怪獣」の境界線が極めてあいまいなものとなっている。
また『少年ケニヤ』に代表される少年ターザンものの影響もみられる。
しかし相次ぐトラブルと視聴率不振、『ウルトラマン』や『ジャイアントロボ』などに代表される怪獣ブームの沈静化によって全52話の予定が26話に短縮。 舞台を火山島とアメリカに移した続編『怪獣王子海を渡る』も企画されていたが頓挫し最終的に日本特撮株式会社は解散。『マグマ大使』から続いたフジテレビの番組枠も手放すことになってしまった。
なお、本作終了後の数年後。アメリカではないが、台湾で劇場版新作が製作されて公開されている(下記余談を参照)。
あらすじ
地殻変動の影響で太平洋上に浮上した謎の火山島上空を飛行していた旅客機が噴煙に飲み込まれて海に墜落。乗客の一人である伊吹博士の息子、タケルが波にのまれて行方不明になってしまった。
数年後、調査のために火山島にやって来た伊吹博士は、謎の宇宙人・遊星鳥人の襲撃を受けた。しかしそこにブロントサウルスにまたがってやって来た謎の少年が現れ、博士たちを助け出す。
少年の正体。それは火山島で恐竜たちに囲まれながら生きながらえていた伊吹博士の息子、タケルだった。戦いで負傷し、日本に帰ったタケルは家族と再会し、人間のやさしさを理解。日本と火山島を守るためブロントサウルスを相棒に遊星鳥人たちに立ち向かう。
登場人物
- 伊吹精一
科学庁に勤務する世界的な理学博士。新兵器・音波砲を開発するなど、侵略者から地球を守るため国防省に協力する。タケルやミツルたちの良き父親でもあるが、自分の仕事には厳しく、どんな時でも科学者としての立場と責任を忘れない。
- 伊吹朝子
伊吹の妻で、タケルやミツル、ヒカルの母親。三人の子供には分け隔てなく愛情を注ぎ、常に暖かく見守っている。危険な職務につくことが多い夫と、恐竜にまたがって怪獣と戦う息子、彼らに対するその気苦労は計り知れない。
- 伊吹タケル
生後十ヶ月の時、太平洋上でのジェット旅客機墜落事故により両親とはぐれ、火山島に生息していた恐竜プロントザウルスに育てられ、たくましい少年に成長した。親恐竜は突然襲来した遊星鳥人に殺されてしまうが、折りしも火山島へ調査にやってきた科学者の父に出会い、本当の家族の存在を知る。愛する家族と全人類を守るため、ネッシーとともに侵略者と戦う。武器はブーメラン、手斧、ナイフ。
- ネッシー
火山島に生息するプロントザウルスの一種で、タケルと共に母恐竜に育てられた。タケルは兄のような存在であり、彼の「オーラー!」という叫び声を聞くと、どこへでも駆けつける。普段は陸上で生活しているが、泳ぎも得意で、日本と火山島との間を難なく渡ってしまう。
巨体と怪力、口から吐く火炎を武器とする。
造形物は、大橋史典造形によるもの(二人がかりで動かす、20尺サイズ)、高山良策造形による一人用の着ぐるみ、および大橋造形による実物大の頭や足が用意された。
実物大頭部には、目や鼻がリモコンで動かせるギミックが内蔵されている。
- 伊吹ミツル
伊吹家の次男。双子の兄であるタケルをとても慕っている。東京育ちの都会っ子であり、タケルが日本に来てからも火山島に帰りたがる気持ちが理解できない。父に似て大変な機械マニアでもある。
- 伊吹ヒカル
タケルとミツルの妹。おしゃべりで、ミツルとは口喧嘩ばかりしている。
- 江島郁男
伊吹博士の助手で、片腕ともいうべき存在。博士を心から尊敬し、どんな協力も厭わないが、自分の意見ははっきりと言う。科学者でありながらいささか保守的で夢のないところもある。
- 小室惠子
伊吹博士のもう一人の助手。伊吹と江島が火山島へ調査に出かけた際は日本に残っていたが、彼らが戻ってきた後、第6話を最後に姿を消した。
- グレース
伊吹たちの助手。小室惠子に代わって伊吹の研究室の紅一点となった。第7話より登場したが、目立った活躍はない。
- オリバー博士
伊吹と組んで侵略者対策を研究する米人科学者。伊吹が信頼を寄せるその頭脳の優秀さも然ることながらスポーツも万能。特に射撃の腕前はレンジャー隊員顔負けで、古代生物ジアトリマの片目をつぶしたこともある。第7話より登場。
- 池永博士
科学庁長官。国防省に出入りし、侵略者対策に協力する科学者。自ら現場へ赴くことはなく、火山島調査にも伊吹を派遣した。
- 林幕僚長
第6話まで国防省で国防軍の指揮をとっていた人物。何かと科学庁に頼ってしまう。
- 中曽根司令官
第7話より登場した国防軍司令官(シナリオでは当初は准将、後期は司令官と称されている)。宇宙からの敵に敢然と挑み、窮地に立たされても決して屈伏しない。だが、それだれに頑固でプライドが高く、他の人に責任転嫁したりする傾向がある。
- 久世空幕
中曽根司令官と共に、第7話より登場した国防軍最高幹部の一人。
- 中丸一尉
レンジャー特別隊の隊長。自ら率先して行動するリーダーであり、国防省最高幹部や隊員たちの信頼は厚い。刻々と変化する現場の状況の中で的確に判断を下し、特別隊を勝利に導く。伊吹博士に対しては上官以上の信頼を寄せている。第6話より登場。
- 橋場一曹
特別隊のサブリーダー的存在。タケルとは大の仲良しで、行動を共にすることが多い。九州出身の豪傑で、気は優しくて力持ちの典型。敏捷さに欠けるためジャングルでの活動は不得手だが、その行動力とタフさで任務を遂行する。中丸たちと共に6話より登場。
- 西住三曹
第七空挺団より特命を受けて火山島に派遣されて以来、特別隊のナンバー3として活躍。剣術と手裏剣の名手で、初登場した第14話でいきなり鳥人司令と戦い、あっさり倒してしまった。だが、考え方があまりにもストレートなので頭脳プレーは苦手。殉職した西住三尉(一〇三分隊隊長)の弟。
敵対勢力
遊星鳥人
遊星鳥人 | 別名: | 宇宙怪人 | 身長: | 1,85m | 体重: | 75kg | 出身地: | 銀河系宇宙 |
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鳥人司令 | 1,8m | 70kg |
銀河系宇宙から、地球侵略を目的にやって来た謎の遊星人。司令官である鳥人司令(イラスト二枚目中央参照)により、電磁波でコントロールされている。侵略活動の実行のために、火山島地下に前線基地を設置、島の地下に眠るウラニウム鉱脈を狙う。
首を切断されない限り死なず、負傷しても一旦溶解するのみで、電磁波により増殖再生する。
兵士はレーザー光線銃とハンドミサイルなどの兵器を所持。飛行能力を有し、テレパシーによる会話が可能。
また、原始怪獣……テラノドンをはじめとする恐竜や古代生物の姿を模した怪獣を、己の先兵として用いる。
司令のスーツは『マグマ大使』の「ルゴース2号」の流用・改造。それ故か配下の鳥人と違い鳥要素がかなり薄い姿となっている。
昆虫人間
別名: | 漂流宇宙人 | 身長: | 1,7 | 体重: | 80kg | 出身地: | ガンマー星 |
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壊滅した遊星鳥人に代わり、火山島のウラニウム鉱脈を狙い出現した。
ガンマー星の知的生命体で、口から硫酸を吹き付ける事が可能。触覚からは磁力線を放ち、首以外を切断されても、すぐに再生する。飛行能力も有する。
遊星鳥人同様、ジアトリマなど原始怪獣を尖兵に用いる。
原始怪獣たち
テラノドン
遊星鳥人の尖兵として送りこまれた怪鳥。翼竜の変種で、翼から突風を起こして戦闘機を破壊する。
伊吹たちの救出に向かった原子力潜水艦157号を襲撃した。ネッシーに翼を折られ、敗北する。
ゴズラス
遊星鳥人の母星に住む、ペット的な存在の猿人怪獣。
口から白熱火炎を吐き、ジェット戦闘機を襲う。ナパームをものともしない強靭な肉体と、巨大な岩石を投擲する怪力を持つ。ネッシーと戦い打ち負かされた。
シシ竜
鳥人司令が富士の樹海に送り込んだ怪獣。口から炭酸ガス状の凍結交戦を放ち、あらゆる物質を凝固させる。劇中では「セラトサウルス」とも呼称された。
ちなみに、実際のセラトサウルス(またはケラトサウルス)に生えていたとされる、鼻先と両目の上に小さな角は無い。
ヨロイ竜
樹海の地底から出現し、伊吹たちレンジャー隊の前に立ちはだかった。硬い鎧状の皮膚を持つが、音波砲の攻撃とネッシーの逆襲により絶命する(シナリオでは、原始蜘蛛が登場する予定だった)。
角竜
トリケラトプス系の原始獣。頭部の二本角から怪光線を発射し、国防軍のジェット戦闘機部隊を壊滅させた。角を折られると怪光線の威力が落ち、最後はネッシーの怪力の前に撃ち滅ぼされた。
剣竜
ステゴサウルス系の原始獣。火山島基地の警備を角竜と共に行う。口から吐く怪光線と、鋭い刃を持った尾が武器。遊星鳥人の送り込んだ最後の怪獣で、ネッシーの火炎の前に敗れ去る。
ジアトリマ
昆虫人間が送り込んだ最初の怪獣。火山島の地底の卵が、昆虫人間により孵化した。
目から殺人光線を発射するが、片目を潰され、音波砲の直撃を受け死滅。
シーラゴン
シーラカンスに似た形状の怪獣で、陸上獣類と海棲爬虫類との中間的生物。口から猛水流を放ち、音波砲を空輸する高速ジェット爆撃隊を撃墜した。
ネッシーの火炎攻撃にも耐えたが、原潜808号の船体により身体を両断され死滅した。
イグアナドン
ガンマー星より隕石で飛来した、恐竜の化石が蘇生した怪獣。昆虫人間同様、硫酸を口から吐き、京都市内を蹂躙した。体内に昆虫人間の卵を大量に擁している。
形勢不利になると、白骨と化して姿を消す。ネッシーと対戦し、その火炎の前に倒された。
なお、鼻先に角があり、以前に登場したシシ竜よりもセラトサウルスに近い。
ジゴロドン
岩石怪獣の別名を持つ。湖南アルプス山中の昆虫人間基地の警護をしており、岩盤の上に陣取り、接近する人間に岩石を落とす。
昆虫人間の孵化工場と共に爆死。
サンドラゴン
サハリ砂漠でのレンジャー部隊の妨害と、昆虫人間のウラン採掘基地の防衛とを使命とする。砂にもぐり、口から砂を吐いて攻撃する。
パキセハロザウルス(サボテン怪獣)
昆虫人間がアルファ星から持ち込んだ、宇宙サボテンが合体し怪獣化したもの。
酸素を吸収し、炭酸ガスを大量に吐き出し、地球上の人間たちを死滅させる事が使命。さらに、無限に増殖する事が可能。劇中では一貫して「サボテン怪獣」と呼称された。
ネッシーも炭酸ガスの前に苦戦したが、一時的に炭酸ガスへの耐性を付加したネッシーに倒される。
各話リスト
話数 | サブタイトル | 登場恐竜・怪獣 | 脚本 | 監督 | 特撮監督 | 放送日 |
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1 | 恐怖の火山島 | プロントザウルス(ネッシーの母) | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 1967年10月2日 |
2 | 夕陽のプロントザウルス | テラノドン、プロントザウルス(ネッシーの母) | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 10月9日 |
3 | くたばれテラノドン | テラノドン | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 10月16日 |
4 | 宇宙人の地下帝国 | ゴズラス | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 10月23日 |
5 | 原潜808号侵攻せよ | ゴズラス | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 10月29日 |
6 | 激突二大怪獣 | ゴズラス | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 11月6日 |
7 | 出動!!特別レインジャー部隊 | シシ龍 | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 11月13日 |
8 | 恐竜ネッシー灼熱の一撃!! | シシ龍 | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 11月20日 |
9 | 遊星鳥人復元!! | ヨロイ竜 | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 11月27日 |
10 | 洞窟に光る眼!! | ヨロイ竜 | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 12月4日 |
11 | 危うし!!火山島 | 角竜 | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 12月10日 |
12 | 絶壁のまちぶせ | 角竜、剣竜 | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 12月18日 |
13 | 角をへしおれ!! | 角竜、剣竜 | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 12月25日 |
14 | 皆殺し!!火山島 | 剣竜 | 吉岡道夫 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 1968年1月1日 |
15 | 魔人昆虫軍団!! | ジアトリマ | 吉岡道夫、内山順一朗 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 1月8日 |
16 | 片眼のジアトリマ | ジアトリマ | 吉岡道夫、内山順一朗 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 1月15日 |
17 | 海獣シーラゴン!! | シーラゴン | 吉岡道夫、内山順一朗 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 1月22日 |
18 | 火山島を死守せよ!! | シーラゴン | 吉岡道夫、内山順一朗 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 1月29日 |
19 | あのウランをねらえ!! | ケラトザウルス | 高久進 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 2月5日 |
20 | 大暴れ!!“化石怪獣„ | ケラトザウルス | 高久進 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 2月12日 |
21 | 決死のおとり作戦 | ジゴロドン | 高久進 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 2月19日 |
22 | 飛べ!コーモリ爆弾!! | ジゴロドン | 高久進 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 2月26日 |
23 | 砂漠基地を攻撃せよ!! | サンドラゴン | 山浦弘靖 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 3月4日 |
24 | 傷だらけのネッシー | サンドラゴン | 山浦弘靖 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 3月11日 |
25 | 恐怖のサボテン | サボテン怪獣 | 山浦弘靖 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 3月18日 |
26 | サボテン怪獣の逆襲 | サボテン怪獣 | 山浦弘靖 | 土屋啓之助 | 小嶋伸介 | 3月25日 |
余談
- 過去の関連資料には、「エダホザウルス」など、劇中未登場の原始獣のスチール写真も掲載されている(ただし啓文社「全怪獣怪人大百科」では、未登場のはずのエダホザウルスも、劇中に登場した事になっている)。
※上記画像左端がエダホザウルス。
- 続編「怪獣王子海を渡る」では、アメリカが舞台で、『オイレアン人』という新たな敵対勢力が登場する予定だった。本作の国内打ち切りが決定した後でも、この企画は進行。高山氏へも、同作の最初に登場する敵怪獣『ウナギーラ』の着ぐるみ造形発注が為されていた。
台湾の劇場版『恐龍小子』
本作の日本国内での放映から数年後、台湾にて本作の劇場映画が製作された。
現地でのタイトルは『恐龍小子』、特撮部分はテレビシリーズの流用。しかし本編は新撮で、そのほとんどは現地の俳優によるもの。
唯一、主人公タケルだけは、オリジナル同様にタケル役の野村光徳氏が実際に台湾に招かれ、オリジナルの衣裳をまとって演じていた。ただ、日本版と違って主人公は一人っ子という設定であったため、双子の弟である野村好徳氏の出番はなかった様子。