ピー・プロダクション
主に活動していたのは1960~70年代。社長のうしおそうじが映画・漫画業界出身だったこともあり、特撮番組に止まらずアニメーション制作も行っていた。主にフジテレビでの放送が多いのが特徴である。
戦前、うしおそうじは東宝の線画室(アニメーション部門)に勤め、自分の仕事が終わった後に円谷英二の特殊効果撮影を手伝っていた。第二次世界大戦中は三船敏郎と親交を結び、戦後は漫画家として活動。手塚治虫が直接原稿を依頼に来るなど各界のレジェンドと不思議な縁で結ばれることとなった。
アニメ「ハリスの旋風」をヒットさせ、「マグマ大使」の実写映像化も成功させた。
その後「怪獣王子」の製作支援で損害を背負った頃、アニメスタジオが火災で全焼。
うしおそうじの自宅に建てた特撮スタジオで製作した「スペクトルマン」が起死回生となった。
だが第二次怪獣ブームの終焉とともに業績は悪化。75年の「冒険ロックバット」終了後は映像作品制作を止め、荻窪に作った「ビデオショップ ピープロ」で様々なイベントを行い次世代の映像作家を育てようとするが、それも1989年に閉店となる。
2004年にうしおが死んだ後は、息子の鷺巣詩郎が社長となる。
2006年に「快傑ライオン丸」のリメイク作品「ライオン丸G」にて久々に復帰。
そして2011年秋に「電人ザボーガー」の劇場版を公開され、ピープロは企画・原作という形で参加した。
作風
ピープロ作品の円谷プロや東映特撮作品にはない独特な魅力については、絶妙なB級感、アングラな雰囲気などが挙げられることが多い。
ピープロ特撮独特の表現技法として、実写にアニメーションを部分的に組み合わせたアニメ合成が挙げられる。これはアニメーター出身だったうしおそうじ社長のアイディアで、CG合成と発想は同じである。例としては「キングコング対ゴジラ」で、国会議事堂で眠るキングコングの周囲に大量の人影が集まって輸送作業を行なっているシーンがある(実写映画の背景効果としてアニメーションを合成する表現は東宝特技課による「ハワイ・マレー沖海戦」の作中でも使用されていた)。
ピープロには放送当時の時代背景や社会風潮をストーリーに盛り込んだ作品も多い。幻想的な円谷特撮、外連味たっぷりの東宝特撮、正義が勝つ昭和東映特撮と違い、ピープロの特撮はある種生々しいまでの人間模様や社会の不条理が描き出されており、高度成長期の日本のおどろおどろしい雰囲気が醸し出されている。
怪獣や怪人のデザインも非常にグロテスクで生理的嫌悪感すら感じさせるものが多い。
また、ピープロが主に番組制作を請けたフジテレビはあまり予算を出してくれず、スケジュールもギリギリのためチープな映像になった作品も多い。
こういった要素が複雑に絡み合った結果、ピープロは今なお特撮ファンや好事家達からカルト的な人気を得るに至った。
なお、「スペクトルマン」は海外でも放映されており、フランス語圏やスペイン語圏などでは人気を博したといわれている。翻訳も雰囲気に合っていて良かったという証言もあり、影響を受けたクリエイターも少なくない。
主な作品
特撮
アニメ
製作中止作品リスト
- ジャガーマン(ピープロ):正式題名は豹(ジャガー)マン。
- 豹マン:豹(ジャガー)マンを仕切り直した企画。
- パーフェクターMM:『マグマ大使』の應蘭芳のスピンオフとして東海テレビの依頼により企画された女性アクションもの。1973年に改めて企画されたものは設定の異なる2種類の企画書が存在する。超能力を題材とし、『鉄人タイガーセブン』の原形となった。
- エレメントマン:固体・液体・気体に自在に変化できるエレメントマンを主人公とする実写企画。もっとわかりやすい勧善懲悪ものを要望され、『宇宙猿人ゴリ』の企画が制作された。
- ライオンマン:企画書のみでライオン丸シリーズの原企画。
- ドラえもん(ピープロ特撮版):アニメと競合企画だった。
- キーマン:テレビでの実写化を想定した企画。『冒険王』に小山田つとむによる漫画版が掲載され、スーツも完成していたが実現には至らなかった。
- シルバージャガー:日本とフランスの合作で、1980年にテレビシリーズの放映を予定していた。
- 激闘ライオン丸、サムライオン:1990年代に企画されたライオン丸のリメイク作。プロデューサーに平山亨、キャラクターデザインに韮沢靖が起用される予定だった。
- タイガージョーを主人公としたスピンオフ(タイトル不明):うしおが晩年に構想していた作品で、タイガージョーは弓の名手、敵には八百比丘尼と鵺が想定されていた。うしおはタイガージョー役のイメージキャストとしてケイン・コスギを挙げていた。
まさかのアメコミ化
時は流れて2022年11月………アメコミ版ゴジラやアメコミ版レッドマンを出版しているフェーズシックスより、ピープロ特撮作品のアメコミリメイク作品集『スペクトルマンヒーローズ』が発売!!
表題にある通りスペクトルマンが語り手を担当し、電人ザボーガー、快傑ライオン丸、鉄人タイガーセブン、豹マン、そしてスペクトルマンの5作品がアメコミ化されて収録。
巻末には怪獣王子のアメコミリメイク版ラフ画とイラストも収録されている。
定価は税込2970円。