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概要編集

東宝怪獣映画ゴジラシリーズ」の3作目。1962年公開。

シリーズ初のシネスコ(=シネマスコープ【=東宝スコープ】)作品にして、カラー(=総天然色)上映作品


今回のゲスト怪獣は、怪獣映画の元祖とも言えるキングコング

本作は元々、アメリカ側が構想していた「キングコングと巨大クリーチャーが闘う映画」という企画を、東宝がキングコングの名義を借り受け、ゴジラと戦わせるという企画に練り直したことで誕生した。なお、元々の企画はキングコングを作ったウィリス・オブライエンが提案した「キングコングがフランケンシュタインと戦う」というものだったらしく、そちらは後の『フランケンシュタイン対地底怪獣』の原案となった。


アメリカを代表する怪獣:キングコングと日本を代表する怪獣:ゴジラの夢の対決ということで、本作は大きな話題を呼び、日本映画の絶頂期であったことも相俟って、1120万人の初回観客動員数を記録(1255万人はリバイバルを含む数字)。

これは現在、尚も破られていないゴジラ映画史上最多の観客動員数である。


「怪獣同士の対決」という日本の怪獣映画の流れを決定づけた作品でもある(前作『ゴジラの逆襲』でも怪獣同士の戦いは描かれていたが、どちらかといえばおまけのようなものであり、メインは第1作と同様、ゴジラと人間との攻防である)。本作の大成功により、これ以降のゴジラ作品は(1984年版『ゴジラ』のような一部の例外を除けば)ゴジラと敵怪獣との対決を描いた作品が数多く製作されていくこととなる。それに伴いゴジラの立ち位置も「人類と共に敵怪獣と戦うヒーロー」といったものになってゆく。これにより、ゴジラシリーズの娯楽作品としての地位は確固たるものとなったが、同時に本来のコンセプトである「の申し子」としての側面は薄れていってしまうこととなった。良くも悪くもその後のゴジラ作品に大きな影響を与えた作品であり、シリーズの転換点として非常に重要な作品であると言える。


なお、続編の企画も持ち上がっていたようだが、結局未制作に終わった。しかし5年後の1967年には、東宝により『キングコングの逆襲』という映画が制作されている。ただしストーリー上の繋がりはない。


フィルムの管理が杜撰であり(当時の事情では仕方ない一面があるが)、オリジナルの状態でネガが保存されていない不遇の作品でもある。再上映のために勝手にフィルムを切り貼り編集されていたり、そもそものフィルムの保存状態が劣悪であったため画質にばらつきがあるなどの問題から、デジタルリマスター処理を駆使してもオリジナルの状態を再現するのは困難な状況が続いていた。

しかし、2016年に失われていたフィルムの一部分が再発見され、デジタルリマスターによって修復された事でついにオリジナルのそれとほぼ同じ映像が復元され、2021年には4Kリマスター版のブルーレイが発売された。


同時上映はザ・ピーナッツ主演の『私と私』だったが、上映延長に伴い短編アニメ映画『おとぎの世界旅行』全7本のうち5本が上映された。


ストーリー編集

日本の製薬会社パシフィック製薬は、自社提供(スポンサード)のテレビ番組「世界驚異シリーズ」の視聴率不振を打開すべく、南洋の島ファロ島に伝わる「巨大な魔神」が目覚めたという情報を聞きつけ、これを利用して視聴率アップにつなげようともくろむ。現地を訪れたスタッフはそこで「巨大な魔神」が本当に存在することを知り、程なくしてその魔神=キングコングと遭遇する。キングコングは島で暴れていた大ダコを退けたのち、島民たちが用意した赤い汁を飲み干し、島民たちが捧げる祈りの歌を聞き眠りに落ちた。これを見たスタッフの1人はキングコングを日本へと連れ帰ってはどうかと提案する。


同じころ、北極の海域で、海水温の上昇が観測され、光る氷山が出現する。アメリカの原潜シーホーク号が調査に向かうが、何者かの襲撃を受け、消息を絶った。実は、氷山の正体は、前作で神子島にて氷漬けにされたゴジラの眠る氷山であった。やがてゴジラは完全に復活を遂げ、北極にある某国の基地を襲撃した後、日本へ向けて南下を開始する。


さらに、太平洋上ではキングコングが眠りから目覚めて運搬していた船から脱走、日本へ向けて北上を開始する。


ゴジラとキングコングは闘争本能に導かれるかのように進撃を続け、遂に日本へ上陸。

日本を舞台に2大怪獣の世紀の決闘が始まろうとしていた……。


余談編集

  • 本作におけるキングコングは猩々をモデルとしており、あまりゴリラに似ていない。また、高圧線に触れたことで高圧電流を発する能力を得るなど、かなりオリジナル要素の強い怪獣となった。そのため、アメリカのファンからは不評だったという。あれ、どっかで同じような話を聞いたような…。
    • さすがにこのデザインはまずいと判断されたのか、その後『キングコングの逆襲』に登場した個体は、原典にかなり近いデザインへと描き直されている。また、高圧電流を発する等の特殊能力も持ち合わせなくなった。
    • 後述の『GODZILLAvsKONG』の監督を務めたアダム・ウィンガードも「本作のコングの出来は最悪」と酷評するほど。
  • 本作のゴジラは造形が一新されており、それ以前の表情が無く無機質で感情の掴めない不気味なゴジラ像からスマートでスタイルが良く感情豊かなゴジラ像に生まれ変わっており、今なお秀逸な造形として評価されている。ファンからはタイトルを略した”キンゴジ”の愛称で呼ばれている。後のゴジラのデザインにも大なり小なり影響を与えており、実際に、ミレニアムシリーズに登場したゴジラは、このキンゴジを意識したデザインになっているらしい。
  • キングコングの身長は45mとゴジラより小柄。ゴジラの対戦怪獣は、ふつうゴジラよりも高身長になることが多いが、キングコングはそうした法則から外れた稀有な存在である。
  • 本作の楽曲は伊福部昭が担当。OP曲は劇中で原住民がコングに捧げていた祈りの歌をそのまま用いている。なお、この楽曲は「SF交響ファンタジー」第1楽章で、ゴジラのテーマに続く形で収録されているほか、第2楽章ではゴジラとキングコングの戦闘時に使用されていた楽曲が収録されている。
    • 藤田の部屋で流れている音楽や壮行会の音楽は1959年の『手錠をかけろ』(作曲:池野成)の、ファロ島で流したラジオの音楽は同じく1959年の『顔役と爆弾娘』の挿入歌「南の島のお話」(作曲:松井八郎)である。
  • タイトルのゴジラとキングコングを逆にしてしまうと後述のハリウッド版になってしまうので注意。
    • ただし当初は『ゴジラ対キングコング』というタイトルで制作されていた。関沢新一によるとアメリカ側への配慮から現在のタイトルになったとされている。
  • 上記の通りもともとコングの相手はフランケンシュタイン(一般的に知られている人造人間ではなく合成怪獣だったとされる)だったが、映画プロデューサーのジョン・ベックを通じてオブライエンに無断で企画が変更されての製作であり、このゴタゴタのためにオブライエンは東宝とゴジラを憎んだまま亡くなってしまった(支出が厳しいから訴えなかっただけで東宝を訴えようとしていた)。後にオブライエンの妻は「夫の寿命が縮んだのはこの作品の顛末に苦しんだことが原因」と言っている。オブライエンを師と仰ぎ、キングコングが映画業界を目指したきっかけの一つとして崇拝し、ゴジラに多大な影響を与えたとされる『原子怪獣現わる』でも知られるレイ・ハリーハウゼンのゴジラ嫌いを加速させた一因とも推測される。
    • メリアン・C・クーパーもこの件で東宝(ゴジラ)を嫌っていたらしく、本作の製作に大反対していただけでなく、実際に1963年に東宝と関係者を訴えようとしたという経緯がある。
    • 何の因果か東宝が取得していたキングコングの使用権利が終了しかかっていたころに制作された『キングコングの逆襲』でデビューしたゴロザウルス1967年)とハリーハウゼンの『恐竜100万年』(1966年)のアロザウルスも似たような体色を持つ「アロサウルスの生き残りの子孫」である、ゴロザウルスの別名も「原始怪獣/原子怪獣/げんしかいじゅう」、どちらの作品にも大蛇が登場するなど共通点が多い。
    • フランケンシュタイン対地底怪獣』と『サンダ対ガイラ』もオブライエンのアイディアの再利用だとされているが、これもオブライエンに対して無断で作られたとされている。
    • これも前提条件の一つであるが、ゴジラの出発点の一つとして、東宝が自身のキングコングを製作したかったという背景がある。東宝はキングコングへのリスペクトを込めていた一方、企業間のすれ違いの結果オブライエンに全く話が行かなかったことが最悪の結末を招いてしまったともいえよう。
  • 本多猪四郎はキングコングとゴジラの直接対決には難色を示したが、会社から強い要望があったことから「やるからには一生懸命」と制作に臨んだと語っている。
  • 本多は日米を代表する怪獣の激突として描くことを望んだ一方、円谷英二は怪獣同士が絡み合うおもしろさを優先し、あえてコミカルな描写を取り入れている。有川貞昌はどちらかというと本多の意見に賛同していたと語っており、以後の作品でも本多と有川はコミカルな描写が増えていくゴジラに否定的な意見を述べている。
  • 劇中に登場する急行「つがる」は181系電車であり、実際の急行「津軽」とは全くの別物になっている。
    • 特撮美術部が制作した模型の一覧には「機関車1両+客車9両」との記述があり、当初は実際の「津軽」同様客車列車として制作される予定だったのが変更されたのではと言われている。
    • 乗客が逃げるシーンは御殿場線谷峨駅付近で実際の車両を停車させて撮影したとされる。

本作へのリスペクト編集

歴代最多の観客動員数を記録した映画ということもあり、後の作品でも本作に対するリスペクトが見られる。


ゴジラVSキングギドラ編集

キングコングとゴジラの戦闘時に使用されたBGMがアレンジされて使用されている。

なお、「キングコングの逆襲」では、キングギドラのテーマをアレンジした楽曲が使用されている。


ゴジラVSデストロイア編集

エンディングでゴジラのテーマにつながる形で、「キングコング対ゴジラ」のOP(ファロ島の祈りの歌)をアレンジした曲が流れている(厳密には、上記のSF交響ファンタジーのアレンジ)。


ゴジラ FINAL WARS編集

オープニングの東宝ロゴマークは『キングコング対ゴジラ』のものをそのまま使用している。


ゴジラ-1.0編集

クライマックスで「キングコング対ゴジラ」のOP曲(ファロ島の祈りの歌)が初めて戦闘BGMとして流れている。


モンスターバースシリーズ編集

ゴジラvsコング

2014年、アメリカのレジェンダリー・ピクチャーズがキングコングの映画化権を取得したことを発表、2017年に『髑髏島の巨神』を公開した。さらにレジェンダリーは同時期にゴジラのリブート作を製作していたことから、ファンの間では「近い将来ハリウッドでキングコングとゴジラの2度目の対決が描かれるのではないか」と期待する声が上がっていた。


そして2015年10月14日に、レジェンダリー、ワーナーはゴジラとキングコングが再び対決する劇場映画を制作することを正式に発表。「モンスターバースシリーズ」の集大成にして、ハリウッドによる全世界待望のゴジラとキングコングの2度目の対決が実現することとなり、2021年にそのゴジラコングの新たな戦いを描いた『ゴジラvsコング』が公開された。


この作品は世界的な大ヒットを記録。当初、レジェンダリー側はこの作品を以てモンスターバースシリーズを完結する予定だったが、異例のヒットを受けてシリーズの継続並びに更なる拡張を決定。

2024年には続編となる『ゴジラxコング:新たなる帝国』が公開された。

Let's go to THE NEW EMPIRE

現在では、モンスターバースシリーズは娯楽大作映画の一角としてハリウッド界隈にしっかりと定着しており、ゴジラとキングコングはその中核として活躍を続けている。

ゴジラとキングコングの共演がこんな形で大きく取り上げられることになるとは、ファンも想像していなかったことだろう。


動画編集

主題歌


関連項目編集

怪獣映画

東宝 東宝特撮 東宝怪獣 ゴジラシリーズ

ゴジラ 東宝版キングコング 大ダコ 大トカゲ


ゴジラの逆襲キングコング対ゴジラモスラ対ゴジラ/三大怪獣地球最大の決戦

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