※『ファイナルウォーズ』に登場した怪獣はZILLAを参照。両者は姿こそよく似ているが、形態に若干の差異があり、法的に見ても別の怪獣である。
概要
1998年公開『GODZILLA』に登場したゴジラの略称。日本で生まれた呼称だが、海外でも「EmeGoji」が俗称として使われている。
また、「トライスター社版のゴジラ」を略して「トラゴジ」と呼ばれる事もある。
データ
成体
体高 | 諸説あり。60m(前屈状態54m)、または一部媒体では70mや90mともされる |
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全長 | 120m~135m以上(90mとされることもあるが、120mが公式データであり、作中のシーンから計測すると135m以上ともされる)、アニメ版では130m |
歩幅 | 27m |
尾長 | 60m |
体重 | 約500t |
速力 | 480〜800km/h |
性別 | 雄 |
幼体
身長 | 1.8m |
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全長 | 約3m |
速力 | 60〜80km/h |
※いずれも出典は小説版。
- 初期の設定では、「全長120m」という数値よりもかなり大型化(身長90m, 全長150mなど)する予定だったらしい。エメリッヒ監督の「なぜ日本人はそこまで大きさにこだわるんだ」という発言があったことから、サイズのデータをあまりよく考えていなかったと思われる。
- 前屈状態の体高54mは、初代ゴジラの公開された1954年に合わせたという考察もあるが、真偽は不明。
- ゴジラ・ザ・シリーズの二代目ゴジラと同じ大きさであるという設定があり、二代目ゴジラは55メートル。実写映画の段階では前述の通り統一された大きさデータを設定していなかったが、この設定からGTS制作以降は55メートルという見解が公式か。
生態
正体は「トカゲの仲間を起源にもつ遺伝子キメラ」。少なくとも3種の遺伝子が混在し、DNAそのものが高レベル放射線に侵されている。ニックの説明によれば「魚を常食とする、穴居性で水陸両生」。
頭部の上側が平らに近く、目や鼻が水平になっているのは現生や古代のワニやカピバラ、カバや古代の鯨などにも見られる特徴であり、流線形のプロポーションもあって、肺呼吸という前提ならば日本のゴジラよりも水中生活に特化した形態であると言える。
顔の印象はエウパルケリアに似ていると言われることがある(参照)。獣脚類に近い体型に、人間に似た長い腕や細身のプロポーション、前方を向いた背鰭が特徴的である。後述するが、肩の大きな背鰭は獣脚類の遺伝子の影響を大きく受けており、翼のように機能することから前肢の遺伝子が異常な場所に発現してしまったものの可能性がある。
複数の爬虫類の特性を併せ持っているとされているため、1頭でも単為生殖(劇中登場したのはオスとされていたが、産卵していたことから実質両性具有と思われる)が可能となっている(コモドドラゴンでも単為生殖は見られる)。
劇中に登場する科学者は足跡を見て「獣脚類の生き残りではないか」と主張していたが、当然「それにしては大きすぎる」と指摘されている。
- この部分は、吹き替え版では誤訳の結果、「サウロポダアロサウルス」なる恐竜となってしまっているが小説版では「Theropod Allosaurus」となっている。
日本のゴジラが2万t~6万tとかなりの重量級だったのに対してこちらはたった500tと異様に軽く、その代わりに時速480~800kmという凄まじい走行速度で走ることが可能。
- しかし、『ゴジラ・ザ・シリーズ』では基本設定が変更されたのか、息子の体重は6万tに増量しており、このゴジラの死骸を利用したサイボーグであるサイバーゴジラの総重量も2万tであった。
食性
魚食性である。歯が小さく、ほとんど魚を食べるために特化した形態にも思える。
- 現実のヒゲクジラ類や濾食性の大型のサメ類やマンタなどがオキアミやプランクトン、小魚を餌として巨大化したり、草食動物の大きさを考えれば、小さくとも大量に餌があり歯や髭が小さな方が、巨大化する理に叶っている。
勘違いされやすいが、小説版によると、ベビーが人間を襲ったのは魚の匂いが付いていたからであり、実際に食べた描写はない。企画されていた続編では、怪獣化した昆虫を捕食する設定でもあった。
- 「ゴジラが人間を食べる」という描写自体が、エメリッヒが東宝側に申請して却下されて「モチベーションが削がれた」理由の一つに挙げており、そもそも許可されていなかった表現である。
魚を体内に収納して運び、子供に分け与える。新種だからか、自身の繁殖力のキャパシティーとベビーの食欲を把握しきれていなかったためか、また、近隣の魚が元々の生態系から大幅に減っていた事もあり、陽動作戦におびき寄せられた背景には、魚の収集が間に合っていなかった可能性がある。
パロディキャラクターのジラが「マグロを食ってるようなのは〜」といじられていたためか、エメゴジもマグロばかり食べていると勘違いされやすいが、おびき寄せに使われた魚はデフォリアル製作時の解析によると「カツオ」、ソニーマガジンズ版小説で「サバ、ヒラメ、カレイ、ホワイトフィッシュ、タラ、ブリ、キンメダイ、クロマグロ」、集英版小説で「マグロ、サケ、カワカマス」と、マグロも食べているものの別にマグロだけを食べているわけではない。
能力
人間が路上に仕掛けた魚の山の匂いに引き寄せられる、人間の攻撃を避けるなどの行動はごく普通の動物の様ではあるが、実はかなり知能が高い。
そのためにかなり高度な隠遁戦法を得意としており、
- ビルに大きな穴を開けてヘリを待ち伏せし、後ろのビルから奇襲をしかける
- セントラル・パークに仕掛けられた魚の山の匂いに再び引き寄せられるも、1回目の出来事から罠だと認識し、『2度も同じ手にかかるか』と言わんばかりに敷地内へ入らずそのまま逃げ去る
など、完全に予測不可能な行動もする。
また、変温動物であるため極端に体温が低く、赤外線探知ミサイルがうまく命中しないというシーンもあった。身体はビル群において保護色となり、実際にアメリカ軍との戦闘ではこれも機能した。上記の通り、小説版ではカメレオンの様に体色を変更させるという描写がある。
また、背鰭を利用して潜水艦を攻撃する場面もあった。小説版では、ジャンプ時に背びれで羽ばたいている場面がある。ニックはこれを獣脚類の遺伝子のなせる技としており、鳥の翼のような構造であるらしい。
パワーブレス
放射熱線は吐けないが、大量の息を火に吹き付けて酸素爆発を誘発する「パワーブレス」を吐くことはできる(ノベライズ版等の一部書籍では「ホットブレス」や「パワーブラスト」といった呼称が付けられている)。劇中では、雨天であったり(最初の使用では)可燃物に直撃していないにもかかわらずに大きな炎を発生させている。
このパワーブレスは可燃性ばかりが注目されているが、実際はかなりの風圧攻撃であり、アスファルトを巻き上げたり一個小隊分のジープを250mは吹き飛ばすなど、最強レベルの竜巻かそれ以上の暴風である。また、人間とは異なって頬を持たないために「吹く」という行為ができないが、それでもあの威力なのだから肺活量はすさまじいことが見受けられる。
- これも、下記の「初代限定でのオマージュ」という点を考慮すると、放射熱線ではなくてあくまでも白熱光のオマージュなのではないかとする考察がファンによってなされたこともある。
実は、撮影開始直前までは放射火炎を吐く予定であり(参照)、鼻から出す案もあった(参照)。一部の玩具にも、その名残からか火炎ミサイルなどのパーツが付属されている。
- 一部の媒体では、オレンジ色の火炎(熱線)になっている(参照)。
ちょうど、初代の白熱光と二代目の放射火炎との中間的なイメージであり、これも『ゴジラ・ザ・シリーズ』のゴジラの強さの設定に近いものである。
- 放射火炎の英表記は「Atomic Breath」であり、ドラゴンのブレスなどを連想させる命名。したがって、「ブレス」感が強いのは日本人との感性の違いも考えられる。
パワーブレスの劇中でのハイレベルな可燃性の原理は不明だが、体内に貯蔵した水素やガス類を強風に載せて吹き付け、(体内や口元または外部にあった石やコンクリートなどで)風が起こした火花などによる着火と考えるのが合理的だと思われる。
- ドラゴンの生態を科学的に考察したドキュメンタリーフィクション(『Dragons: A Fantasy Made Real』)でも、炎を吐いたり飛べる原理にこれに近い描写がなされている。このドキュメンタリーでは、エメリッヒ版ゴジラの続編で予定されていた、「道具としての火炎の応用」も描かれている。
劇中での活躍
繁殖のためにニューヨークを襲撃して大きな被害をもたらしたが、アメリカ軍と壮絶な戦闘を繰り広げた末、最後はハープーンミサイルを撃ち込まれて絶命した。
また、マディソン・スクエア・ガーデンの地下に200個もの卵を産み付けており、そこから孵化した幼体が調査に訪れた人間たちを次々に殺害していったが、こちらも最終的には殆どが人類によって始末された。
だが、1つだけ破壊を免れた卵があり、この卵から生まれた個体が後にアニメ『ゴジラ・ザ・シリーズ』で主人公として活躍することになる(本来は実写版の続編への伏線だった)。
なお、死亡した彼は死者の尊厳を踏み躙るような侵略兵器へと改造されてしまい…
余談
- 「過去の放射火炎とは異なるブレスを吐く」「俊敏に走る」「十数m程度の身長もあり得る」「ミサイルで倒される」「人間との交流が描かれる」などの描写は、前身であるヤン・デ・ボン版のゴジラの企画プロットにも見られた特徴である。
- 『ゴジラ・ザ・シリーズ』一話冒頭で前作『GODZILLA』の一部シーンがアニメとなっているが、そこにこのゴジラも描写される。
- 映画とアニメではいくつか差異が見られ、色合いがやや茶色っぽく、顎の大きな鱗は描写されていない。また、映画では死亡時うつ伏せの姿勢だったのに対し、アニメでは横倒しになっている。
- プレイステーションのデジタルカードゲーム『ゴジラトレーディングバトル』ではエメゴジが怪獣カード「GODZILLA」として登場。ゲーム序盤のカードとしてはステータスが高いが、防御力が低く召喚コストが重めなのが難点。特技はHPと引き換えに火属性ダメージを与える「ブレス」「大ブレス」「超ブレス」と、発動すると手札に戻る「くもがくれ」。
- アメコミ『ゴジラ:ルーラーズオブアース』や小説『GODZILLA 怪獣黙示録』など、エメゴジが活躍する作品も近年は多いが、『ザ・シリーズ』でのパワーブレスといった能力は何故か採用されないため、一部では「ジラ名義でゴジラシリーズに移籍した本体と『ザ・シリーズ』版ゴジラの能力で版権が入り組んでいるため使用できない」という別の都市伝説も囁かれている。
関連イラスト
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ゴジラ ゴジラ・ザ・シリーズ ゴジラ(ゴジラ・ザ・シリーズ) コモディスラックス
東宝版キングコング:デザインが本国のファンから酷評されたという部分ではエメゴジと共通性がある。
リザリアス:ウルトラマンネクサスに登場する怪獣スペースビーストの一体。このエメゴジがモチーフ。