概要
ジュラ紀後期の、主に北米とヨーロッパ(ポルトガル)に生息した肉食恐竜。
ティラノサウルス(やその仲間)・ギガノトサウルスにスピノサウルスといった、肉食恐竜界のスターとでも呼べる存在であり、恐竜としても、怪獣やモンスターのモチーフとしても根強い人気がある。
タイプ種の「アロサウルス・フラギリス」という学名は「繊細で(他の恐竜と)異なるトカゲ」の意味だが、他の肉食恐竜と比較して対して奇妙というわけではない(一応独特のトサカや肉食恐竜としてはやや首が長めという特徴はあるもののそれを意識して命名したわけではないと思われる)。
なのに「異なるトカゲ」なのは、発見された椎骨(背骨)が19世紀当時に知られていた恐竜と異なる特徴があり、これは奇妙だということでつけられたもの。ただし後に発見された獣脚類と比べても特段変わり種という訳ではなかった。
現在のところ、このフラギリス種の他、2020年に新種と認められたジムマドセニ種と、ポルトガル・ロウリンニャ層産のエウロパエウス種(ただしフラギリス種と同一という意見が強い。)、そして2024年にサウロファガナクスから整理されたアナクス種の4種が現在有効な学名とされている。後述する『恐竜キング』に登場したアトロクス種はフラギリス種のシノニム(無効になった名前)とされており、タンザニア・テンダグル層産のテンダグレンシス種はアロサウルス属とは異なる獣脚類と考えられている。
フラギリス種とジムマドセニ種については体の頑強さ、トサカの発達度合い、顎の横幅の広さ、頬の骨の張り出し方などに違いが見られるとされているが、ジムマドセニ種は見つかっている標本がどれもやや若い個体なため、これらの特徴は成長するにつれて変わっていったのではないかという可能性もある。どちらにせよジムマドセニ種の完全に成長しきった個体は未だ未発見なので今後の発見と研究に期待したい。なお両者の見つかる時代は同じくらいなものの、場所は微妙にずれているようである。
1991年に発見された「ビッグ・アル」の愛称で知られるジムマドセニ種とされる標本は、骨格の90%程が保存されており、アロサウルスの研究に大きく貢献した。ちなみに、このビッグ・アルは成体の一歩手前の若い個体だったと推測されている。また、ビッグ・アルは全身におよそ19か所の骨に怪我や病気を抱えていたと考えられており、壮絶な生涯を送っていたことが想像される。
身体的特徴
推定される全長は最大12m(近縁のエパンテリアスをアロサウルス属とするなら13mに達する可能性がある)。しかし平均な全長は9m程、体重は2t前後で10mを越えることは少なかったらしい。
それでも同じ北米のモリソン層で見つかるケラトサウルスなどよりも大分大きく、それぞれ体に応じた獲物を捕えたり、それぞれの狩りに向いた場所で狩りをするなどして棲み分けていたという見方もある(速いが小回りがあまり利かないアロサウルスは平原で生活しステゴサウルスなどの剣竜類を主に捕食し、やや体が小さいケラトサウルスは森で狩りをし小回りの利く小型から中型の鳥脚類を捕食、頭部が大きく殺傷力に長けたトルヴォサウルスは竜脚類を捕食していた可能性があるらしい。もっとも機会があれば得意とする獲物でなくとも襲っただろうが)。
胴体はスリムで体重は軽かった。前肢は大型獣脚類としては比較的長く、3本の指には大きな鉤爪があったものの、可動域はそれほど広くなかったため(もっともこれは獣脚類全種に言えることであるが)主力武器としては顎と歯を使ったようだ。ただし腕には筋肉がついておりマッシブな構造なため顎で攻撃する時の補助として使用した可能性や、相手を抑え込み密着して格闘戦を挑むときに役立ったのではとも言われている。後肢はティラノサウルスほど丈夫な構造ではなかったが、推定2t前後の体を時速30km台で動かし、トップスピードは35~55km/hに達する脚力があったとされる。ただし、あまり小回りが利くわけではなかったようだ。また、脚の構造から短距離走に向いていたとされる。
尾は復元骨格ではかなり長めの復元が多いがこれは明らかに長すぎるという指摘が多い。
これはアロサウルス・フラギリスの良好な保存状態の尾がほとんど見つかっていなかったためである。一応尾を含め全身が保存されていた化石もあったが、その化石は発掘中に誤って尾を粉砕してしまったためアロサウルスの尾の形態は長い間謎であった。最近になりアロサウルス・ジムマドセニが発見されたことにより明らかになった尾は今までの復元と比較すると短く、特に先端がかなり細いものであった(一応根元部分はそこそこの太さはある)。おそらくフラギリス種もほとんど同じような形態だっただろう。最新復元のアロサウルスの具体的な形を見たいのならば博物館に行くのではなく「SMA 0005」や「big al 2」とググる方が良いだろう。
頭骨は横幅が狭く(と言っても近縁種よりは分厚かったようだ)軽い構造なため噛む力は他の肉食恐竜と比較すると控えめだったようである。その代わり打ち付けることに向いた、やや短く折れにくくなっている鋭い歯を持っていた。また、意外なことにモリソン層産の獣脚類の中で最も頑丈な歯を持つのはアロサウルスであるという。
首の筋肉が非常に発達していたと考えられることや、頭骨が縦方向からの衝撃に対して非常に堅牢な構造になっているなどのことから、大きく開いた顎を手斧のように振り下ろして獲物を仕留めていたと考えられている(もちろん反論もあるが、この説を積極的に否定できる要素は少ない)。また、涙骨は角またはトサカ状に張り出し、外見上の大きな特徴となっている。これは主に仲間に対するディスプレイに用いられたとする説や同種と見分けるためなど様々な説が提唱されている。また神経が集中していて噛まれた時のダメージがなるべく突起に走ったという説もある。
生態
肉食恐竜としては多くの化石が発見されている。また2020年の研究ではの研究では共食いをしていた可能性が指摘されているが、明確な共食いの証拠はマジュンガサウルスをはじめ多くの肉食恐竜で見つかっているので、然程珍しいことではなかった。
一度に複数個体化石が見つかっているため群れを組んでいたという説があり、その根拠として「チーターに代表されるように繁殖は単独だが自分よりも大きな獲物を仕留めるために群れをなす動物は生息するため、1頭で狩るのは分が悪すぎるブラキオサウルスやディプロドクスの若年成体や完全成体などを狙うなら群れをなす方が分がいいのかもしれない」という意見がある。
しかし「チーターを始めとするネコ科動物はサーベルタイガーを除き鋸歯を持たず、獲物の皮膚を切り裂くことは苦手なため血管や呼吸器を嚙み潰す方法を取らざるを得ない。そのため鋸歯を持つアロサウルスと単純比較はできないだろう。さらにそのネコ科動物の中でも群れを組むかは種類によってバラバラであり、それを強い証拠もないまま恐竜に当てはめることに無理がある」と指摘する人もいる。
このように群れを組んだかそうでないかはいろいろな説があるがこれからも議論は絶えないだろう。
なお最近は営巣地を作ったのではないかという説も浮上している。
同時期に生息したステゴサウルスとは捕食者と獲物の関係にあったようで、アロサウルスに食い千切られたとされるステゴサウルスの骨板や、ステゴサウルスのサゴマイザー(尻尾のトゲ)が貫通したとされるアロサウルスの尾椎が発見されている事がその事を物語っている。なお少し治癒した痕跡があるため尾を完全にスパイクで貫かれてなおしばらく(数年?)生きのびていたようである。
2006年に公開された論文によると、アロサウルスの寿命は22〜28歳で、成長期の15歳ごろには年間148kgほど成長したと推定されている。
また、推定10歳のアロサウルスからは"骨髄骨"という組織の跡が見つかり、10歳には繁殖可能であったことが判明している。
登場作品
『ウォーキングwithダイナソー〜驚異の恐竜王国』
日本で初めてスポットが当たった可能性が高い作品。『巨大生物の時代』に登場。主役となるディプロドクスとは因縁があり、何度も遭遇・衝突している。
『伝説の恐竜ビッグ・アル』ではアロサウルスが主役になっており、ビッグ・アルと呼ばれる個体からの化石から分かるその生涯を描いている。
『恐竜再生』
ジュラ紀最強の捕食者として登場。アパトサウルスの幼体を襲撃(未遂)、ケラトサウルスを不意打ちで瞬殺、脚を骨折・転倒したアパトサウルスを群れで捕食する等やりたい放題。
外見もこの作品一凶悪な見た目をしている。
『ジュラシック・ファイト・クラブ』
4話『血みどろの戦い』と6話『食うか食われるか』に登場。こちらでもケラトサウルスとの因縁は健在でケラトサウルスの死亡フラグとなっている。
手傷を負ったり、倒されてしまう様も見れるのが『恐竜再生』とは異なる点。
『プラネット・ダイナソー』
『命がけの戦い 生か死か』で登場。ステゴサウルスとカンプトサウルスの群れを奇襲しステゴサウルスと戦闘を繰り広げるが幼体への攻撃に夢中になった隙を突かれ成体のステゴサウルスのスパイクによる反撃で狩りは失敗。また、別の個体が頭部を鈍器のように使用してカンプトサウルスを仕留めるも後から現れたサウロファガナクスに獲物を横取りされるという何とも言えない立ち回りであった。
古代王者恐竜キング
第1紀から登場。
けたたましい鳴き声が長く尾を引く。
必殺わざはチョキ・風属性で強さは1400と中堅層。人気も知名度も高い恐竜で二つ名は「究極のプレデター」だが、ネームバリューでは通用しないというのか……。
というかこのシリーズの「つよさ」は随分めちゃくちゃで、ティラノサウルスやスピノサウルスが強さ2000なのに対し、アンキロサウルスやトリケラトプス、イグアノドンやギガノトサウルスやアクロカントサウルスといった属性ごとの代表格・最大級の恐竜が中堅層に置かれている一方、サイカニアやアマルガサウルスなどが強さが最大級というよくわからない基準なので、そこまで冷遇されてるという程でもない
- もっとも、トリケラトプスは恐竜カードがない場合などに登場させる為のポジションに当てられていたため、「バランス調整で低めに置かれた」と考えられる。ただし第6紀までのカードの実用性が低い点で冷遇されている。
- 第1紀ではカルノタウルス(2000)やユタラプトル(1800)といった上位のカードがなかったので(メガラプトルやアトロクスはもっと後)、第1紀に限れば、風属性は1600のケラトサウルスが最高位で、No.2とはいえ…
のちにアクト団が改造を施したアクト恐竜バージョンが登場し、こちらはつよさ1800。体色が毒々しいビビッドな色に仕上がっている(通常版はトサカが濃いピンク色で本体がやや青みがかった灰色)。
- この「超アクトアロサウルス」はアーケード版では他の恐竜とステータスが被っていない唯一の超アクト恐竜である。
バトルタイプは第6紀まではあいこタイプ、2007第1紀から第2紀はそっこうタイプ、激闘!ザンジャーク第1紀ははとつげきタイプ、目覚めよ!新たなる力ではよこくタイプ。
激闘!ザンジャーク第2紀は化石カードの為ふっかつタイプ。
「7つのかけら」ではヨーロッパ産があいこ、アフリカ産がそっこう、南極産とアクトバージョンがカウンター。アメリカで多産するのになぜそっちを差し置いて南極なのかは不明。
※南米エリアに行けない為、南米の恐竜が回されている。また正真正銘南極の恐竜であるクリオロフォサウルスは当時わざカードだけだったため出てこない(アーケード版ではシークレット恐竜に昇格したが、仮に「7つのかけら」発売前に昇格してもどのみち出なかったと思われる)。
「北のはっくつ現場」の中ボス役として初登場するが、北ユーロ平原・北のはっくつ現場では見つからないため南ユーロ平原に行こう。高確率で出るので入手は容易。
- 超わざカードに描かれたのは2006雨季限定の「カマイタチ」と、知名度の割にはやや遅め。
あまり青っぽくない体色で登場したが、「青い恐竜のたまご」使用時に出てくる事もある。
テレビアニメでは第40話に登場。カードが風に飛ばされた事によってバルセロナに現れる。ハムをやたら食べていた。わざカードは「カゲロウ」が入っていた。
激闘!ザンジャーク第3紀ではアトロクス種(甲虫王者ムシキングにおける亜種と同じ扱い)が強さ2000、風属性、必殺わざはグーで登場した。バトルタイプはラッキー7タイプ。ショルダーネームは「究極のエリミネーター」。
- 初登場した次のバージョンでは「ソニックブラスト」のわざカードにも描かれた。
なおアトロクス種は現在では無効名となってしまっているが、そうなったのは最後の更新の後なのでこれは仕方ない。セイスモサウルス(現ディプロドクスハロルム種)、ティタノサウルス・コルバーチ(現イシサウルス)など、稼働当時から改名・無効名になっていたにも拘わらず、なぜか旧名で登場して、「甲虫王者ムシキング」のエラフスホソアカクワガタのような訂正もされなかった恐竜もいるが(コルバーチは英語版ではイシサウルス名義に修正)。
カセキホリダーシリーズ
こちらでは無属性のリバイバー(古生物系モンスター)として登場。なんの偶然か青いカラーになっているが、スーパー化石を使うと黄色ベースになる。
能力が高い上に無属性なので弱点がなく、どんな相手でも互角以上にやりあえる。そして大型の肉食恐竜系リバイバーは高いスペックの代わりに味方の能力をダウンさせてしまうものが多いのだが、こいつは味方の素早さアップでバッチリサポート。強豪リバイバーは多いが、間違いなくその一角に入る。
化石はレインボーキャニオンで見つけられる他、稀に化石ギルドで売られていることがあるので運が良ければ序盤から使える。しかし強力な分値段は非常に高く、ひとつ25000G(ゴロリ)と序盤では破格のお値段。
買えたとしても頭がなければリバイブすらできないので、どうしても序盤から使いたいなら通信交換でもらうか、売りに出されるまでひたすらファンタジー北島プレイを続けるかである。
「ムゲンギア」では2種類登場。
「スーパー」で登場した青い個体が「ビッグアロン」に改名し、オレンジ寄りの新規カラーが「アロン」として土属性になった。ちなみに「ビッグアロン」の方がレアで、自動回復も持っている。
ジュラシックパークシリーズ
意外なようだが、第5作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』までシリーズには登場しなかった。「ジュラシック」という名前からすると、目玉恐竜となっていても不自然ではないが、いかんせんティラノサウルスの知名度のせいか、登場そのものも難しかったのだろうか…?
初登場時は亜成体だったが、続編『ジュラシック・ワールド/バトル・アット・ビッグ・ロック』では成体となり登場。第6作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』にも登場。マルタ島でカルノタウルスと共に人間を捕食していた。
- なお、シリーズにおけるアロサウルスはジムマドセニ種という設定。
また、2024年5月24日配信の『ジュラシック・ワールド/サバイバル・ミッション』でもシーズン1の最大の脅威の一つとして登場。相変わらず人を食いまくっており、また、ついにあのティラノサウルスとの対戦が実現した...のだが、あまり戦闘ではその強さを発揮出来ておらず、ティラノサウルスとアトロキラプトルとの三つ巴の戦いを繰り広げるが、終始かなり劣勢であり、パキリノサウルスとの戦闘でもあまり有利に立ち回れていなかった。
ただ、戦闘以外はかなり優遇されており、シーズン1の時点では生き残っている。
シーズン2ではあまり出番はなかったがアトロキラプトルと戦闘していた。
ARK:Survival_Evolved
レッドウッドや山岳地帯に出現。2~3体のグループでスポーンする。一番レベルが高い個体にはリーダーバフがかかり、オレンジのオーラが出る。リーダーは体力を割合で削る出血攻撃を使うことができる。昏睡させ、肉類を与えることでテイムできる。スタミナが少ないので注意。
最強王図鑑フランチャイズでは
『恐竜最強王図鑑』に登場したが、トリケラトプスが相手だったため、相手が悪すぎた。
致し方ない負け方をしたのが災いし、『異種最強王図鑑』では出場できなかった。
『恐竜タッグ最強王図鑑』ではステゴサウルスとのジュラ紀最強タッグを組み辛うじて1勝を挙げたものの、他のジュラ紀以前の肉食動物と同じくアニメには未登場(アニメにおいて関係者とファンとの交流でステゴサウルスは登場することが示唆された)。
なお、西東社のバトル図鑑でも1勝もできていないと不遇気味。
総じて意外にも扱いは強さの割にはかなり不遇である。
せめてアニメでの登場は2期以降でもいいので期待したいところだが…
その他
- ゲームディノクライシスにも登場。またクロスオーバー作品ナムコクロスカプコンにも登場。異様にタフだがT-ウイルスに感染していたためタフであったことが明らかになる。
- ゲームファイナルファンタジーにもアロザウルスという名前でモンスターとして登場している。
- NHKでは2006年の『恐竜VSほ乳類1億5千万年の戦い』に登場しておりステゴサウルスを襲うもののスーパーサウルスのかませ犬にされるという登場だったが、なんと2023年の『恐竜超世界2』放送後のディレクターのnoteにその刷新された姿が久々にお披露目された。着彩を除きほぼ完成している状態だったため、次回作の伏線と騒ぎ立てられている。あとは公式の発表を待つばかりだ。
アロサウルスをモチーフにしたキャラクター
メジャーな部類の恐竜だが、やはりティラノサウルスと大型肉食恐竜枠を争うせいかモチーフにするキャラクターは少なく有名どころも少ないのが悲しい…
とはいってもこれは大型肉食恐竜ほぼ全種にも言える事なのだが
余談
- 実は日本で初めて全身骨格の展示が行われた恐竜でもある。それが国立科学博物館のアロサウルスで、その際のいきさつは今でも語り継がれている。
- 先述の影響でディノアライブでも最初にデビューしたのがアロサウルスである。2006年に初号機が完成した。以後改良を重ねている。
関連イラスト
関連タグ
恐竜 獣脚類 アロサウルス科 ケラトサウルス トルヴォサウルス...同期。獲物や住む場所を分けてうまく共存していたとされる。