※名前の似ているギガントスピノサウルスは全く関係のない種(ステゴサウルスの仲間)なので留意。
データ
エジプトやモロッコなど北アフリカで化石が見つかっている大型の肉食……というか魚食の恐竜。
属名の意味は「棘のあるトカゲ」「棘トカゲ」と解説されることが多い。
白亜紀半ばくらいの約9900万~約9350万年程前に生息し、スピノサウルス科では最後まで生き延びたが、気候変動等で棲息に適した大河や大きな湖が減少し、エサとなる魚が獲れず絶滅したと考えられている(白亜紀前期末から後期序盤は海洋無酸素事変も複数回起きるなど地球規模の環境激変が相次ぎ、スピノサウルスだけでなく多くの生物が滅んだ時期である)。
背中の突起
名前の通り、脊椎から伸びる扇状の突起物が特徴。長さはホロタイプ標本(亜成体)で1.65mに達した。
一般的なイメージとして、ヨットのような大きな「帆」を形成していたと考えられているが、もちろん答えはわからない。
この帆は水中において体温を保持するためのラジエーターとして機能したとされていたが、後の研究で顕著な血管跡が発見されなかったことから、メインの役割ではないと考えられている。浮力によってバランスが崩れやすい水中において舵取りのような役目を担っていたとする説、異性への求愛や威嚇に際して用いられるディスプレイだったとするものなどが有力とされる。
ただし、雄と雌の両方に同様のディスプレイ器官がある現生生物は殆どいないため、本当にそのように用いていたのかは不明。
もう1つ筋肉の土台だった説も挙げられている。
恐竜ではないがエダフォサウルスやディメトロドンなどのものは、現生のカメレオンなどとの類似性からも帆だと判明している。
一方スピノサウルス、オウラノサウルスやレッバキサウルス、アクロカントサウルスやプロトケラトプスやステゴサウルス等の面々は、骨の特徴から「帆を持つ有効性が証明できない(≒なくても問題ない)」事や帆を持つことで危険性が増加する可能性があることが指摘されている。
さらに……
1.帆だとしたらもっと「折れやすい」形状だったろう
2.力学的な推測から、2mという帆のサイズではスピノサウルスがバランスを取るのに適していない可能性がある
3.帆だとしたら他のスピノサウルス科と比較して進化のスピードに不自然な部分がある(近縁かつこの科では帆が発達しているスコミムスですら60㎝程度と1/3以下)
4.水辺で魚を探す際の姿勢を維持するならバイソンのような発達した丈夫な筋肉を持つ必要性があり、ヒグマには骨ではないがやはり筋肉の隆起がある
5.アフリカで水中生活をしていたのならラジエーターは必要ないし、水中で骨密度を上げるために体重があるのもあり得る
……と、帆よりもバイソンのような強力な筋肉だった可能性も海外で指摘されており、スピノサウルスがこれまでの一般的なイメージよりもはるかにガタイのある種類だった可能性もある。というか、この説はシュトローマー自身がスピノサウルスの発表と同時に提唱していた為、帆説と同じぐらい古い説でもある。
所詮こけおどしの帆による威嚇効果よりも、筋肉の隆起でパワーを有していたりり、直立して威嚇するのが同時代の大型獣脚類(カルカロドントサウルス、デルタドロメウスなど)への対抗手段や、近縁種が草食恐竜を襲っていたり死体を利用していたりという可能性は確認されているので、四足歩行も両立していた場合は獲物に体当たりする、としても有効性があるだろう。
ラクダのような脂肪等を貯めるタンクの可能性もなくはないが、
1.当時のアフリカ大陸の環境ではタンクを必要とする事は考えにくい
2.魚食性が強いスピノサウルスとそのような環境がミスマッチ
3.仮にそのような環境だったらなぜ他の恐竜に似た構造が見当たらないのか説明できない
と、あまり支持されていない。
ちなみにこの「バイソン型恐竜」の仮説が出された際に、スピノサウルスが四足歩行をしていた可能性も指摘されており、これは後年の発表より数十年近くも早い話だった。
一方で、2014年の論文では神経棘の内部や表面の構造からやはりバイソンのような全体が筋肉で覆われた構造よりは、ホカケカメレオンのようなピッタリと皮膚の張った構造に近かった可能性も指摘されている。
それ以外
吻は現存するハモのそれに類似しており、歯の酸素同位体比および形状はワニに近いとする研究結果が出ている。
一般的な肉食恐竜は縁がギザギザしたナイフのような歯を持つが、スピノサウルス科はタケノコ型で表面に溝のある形をしていた。
こうした特徴や胃の内容物、バリオニクスなどの近縁種の生態から、ハイギョやシーラカンス類などの魚類を主に食していたと考えられている(当時のシーラカンス類は淡水から浅瀬まで幅広く棲息しており、世界的に見てもごくありふれた魚であった)。
前脚には湾曲した大きな爪が備わっており、この爪と細長い顎を用いてマウソニアなどの比較的大型の魚を捕らえていたとみられる。また、バリオニクスの化石や噛み跡の化石が翼竜の背骨にあったことなどから、陸上で翼竜や恐竜なども襲っていたと考えられている。
部分的な化石からの推測では、頭骨だけで約1.6~1.68m、全長ではなんと13~16mに達すると考えられ、最大の推定値なら少なくとも全長ではティラノサウルスやギガノトサウルスといった他の獣脚類を上回る。
頭骨は長い口がかなり稼いでいるとはいえ、ティラノサウルスでも最大で1.5~1.6m、ギガノトサウルスは1.6~1.8mなので獣脚類の中でも最大級の大きさである(獣脚類に絞らずに競うなら、ペンタケラトプスの2.3m、トリケラトプス≒トロサウルスの2.8m弱などがいる)。
体重については諸説あり、骨格などから全長の割に華奢だったとして4〜6t程度とする説から、水中において浮力を得るために骨密度が高かったとされることから21t弱とするものまで様々である。仮に20tとした場合、自重の影響で地上における機動力はかなり低かったと思われる。2022年の論文では、骨密度を考慮しても体重は最大約7.4tとされた。
2014年にはアルゼンチンのポール・セレノ博士(エオラプトル、スコミムスなどを研究した人)をはじめとする学者チームの研究により、新たな標本が発見され、それに基づく新復元で、他の大型獣脚類と比べると胴体は長めであり、後肢は極めて短かったことが判明した。
特に後肢はスピノサウルス科の他のメンバーと比べても明らかに短く、陸上ではゴリラのように4足歩行(ナックルウォーキング)をしていたと考えられた。また原始的なクジラに似た体型や高い骨密度から水辺で水棲生物を捕らえるだけでなく、大半の時間を水中で過ごし、泳いで獲物を捕らえていたであったと考えられた。他の獣脚類と比べ足の裏が平らであることから、後肢に水かきがあった可能性も指摘されている。
ただしこの復元については疑惑があり、この復元の核となったネオタイプ標本は成体と亜成体の混在したキメラである可能性、さらにスピノサウルス科かどうかすら怪しい化石をスピノサウルスのものとみなして復元に組み込んだゆえのキメラ復元である可能性も指摘されている。そして胴椎(背骨)の位置によっては腰帯(腰の辺りの骨)及びに後肢全体が約3割も小さく復元されている可能性も指摘されており(参考リンク)、さらに他のスピノサウルス科と比べて前脚の指骨が細長いことから、ナックルウォークするには華奢すぎると指摘されている(セレノ博士とナショナルジオグラフィック(超有名なアメリカの科学雑誌)の間に大人の事情があったという噂もある)。
一方、2020年の論文では、新たに発見された標本が2014年の論文の核となった標本(ネオタイプ標本)と同一の個体に由来するとされ、少なくともネオタイプ標本自体はキメラでないことが示された。
尤も、四足歩行していたかはともかく他の獣脚類と比べて胴長短足の体型であることから水生に適応していたことは間違いないだろう。特に脚は貧弱な作りとなっており、陸上の機動力は低くて獲物を追いかけて捕食することはまず不可能で、魚や恐竜の死肉を食べて暮らしていたこともほぼ確実視されるところである。
また、鼻先には血管と神経の通る穴が無数に存在しており、水圧を感じ取り獲物を探していたとみられている。
ちなみに、骨密度はかなり高かった(ペンギンに近い)とされており、これは浮力を相殺することで水中での活動を補助するという大きなメリットがある一方、陸上での機敏な動きを困難にするデメリットもあったと考えられる。
特徴を総合すると、「陸上でも水中でも活発に狩猟ができるよう進化した特異な肉食恐竜」という表現が相応しいだろう。
同時期にはカルカロドントサウルスが棲息していたが、基本は食性と生息環境の違いから共存できていたと思われる。又、他のスピノサウルス科全体に言えることだが食性が被るワニとは水棲適応の差(ワニより陸棲寄り)で棲み分けをしていたと思われる。
モロッコ産の歯の化石はミネラルショップではおなじみの存在である。質を問わなければかなり安価。本物の歯から型をとったレプリカまでも化石として売られている例も多い。
経歴
最初は、1915年に、アフリカのエジプトで背骨を含む体の一部が発掘され、後に記載された化石はドイツ・ミュンヘンの博物館に保管されていたが、その標本は1944年に、第二次世界大戦で焼失(化石を収蔵していた博物館がモスキートとランカスターの爆撃の流れ弾で破壊された)してしまっていた。
余談だが、発見者のエルンスト・シュトローマー博士は空襲を予測し、博物館へコレクションを安全な土地へ移すよう要請していた。しかしナチス党員であった館長は「敗北主義的、反ナチ的行為である」として拒絶し、これが影響して三人の息子を激戦地へ送られる(一人のみロシアで捕虜になりながらも生還)という憂き目に遭っている(シュトローマー本人も強制収容所送りにすると脅迫された。仮にも博物館長なのだから、学術的価値を考慮していれば……。尚、ナチス党員だった学界関係者は戦後、学界追放などの厳しい処分を受けており、古生物学の創始者の1人とも謳われたオーストリアの学者・オテニオ・アーベルなどもそれを免れることは出来なかった。この館長のその後も推して知るべしである)。
このことから当初は「巨大な背びれを持つ肉食恐竜」といった程度のデータしか判明しておらず、二足歩行になったディメトロドンのような姿で描かれることも多かった。
しかし、その後にモロッコで不完全ながら多数の化石が見つかったこと、近縁種(同じくアフリカのサハラ砂漠のスコミムス、イギリスのバリオニクス、ブラジルのイリテーターなど)の発見で研究が進んだことで、魚食性というそれまで恐竜の世界では省みられていなかった性質に特化した肉食恐竜の一派ではないか、と考えられるようになった。
実際、彼等が生前食べていたと推測される魚の残骸(オンコプリスティス(エイの仲間)の歯、ハイギョの鱗など)も共に化石として発掘される事例が多い。ただ、バリオニクスの腹部からイグアノドン類の骨が見つかった例があるほか、イリテーターの歯が刺さった翼竜の脊椎が発見されたことから、本種も機会があれば腐肉を漁ったり、翼竜などの小型四肢動物を狙ったりすることはあった可能性もある。
川が干上がり魚が取れない時期には陸生動物を狙い、その度カルカロドントサウルスと衝突していたが、白亜紀前期の気候変動で干ばつが続き魚が取れなくなったことで肉を巡る争いに敗れ絶滅したという考えもある。
近年では保存状態の良い頭骨を含む化石が見つかり、頭部に小さなトサカ状の器官を持っていたこと、水中生活に適した特徴を持っていたことなどが判明している。
そして2020年には初めてほぼ完全な尾の化石が発見され、椎骨の特徴がスピノサウルスのホロタイプ標本や”スピノサウルスB”と類似していること、ネオタイプ標本と同じ場所から発見されていることから、スピノサウルス、それもネオタイプ標本と同じ個体に由来するものと考えられる。
この発見によりイモリやサンショウウオに似た幅広い尾を持っていたことが明らかとなり、半水棲であったことがほぼ確実とみられたが、一方で水中を泳いで獲物を捕食するには推進力が不足しているといった指摘もあり、むしろ背中の帆と同様にディスプレイ等に用いていたのではという意見もある。
近縁種
一覧はスピノサウルス科を参照。
これらの近縁種は巨体と大きな背鰭以外は本種と多くの共通点を持っているため、大戦以降スピノサウルスの化石が幻の存在だった時期のスピノサウルス研究に大いに貢献した。
ジュラシック・パークシリーズ
恐竜映画の金字塔にして、スピノサウルスの知名度を一気に押し上げた作品。
2001年夏に公開された第3作『ジュラシック・パークIII』では看板恐竜に抜擢され、地上だけでなく水中からも襲い掛かる最大の脅威として大々的に公表された。
第4作『ジュラシック・ワールド』、第5作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』でも間接的にではあるが登場している。
ジュラシック・パークIII
ティラノサウルスだ…!
そうじゃない…もっとデカい…
全長13.3m、体高4.9m(頭頂まで)、体高6m(背びれまで)、体重4t。
データはDVD特典映像と公式パンフレットを典拠とする。
前作『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』の舞台であったイスラ・ソルナ島、通称『サイトB』に生息していた個体が登場。インジェン社を買収したマスラニ・グローバルが秘密裏に研究・誕生させた恐竜であり、公式リストには存在していなかった。
1998年に誕生した個体であり、作中時点で3歳となる(本来成体のはずがない年齢だが、ジュラシック・パークで誕生する恐竜は遺伝子操作により成長速度が極めて早く、例としてラプトルは僅か8ヵ月で成体となる旨の解説がある)。
ティラノサウルス・レックスと並ぶ、イスラ・ソルナ島の頂点捕食者。スピノサウルスの排泄物の匂いを嗅いだケラトサウルスがすごすごと退散していく様は、本種の立ち位置を如実に表している。戦闘力も非常に高く、主人公を追って現れた若い雄のティラノサウルスとの戦闘では格闘の末に頸椎をへし折って勝利している。
劇中では鋭い牙、長大な腕、巨大な鍵爪を持ち時速40kmで走行するハンターとして描かれ、主人公のグラント博士達をしつこく襲撃する。また水中においてもある程度の活動が可能で、水深の浅い河を泳いでグラント達が乗るボートを追跡するシーンが存在する。
凄まじい耐久力を秘めており、飛行機と衝突されたにもかかわらず平然としている上に、シリーズで唯一敵として登場したにもかかわらず殺されることはなかった。
ただ、ジョー・ジョンストン監督が評するところによれば「ティラノサウルスよりも知能は低い」らしく、飛行機を転がして食べようとしたり、グラント達を追う途中で2本の大木につっかえたり、施設の扉を閉められただけで襲撃をやめたりと、あまりお利口でなさそうな一面も垣間見える。
最後は河川で登場人物のポールに襲いかかるも、グラント博士の放ったフレア弾による炎上に怯み、何処かへと立ち去っていった。
今作のスピノサウルスの造形は監修者の一人であるジャック・ホーナー博士、および前二作の主役を超えるインパクトを欲したスタッフの意向を色濃く反映しており、前作の「王」であったティラノサウルスよりも凶暴で意地の悪い恐竜としてデザインされている。
メディア媒体では「最大の肉食恐竜」「新たなる脅威」として喧伝され、劇中では前述のとおりティラノサウルスとの勝負に勝利する一幕がある(余談だが、このシーンはシリーズファンの間でかなり賛否が分かれたらしい)。
両者の生息時代差や地理差、勝負の結果はさておき、これ以降スピノサウルスはティラノサウルスのライバル的存在としても認知されていくことになった。
なお、全長はともかく体高(4.9m)、体重(4t)は第一作に登場したティラノサウルスを下回っており、従来のファンにはある程度配慮していたことが窺える。
更にかの女王は5歳→27歳で1m近い成長を遂げており、登場時3歳であったこの個体も歳を経れば更に体高・体重が増加することだろう。
誕生の背景
後に公開された設定資料によれば、スピノサウルスはマスラニ社がインジェン社を買収した1998年前後にジーン・ガード法(イスラ・ヌブラル島およびイスラ・ソルナ島に生息する恐竜たちに干渉しないことを定める法律)に違反する形で秘密裏に生み出された4種類の恐竜たちの1つであり、またそのクローニングに携わった主導者的研究者がヘンリー・ウー博士だったことが明かされた。
ジュラシック・ワールド
遂にオープンしたテーマパーク「ジュラシック・ワールド」のメインストリートに骨格標本が展示されている。骨格標本のデザインは現在の復元図に準じた(鶏冠がある)ものとなっており、『ジュラシック・パークIII』に登場した個体とは別物である。
映画の最終盤でインドミナス・レックスを倒すためにパドック9から解放されたティラノサウルス・レックス(レクシィ)がメインストリートに姿を現す際は、このスピノサウルスの骨格標本をぶち壊して登場するという『ジュラシック・パークIII』への意趣返しの如き演出がなされ、両者の関係を知っていたシリーズファンを沸かせた。
前作で名前が挙げられていた近縁種のスコミムスとバリオニクスは、今度はパークで飼育されているという設定である。下記の続編では、「サイトA」で飼育されていたバリオニクスが映像化される形で登場と相成った。
ジュラシック・ワールド/炎の王国
本編では登場しないが、公式サイトにおいて『ジュラシック・パークIII』でイスラ・ソルナ島に生息していた個体についての言及が存在する。
設定では、「ジュラシック・ワールド」をイスラ・ヌブラル島に建設するにあたって、イスラ・ソルナ島にいた恐竜はすべて正式な確認・報告を経た上でイスラ・ヌブラル島に移されたとされる。これはスピノサウルス、ケラトサウルス、コリトサウルスといった違法に生み出された恐竜たちも例外ではなく、パークで一般公開されることなくヌブラル島で保護ないし飼育されていた(前作のアンキロサウルスと似たような待遇だと思われる)。
しかしながら、公式より発表されたイスラ・ヌブラル島で絶滅した恐竜の一覧(赤字で示された種)において、スピノサウルスは本編以前にヌブラル島で絶滅したことが明示されている。
また公式サイトによれば、2015年に「ジュラシック・ワールド」が壊滅したことで、ヌブラル島で保護されていた全ての恐竜たちは解き放たれ、事実上野生に還るに至った。しかし解放され島に溢れかえった恐竜たちは、今度はヌブラル島で活発化し始めた火山活動の脅威、そしてイスラ・ヌブラルに君臨する「女王」の怒りに晒されることとなったとされる(特にレクシィとの縄張り争いによる被害は著しく、いくつかの肉食恐竜種が再絶滅へと追いやられたという)。
これらの設定から、『ジュラシック・パークIII』の個体は2015~2018年の間に火山活動の影響、あるいは他の捕食者との縄張り争いによって死亡したものと思われる。
ストーリーボードでは『炎の王国』本編においてオーウェンたちの目の前で溶岩弾の直撃により死亡する……という展開も考案されていたようだが、あえなくボツになった模様(その役目はアロサウルスに引き継がれた)。
余談だが、『ジュラシックワールド』シリーズの監督であるコリン・トレボロウはインタビューにおいて最も強い大型恐竜について問われた際は、「物語の中では、恐らくスピノサウルスが最も強力に描かれているように思う。T-REXキラーだね」と答えている。含みを持たせた回答ではあるが、その強大さは『ワールド』シリーズにおいても引き続き認知され続けているようだ。
なお、その後にトレボロウは「私にとっては、スピノサウルスもギガノトサウルスもT-REXも、その時代、その地域の頂点に立つ捕食者だ。もし、この3つの恐竜の戦いが見られるとしたら、その戦いで(いずれかに賭けた)誰かが儲けることになるだろうね」とも語っている。
ジュラシック・ワールド/サバイバル・キャンプ
マンタ・コープ社が管理する実験島において、通称「アセット87」と呼ばれる個体が登場。スピノサウルスが映像作品に姿を見せるのは実に20年ぶりである。
全長不明、体高3.3m(恐らく頭頂部まで)、体重10トン。
データは公式画像の解説文を典拠とする。
同作のエグゼクティブプロデューサーのインタビューでは『Ⅲ』の個体との関連性が示唆されているものの、上記の通り公式データのサイズに食い違いが見られる(『Ⅲ』の個体よりも体高が低い一方、体重が凄まじく重い)。
『ワールド』シリーズの監督であるコリン・トレボロウもこの個体について「個人的には(『Ⅲ』とは)異なる個体であるように思える」と語っており、現時点では『Ⅲ』の個体と同一であるかは明確になっていない。
初登場はシーズン4で、その後シーズン5に渡って何度かキャンパー達と対峙することになる。
マンタ・コープ社によってシステム管理された砂漠地帯に放たれ、(恐らく帆を有することから)気温上昇に対する適応性などを確認する実験対象となっていた。
基本的には脳内に組み込まれたチップで行動を制御されており、最後の戦いでは敵の手駒としてカルノタウルス、バリオニクス、ディモルフォドンと共にキャンパーを追い詰めた。
スミロドンを呆気なく捕食しガードロボを破壊するなど、戦闘力はマンタ・コープ島の生物の中でもトップクラス。
マンタ・コープ島の女王であるティラノサウルス:ビッグイーティともタイマンではほぼ互角に近い戦いを繰り広げたほか、娘であるリトルイーティを狙われ怒りに燃える女王に(カルノタウルス、ディモルフォドンも加勢した多勢の状況であったが)致命傷を与え、瀕死状態に追い込んだ。
しかし、その後に復活したビッグイーティに逆襲され、敵のコントローラーが破壊されたことで正気を取り戻した状態でビッグイーティとリトルイーティの2頭と対峙。分が悪いと悟ったか怯んでいたところをビッグイーティの体当たりで吹き飛ばされ、そのままそそくさと逃げ出していった。
行動を操られ暴走していた際はT-REX2頭を前にしても怯まず大立ち回りを演じていたことを考えると、制御された行動も動物的本能に基づく行動も、それぞれ良し悪しがあると言えようか。
その後の消息は不明だが、ディレクターインタビューによれば少なくとも『炎の王国』の時代まではマンタ・コープ島にて健在であるようだ。
Jurassic World Evolution
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のタイアップ作品となるテーマパーク建設シミュレーションゲーム『Jurassic World Evolution』にも登場。
ベースデザインは『ジュラシック・パークIII』に登場した個体のそれを踏襲している。
全長15m、体高4.6m、体重20t。
ベースステータスはATTACK:101、DIFENCE:37、LIFESPAN:59、RESILIENCE:35。
攻守の合計ステータスは138となっており、インドミナス・レックス、インドラプトル、ティラノサウルス・レックスに次ぐ作中4位を誇る。
本作では映画では描かれなかった草食恐竜を追い掛け回して捕食する様子を見ることができるほか、長年言及されてきたスコミムスとの顔合わせも実現した。
Jurassic World Evolution2
『Jurassic World Evolution』の続編に当たるテーマパーク建設シミュレーションゲー厶『Jurassic World Evolution2』にも登場。
ベースデザインは前作と同様『ジュラシック・パークIII』に登場した個体のそれを踏襲している。
全長15m、体高4.6m、体重20t。
ベースステータスは攻撃101、防御37、支配力138、寿命59、アピール1284。
ステータス自体は余り変化しておらず、目立った変更は見られない。
また前作では見れなかった新しいフィニッシャーが追加され、映画本編のあのシーンを再現することができる。
しかしその一方カオス理論モードでは、世界中のスピノファンに喧嘩を売るような醜態を晒している。
古代王者恐竜キング
当時の学説に伴い二足歩行スタイルで登場。当然尻尾も普通に細長い形状。
けたたましい鳴き声は「名探偵コナン」のゴメラに流用されている。
第3紀から登場し、強さ2000・水属性・必殺わざはグー。バトルタイプは第5紀まではあいこタイプ、2007第1紀+〜第4紀+はそっこうタイプ、激闘!ザンジャークはゆうきタイプ。ショルダーネームは「伝説の狩猟者」。
- 初登場したバージョンでは同時に登場した超わざ「トラジディオブザボール」のカードにも描かれた。
DSゲーム「7つのかけら」ではあいこタイプはレックスを主人公にした場合だけ入手できる(リュウタの場合サイカニアのあいこタイプ)。そっこうタイプは両方で入手できる。
ノーピスとの初戦では本種1頭だけで、アクトイリテーターは2周目にならないと使わない。
1周目の初戦直後の負けイベントも本種を使う。
- 負けイベントでは強さを演出するためかアーケード版における「わざカードなし」と同じ状態だが、攻撃力自体は通常と同じ。またダメージ量から察するに敵として登場する場合はそっこうタイプと思われる。
2007第2紀からアクト団の固有名詞付き恐竜「スピノ」が超あいこタイプ・必殺わざはチョキ・強さ1600で登場。
- テレビアニメでは第1期では超わざはもっぱら「ショックウェーブ」を使っていた。もっとも、第1期では他の超わざは「フタバメガキャノン」しか使わなかったが。なおショックウェーブはイリテーターがレベル28で生み出してくれる(コイツ自身はレベル31で「ウォーターソード」。フタバメガキャノンはスコミムスなどチョキの連中がレベル55で生み出してくれる)
激闘ザンジャークではディノテクター恐竜も登場。「スピノ」はラッキー7タイプ、固有名詞なしのディノテクター恐竜はパーパータイプ。
ARK:Survival_Evolved
川や湖などの水辺に生息する。昏睡させ、肉類を与えることでテイムできる。攻撃力の高い2足歩行と移動速度が速い4足歩行を切り替え可能なほか、水に触れると攻撃力と移動速度が上昇するバフがかかり、水から離れても30秒間継続される。このためか砂漠が舞台の「Scorched Earth」には登場しないが、ティラノサウルスが出現したためか地下世界が舞台の「Aberration」では逆にスピノサウルスだけ登場している。Aberrationでは比較的安全な上層に生息している数少ない大型肉食生物なので、テイムすると大活躍する。また、スピノサウルスは魚とスポーン枠を共有しているため、スピノが湧かないときは魚を狩るとよい。
最強王図鑑フランチャイズ
初登場は『恐竜最強王図鑑』。サルコスクス、アンキロサウルス、ティラノサウルスと激闘。『異種最強王図鑑』ではホッキョクグマ、ティタノボアと激闘を繰り広げた…ところまではよかったが、『恐竜タッグ最強王図鑑』ではなんとまさかの初戦敗退だった。もっとも、こうなった原因は相方であるプテラノドンが呆気なく倒され、1vs2で闘わなくてはいけなくなったのが原因ではあるが……。
ちなみに復元の変化の都合により異種最強王と恐竜タッグではデザインが異なっている。
なお、「水中最強王図鑑」には登場しない。こちらはそもそもの話、中生代の動物は海生動物しか登場しないというのもあるが。
テレ東版では3話にてティタノボアとの激闘にて初登場。先述のこともありこちらもあっけなく退場するか…と思われた矢先、カバとの戦いでは氷原の寒さに凍えた状態で相手のタックルを何度も喰らいつつも、水中で機動力の差を見せつけて1勝を挙げた。(地上は寒くても水温は温かいままなのでスピノサウルスは悠々と泳げた)
次の対戦相手は『恐竜最強王図鑑』で激闘を繰り広げたティラノサウルス。あの映画では前述の通りスピノサウルスが異常だったのか、はたまたティラノサウルスが未熟だったのかスピノサウルスが勝利していたが、『最強王図鑑』では平均の大きさの個体が選出される上、咬合力の差で敗北していた。
結果はどうかと言うと……4足歩行であることを利用して氷原ステージを余裕持って歩くことが出来、そのまま海へ落とそうと力一杯押し付けて攻撃した。だが、相手は強靭な足腰を持っているのもあり何とか耐えられ、その後は咬合力の差でここでも敗北。しかし、結果としてティラノサウルスをギリギリまで追い込んでおり、スピノサウルスの強さはしっかり見せつけられたと言えるだろう。
ちなみにこの時は異種最強王のデザインでありながら2020年の復元を踏襲している。
スペシャル上映でも全3試合がしっかりとプレイバック。ティラノサウルスとの戦いは本上映でもクライマックスを飾った。
…ただカバ戦のプレイバックの際、本来なら「モースト…ファイッ!」という決めゼリフをモーストが放ってから試合が始まるが、ファイッ!の部分は池崎が自ら待ったをかけてまで言い放った。(その後の試合ではこの部分は2人で一緒に言うことになる。)
そんなスピノサウルス、その3試合で結果を見せていたこともありトーナメント戦にも無事進出。40話にてヘラクレスオオカブトと戦闘することが決定した。
ティラノサウルス戦でも活用した自慢の足を使い踏みつけ攻撃を披露するも、防御力が自慢のヘラクレスオオカブトには通用せず、森の中に姿を隠された。だが、自慢の聴力を使い相手の羽音を聞き、反撃をお見舞いする……が、目の前で急降下され胸部にしがみつけられ、前足で無理矢理引き剥がすと鋭いフック状の爪で皮膚を傷つけられた。だが、仮にもティラノと互角に闘える恐竜……この程度でへこたれる事なく、正面から飛んできた相手を噛みつきで捕獲。そのまま力任せにひっくり返して無防備になった腹部を踏みつけて勝利した。
次の試合は第46話、スピノサウルスと同じ水棲生物の巨獣であるプルスサウルスが相手である。
ステージはスピノサウルスにとって初めてのステージである洞窟。周囲にある岩を尻尾で破壊しながら飛ばしたり、相手の首もとに噛みついて攻撃したりとその巨体を活かした戦術でプルスサウルスを追い詰め、更には前足でプルスサウルスの顔を抑え相手の噛み付き攻撃を封じ込めようともした(尚、プルスサウルスが横回転で抜け出したので失敗した)
その後プルスサウルスの首もとに再び鋭い牙で噛み付き攻撃したが、それでもめげずに闘志を燃やし続けたプルスサウルスがそのまま噛み付き返し、更にそのまま必殺のデスロールを喰らってしまい敗北をしてしまった。しかしそれでも原作と異なりシードなしで行われたためベスト8という好成績を収めている。
必殺技はジャイアントスピノクランチ、アンダーウォーターハント、スピノツイスト&ストンプ。
なお先述の通りスピノサウルスがどれほどの時間を水中で過ごしたかについては議論の的になりがちなのだが、本フランチャイズでは2024年現在で最有力とされる水中でも陸上でも活発に狩りを行ったという学説を採択している。
頂上決戦シリーズ
初登場は『頂上決戦!絶滅危険生物最強王決定戦』。シードで2回戦から登場し、ギガントピテクス、ティタノボアと戦ったが、再登場した『頂上決戦! 恐竜 最強王決定戦』ではテムノドントサウルス、デイノニクス、トリケラトプス、モササウルス、そしてなんと決勝でティラノサウルスを破って優勝した。
その他のメディアでの扱い
1993年にNHK天才てれびくん枠内で放送された『恐竜惑星』の第45話に登場。ワニのような細長い頭部で魚を捕食する姿が描写されている。この頃のスピノサウルス復元図は大型肉食恐竜に背びれを付けただけのものが主で、ワニ顔の復元は日本のマンガやアニメでは最初期のものと思われる。4脚の姿勢もこの時期としては珍しい。
この復元は本作の恐竜をデザインした本多成正氏によるもので、同氏によるスピノサウルスの復元図は恐竜惑星に先立つこと数年前の学研出版の科学冊子「恐竜学最前線」に載っており(これも4脚の姿勢である)、恐らく日本では、これが最も早い部類の「スピノサウルスがバリオニクス等と同じグループに属したワニ顔の恐竜だった」ことを書籍で明示した復元図だったと思われる(1986年に記載されたバリオニクスも又、この少し前から日本ではようやく知られるようになった)。
ちなみに4脚姿勢で描かれたのは近縁種のバリオニクスがその巨大な爪を備えた前脚を地面にアンカーとして置き、姿勢を安定させながら水中に頭を突っ込んで魚を捕獲した、という説をスピノサウルスにも当てはめたためである。当時はまだスピノサウルスの化石の「再発見」は成されておらず、シュトロマー博士の残した記録が主な資料という幻の存在であった。
2019年のNHKスペシャル「恐竜超世界」に4足歩行の復元で登場したが、海を泳いでいた時にあえなくブラカウケニウスに捕食された。スピノサウルスは河川が主な生息域だったと思われるため、このようなことは皆無とは断言できないが、ほとんど番組のための演出と思っておいた方がいいだろう。
だが流石にまずかったのか、借りを返すかのように2023年の続編および翌年のダーウィンが来た!では目玉恐竜の1種として登場。陸上で生活するという恐竜のイメージを覆したとしてゴンドワナ大陸の異形恐竜の代表的存在ポジションでの登場となった。
2006年に公開された『映画ドラえもんのび太の恐竜2006』にも登場。敵役の大富豪・ドルマンスタインに飼育されており、映画終盤に解き放たれ、ドラえもんの味方になったティラノサウルスと激突した。こちらでは噛み付き合いの末に投げ飛ばされて敗れており、日本を代表するアニメ映画におけるティラノサウルスとスピノサウルスの勝負は、奇しくも『ジュラシック・パークIII』とは真逆の結果に終わったことになる。
ちなみに、この映画にスピノサウルスが登場する事は、公開まで一切伏せられていた(いわゆる恐竜側の隠しボスである)。
また、2020年に公開された『映画ドラえもんのび太の新恐竜』では4足歩行の姿で登場。ただし当然ながら公開直前に学説が発表されたイモリ風の尾は再現されていない。
同年3月7日放送のテレビアニメ通常回内の映画とコラボしたミニコーナーにて「魚を食べていた」という生態が紹介されていた。
恐竜ファンタジー漫画『竜の国のユタ』では太古より蘇った竜モドキの一つとして登場。軍艦破壊専門に大きな戦果を挙げるが、巻末のおまけではおそらくワニとの生存競争に負けた種だろうと触れられている。
2011年のBBCのドキュメンタリー『プラネット・ダイナソー』の第1回にて2足歩行の復元で登場。その回の主役のような存在だ。
2024年の映画クレヨンしんちゃん『オラたちの恐竜日記』ではメイン恐竜となっており、子供恐竜ナナのモデルとなっているが、新旧復元を織り混ぜたデザインに加え頭部に"赤い羽毛の飾り羽根"を生やしたオリジナルのアレンジが語り草になっていた。
というのもティラノサウルスと異なり、近縁な恐竜からも羽毛の痕跡がなく、水棲生活をしていた際に邪魔になることから生えていなかった可能性が高い。一応、ナナがオスと明言されてることからオスだけの特徴とも考えられ、羽毛が生えているのは後頭部だけなため水棲生活での支障は少なそうではあるが…。
ちなみにディノズアイランド以前からこの復元が確認されており、しんちゃんの世界でのスピノサウルスはこれが正しいと割りきったほうがいいだろう。
モチーフとしたキャラクター
- スピノゴールド(爆竜戦隊アバレンジャー)
- トバスピノ・デスリュウジャー・キョウリュウネイビー(獣電戦隊キョウリュウジャー)
- スピノサンダー(騎士竜戦隊リュウソウジャー)
- ゴールドスピノゲノム(仮面ライダーリバイス)
- ダイノシャウト(トランスフォーマー ギャラクシーフォース)
- スコーン(トランスフォーマー ロストエイジ)
- スピノサパー、ダークスパイナー、バイオスピノ、ジェノスピノ(ZOIDSシリーズ)
- スピノモン、バイオスピノモン(デジタルモンスター)
- スピノブレイバー(ディノブレイカー)
- 桔梗の匣兵器・雲スピノサウルス(家庭教師ヒットマンREBORN!)
- ページワン(ONEPIECE)
- セグレイブ(ポケモン)※コンカヴェナトルやゴジラとの混合モチーフである可能性もある。
- ナナ(映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記)
関連タグ
スコミムス バリオニクス イリテーター カルカロドントサウルス
ディメトロドン - 背中に大きな帆を持つことで有名な古生物。シルエットは似ていなくもないが、こちらは単弓類に属する生物なので恐竜ではないし、時代も違う。
オウラノサウルス - スピノサウルスと同時期に、同じ地域に生息していた草食恐竜。背中にスピノサウルスと似た大きな帆を持っている。
ギガントスピノサウルス - 名前が酷似している恐竜。こちらはステゴサウルスなどと近縁の剣竜類であり、スピノサウルスとは全くの無関係で生物学上の分類は恐竜までしか共通していない。
二本足スピノ→四足スピノ→イモリ尾スピノ・・・復元の通称・愛称。