恐竜超世界
きょうりゅうちょうせかい
「6600万年前の北極圏」
「雪と氷の大地に暮らしていたのは…」
「恐竜だ」
「あれ?恐竜ってこんな寒い場所でも平気なの?」
「ド派手な模様 これも恐竜?」
「カラフルでモフモフ」
「映画で見る恐竜とは 随分 姿が違う」
「更に…」
「虫をエサに魚を捕る恐竜も!」
「恐竜って こんなに賢かったっけ?」
6600万年前、隕石衝突による絶滅の前夜、恐竜に代表される当時の生物は、地球の生物史上、類を見ないほど多様に、そして究極の進化を遂げていたことが分かってきた。これまで発見された恐竜化石は1千種に上るが、それは恐竜全体の僅か1%に過ぎない。所がこの10年程で、残る99%の発見が相次ぎ、恐竜達の姿形だけでなく、どのように暮らし、戦い、子孫を残し、そして死んでいったのかという“生き様”まで、精密に再現できるようになった。
本作では、超精密CGを駆使して、最新知見に基づくリアルな恐竜世界を、2本シリーズで描き出した。ナレーションは上白石萌音が担当、更に番組挿入歌としてRADWIMPSの「tazuna」が使用された。精密かつ臨場感溢れるCGは極めて高い完成度を誇り、視聴者からも非常に高い評価を得た。
2020年には、『ダーウィンが来た!』で本作を再編集した事実上の短縮版が放送されており、(これは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、屋外での取材ができなかったことも原因として挙げられる)、同年の2月には「恐竜超伝説 劇場版ダーウィンが来た!」として映画館で公開された。
一方で、科学的に不適切な面も散見される。
例えば首長竜やモササウルス科などの海棲爬虫類を「海竜」と一括して、それがさも学界で現在でも普通に使われている言葉であるかのように述べていたり(※1)、ティラノサウルス等の大型獣脚類の成体を軒並み全身羽毛で覆われていた姿で再現したり(※2)、大型海棲爬虫類がかなり浅い海岸まで泳いできて陸上動物の恐竜を襲ったり(※3)といった点等である。
※1 確かに“海竜”という言葉自体は存在し、以前は海洋性爬虫類の総称として使われていたが、最近ではあまり使われず、どちらかと言えば水棲のドラゴンを意味することの方が多い。
※2 大型獣脚類に関しては少なくとも幼体の段階では体温の保持のために羽毛を持っていた可能性は否定はできないが、成体になっても羽毛を持ち続けていたかは現在でも意見が分かれており、はっきりしていない(成体になると体が巨大になることで体から熱が逃げにくくなるので、わざわざ羽毛を発達させる必要がないとする説もあるため。また劇中水場に落ちてずぶ濡れになる場面もあったが、そうした場合水鳥のような防水対策の取れた羽毛ならまだしも、そうした仕組みのない原始的な羽毛ではかえって体温を奪いかねない)。また、ティラノサウルスやデイノケイルスなどペンナラプトラ以前の獣脚類の前肢に、風切羽状の羽毛が描写されている。風切羽状の羽毛が獲得されたのはペンナラプトラ(オヴィラプトロサウルス類やドロマエオサウルス科)以降。
※3特に大型の海棲爬虫類は沖合の生活に適応(特化)しているため、海岸に近づくことはかなり危険である。ひとたび座礁してしまえば、陸上で活動できる身体ではないため、そのまま身動きがとれなくなり遂には自重から、窒息してしまう。現生のクジラやイルカの例を見ればわかりやすい。海棲爬虫類に食べられたと思しき恐竜の骨の化石も確かにみつかっているが、それらは沖合に堆積した地層からのもので、わざわざ岸から遥か離れた沖合まで、恐竜が泳いできたり、岸から海棲爬虫類が運んできたというのは無理があるため、陸の洪水などで沖まで流されてきた死体を食べた跡というのが自然とみなされている。沿岸で恐竜などをも襲う生活をしていたのは当時、淡水域だけでなく海洋の沿岸でも大いに繁栄していたワニなどの半水棲の爬虫類達が中心だっただろう(ちなみにモササウルス類にもワニのように手足が鰭化していない原始的な形態を留めた半水棲の種がいた)。
もっとも、恐竜に関する番組でこういった脚色が生じるのは、何もこの作品に限った話ではないし、そもそもこれらは本当にガチな専門家や恐竜ファンからの指摘であり、あくまで一般の視聴者が恐竜に興味を持ってもらうための作品としては及第点とも言える内容になっていることに変わりはない。
あまり深く考えずに、恐竜たちの繰り広げる迫力満点の映像を楽しむ番組…程度に考えて視聴するのが良いだろう。
NHK恐竜CGは単発ものが多いため、これも単発であると思われたが、2023年3/21(火、祝)と3/26(日)に『恐竜超世界2』として2回シリーズの続編が放送されることが明らかになった。正式にナンバリングが打たれた続編はこれが初となる。
登場する恐竜は現在確認できている時点ではティラノサウルス、マイプ、プエルタサウルスなどで、マーストリヒト期の北米と南米にスポットが当たる模様である。
お察しの通り、『恐竜博2023』とのタイアップ放送でもある。
詳細は個別記事で。
またこちらも詳しいことは当該記事で話しているが3作目(もし本当ならスピンオフ含めて第4弾にあたる)に関する噂話が流れている模様であり動向が待たれる。
古生物 NHKの本気 恐竜超世界2 恐竜超世界inJapan
君の名は。:上白石とRADWIMPSが関わったため、この作品を連想してしまった人もいたとか(さらに言えば、あちらも天体衝突が重要なテーマとなっている)。