概要
「首長竜」といえば大体の人が思い浮かべるであろう生物で、大きさ13メートルくらい。福島県で発見されたフタバサウルスもコイツに近い仲間である。
甲羅はないが、「ウミガメのようなボディにヘビのように長い首」と例えられる体格のインパクトは抜群。当時北米大陸を縦断した浅い海に暮らしていた。
特徴
なにより目立つその首は全長の半分以上を占め、実に76個の頚骨からなる(いわゆるカミナリ竜こと竜脚類は最多の種でも22個だった)。
そのため柔軟性に富むが水中では抵抗がかかるため、曲げることはなかったと思われる。
ちなみに釘のように細長い歯はきっちり噛み合うようになっており、捕まえたら離さない作りだったようだ。
暮らし
水中で首を魚群に突っ込ませてイカや魚、アンモナイトなどを食べていたらしいが、魚を獲りにきたであろう翼竜プテラノドンも腹から見つかっており、生存競争の厳しさを物語る。
胃石が発見されており、消化を助ける他浮力を調節するバラスト(重り)の役割を果たしていたという説もある。
余談
コイツの名付け親は19世紀アメリカの古生物学者・『エドワード・ドリンカー・コープ』。
カマラサウルスやコエロフィシス、アンキサウルスなどを名付けた人物であり、それまで「生物としての人類の骨格標本」がない事を受けて自らの遺骨を献体するよう言い残したかなりの学者気質な男であった。
で、このエラスモサウルスにまつわるいざこざが「オスニエル・チャールズ・マーシュ(トリケラトプスとかアパトサウルス、ブロントサウルスとかをつけた学者)」との確執を生む事に。
当時こんなに長い首を持つ生き物は知られていなかったので、コープは「これは尻尾に違いない!」と尻尾の骨に頭骨をつけて復元した。じっくり調べれば回避できたはずのミスだが、大方「モタモタしていたら別の誰かに先を越される」という焦りもあったのだろう。
まあ案の定「これ間違ってるネ」と気づいた人はいたわけで、コープがエラスモサウルスを発表した2年後の1870年、ジョゼフ・ライディという学者(ハドロサウルスの名付け親)が訂正を行った。
……が、なぜかここでしゃしゃり出てきたのがマーシュ。ライディを差し置いて「そのミスを指摘したのはワタシだ!」とか言い出し、しかも「非常に失礼な言い方で」、何度もしつこくという嫌がらせ同然の所業を行ったという。
こんな事をされてはさすがに面目丸潰れで、訂正するべくこの復元図が載った刊行物を回収して修正・再発行しようとした……のだが、マーシュは自分の持っていた一冊を絶対に手放さなかった。
またコープもコープで、報復としてマーシュが採取中だった場所から化石を持ち逃げするという暴挙に出ている。二人は友人だったが互いに対抗意識を燃やしており、この事件がきっかけとなって両者の関係は一気にピリピリ険悪となった。
以後二人は所謂ボーンウォーズ(相手の化石掘りスタッフを勝手に使う、スパイ行為、ど突きあい、相手の発見した化石を壊す)を展開し、ブロントサウルスの命名問題にもつながるのだがそれはまた別の機会に。
創作におけるエラスモサウルス
大抵プレシオサウルス扱いされがちで、明らかに本種がモデルと思わしき首長竜やモチーフにされたキャラも何故かプレシオサウルスをもじった名前で出演している事が多々ある模様。ちなみにプレシオサウルスはせいぜい4メートルくらい。
元祖怪獣映画『キングコング』にも登場しており、鋭い牙や全身を使った巻き付き攻撃でコングを苦戦させた。しかし、画面が暗いので手足がよく見えず、海辺ではなく洞窟に出現したので大蛇と誤解した観客も多かったようだ。実際、『キングコング』は何度もリメイクなどの関連作品が制作されているが、エラスモサウルスは一度も再登場を果たしておらず、代わりに大蛇のような怪物が登場する事が多い。
恐竜ファンタジー漫画『竜の国のユタ』では海王国の軍勢が川を行軍中に王子の御旗である2匹の首長竜が現れ吉兆とされたが、これはプロパガンダらしい。
映画ドラえもん『のび太の恐竜』では、のび太がピー助を間違えてアメリカ沿岸に放流してしまった際、異種(フタバスズキリュウ)であるピー助を苛めるシーンがあった。