発見と命名
「ボーン・ウォーズ」で有名なエドワード・D・コープが1889年に「中空の形」を意味するコエロフィシス・バウリを命名した。この模式標本は断片的だったが約60年後、ニューメキシコ州ゴーストランチにてエドウィン・コルバートらによって数百体がまとまったボーンベットを発見され、全体像が明らかとなった。
リオアリバサウルス事件
ゴーストランチ標本は質・量ともに非常に優れており、この恐竜に関して多数の重要な情報を提供した。が、研究の進行と共に、ゴーストランチ標本と、コエロフィシスの模式標本(以下コープ標本)が別種である可能性が浮上した。コープ標本は断片的であり、ゴーストランチ標本がコープ標本と同じ種類かどうか断定できなかったのである。
そういう訳で、ゴーストランチ標本について「リオアリバサウルス・コルバーティ」という学名が提唱された。
が、ここで問題が生じた。ゴーストランチ標本の知名度の高さゆえ(発見当初からアメリカ国内で大きく報道されていたらしい)、一般的に(そして学術的にも)コエロフィシス=ゴーストランチ標本という図式ができあがっていたのである。コープ標本が断片的であり、下手をすれば「コエロフィシスの模式標本」としての条件を満たせないような代物であったことも問題となった。
結局(はた目から見ると割と子供じみた論争の果てに)、コエロフィシスの模式標本を変更することで決着をみた。コエロフィシス・バウリの新模式標本としてゴーストランチ標本の一体が指定され、コープ標本(の一部)はエウコエロフィシス・ボールドウィニの参照標本(模式標本ではない点に注意)とされるようになったのである。「リオアリバサウルス」についてはなかったことにされた。
のちに、エウコエロフィシスはシレサウルス類(恐竜ではないが、ごく近縁な爬虫類の一派)であるとされるようになった。肝心のコープ標本は結局、「コエロフィシス・バウリによく似たコエロフィシス類」という扱いに落ち着くこととなった。
生態
スマートな体型や顎・歯の構造から、積極的なハンターだったと考えられている。コルバートが見つけた標本には成体の体内から幼体と思われる化石が発見された。胚としては大きすぎるため彼は共食いの証拠と考えたが、最近になって初期のワニ類だと判明した。ゴーストランチでは大量にまとまって見つかったが、群れをつくっていたかは不明である。コルバートは火山ガスが大量死をもたらしたと考えている。
豆知識
1998年1月、カーネギー自然史博物館のコエロフィシスの頭骨がスペースシャトル「エンデバー」に乗せられ大気圏を離れた。3年前にはマイアサウラも宇宙に運ばれている。