概要
硬骨魚綱・シーラカンス目(または「空椎目」)に属する魚類の総称。
胸鰭と腹鰭が四肢動物の肢に似た柄の先についていること、真の尾鰭が小さく背鰭と尻鰭が尾鰭のようになっていること、軟骨の管からなる脊椎が特徴。シーラカンスという言葉は古代ギリシア語で「空っぽの魚の骨」という言葉からくる造語であり、これが後に正式な分類名として認められるに至った。
一般的にシーラカンスと呼んだ場合はアフリカ東海岸沖のインド洋に生息する「ラティメリア・カルムナエ」を指す事が多い(別名・コモロシーラカンス or アフリカシーラカンス)。
現存種としては他にインドネシア・スラウェシ島沖に生息する「ラティメリア・メナドエンシス」と言う種がある(別名・インドネシアシーラカンス又はスラウェシシーラカンス)。こちらは1990年代末になって初めて学術的に確認された。現地語でラジャラウト=王魚と呼ばれ、以前から稀にだが漁師に捕獲されることがある魚だった模様。
コモロシーラカンスとスラウェシシーラカンスは形態的にそっくりだが、体色(鱗の色)で容易に見分けられる。コモロシーラカンスは黒っぽい濃紺色(青褐色)で、スラウェシシーラカンスは茶褐色をしている。
発見記
シーラカンス類は古生代デボン紀に出現し、世界各地の海洋や河川で繁栄するも白亜紀末期を最後に化石記録は途絶え、恐竜と共に絶滅したと考えられていた。しかし、1938年、南アフリカ東海岸で漁師が仕掛けた網に引っ掛かっていた生きたシーラカンスが発見された。「見慣れない魚が獲れた」という漁師からの連絡を受けてシーラカンスを確保し発見者となった博物館学芸員マージョリー・ラティマーと発見地のカルムナ河口漁港に因んでラティメリア・カルムナエと言う学名が付けられた。残念ながら捕獲された個体はラティマーが引き取った段階で既に腐敗がはじまっていたため、漁港での冷蔵保管を拒否されてしまい(当時は現在より遥かに冷蔵施設は希少であった)、標本としてはスケッチと塩漬けにした頭部や表皮などしか残しておくことが出来なかった。標本を研究し新種として論文に記載・公表したジェームズ・スミス博士は完全な標本を求めて懸賞金をかけるも、新たな個体の捕獲は14年も後の1952年であった。しかも南アフリカではなく遠方のコモロ諸島での捕獲であった。
コモロ諸島は南アフリカから距離にして約3000km遥か東のインド洋の島々で、この「再発見」後もシーラカンスの捕獲や生息が周辺で確認されるようになる。そのため、シーラカンスは本来、コモロ諸島周辺海域に生息しており、最初に南アフリカ東海岸で発見された個体は偶然、海流に流されて本来の生息域外に迷いこんでいたことが判明した。
生きた化石
とうに絶滅したと思われていたものがそのままの姿で発見された、という劇的な経緯から、シーラカンスは「生きた化石」の代表格として、長年変わらないものに対する比喩として使われることがある。シーラカンスが変化しなかったのは、自然界にほとんど天敵はおらず、環境の安定した深海で生きていたため変化する必然性がなかったことによると推測されている。
生態
代表種のラティメリア・カルムナエは全長約1.5m。肉食性で、全身が青褐色を帯びた分厚い鱗で覆われている。生態調査では基本水流に身を任せ漂う姿が確認されている、卵胎生であり、長寿であると考えられている。鱗からの測定では出産まで5年以上、自然下の寿命が100年以上とされる。
利用
あまり能動的に活動しないためか肉の味は水っぽくて人間には消化できない脂肪や尿素が含まれ、とても不味いそうで、食用的な利用価値はないという。そのため昔からこの魚を稀に捕獲することがあったコモロ諸島の漁師達はこの魚のことを「ゴンベッサ=現地語で不食魚・不用魚」と呼んでいた。
各言語での呼び名
言語 | カナ表記 | 綴り |
---|---|---|
英語 | シーラカンス | Coelacanth |
ドイツ語 | クヴァストンフロッサー | Quastenflosser |
スペイン語 | セラカント | Celacanto |
イタリア語 | チェラカント | Celacanto |
フランス語 | セラコントゥ | Cœlacanthe |
フィンランド語 | ヴァルシエヴァカラ | Varsieväkala |
ハンガリー語 | ボイトシューソーシュマラドヴァーニュハル | Bojtosúszós Maradványhal |
コモロ語 | ゴンベッサ | Gombessa |
インドネシア語 | イカンラジャラウ / イカンラジャラウット | Ikan Raja Laut |
ベトナム語 | カーヴァイタイ | Cá Vây Tay |
韓国語 | シルロケンス / コングゴ | Silleokaenseu, Gonggeugeo |
中国語 | 空棘魚(コンチーユィ) | Kongjiyu |
シーラカンスが登場する作品
独特の外見から人気が高く、クリーチャーのモチーフからギャグ要員まで意外と多芸。特撮の怪人の題材としても何度か採用されている。
ゲーム
- 『moon(ラブデリック)』ではアニマルの一体であるトットテルリのモチーフである。トロピカルフィールドを泳いでいる骨魚の群れを集めて、キノコの森のカクンテ人の儀式を経て復活する。
- 海洋生物を模した巨大戦艦と戦う業務用シューティングゲーム『ダライアス』シリーズでは、シーラカンスを模した戦艦がボスとして登場し、シリーズの常連となっている。作品によって外観や武装は様々だが、共通して「フォスル(FOSSIL:化石)」の名を冠するのが特徴。中でも『Gダライアス』の「クイーンフォスル」は1画面に収まりきらないほどに巨大であり、プレイヤーの友軍艦隊をレーザーの斉射や体当たりで蹴散らしたり、雲海から飛び跳ねて再び雲海に潜るなど登場シーンから撃破に至る流れまでインパクト抜群。
- 古生物系サンドボックスゲーム『ARK:Survival_Evolved』では大小様々なサイズが水辺で見かけられる。他に出ている魚がメガピラニアにメガロドン、果てはマンタやダンクルオステウス、サーモンまで軒並み攻撃的な中唯一反撃しないため、魚肉獲得には格好の獲物となる。が、上記のラティメリアの件からか味はあまりよくないようで、魚の死体を手渡してテイムするカワウソやヘスペロルニスに差し出した場合、サーモンに比べ上昇率は鈍い。
- 『どうぶつの森』シリーズでは海水魚で唯一の皆勤種であり、売却値も魚で最も高額、そのうえ出現率も非常に高く金策として優秀だった。流石にまずいということなのか『e+』以降の作品ではかつて乱獲されたことにより数が大きく減ってしまったという設定が付けられ、大幅に出現率が下げられてしまっている。
- 『パズル&ドラゴンズ』のダンジョン「雷と海の古代龍」で闇属性のシーラカンスが、ダンジョン「火と湖の古代龍」で水属性のシーラカンスがボスとして登場するほか、他のダンジョンの中ボスとして登場することもある。しかし性能はあまり難易度が高くないダンジョンのドロップキャラなので・・・。
ゲーム以外
- 『トランスフォーマー 超神マスターフォース』の敵キャラクターに「シーコンズ」というグループがおり、その一員の深海攻撃兵ガルフがシーラカンス型モンスターからロボットに変形する。あくまで~型モンスターということで、脚が生えている。海外名はスケイラー(SKALOR)。悪臭を放つ液体を絶えず出す水陸強襲兵という設定。
- ビーストウォーズⅡでは8万歳(アニメでは10万歳以上)の宇宙海賊の長老、海賊参謀シーラゴンに流用された。ロボットモードの腕(シーラカンス型モンスターの後ろ足)の逞しさからか、アニメでは年寄りらしからぬ強さを見せた(設定では体力は10段階の4)。
- 『天使のたまご』では象徴としての魚として登場。存在自体が影であり、いくら漁夫が銛を投げても石畳やレンガの壁に跳ね返り刺さらない。
- 『鬼灯の冷徹』では獄卒として登場し、亡者を折檻、呵責している。なお、この作品に登場するシーラカンスは、UMAやおとぎ話のキャラクターとして認知されたがっており、これらの人物が集うコミュニティに無理やり乱入しては追い出されている。また、この話では「閻魔大王が「シーラカンス丼」を食う」というシーンがある。(アニメ版では骨まで食べられている)・・・こまけぇこたぁいいんだよ。
- 『ボボボーボ・ボーボボ』に登場するスズは、軍艦を倒しに来たボーボボを追跡中、板前に扮したボーボボが手料理と称して振舞ったシーラカンスまるごと1匹を完食した。ファンブック『ボボボーボ・ボーボ本』で紹介されている彼女の特技は「シーラカンスの踊り食い」である。
- 『千と千尋の神隠し』では、主人公・荻野千尋の両親が勝手に食べてしまった「神々に振る舞うはずの料理」の中に丸いぶよぶよの謎な料理が混じっており、その正体はシーラカンスの胃袋という設定になっている。これは2001年の映画公開から2020年に米林宏昌氏が暴露するまで、19年にわたってその正体は謎であった。それまでは形のよく似た「肉圓」という台湾料理なのではないかという説が唱えられていた。後に作画資料の食い違いや、実際のシーラカンスの胃袋とは似ていないこと、記憶違いの可能性が浮上し、千尋の父が食べていたのが何だったのかは再び不明となってしまった。
- 『ラブライブ!サンシャイン!!』の2017年のエイプリルフール企画は、その名もずばり『シーラカンス!サンシャイン!!』。詳細は該当記事に任せるが、シーラカンスがやたらと登場して目立っている。それ以前にもAqoursの2ndCD「恋になりたいAQUARIUM 」のドラマパートのひとつとしてAqoursの1年生組が、シーラカンスが展示されている(流石に生体展示は無理なので冷凍標本展示)として有名な「沼津港深海水族館」にやってきた際にもシーラカンスをかなり話題にしていた。
- 『遊戯王OCG』には「超古深海王シーラカンス」として登場。最上級の星8の水属性、魚族モンスター。手札1枚をコストに最大4体もの低級魚族モンスターをデッキから特殊召喚できるという恐ろしい効果を持ち、使い方次第ではそのまま勝負を決めるワンショットキルすら可能という強力なカードである。
- メディアミックス作品『けものフレンズ』では、沼津港深海水族館とのコラボ企画でシーラカンスをモデルにしたキャラクターが登場。詳細はこちらを参照。→シーラカンス(けものフレンズ)
関連タグ
アクアマリンふくしま・・・シーラカンスの研究で有名な水族館。
ジーランス・・・RSEから登場。深海調査で発見され1億年前から姿が変わっていないという設定
関連項目
日本の皇族とも縁がある
- 昭和天皇・・・解剖に立ち会う。元々健啖家でもあり、気になったのか学者たちに「食べていいの?」と質問して侍従たちに必死で止められる。
- 上皇・・・解剖に立ち会い、同席した学者たちに「本物の学者だ」と感心させるほどの専門的知識がなければできない質問ややり取りを行った。