初めて一緒に街を出た。
新開発、モノトーン液晶画面。カートリッジ交換で、いろんなゲームが楽しめる。そして、ステレオ効果サウンド。
ハンディゲームマシン・ゲームボーイ。君とならどこまでも
概要
1989年(平成元年)4月21日に任天堂から発売された携帯ゲーム機。平成最初の任天堂ゲーム機である。
ゲームボーイより前に発売されたソフト入れ替え可能な携帯ゲーム機(日本ではゲームポケコンのみ)はどれもヒットを飛ばしておらず、「せいぜいアクションゲームやシューティングゲームといった一部のジャンルしか売れないのでは」と懐疑的に見られていたが、ゲームボーイは当時の据え置き機で扱われていたほぼ全てのジャンルのゲームも可能な事を示した。
ゲームボーイより高性能な携帯ゲーム機(ゲームギア・AtariLynx・PCエンジンGTなど)も発売されたが、カラー画面の搭載などで価格が高い・本体が大きい・電池が持たないなどの要因があり、ゲームボーイほどのヒットを収める事はなかった(メガドライブが大ヒットした北米ではゲームギアは結構売れていた)。
通信機能を有しており、通信ケーブルを用いれば最大4人対戦なども可能であった。
サードパーティからも多くのゲームソフトが売り出され、1990年代前半には大いに流行したが、半ばに入るころになると新世代の据え置きゲーム機も出始め、下火になっていった。
だが、1996年(平成8年)に『ポケットモンスター 赤・緑』が発売され大ヒットしたことでゲームボーイ市場そのものが復活し、第二の流行を迎えた。
ゲームボーイアドバンスへの移行が進んだ時期になるとソフト数は激減し、2003年(平成15年)をもって新規のソフト供給は終了した。
当時はリチウムイオン電池のような充電池も一般的では無かったため、単三乾電池4本を電源として使用し、電池の寿命などの関係から電力を食うカラー液晶やバックライトは搭載せず、モノクロ4階調の画面を採用することで電力消費を抑えていた。
その甲斐あって、マンガン電池で連続10時間、アルカリ電池で35時間という現在の基準で見ても驚異的な稼働時間を獲得している。
また、電池残量が少なくなると画面右のランプが点滅して警告が出る他、液晶が徐々に薄くなっていく仕様で、表示を濃くすることで少しだけ抵抗できるため、セーブ機能の付いたゲームをするにも優しい仕様であった。
重量は初代で約270gだが、そこに乾電池が加わると約310gになる。ゲームボーイポケットより以降は軽量化が進んで100g台後半に落ち着いている。
スペック
表示色は4階調モノクロで、解像度は160×144ドットと、一見して性能はファミコンより下に思えそうだが
- CPUの周波数はファミコンの1.79MHzに対し4MHzに(…と思いきやファミコンのCPUの方が1命令あたりのクロック数が少ないのでこの周波数差で同等くらい)。
- メモリはワーキングRAM・VRAMともにファミコンの2kBに対し8kBに。
- BGは1枚のままだが、それに加え「ウィンドウ」というレイヤが加わり、スコア表示部を固定させたまま全方向スクロールさせることが簡単にできるように。
- 基本的にROMの固定されたキャラクタを表示するだけのファミコンに対し、動的に生成したキャラクタをRAMに置いて使う仕様になり表示の自由度が大幅に向上。(ファミコンでもカートリッジにRAMを積めば可能だが)
- 最大表示スプライト数はファミコンの64個に対し40個と、減ってはいるものの面積比では増加。
- スプライトの横並び制限はファミコンの8ドット×8個に対し8ドット×10個に緩和。
- ファミコンには無かったタイマ割り込みが実装され、複雑なラスタスクロールなどが可能に。
- 音声の三角波が波形メモリ音源になり、出力もステレオになっている。(ヘッドホン端子使用時のみ)
と、一部を除けば多くの点でファミコンを上回っている。これで液晶画面まで付いてファミコンより安いのだから、ゲームボーイがいかにコスパに優れていたかがわかるだろう。
湾岸戦争で爆撃されても壊れなかった携帯機として有名だが、初期モデルは液晶の耐久性に問題があり、経年個体は液晶が寿命を迎えているものが多い(なお、爆撃で焼けた個体も中身は無事だったものの、液晶はさすがに熱で溶けたので交換することになった)。
非認可でのソフトが起動しないようにスーパーファミコンに先駆けてソフトとハードにライセンス認証のシステムが搭載されている。ディスクシステムのような物理的なものではなく、ソフトに認証チップが搭載されており認証すると起動時に「Nintendo」のロゴが表示される。ソフトの接触が悪いとバグったものになる。
現在は役目を終えているが、一部のタイトルはバーチャルコンソールで配信している。
耐久性
とにかく耐久力に優れていることで知られ、山内溥社長(当時)が完成したばかりのデモ機を床に叩きつけ、問題なく動作したことから発売を許可したという逸話がある。(任天堂曰く俗説であるとのこと)
また、爆撃で外装が黒焦げになっても内部の基板が無事という異次元の耐久性を持っている。中国産のスイッチには絶対に真似できない耐久性である。この個体は2023年までニューヨークのニンテンドーショップに展示されていた。現在は米任天堂本社に保管されている。
派生機
ゲームボーイブロス
初代ゲームボーイの色違いとして発売された商品で、色が違うだけで機体は同じ。
赤・緑・黄・白・黒・スケルトンの6色が同時発売された。「ゲーム機の色を選べる」というコンセプトが好評だったようで、後のゲームボーイポケット以降は初めから複数の色が発売されるようになった。なお、ステレオイヤフォンは同梱されなくなった。
ブロス(Bros)とは「Brothers」の略で、コピーライターの糸井重里による命名である。
CMではSMAP(当時)の木村拓哉が「君は何色?」と問いかけていた。
スーパーファミコン用の周辺機器。ゲームボーイのソフトが色付きかつテレビ画面で遊べるというもの。当時はテレビでゲームボーイソフトが色付きで遊べるという画期的なものだった。
後に通信端子を搭載し、初代で起こっていた本来より動作速度が速い症状が改善された「スーパーゲームボーイ2」が発売された。
NINTENDO64用で、ゲームボーイカラー用ソフトに対応した「スーパーゲームボーイ3」の開発も行われていたが、発売中止となった。
ちなみにかつてローソンの『Loppi』で行われていたSFC・GBの書き換えサービスの『ニンテンドウパワー』での店舗側SFC互換書き換え端末に周辺機器として暗灰色の『スーパーゲームボーイ』がGBソフト書き換え・起動テスト用として存在していた。仕様としてはスーパーゲームボーイ同等でそれのカスタムタイプと推測される。
ゲームボーイを小型化したもの。使えるソフトは共通。単四電池2本で動く。稼働時間は連続8時間と、ゲームボーイより大幅に短くなっている上、電池残量が無くなると強制的に電源がオフになる。BATTERYランプが廃止されたため残量把握が難しくなったが、後期生産型で復活した。ゲームボーイより精密で壊れやすいため、名前通りポケットには入れないように。液晶の視認性も向上し、色もゲームボーイの緑がかったものから白黒へ変更された。
汎用性の高い単三電池ではなかったのが場合によっては電池の使い回しで不便だった。
ゲームボーイポケットの液晶にグリーンのバックライト機能を付けたゲームボーイライトも存在する。
ゲームボーイライト
暗い場所でも画面が見えるように、画面に緑色のバックライト(オンオフ切替可能)を搭載したゲームボーイ(以前にも「ライトボーイ」というサードパーティー製の周辺機器があり、以前の機種で暗い場所で遊ぶにはこれを装着しなければならなかった。ちなみに拡大鏡つき)。サイズはゲームボーイポケットとほぼ同じだが、こちらは単三電池で稼働するため、電池持ちがポケットよりも長くなっている。
直後にゲームボーイカラーが発売されたため流通量が少なく、プレミアがつけられることも。なお、海外では発売されていない。
今までのゲームボーイより性能がアップし、反射型TFTカラー液晶を搭載し32,768色中、最大56色の表示が可能になったうえ、使用する電池も単3電池2本に減ったにもかかわらず、寿命も(アルカリ電池で)約20時間と大幅に向上した。
ただし、こちらも電池が大幅に消耗すると画面の見た目的には何の前触れもなく突然電源が落ちる。一応電池の残量に比例しランプの明るさが怪しくなるので予兆がつかめないわけではない。
また、一部のソフトはゲームボーイカラー専用である(ゼルダの伝説ふしぎの木の実、ポケットモンスタークリスタル、ドラゴンクエストⅢなど)。
ヒョンデ・ミニコンボイ
韓国で発売されたモデル。初期型のみヒョンデ電子が「ミニコンボイ」という名称で販売していた。途中からコンボイの名称が外され、他の国と同様、「ゲームボーイ」として販売された。本体に韓国語の「ミニコンボイ」のロゴが入ってる部分以外はオリジナルのゲームボーイと同じ。
特殊なゲームボーイ
ゲームボーイ試遊台
かつておもちゃ屋さんやゲームショップに置かれていた大きなゲームボーイ型の筐体があり、モニターでゲームボーイソフトのデモンストレーションを行っていた。実は中には特殊なケーブルに繋がれたゲームボーイ本体と映像出力機器とシャープの14型アナログテレビが入っており、スーパーゲームボーイに先じてテレビでプレイできるゲームボーイだった。
ちなみにゲームボーイと繋がっている機器はビデオ出力(コンポジット)である為、それに対応しているモニタなら液晶テレビでも可能。
なお、ゲームボーイ本体が格納されている部分は蓋がされている場合が多く、試遊されていた時期やケースはそれ程多くなくもっぱら展示機器として使われるのが主だった模様。
余談
今となっては古い仕様だが、単三乾電池の電池ボックスが仕込まれており電池だけでも遊べる、送電施設等のインフラが整っていない場所でもゲームが楽しめることから、発展途上国にも広く普及した希有なゲーム機となった。
据え置きゲーム機と異なりエリアプロテクトがない為、いわゆる海外版がそのまま動くので洋ゲー入門には適していた。これはニンテンドーDSまで続いた。
開発責任者であった横井軍平が「ゲームボーイは私の失敗作」と語った事がある。何故と思う人が多いと思うが、これはゲームボーイの液晶がプロトタイプと製品版では当初異なっていた為。
当初の液晶でいくつもりが、ゲームボーイをプレイするにあたって致命的な欠点(正面からは見えにくい)が判明した事による。
既に液晶の生産体制がシャープで直ぐにできる状態(この為に生産ラインをシャープが設備投資して作っていた)だった為、このままだとゲームボーイの生産どころかシャープまで危うい事態になったのである。土壇場で製品版で実装された新型モノクロ液晶が完成した為、危機は回避できた。
一歩間違ったら任天堂とシャープが大損害を被るかもしれなかった事態が、ゲームボーイ誕生の裏では起こっていたのである。
また、横井はゲームボーイ制作に当たり電池の持ちを優先したため「カラーにしなくていいのか」と問われた際に「モノクロで良い。他社がカラーで出してきたらうちの勝ち」と言い切ったという。
ゲームボーイポケット~ゲームボーイカラーまでの3機種は、現在のDSシリーズよりも次のバージョンが出るまでの間隔が短かった。特にゲームボーイライトとカラーは同年のうちに発売されている。
2021年(令和3年)現在、「ビネガーシンドローム」と呼ばれる液晶の偏光板を貼り付けている接着剤の劣化で液晶画面が酸っぱい臭いと共に黒ずんで液晶が表示できなくなる現象が起きている個体が出てきている。
なお、この「ビネガーシンドローム」は液晶を使った機器同士で伝染するらしく、発症した個体と一緒に保管していると確実に伝染してしまう。一応偏光板の張り替えによる修理はできるが、場合によっては液晶自体が傷んでいる事が多いので注意が必要である。
カートリッジの種類
- グレー
- 初代からカラー以前は全てこのタイプ。唯一の例外は「テリーのワンダーランド」の初期生産版がカラー対応なのにグレーカートリッジで発売されていた事である。「スーパードンキーコングGB」など成形色違いのカートリッジもあるが、基本的には同じである。
- ブラック
- モノクロ・カラー両対応。形状はグレーと全く同じ。「ポケモンカードGB」のみカートリッジに赤外線通信機能がある為、黒でありながらやや透過したカートリッジが使われている。また、「ポケットモンスター金・銀」は紺とダークグレーのツートンになっていた(金と銀で配色が入れ替わっている)。
- GB Kissカートリッジ
- ハドソンタイトルの一部タイトルのみの特殊カートリッジ。赤外線通信機能があり、共通で小さなアプリケーションを使える機能もあった。
- ホワイト
CM
関連タグ
ゲーム&ウォッチ→ゲームボーイ→(ゲームボーイカラー)→ゲームボーイアドバンス