ジャッジ、ボール、バーミン、ファイア
マイクロコンピュータを使ったゲーム&ウオッチ
ゲームをしない時はクオーツ式デジタル時計です
概要
任天堂開発による国内初の携帯ゲーム機...と位置付けられるが、ソフトを交換できない電子ゲームである。本体内のROMに書き込まれた「1ハード1ソフト」であり、現在一般的な定義ではゲーム機とは言えないが、任天堂の躍進の礎となったことから、この機種のみ特別に携帯ゲームの範疇で語られることも多い。
この「ゲーム&ウオッチ」シリーズの大ヒットにより、当時、多角化経営とオイルショックで経営難に苦しんでいた任天堂を救い、後のファミリーコンピュータから、ハードホルダー・ソフトメーカーとしての任天堂につづく道筋をつけた。
当商品は国内でも大ヒット、大ブームを巻き起こしたが、実は海外のほうが良く売れており、任天堂の海外進出もこのゲーム&ウオッチから始まったといっても過言ではない。爆発的な人気から大手の玩具メーカーから聞いたことのないメーカーまで様々な製品を乱造し、これらがまとめて「ゲームウォッチ」と呼ばれるようになる。終いには電卓やデジタル腕時計に逆輸入されて「ゲーム電卓」や「ゲーム付き腕時計」なるものまで登場した。
ただし、故・山内溥はブームの一方でゲーム&ウオッチがそう遠くない時期で頭打ちになる事を早々に予見していたらしく、ファミリーコンピュータの開発を指示したという。
そして1989年の「ゲームボーイ」に携帯ゲーム機の血筋は受け継がれその地位を確固たるものにし、ついには携帯ゲーム機と据え置き機の両方を持つ「Nintendo Switch」にまで受け継がれている。
2020年には、ついにゲーム&ウオッチは初期のシルバーの発売から40周年を迎える。同年は『スーパーマリオブラザーズ』35周年でもあるため、期間限定生産ながら現行技術による最新モデル「カラースクリーン」が開発される。
特徴
タイトルの多くは、難易度が低めのGAME Aと高めのGAME Bの内どちらで遊ぶかを選択できる(一部例外あり)。この選択方法はファミリーコンピュータの初期タイトルにも使用されている。ゲームをしない間は時計として使えるため商品名「ゲーム&ウオッチ」の由来である。後に、アラーム機能も付くようになった。
アラームが鳴ると各ゲームをモチーフにしたキャラクターが画面端でベルを振る。
大乱闘スマッシュブラザーズシリーズにおいてもMr.ゲーム&ウォッチのアイコンがベルを振る人だったり、アピールもベルだったりと、ゲーム&ウォッチシリーズの象徴になっている。
画面に液晶であらかじめ描かれている絵をオン/オフすることでゲームの動きを表現するので、表示できる絵は決まっている。そのため一つの本体が一つのゲームの専用機である。
表示の制約が大きいものの、時計表示とスコア表示のデジタル数字が兼用されていたり、アラーム用のキャラがゲーム上の役割を兼ねていたり、様々な工夫が凝らされている。厳密には時計よりも電卓の派生といった方が近い。
操作系はゲームによって異なるが、後のファミコンに採用され、他社のコントローラーでもスタンダードとなった十字キーが初めて登場したハードでもある。
ファミリーが多く、後にはコンパクトのように畳める二画面の『マルチスクリーン』、透明で裏まで見通せる『クリスタル』、カラー液晶を採用した大型の『テーブルトップ』などバリエーションに富み、アメリカだけで小数販売された特別バージョンも存在する。
ゲーム&ウオッチのシリーズ紹介
シルバー
1980年に発売されたゲーム&ウオッチ初期のタイプで、本体の前面パネルが銀色となっている。
この区分はのちにゲーム&ウオッチシリーズが増えたことで、他と区別するためにつけられた俗称で、正式なものではない。
ゴールド
1981年に発売されたタイプで、本体の前面パネルが金色となっている。
このシリーズから、画面にカラーフィルタによる色鮮やかな背景がついた。本体裏にはスタンドも追加され、さらにキャラクターが時刻を知らせるアラーム機能も追加されるなど、時計としての側面も強化された。実は折りたたみ型のスタンドがこのタイプから付くようになる。
ゲーム面では得点により、それまでのミスがクリアされる機能も取り入れられ、以後のゲーム&ウオッチにも継承されている。
ワイドスクリーン
ゲーム&ウオッチの大ブームをうけて、より消費者(とくに子供たち)に応えるべく画面を従来の1.7倍に拡大し、よりカラフルで細かな表現が可能となった。
版権ものゲームも登場し、アメリカの人気キャラクター、ポパイやミッキーマウス、スヌーピーのゲームが発売された。
マルチスクリーン
コンパクトに折りたためる二つの液晶画面が搭載された、ゲーム&ウオッチを代表するシリーズ。
山内社長(当時)の「二つのゲームを同時に遊べないか」という提案をうけて、横井軍平氏が開発した。第一弾はオイルパニック。横井氏をして「自分でも素晴らしいアイデアだと惚れた(笑)」と言わしめた良デザイン。上下の画面が連動する他にはないゲーム性が受けて大ヒットした。
第二弾の『ドンキーコング』で初めて十字キーが登場した。
縦に開くタイプと、本のように横に開いて遊ぶタイプがある。
このシリーズの子孫がニンテンドーDS、ニンテンドー3DSである。
テーブルトップ
自然光を利用することで、当時不可能といわれていた省電力フルカラーを実現した卓上型のゲーム&ウオッチ。美しい画面とリズミカルなメロディが魅力のシリーズだが、価格の高さからわずか3か月で終了した。
パノラマスクリーン
テーブルトップの機能はそのままに、折り畳み可能な小型サイズに改良。本体を閉じた時の厚さはわずか2cm。テーブルトップにくらべ価格も引き下げられたが短命に終わった。
ニューワイドスクリーン
ワイドスクリーンの低価格版。メタリックカラーパネルの採用と、全モデルにイラストが入るなど、より子供層を意識したデザインとなっている。
海外のみで発売されたタイトルも多く、マニア垂涎の非売品『スーパーマリオブラザーズ』も当シリーズのファミリーである。
スーパーカラー
縦長のちょっとかわった画面をもつゲーム&ウオッチ。
カラーフィルムを貼ることで疑似カラーを再現。メタリックボディが美しい。
しかし当の任天堂からファミリーコンピュータが発売され人気を博したことで、わずか2機種で終了した。
マイクロVSシステム
国内最後のゲーム&ウオッチシリーズで、本体に収納できる二つのコントローラーをもつ。対戦プレイを重視した横長画面のゲーム&ウオッチ。
もともとは海外で先行発売され、日本に逆輸入された。
クリスタルスクリーン
海外のみで発売されたゲーム&ウオッチ最後のシリーズ。液晶画面の向こう側がグラスのように透けて見えるお洒落なデザイン。さらに画面はワイドとなったほか、伝統のゲームBが廃止されたモデル。
ちなみに超レアアイテム。
カラースクリーン
スーパーマリオブラザーズ35周年を記念した2020年限定生産モデル。当時の技術で困難だった8bitのファミコン版スーパーマリオブラザーズとフルカラー液晶を実現している。
開発秘話
横井軍平氏が、新幹線の中でサラリーマンが暇潰しに電卓のボタンを押して遊んでいる人を見て、「暇つぶしのできる小さなゲーム機」を構想。当時は電卓の数字をキャラクターに見立ててインベーダーを遊ぶ方法などが流行っていた。
その後、唯一外車を運転できる横井氏が山内溥社長(当時)に、社長車(キャデラック)の代理運転手を頼まれた時、雑談として山内社長に構想を話した。
「小さな電卓のようなゲーム機作ったら面白いとおもうんですけど」
「ふつうオモチャって『大きくして高く売ろう』って発想ですけど、小さくて薄かったら我々のようなサラリーマンでも恥ずかしくないんじゃないですかね」
山内氏はフンフンとさほど気にした様子もなく聞いていたという。
そして会合先の大阪プリンスホテルで、山内氏の隣にシャープの佐伯社長が座り、山内氏が佐伯氏に構想を話したことで本格的に「電卓サイズのゲーム機」計画が始動した。
あるとき突然シャープの重役達が任天堂にやってきて、何かと思ったら山内社長から
「君の言った電卓サイズのゲーム機、シャープさんとはじめるから」
と告げられ、横井氏は仰天したという。
実はこの時期、電卓の需要が頭打ちとなり、液晶の新たな応用先を探していたこともあり、任天堂とシャープ、両社が意気投合したのだった。
当時、液晶はせいぜい電卓に使われる程度で、他の使い道など考えるべくもないものだったが、カシオとシャープが小型電卓を発売し、シェア争いの結果、一家に一つから一人一台というレベルまで電卓が普及した。液晶の需要は限界に達していた。
それゆえゲーム&ウオッチは「渡りに船」どころか救世主であり、今でも「ゲーム&ウオッチがなかったら、シャープの液晶はここまできていなかったろう。縮小するはずだった工場がゲーム&ウオッチでよみがえり、TFT(薄膜トランジスタ)までつながった」と言われるという。
ちなみに客層のターゲットは初期のCMを見る限りでは通勤のサラリーマンあたりを狙っていた様子。
シリーズタイトル一覧
シルバーシリーズ
ゴールドシリーズ
ワイドスクリーン
マルチスクリーン
- オイルパニック
- ドンキーコング
- ミッキー&ドナルド
- グリーンハウス
- ピンボール
- ブラックジャック
- マリオブラザーズ
- ゼルダの伝説
- ドンキーコング2
- スキッシュ
- レインシャワー
- ライフボート
- ボムスイーパー
- セイフバスター
- ゴールドクリフ
テーブルトップ
- マリオズ・セメントファクトリー
- ドンキーコングJR.
- スヌーピー
- ポパイ
パノラマスクリーン
- マリオズ・ボン・アウェイ
- ドンキーコングサーカス
- ドンキーコングJR.
- ミッキーマウス
- ポパイ
- スヌーピー
ニューワイドスクリーン
- バルーンファイト
- スーパーマリオブラザーズ※ゲーム大会用の非売品バージョンも存在する
- ドンキーコングJR.
- マンホール
- マリオズ・セメントファクトリー
- マリオジャグラー
- クライマー
- トロピカルフィッシュ
スーパーカラー
マイクロVSシステム
クリスタルスクリーン
- スーパーマリオブラザーズ
- バルーンファイト
- クライマー
カラースクリーン
- スーパーマリオブラザーズ
- ゼルダの伝説
ゲーム&ウオッチに登場する「黒いキャラクター」について
主に、以下の通りに分類される。
- ゲーム&ウオッチシリーズにおいて
ほとんどのキャラクター達は具体的な名前がつけられておらず、ファンからは主に「ゲムヲ」などの通称で呼ばれていた。
詳細はリンク先の記事を参照。
- 大乱闘スマッシュブラザーズシリーズにおいて
『大乱闘スマッシュブラザーズDX』で黒いキャラクター達をモチーフにしたファイターが「Mr.ゲーム&ウォッチ」の名義で登場した。
詳細はリンク先の記事を参照。
余談
正式名称は「ゲーム&ウオッチ」(オが大文字)であるが、昨今ではウオッチと言う表記をほとんど使わない為か、本タグのように「ゲーム&ウォッチ」と呼ぶ事の方が圧倒的に多い。
大乱闘スマッシュブラザーズシリーズに登場するキャラクターもMr.ゲーム&ウォッチ(こちらは小文字のォが正式名称)である。
ただし、シリーズとしては『ゲーム&ウオッチ』と表記されている(『ゲーム&ウオッチ』シリーズの「Mr.ゲーム&ウォッチ」)。
関連タグ
ニンテンドー3DS:音楽プレーヤーである「ニンテンドー3DSサウンド」にゲーム&ウオッチを意識した表示パターンがあり、しかも「ヘディングゲーム」としても遊べる。画面奥へ移動もあるのだが裸眼立体視でやると本当に奥へ三次元移動している。
ニンテンドースイッチ:おおよそ子孫にあたる。ちなみに対応ソフトで使えるのが「アラーム機能」「テーブルモード用のスタンド」が存在するのでまさに子孫。
表記揺れ
ゲーム&ウオッチ…正式な表記