これは、少女があいされて幸せになるまでの物語。
概要
本作品は『富士見L文庫』(KADOKAWA)から刊行されている顎木あくみによるライト文芸。イラストは月岡月穂が担当している。
『小説家になろう』発の作品だが、作者が運営から強制退会させられたためそれまでの掲載分も削除され、現在オンライン上で閲覧できるのは『カクヨム』に掲載されている番外編のみになっている。
2024年10月1日にはカクヨム内で二次創作が投稿可能な作品に追加された。関連リンクは、こちらから。→二次創作許諾タイトルに「わたしの幸せな結婚」が追加されました(カクヨム公式)
世界観は大正時代の日本をモデルとした和風ローファンタジーで、家族に虐げられてきたヒロインが政略結婚を機に本当の幸せを享受していくシンデレラストーリーとして描かれている。
あらすじ
名家に生まれた美世は、実母が早くに儚くなり、継母と義母妹に虐げられて育った。
嫁入りを命じられたと思えば、相手は冷酷無慈悲と噂の若き軍人、清霞。
大勢の婚約者候補たちが三日と持たずに逃げ出したという悪評の主だった。
斬り捨てられることを覚悟して久堂家の門を叩いた美世の前に現れたのは、色素の薄い美貌の男。
初対面で辛く当たられた美世だけれど、実家に帰ることもできず日々料理を作るうちに、少しずつ清霞と心を通わせていく――。
(公式HPより引用)
登場人物
主要人物
- 斎森美世(さいもり みよ)
CV:上田麗奈(公式PV・朗読劇・アニメ)
実写映画版:今田美桜
主人公にしてヒロイン。19歳。
異能者の家系でありながら見鬼の才を持たず、実母・澄美を亡くしてからは継母・香乃子とその娘・香耶に毎日のように虐げられてきた。そのせいか「自分に価値はない」と思い込んでおり、何事に対しても悲観的で卑屈な考え方をしてしまうことが多い。
嫁いでからは当初こそ清霞に畏怖していたものの、噂とは異なる “彼の優しさ” に触れていくうちに、「清霞に自分は見合わない」と諦めつつも「そばにいたい」と願うようになる。
- 久堂清霞(くどう きよか)
CV:石川界人(公式PV・朗読劇・アニメ)
実写映画版:目黒蓮
舞台:泰江和明
異能者の中でも実力のある久堂家の当主。27歳。
帝国陸軍の対異特務小隊隊長を務める少佐でもあり、異能の実力はまさに折り紙つき。しかも、女性顔負けの美しい髪と、男性とは思えぬほどの美貌の持ち主。
ところが、これまでの縁談はすべて破談続きで、男女問わず態度が素っ気ないことから、いつしか冷酷無慈悲と噂されるように…。
美世に対しては当初こそ疑心から冷たい態度をとるが、すぐに彼女がこれまでの婚約者とは何かが違うと感じ、自身でも「らしくない」と気づきながら次第に彼女に惹かれていく。
- ゆり江(ゆりえ)
実写映画版:山本未來
久堂家の使用人。
物腰が柔らかく温厚な性格で、昔の名残りからか清霞を「坊ちゃん」と呼ぶ。
斎森家
- 斎森真一(さいもり しんいち)
実写映画版:高橋努
斎森家当主、美世と香耶の父。
若い頃に交際していた香乃子と家の決定により別れさせられ、薄刃家から嫁いできた澄美と政略結婚するが、彼女が亡くなった後に香乃子を後妻に迎える。
美世に斎森家の望む才能がないことを知るや彼女をあっさりと見限っており、香乃子と香耶が美世をどれだけ虐めていようと無関心を貫いている。だが清霞からは事情を知られているため彼からは酷く嫌悪されている。
小説版1巻終盤で辰石実の起こした騒動が元で斎森家の屋敷が焼失したことや騒動の責任を取る為、香乃子と共に地方の別邸に移り住む。
- 斎森澄美(さいもり すみ)
CV:日高のり子
実写映画版:土屋太鳳
美世の実母。旧姓は「薄刃」。物語開始時点では既に故人。
困窮する薄刃家から政略結婚という形で嫁いできたが、美世がまだ幼い頃に病で他界している。
死後も美世の夢に時々姿を現す。
- 斎森香乃子(さいもり かのこ)
実写映画版:山口紗弥加
美世の継母、香耶の実母。
家の都合で一度真一と無理やり別れさせられており、彼と結婚した澄美のことを酷く恨んでいる。
斎森家に来てからは澄美の娘である美世を目の仇にしており、『泥棒猫の娘』と評し、自身は被害者であると語り、躊躇なく暴力を振るうことも辞さないほか、香耶に「美世より上でないといけない」と言い聞かせて歪んだ愛情と教育を注いだ。
小説版1巻終盤で辰石実の起こした騒動が元で斎森家の屋敷が焼失したことや騒動の責任を取る為、真一と共に地方の別邸に移り住む。
- 斎森香耶(さいもり かや)
実写映画版:髙石あかり
美世の異母妹、香乃子の娘。
派手な着物を纏い母親譲りの美貌ある容姿を持つ。
美世とは対照的に見鬼の才を持ち、器量も要領も良く、まさに令嬢といった雰囲気。
一方で、母・香乃子の教育もあって「自分は美世より上にいて当然」と思っており、美世を見下した言動が多く、常にプライドが高く高飛車である。だが美世が清霞との婚約で変化が起きたことで激しく嫉妬し清霞を奪おうと画策する。
小説版1巻終盤で辰石実の起こした騒動が元で斎森家の屋敷が焼失した後、両親に付いて行かず、清霞の手配で更正教育の一環として特別厳格と有名な家に女中奉公に出された。
- 花(はな)
実写映画版:小林涼子
過去、斎森家に仕えていた元使用人の女性。アニメ版では「金尾 花」が本名となっている。
使用人の中でも特に美世の味方であり続けたが、美世を蔵に閉じ込めた香乃子に反抗したため彼女の逆鱗に触れ、強引に解雇されてしまった。
その後は消息不明であったが(花本人の話によると、斎森家を解雇された後は実家に戻り、その後斎森家を訪れるも門前払いされたとのこと。美世と再会した時には既婚者で子を持つ母となっていた)清霞の計らいにより美世と無事再会することができた。再会した際も美世のことを案じており、清霞との関係に悩む美世の気持ちを後押しした。
久堂家
異能者を輩出する名門。数多くの手柄を立て、爵位を有し、数々の伝説を残す家柄。地位、名声、財力、どれをとっても他家の追随を許さない名家。本邸には葉月が管理を兼ねて居住している。
清霞と美世が現在住んでいる郊外にある小さな家は、清霞が卒業と同時に私財を投じて自ら建てたもの。(#キャラクター質問大募集 23 より)
- 久堂葉月(くどう はづき)
CV:日笠陽子
清霞の姉。小説版2巻で初登場。
漫画版・アニメ版では洋装が似合うモダンガール。
弟とは違い、とても気さくで明るい性格。
令嬢なだけあって礼儀作法や教養はしっかりとしているものの、少しお喋りなところが玉に瑕。料理が大の苦手で、どんな料理も調理中に悲惨なことになってしまうほど。
清霞の計らいで、美世の令嬢教育の先生としてやってくる。
治癒の異能を持つ。
離婚歴がある。
- 久堂正清(くどう ただきよ)
CV:置鮎龍太郎
先代の久堂家当主。葉月と清霞の父。
小説版1巻で存在の言及はされていたが、小説版3巻が本格的な登場となる。
異能の力はまだまだ現役だが、もともと病弱だったこともあり当主の座を清霞に譲る。
一見穏やかそうに見えるが、言動の端々に冷徹な部分が垣間見える。
- 久堂芙由(くどう ふゆ)
CV:井上喜久子
久堂家の本邸の女主人。葉月と清霞の母。
小説版1巻で存在の言及はされていたが、小説版3巻が本格的な登場となる。
プライドが高く、高圧的な発言が多い。
葉月の治癒の異能は、芙由の実家由来のもの。
- 笹木(ささき)
久堂家に仕える使用人の男性。小説版3巻で初登場。
- ナエ
久堂家に仕える使用人の女性、笹木の妻。小説版3巻で初登場。
辰石家
異能者を輩出する名門。斎森家とは古くから交流があるが、同じように没落の一歩手前の状態になっている。
小説版1巻終盤では、辰石実の愚挙により斎森家が火災に遭い全焼する。斎森家での一連の騒動の責任を取る為に実は強制的に隠居の上、新当主の座を長男の一志に譲ることになった。
- 辰石実(たついし みのる)
実写映画版:平山祐介
辰石家当主で、一志と幸次の父親。斎森家とは旧知の仲。
薄刃家の異能の特殊性に目を付けており、没落寸前の家門再興に利用するため美世を嫁入りさせようとしていたが、求めていたのはあくまで薄刃の血脈で、斎森家に美世の価値を悟らせず手放すよう仕向けるため、蔑ろにされている彼女をあえて助けようとしなかった。
だが斎森家が美世を放逐目的で久堂家に嫁がせたことでその計画が狂い、香耶を利用して軌道修正を目論んだ結果、清霞の怒りを買ってしまい破滅の一途を辿ることとなる。
小説版1巻終盤で斎森家で起こした騒動の責任を取る為に当主の座を長男の一志に譲り、隠居の身となる。
- 辰石幸次(たついし こうじ)
CV:西山宏太朗(朗読劇・アニメ)
実写映画版:小越勇輝
辰石家の次男で、美世と香耶の幼なじみ。
誰にでも優しく、斎森家での美世の扱いにも抗議していたが、家の取り決めに抗えず香耶の婚約者となる。だが内心は美世を守るため父親と香耶の言いなりになっていたが彼らの目論見を知り、美世の窮地を救った。
- 辰石一志(たついし かずし)
CV:深町寿成
舞台:佐藤永典
辰石家の長男。辰石家の次期当主。
生真面目な幸次とは違い、女物の着物を身に着けるなど派手な身なりの軽薄な雰囲気の青年。
身内にさえ本心を悟らせることの無い、飄々とした一面もある。
父・実の起こした騒動が元で新当主になり、清霞達と関わることになる。
薄刃家関係者
- 鶴木新(つるき あらた)
実写映画版:渡邊圭祐
舞台:菊池修司
貿易会社『鶴木貿易』を経営する鶴木家の息子。24歳。
実家の貿易会社での交渉に携わっており、知り合いを通して「交渉人」として清霞の元へ派遣されてくる。
- 鶴木義浪(つるき よしろう)
CV:廣田行生
実写映画版:火野正平
新の祖父。
鶴木家の本邸に暮らしている。
- 甘水直(うすい なおし)
CV:内田夕夜
異能心教の祖師と崇められる男性。
軍関係者
- 五道佳斗(ごどう よしと)
実写映画版:前田旺志郎
舞台:森田桐矢
清霞の部下。小説版1巻にて登場。清霞とは古くから付き合いがある。
少しお調子者なところがあり、斬られそうになると知りながら上司である清霞をからかうこともしばしば。一方、彼の女性関係を心配しており、清霞の家へ招かれた際には、美世の本心を密かに探ろうとしたことも。
異能者としての実力は清霞からのお墨付きで、清霞が出張などで屯所を後にしているときは彼の代わりに指揮をとったりしている。
辰石一志とは仲が悪く、五道から見た一志は「あいつ、人を苛つかせる天才なんですよ」と同族嫌悪に近い感情がある様子。
- 大海渡征(おおかいと まさし)
CV:三宅健太
舞台:佐々木崇
帝国陸軍参謀本部に務める軍人、階級は少将。40歳。小説版1巻にて登場。
軍人を輩出する名家・大海渡家の出身。異能は持たないが、清霞の事実上の上司。清霞曰く「対異特務小隊のお目付役のようなことをしている人」。
とにかく背が高く、肩幅も広くてがっしりとした体格でかなり目立つが、顔立ちは精悍で男らしい。
久堂葉月の元夫で旭の父でもあるため、清霞とは公私共に関わりがある。
葉月とは旭の父母として時折交流がある様子。
- 陣之内薫子(じんのうち かおるこ)
対異特務第二小隊に務める女性。20歳。
軍にしてはかなり珍しい女性だが、その実力は他の隊員に引けを取らない。
過去には清霞の元で任に就いていたこともある。
- 百足山(むかでやま)
対異特務小隊の班長の一人。
- 光明院善(こうみょういん ぜん)
対異特務第二小隊の隊長を努める軍人。既婚。小説版7巻にて登場。
背が高く野性味のある精悍な顔つきで、鋭い目元に切り傷の痕がある。過去に起きた事件が元で左足を負傷している。豪快かつ若干粗野なところのある人柄だが、嫌味な感じは全く無く、裏表の無い人物。
五道の父親が隊長を務めていた頃に副官をしていた過去がある。その縁で、清霞と美世の婚礼の媒酌人を妻の節(せつ)と引き受けた。
- 五道壱斗(ごどう いつと)
五道佳斗の父。過去の対異特務小隊隊長だった人物。物語開始時点では既に故人。
清霞が軍人になる切っ掛けになった。
宮城の人々
- 帝(みかど)※実写映画版では「てい」と呼称。
CV:菅生隆之
実写映画版:石橋蓮司
帝都を治める最高権力者。
未来を予知できる「天啓」の異能を持つ。
重い病を患っている。
- 堯人(たかいひと)
CV:石田彰
実写映画版:大西流星
舞台:中山咲月
最も貴き一族の帝の子の一人。清霞とはほぼ同い年で、幼い頃から交流を持っている。
中性的な顔立ちであり、清霞よりも若く見えたりとミステリアスな風貌を持つ。
- 鷹倉(たかくら)
堯人の側近。
内大臣で堯人に厚い信頼を寄せられている。
その他
- 桂子(けいこ)
実写映画版:珠城りょう
呉服屋『すずしま屋』の女主人。小説版1巻にて初登場。
美しい女性を着飾ることが好きらしい。
清霞と一緒に店を訪れた美世を見て、彼女の美しさを絶賛した。
- 大海渡旭(おおかいと あさひ)
CV:田村睦心
大海渡征と久堂葉月の息子。小説版2巻にて初登場。
年齢は10歳くらい。叔父の清霞のことを「清霞おじさん」と呼ぶ。
清霞曰く「旭がやんちゃなのも、間違いなく姉さんに似たからだな」と旭は母親似と評し、美世も同様の感想を抱いている。
両親が離婚で別居しているため大海渡家で育てられており、母の葉月とは定期的に面会している。
- 長場君緒(ながば きみお)
美世の尋常小学校時代の元同級生の女性。小説版7巻にて初登場。
登場時点では既に長場家に嫁いでいる。旧姓は「本江」(ほんごう)。
美世と葉月が参加した塩瀬家で行われた料理教室に君緒も参加しており、彼女が美世に気付いて声をかけてきた。美世から見た小学校時代の君緒の印象は「大人しい性格で、振る舞いも他の子どもたちより若干、大人びたところがあり、たくさんの友人を作るほうではなかった」とあり、教室で孤独に過ごしていた美世と似たタイプなせいかお互いにあまり接点がなかった様子。
実写映画版での登場人物
帝室関係者
- 枢木忠則(くるるき ただのり)
実写映画版:尾上右近
ミステリアスな雰囲気を漂わせる帝の専属医師。
宮内省関係者
- 賀茂村紀夫(かもむら のりお)
実写映画版:津田健次郎
宮内省長官。帝室と陸軍の仲介役。街の平和維持に努める存在。
陸軍対異特殊部隊
- 望月東弥(もちづき とうや)
実写映画版:佐藤新
清霞が率いる陸軍部隊の一員。
困っている人に手を差し伸べる、正義感の持ち主。
甘味やお酒が好き。
- 岡部秀太(おかべ しゅうた)
実写映画版:西垣匠
清霞が率いる陸軍部隊の一員。
生まれたばかりの我が子が一番の自慢。
部隊の中でも剣の扱いに優れているが清霞との一対一の訓練では一度も勝ててはおらず
いつか清霞に土をつけることが今の目標。
- 宮田建祐(みやた けんすけ)
実写映画版:松島床汰
清霞が率いる陸軍部隊の一員。
口達者で、隊員の中でもお調子者のムードメーカー。
- 澤村晋平(さわむら しんぺい)
実写映画版:髙橋大翔
清霞が率いる陸軍部隊の一員。
入隊時に清霞に熱心に指導してもらって以来、清霞に対して、憧れと忠誠心が人一倍強い。
- 須藤嗣治(すどう つぐはる)
実写映画版:浜田学
陸軍部隊の本部長。陸軍の軍令を指揮する司令塔。
頭脳明晰で⼈望も厚い。
舞台での登場人物
陸軍対異特殊部隊
- 松平士道(まつだいら しどう)
舞台:井澤巧麻
清霞や五道にとっては頼れる部下。いつも落ち着いて皆を見守る。誰とも仲が良く、部隊内での揉め事を嫌う温厚な性格。
1年前に結婚し、近々子供が産まれる予定。
重力を操る異能を持つ。
- 嶺勘太(みね かんた)
舞台:久保侑大
破天荒でやんちゃな青年。村雨とは幼馴染で、異能のせいで虐められた村雨を昔から助けていた。
思ったことをすぐ口にする性格で、周りにいつも叱られているが、ふとした言葉で皆を明るくすることも。
- 村雨義也(むらさめ よしや)
舞台:紘太郎
子供のころは異能を持つせいで周囲の嫉妬からいじめに遭っていた。
幼馴染の嶺とは深い絆があり、自他ともに認める相棒的存在。
嶺より堅物で恋愛には奥手、しかし一目惚れ体質でもある。
火を操る異能を持つ。
- 明原壮平(めいはら そうへい)
舞台:木村聖哉
対異特殊部隊に入ること自体が嫌で異能を捨てたい若者。
自信がなく足手まといと想っている。
異能の力を隠し、一般業務を望んでいたが、清霞らに見抜かれ対異特殊部隊所属に。
- 最上勇(もがみ ゆう)
舞台:辻凌志朗
五道と同期で理知的なタイプ。
女性から好意を寄せられることに抵抗がなく、女性を苦手とする清霞のことが理解できない。
自己愛が強いが、仲間想いの面もあり、明原のことを気にかけている。
闇を操る異能を持つ。
御霊月魄(みたまげっぱく)部隊
- 孤月(こげつ)
舞台:岡本悠紀
御霊月魄部隊の隊長。
変化の術を使う。
- 氷輪(ひょうりん)
舞台:松原凜
御霊月魄部隊の隊員で孤月の部下。
氷の異能、周りのものを凍らせる能力を持つ。
- 玉兎(ぎょくと)
舞台:佐藤祐吾
御霊月魄部隊の隊員で孤月の部下。
炎を操る異能を持つ。
用語
- 帝国
物語の舞台である国家。明治・大正期の大日本帝国をモチーフとしている。
帝を頂点とする古代から続く君主制国家で、帝を始めとする異能力者の家々の支え合いで成り立ってきた。本編より数十年前に起こった「維新」により国の中心が現在の帝都に定められ、西洋文明から導入された様々な文物や技術、考え方で帝国の科学技術は急速に発展し、人々の生活様式も大きく変貌している。
その一方でこれまで恐れられてきた異形は減少し、異能の質が低下傾向にある。
- 帝都
維新により「旧都」(京都がモチーフ)から遷都され、古来からの建物だけでなく、西洋の近代的な建物も増え、蒸気機関車や路面電車、自動車も走っている。
- 旧都
作中で起こった維新前にかつて帝が住まう都だった土地。モチーフは京都。
多くの異形が跋扈する場所であった。そのため、未だに実力ある異能者たちが住まう、異能者にとっての聖地とも言える。
維新の際に一部の異能者の家(斎森家、久堂家、辰石家など)は旧都から帝都へ拠点を移したが、そのまま旧都に残った家もある。
- オクツキ
宮内庁管轄の禁域内にある異能者たちの墓所。モチーフは奥津城。
異能者は総じて霊力が高いため、死してなお普通の霊魂よりも強い力を持ち、一般的な供養では成仏出来ないことがしばしばある。憎しみや苦しみを抱きながら戦いの中で無念の内に死んでいく異能者は多く、また霊魂に理性は無いため万が一禁域の外に出られたら一般人に危害が及ぶ可能性もある。そのため、一般人とは別に異能者のための墓所が整備されている。
見た目は一般的な霊園と大した違いは無く、森の木々が途切れた、開けた広い土地に墓石が整然と並んでいる。墓石を見渡すように古い木造の社が建っている。
異能の家に生まれても、当人が力を持たなければオクツキに葬られることはない。
(美世は斎森家を出るまでオクツキへ行った事は無かったとのこと。異能を持たない人間は、原則オクツキに立ち入ることは禁止されているため)
小説版2巻で何者かによってオクツキの封印が解かれ、外に出てしまった霊の回収に清霞達対異特務小隊が当たることになった。
- 帝
帝国の国家元首。モチーフは天皇。実写映画版では「てい」と呼称。
古来より異能のひとつ「天啓」を有し、代々直系の子孫が受け継ぎ、様々な災いを天のお告げとして予知してきた。予知した災いをあらかじめ回避する、もしくは最小限に留めるように対処し、臣下や名家との支え合いで国を成り立たせてきた。この天啓の有無が皇位継承者の選定を左右する。
- 異能心教
甘水直が教祖となっている新興宗教団体。
異能について
異形と見鬼の才(いぎょう と けんきのさい)
正体不明の怪奇現象を人々が恐怖し、その恐怖が形を有することで異形が生まれる。人や動物に似た姿をしていたり、不定形であったりと異形の外見は様々で、鬼や妖とも呼ばれる。そして、これら異形を認識する力を見鬼の才という。
異能とその家系
異形を討伐するために必要不可欠な力で、異能を受け継ぐ家は昔から帝に仕えている。その能力は念力や瞬間移動、透視など様々である。また、異能者は基本的に身体能力が高いとされる。
一般に、異能者ならば幼少期に見鬼の才に目覚めるため、見鬼の才を持たないことは異能を持たないことに等しく、異能を重視する家(斎森家など)では見鬼の才や異能の有無で扱いが大きく異なることもある(それでも美世の場合は度が過ぎているとのこと)
女性の場合は次代に異能の力を繋ぐことが重要視されるため、見鬼の才か異能の力さえあればよく、本人が術を使えることまではさほど求められないという風潮がある(小説版7巻より)
(但し、久堂葉月は治癒の異能を使用する描写があったり(小説版2巻より)、陣之内薫子は女性の身で軍に所属する程の実力を持つ等、家の方針や個人差がある様子)
異能と術の違いについて
- 異能→本人の生まれつきの素質に左右される特殊な能力。念力や瞬間移動、透視など様々な種類がある。家系によって発言する異能には系統がある
- 久堂芙由の実家は治癒の異能者が多い(小説版2巻にて言及)
- 術やそれに類するもの→本人がその技術の仕組みを学び、練習して使えるようになる
対異特務小隊
帝国陸軍のうち、帝国内で発生する怪異に関する様々な案件に対処するための部署。異形を相手にすることが多いため、隊員のほぼ全員が見鬼の才や異能を持つ。もともとそれらの能力を持つ者自体が少数であるため、一般にはあまり知られていない。
対異特務第二小隊
旧都を拠点とし、対異特務小隊と職務内容や規模を同じくする、もう一つの部隊。
光明院善が隊長を務める。陣之内薫子の本来の所属先でもある。
小説版7巻にて辰石幸次も所属していることが判明した。
薄刃家(うすばけ)
「人心に干渉する力」を受け継ぐ家系。美世の実母・澄美の実家。
過去に輩出した能力者には、相手の思考を読む、記憶操作といった類だけでなく、相手の自我を消す、幻覚を見せて錯乱させるなど、使い方によっては国をも滅ぼしかねない危険な能力を持つ者もいた。
薄刃家の人々自身、それを理解していたため、能力を悪用する者が現れないよう「薄刃」の姓を隠し、他家にその血が広まらないよう制限を設けていた。
異能者の間でも存在は知られているが、一族で徹底してきた秘密主義もあって半ば架空の存在となっている様子。
メディアミックス
漫画版
『ガンガンONLINE』(スクウェア・エニックス)にて連載。作画は高坂りと。
朗読劇
2021年7月に上演。
テレビアニメ
2023年夏アニメとしてTOKYOMXほかで放送・配信された。制作会社はキネマシトラス。
担当声優は朗読劇から一部のみ引き継いでいる。
放送終了後に第二期制作決定が発表された。
第二期は2025年1月放送開始となることが発表され、ティザーPVも同時に公開された。
実写映画
2023年3月17日公開。目黒蓮(SnowMan)と今田美桜がW主演を務める。
製作会社はTBSテレビの映像製作部門であるTBSスパークル。監督は、ドラマ『MIU404』、『着飾る恋には理由があって』、『最愛』の演出を担当した塚原あゆ子。主題歌はSnowManの「タペストリー」。
原作第1巻をベースに、第2巻以降の展開に独自要素を組み込んだ構成となっている。
舞台
『わたしの幸せな結婚-帝都オクツキ奇譚-』として2023年8月に上演。
清霞ら対異特務小隊の活躍を描くオリジナルストーリーとなる。
関連動画
小説・漫画PV
テレビアニメPV
実写映画PV
テレビアニメ第2期ティザーPV
関連タグ
ファンタジー/和風ファンタジー 異能バトル 大正浪漫 シンデレラストーリー
トリリオンゲーム:実写映画公開年の2023年夏ドラマ。主演・ヒロイン・製作会社が共通している。
落窪物語:日本版シンデレラストーリーとも言える古典文学。主人公である落窪の君の実父の無関心、継母から大量の仕事(縫い物)を言いつけられる、ヒーローである貴公子に見初められて救われる等、本作と似通ったところも多い。