生きた化石
いきたかせき
「生きている化石」とも。英語ではリヴィング・フォシル(living fossil、学術的には「遺存種」(いぞんしゅ、「レリック」とも)と呼ぶ。地層の中から産出する化石とほぼ同じ姿で現代に棲息している事から、このような呼び名が付いた。
チャールズ・ダーウィンがカモノハシや肺魚を指して言ったのが最初の用例である。シーラカンスやメタセコイアなど、化石として先に見つかり、後から現生が確認された分類群もいくつかある。
数少ない種が祖先的な形態を残したまま狭い範囲(特定海域、特定河川等)で細々と生息している「分類的遺存種」(狭義の生きた化石)、今も数多くの種や個体が祖先とあまり変わらない姿で広範囲に繁栄している「形態的遺存種」、かつては広い範囲に分布していたが今では狭い地域に生き残っている「地理的遺存種」(生きた化石に含まないこともある)などに分類される。
しかし、見た目は祖先種そっくりな分類的遺存種や形態的遺存種であっても、遺伝子的には過去に生きた生物そのままではない。サメのように外見は古生代からほとんど変わらなくとも体の内部構造は大きく変化しているものもいる。かつて「現代に生きる始祖鳥」と言われたツメバケイに至ってはただの収斂進化であり、現在は生きた化石として扱われることはほとんどない。
また、太古の昔から姿形が変わっていないと言われる種でも、実際のところ本当に変化がないのか必ずしも定かではない。化石には臓器や皮膚などは残りづらいため、このような部分が古代から大きな変化を遂げていたとしても、現代の我々が知ることは難しいからである。
以下のリストは一部であり、外部リンクにも全て掲載されているわけでもない。
※50音順、必要に応じ追加をお願いします。
分類的遺存種
アロワナ(1科5属8種。ピラルクやバタフライフィッシュを含む)
イチョウ(1科1属1種)
ウミユリ(3目12科27属100種、ほとんどの種の分布域が狭く、またその海域が水深数千メートルの深海底のためあまり調査が進んでいない。例外的に分布が広く数も多いトリノアシのおかげで研究が進んでいる)
オオサンショウウオ(1科2属3種)
オウムガイ(1科1属5種)
オカピ(1科1属1種)
カグラザメ(1科3属5種)
カブトガニ(1科3属4種)
カモノハシ(動物の方。1科1属1種。イネ科の植物の方は生きた化石ではない)
キムラグモ(1科6属79種、全てアジア産でその多くは分布が狭く絶滅の恐れがある。台湾では発見されておらず、有史以前に絶滅した可能性が高い)
コセミクジラ(1科1属1種。以前は独自のコセミクジラ科に分類されていたが、調査の結果ケトテリウム科になった)
シーラカンス(1科1属2種)
ジュラシックツリー(1属1種)
セコイア(1属1種)
チョウザメ(2科6属27種、うちハシナガチョウザメは絶滅した可能性が高い)
トガマムシ(4属14種、カマキリモドキの近縁でアフリカ南部にのみ分布している。かつては世界中に分布し、日本からもクジコハクトガマムシが発見されている)
ナギナタナマズ(1科4属8種)
ナンヨウスギ(1属15種)
ニシアフリカコビトワニ(1属1種)
ヌマスギ(1属3種)
ネオトリゴニア(1科1属8種)
ムカシカイマン(1属2種)
ムカシトカゲ(1科1属2種)
メタセコイア(1属1種)
ヤツメウナギ(3科10属38種)
ラブカ(1科1属2種)
形態的遺存種
ウミシダ(ウミユリの近縁だが、派生型の上に14科550種もいるため分類的遺存種に入れられない事が多い)
ヌタウナギ(ヤツメウナギの近縁だが、派生型の上に1科7属70種もおり、さらに世界的に分布するため分類的遺存種に入れられない事が多い)
ヒカゲノカズラ(イワヒバとミズニラを含む。石炭紀から同科同属が続く系統だが現在も数多くの種が世界的に分布するため分類的遺存種に入れられない事が多い)
マキ(ペルム紀から続く系統だが19属156種もいるため分類的遺存種に入れられない事が多い)
ムカシゴキブリ(天然記念物に指定されたウスオビルリゴキブリ、ベニエリルリゴキブリなどルリゴキブリ属はこの仲間)
ムカシトンボ(1科1属3種。最終氷期に分布が固定された地理的遺存種でもある)