🦂概要
鋏角亜門クモガタ綱のうちサソリ目に属する節足動物のこと。クモガタ類の中では、クモと双璧をなすほど有名なグループである。
世界中から1,700種以上が知られ、日本には八重山・宮古・小笠原諸島に2種が分布している。
進化史は長く、知られる中で最古の化石種ドリコフォヌスは約4億3,000万年前の古生代シルル紀まで遡る。それでも大まかな形が昔今を通じて大して変わらないという生きた化石っぶりを見せる。
ウミサソリやサソリモドキという、名前に「サソリ」が付いて、サソリと同じ鋏角類の節足動物もいるが、いずれもサソリではなく、鋏角類の中でも特に近縁ではない。
形態
体は寸胴で、短い前体と12の節に分かれた後体からなる(それぞれ「頭胸部」と「腹部」とも言うが、正確には「頭部」と「胴部」である)。
1対の特徴的なハサミは発達した触肢で(甲殻類のそれとは別物)、先頭の腹面から左右に広がり、先端のハサミ部分は下の指が可動する。
触肢の真上の口元には1対の小さな鋏角があり、これもよく見るとハサミ状になっている。
前体の両筋には4対8本の脚が並んでおり、後ろの脚ほど長く伸びる。
前体背面の甲羅には目があり、1対を中央に、3対ほどを左右に並ぶ。現生種は全て単眼で視力も良くなく、代わりに体の感覚毛で周りを感知する。しかし原始的な化石種は視力がよかったらしく、左右の目が1対の複眼である。
クモと同様、フィクションや創作では鋏角の部分が頭部になったり、脚が後体から生えるように描かれることが多いが、実際は他の鋏角類と同様前体そのものが脚を持つ頭部で「頭で歩く」体制をしている。ただ、サソリの脚は後ろに畳みがちで、後ろ脚に至っては付け根が後体まで延長したため後体に生えるように見えやすく、また前脚は小さく触肢に隠れがちのため脚6本にも誤解されやすい。
後体の前半7節(中体)は肥大で多くの臓器を格納し、腹面は順に生殖孔、1対の櫛状の感覚器官(櫛状器)と4対の呼吸器(書肺)が並ぶ。一部の化石種は書肺の代わりに鰓がある。
一般に「尾」と紹介される最終の5節は実際には「終体」という後体(胴部)の後半部であり、本当の「尾」はその先にある丸い毒腺部とフック状の毒針のみである。そのため、終体の5節には消化管が続いており、肛門は毒腺の付け根に開く。
体長は数cm以下から20cm以上まで種類により異なる。現生の大型種として有名なのは、アフリカに棲息するダイオウサソリで、稀に体長20cmに達する。最大種とされているのは23cmに達し、インドに生息するインディアンジャイアントフォレストスコーピオン。化石種まで範囲を広げると、プルモノスコルピウスなど50cmを超える巨大種も知られている。
なお、サソリの体長は終体を伸ばして口元から肛門まで測るものであり、その終体は普段では背中を覆うように反り上げるため、見た目が数字より小さく見える場合が多い。
全身の外骨格が紫外線で蛍光している(暗闇でブラックライトを当てると青く光る)が、これが生態上どんな役割を持つのが未だに不明確である。
生態
熱帯・亜熱帯に多く生息する。砂漠の生き物というイメージが強いが、森林に棲息する種類も多い。現生種は全て陸生で、書肺で空気呼吸をするが、化石種には陸から水中に進出し、書肺から変化したと鰓で水中呼吸をしたと思われる種類もいる。
昆虫などの小動物を主食とするが、それほど大食ではなく、数ヶ月ほど長時期の絶食に耐える種が多い。
多くは前後2種類の武器を駆使して、獲物をハサミで確保しては毒針で中毒させて動きを封じる。その後は口元の鋏角で獲物を嚙み砕いて体液をすする。
なお、強大なハサミに対して終体が獲物に届かないほど短いのものや、華奢なハサミに対して終体がムキムキなものという、ハサミと毒針のどちらかを主武器にしたような種類もいる(そのため「ハサミの大きいサソリは毒が弱い、尾の大きいサソリは毒が強い」という説が流布しているが、当てはまらない例が結構いるため危険な誤認識である)。
天敵が多く物陰に隠れる臆病な性質を持ち、ハサミと毒針で威嚇して身を守る。ごく少数だが毒液を噴射する・終体を自切する種類もいる(後者はトカゲなどの尻尾切りに見えるが、終体は胴の一部であるため実際は文字通りの切腹というえげつない自切)。
しばしば「毒針で自分を突き刺して自殺する」と言われるが、誤解である(終体を反り上げて動く様子が、自分の背中を突き刺しているように見えるだけ)。
繁殖
繁殖は独特な婚姻ダンスを行い、オスがメスのハサミを掴んでは度々口元や尾をぶつかり合う。配偶子のやり取りはオスの精包をメスが取り込む交接で、交尾には至らない。
卵生ではなく、メスが卵を体内に孵化されてから出産する(卵胎生)。種類や個体によってはメスのみでの単為生殖も可能である。妊娠期間は2ヶ月~22ヶ月。10ヶ月程度の人間の妊娠期間を超える個体も存在する。
出産バスケットという、子に抱きついて落ちないようにする姿勢で出産する。生まれたての子供は透き通った白い幼体で、成体とは異なり蛍光しない。これらの子供をある程度の期間背中に乗せ育児を行う。
分類
昆虫等と並んで虫と呼ばれる節足動物で、ハサミと細長い体型からザリガニやロブスター等の甲殻類をも彷彿とさせるが、昆虫でも甲殻類でもなく、クモ等と同様鋏角類のクモガタ類に属する。
かつては最も原始的なクモガタ類・ザトウムシに近い・ウミサソリに近いなどと考えられた。遺伝子解析により、意外にもクモ・ウデムシ・サソリモドキ等を含んだ系統の起源に近いと判明。
カニムシは尾のないサソリみたいな姿で、一般にサソリとは他人の空似とされているが、近年では実は近縁である可能性が浮上する。
┗┳━ウミグモ
┗┳━カブトガニ
┣━ウミサソリ
┗┳┳━サソリ
┃┗?━カニムシ
文化的側面
ハサミと毒針を持つ事で恐れられているが、人間に命に関わるような猛毒を持つ種類はごく一部に過ぎない。
また、サソリの毒には抗菌性ペプチドを保有している事が明らかになっており、抗菌薬や脳腫瘍の治療に役立てる可能性を秘めている。
独特な姿形から、様々な伝統や神話、創作で幅広くモチーフとされる。
また、蠍座にはフェニックス(不死鳥)の起源もあるとされている。
ファーブル昆虫記にて「サソリは火を見ると自殺をする」という伝承を研究されたこともあった。
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』にて、「蠍火」として自己犠牲を象徴する役目のモチーフともされた。
蛇と合わせて嫌われる者という意味で「蛇蝎のごとく」という言葉がある。
ペットとして
近年はその男心くすぐる見た目から、ペットとして飼育されることも増えている。日本でよく飼われているのはダイオウサソリやアジアンフォレストスコーピオン、デザートへアリースコーピオンなど。タランチュラと共に奇虫として人気が高い。
過去には世界一の毒を持つイエローファットテールスコーピオンも飼育されていたが、2003年に一般飼育での脱走事件が発生した結果、属するウシコロシサソリ科が丸ごと特定外来生物に指定されることとなり、現在は飼育出来ない状態となっている。
マダラサソリ
日本に生息する、最大5cm程度で毒も弱い非常に安全なサソリ。概要で触れた日本に生息する2種のうち片方がこのマダラサソリである。
そんなマダラサソリの分類はサソリ目ウシコロシサソリ科。前述の経緯で特定外来生物に指定された科に属している。日本原産にもかかわらず特定外来生物扱いで飼育できないという歪な状況の改善を望む声もあるものの、現状進展は見られない。
各言語での呼び名
言語 | カナ表記 | 綴り |
---|---|---|
英語 | スコーピオン | Scorpion |
ドイツ語 | スコルピオーン | Skorpion |
フランス語 | スコルピョン / スコフピョン | Scorpion |
スペイン語 | エスコルピオン / アラクラン | Escorpion, Alacran |
イタリア語 | スコルピョーネ / スコルピオーネ | Scorpione |
ラテン語 | スコルピオ | Scorpio |
ロシア語 | スカルピオーン | Skorpion |
アラビア語 | アクラブ | Aqrab |
ゾンカ語 | ディークパラツァ | Dikparatsa |
タイ語 | メーンポン | Maeng Pong |
ラーオ語 | メーンゴート | Maeng Ngot |
ミャンマー語(ビルマ語) | キンミガウ | Kinmyigauk |
タガログ語 | アラクダン | Alakdan |
インドネシア語 | カラジュンキン | Kalajengking |
ケチュア語 | シラ・シラ | Sira-Sira |
スワヒリ語 | ンゲ | Nge |
ハウサ語 | クナマ | Kunama |
マー語(マサイ語) | エンクルパ | Enkulupa, En-kulupa |
韓国語 | チョンガル | Jeongal |
中国語 | 蠍子(シエツー) | Xiezi |
台湾語 | 蠍仔(ギアッアー) | Giat-a |
サアロア語 | タプアチャラカイ | Tapuacarakai |
ウチナーグチ | ヤマンカジ | Jamankazi |
蠍をモチーフとしたキャラクター
神話
スーパー戦隊シリーズ
昭和戦隊
20世紀平成戦隊
- モードクボーマ(高速戦隊ターボレンジャー)
- サソリナマズギン(地球戦隊ファイブマン)
- ラミイ/ラミイスコーピオン(恐竜戦隊ジュウレンジャー)
- バラダーツ(超力戦隊オーレンジャー)
- サソリネジレ(電磁戦隊メガレンジャー)
- コルシザー(星獣戦隊ギンガマン)
21世紀平成戦隊
- 三の槍マンマルバ(忍風戦隊ハリケンジャー)
- 臨獣スコーピオン拳ソリサ(獣拳戦隊ゲキレンジャー)
- 天狗のヒッ斗(天装戦隊ゴセイジャー)
- サソリオレンジ/スコルピオ(キュウレンジャー)/サソリボイジャー(宇宙戦隊キュウレンジャー)
- 正確には蠍座
令和戦隊
仮面ライダーシリーズ
昭和ライダー
- さそり男・サソリトカゲス(仮面ライダー)
- ドクトルG(仮面ライダーV3)
- というよりデストロンのマークがサソリモチーフ
- サソリジェロニモ・サソリジェロニモJr.(仮面ライダーX)
- サソリ奇械人(仮面ライダーストロンガー)
- サソランジン(仮面ライダー)
- 毒サソリ男/サソリガドラス(ウルトラマンVS仮面ライダー)
平成一期
- ゴ・ザザル・バ(仮面ライダークウガ)
- スコーピオンロード(仮面ライダーアギト)
- スコーピオンオルフェノク(仮面ライダー555)
- ティターン/スコーピオンアンデッド(仮面ライダー剣)
- ノツゴ(仮面ライダー響鬼)
- 仮面ライダーサソード/サソードゼクター/スコルピオワーム(仮面ライダーカブト)
- スコーピオンイマジン(仮面ライダー電王)
平成二期
- ビカソコンボ/仮面ライダーバース・仮面ライダーバースX/仮面ライダーバース・プロトタイプ/CLAWs・サソリ/ショッカーオーズ(仮面ライダーOOO)
- 鎧武者怪人(MOVIE大戦CORE)
- スコーピオン・ゾディアーツ(仮面ライダーフォーゼ)
- 正確には蠍座
- マンティコア(仮面ライダーウィザード)
- 正確にはマンティコア
- ゴールドスコーピオンフォーム(仮面ライダービルド)
令和ライダー
- 仮面ライダー滅・スティングスコーピオン/アークスコーピオン、ランペイジバルカン(仮面ライダーゼロワン)
- スコーピオンゲノム※/スコーピオンゲノミクス/クワッドゲノミクス/フルゲノミクス(仮面ライダーリバイス)
- ※未登場
- ブッサソーリー/グレイトサソーリー(仮面ライダーガッチャード)
令和の昭和ライダー
メタルヒーローシリーズ
その他特撮
- サドラ(帰ってきたウルトラマン)
- サソリルゲ(超人バロム・1)
- サソリ軍団(魔人ハンターミツルギ)
- さそり怪獣アンタレス(ウルトラマンレオ)
- アンタレス(七星闘神ガイファード)
- サソリンガ(シルバー仮面ジャイアント)
- サソリブラウン(人造人間キカイダー)
- サソリストロング(キカイダー01)
- 甲賀かげさそり(忍者キャプター)
- サソラー(東映版スパイダーマン)
- ザソリ(風雲ライオン丸)
- 宇宙蠍キングジンジャー(ジャンボーグA)
- 蠍魔人サンダレス(仮面天使ロゼッタ)
ゲーム
- グライガー・グライオン・スコルピ・ドラピオン(ポケットモンスター)
- おおさそり・さそりばち・さそりアーマー・デスコピオン・紅殻魔スコルパイド等(ドラゴンクエスト)
- 毒サソリ(風来のシレン)
- さそりまん(魔導物語/ぷよぷよ)
- モルドガット(ゼルダの伝説 スカイウォードソード)
- サソーピ・サソーピオン(オレカバトル)
- セルケト級ヴァイス(アリス・ギア・アイギス)
- モギリのドッペル(マギアレコード)
その他
- スコーピオン・キング(ハムナプトラ)
- スコルポノック/恐怖大帝メガザラック/暗黒大帝ブラックザラック、砂漠戦指揮官スコルポスその他(トランスフォーマーシリーズ)
- 賈詡アシュタロン(三国伝)
- シャイニングスコーピオン(爆走兄弟レッツ&ゴー!!)
- スコルプ、サソリーナ、ビョーゲンズ(プリキュアシリーズ)
- グラフィオス(武装神姫)
- ソフィエラ(アルカナディア)
- 悪魔との複合モチーフ
- ガイサック、スコーピア、デスピオン、デススティンガー※(ゾイド)
- ※ダイオウウミサソリとの複合モチーフ。原案はウミサソリ寄りだった。
- サソリ(NARUTO)
- アクラ・ヴァシム、アクラ・ジェビア(モンスターハンターシリーズ)
- ビアンキ (家庭教師ヒットマンREBORN!)
- ザザン(HUNTER×HUNTER)
- 蠍田幸子(灼熱の卓球娘)
- サソリ番長(金剛番長)
- 毒島サソリ(デュエルマスターズ)
- ツンドラの大蠍他(遊戯王OCG)
- サソリメカ(タイムパトロール隊オタスケマン)
- サソリンガー(超特急ヒカリアン)
- ヘルピオン(小さな巨人ミクロマン)
- ザゾリガン(黄金勇者ゴルドラン)
- メガザラックのデザイン流用。玩具は未発売。
- 埼玉紅さそり隊(クレヨンしんちゃん)
- サゾリオン帝国(超魔術合体ロボギンガイザー)
- バタララン・ドゥ(コードギアス)
- 蠍魔牛(トリコ)
- シャウラ(Re:ゼロから始める異世界生活)
- スコーピオン、スコルピオ、Fire Scorpion、フェンサー、メタルフェンサー、フェンサー3、Lumitroid、クローザウラス、Impalaton、ガリアブル、ロックスター、Demolotoid、兜マヒサス、スコルプラス、ピンチタウラー※(爆丸シリーズ)
- ※見た目に反しサンドクラブ型とされる。
- 水晶群蠍、金晶独蠍、帝晶双蠍(シャングリラ・フロンティア)
関連タグ
蜂、蟻:体の末端に毒針を持つ節足動物繋がり。なおこちらは尻尾ではなく生殖器。
エイ:尻尾に毒針を持つ動物繋がり。