概要
鋏角亜門クモガタ綱のうちカニムシ目に分類される節足動物のこと。
世界中に広く分布し、3,300種ほど知られている。
危険や障害物を察知するとすぐ後退し、その臆病な仕草から「アトビサリ」とも呼ばれている。
学名や英語、中国語では後述のサソリっぽさからそれぞれ「Pseudoscorpiones」「pseudoscorpion」「擬蠍」と呼ばれるが、どれも直訳すると「偽サソリ」であり、サソリモドキという全く別のクモガタ類の和名と同じ意味になっている。
鋏角類での類縁関係は不明確。古くはヒヨケムシに近縁と考えられたが、遺伝子解析に否定され、逆に今まで他人の空似と考えられたサソリに近い可能性が浮上する。
形態
ほとんどが体長5mm以下ほど小さく、目立たない存在である。
名前は「蟹虫」だが、どちらかというと尻尾のないサソリのような姿。
1対の大きなハサミ(触肢)と8本の脚を前に持つが、体のそれ以降は10節ほどの体節に分かれ、丸みを帯びて没個性的。
口元(鋏角)はヒヨケムシと似た1対のハサミであるが、通常は小さく目立たない。
2対の単眼を頭の左右に持つが、視力が悪く、触肢先端の感覚毛で周りを察知する。
生態
陸生で腹面の気管で呼吸をし、土中や樹皮裏・洞窟など目立たない場所に住む。鋏角から糸を出して、それを使って前述のような隠れ場所で巣を作る。
肉食で、触肢のハサミに毒腺があり、それを使ってより小型の虫を捕まえて仕留める。集団生活をし、みんなで力併せて自分より大きな虫を捕食する種類もいる。
また、活動範囲が狭いため、新たな環境へ進出するように、移動能力の高い昆虫などに乗って「便乗」
するという習性を持つ。その際、触肢で昆虫の脚に挟んで掴むのが普通である。
一部の南米産カニムシはテナガカミキリという甲虫の背中に隠れ、便乗しながらその体表に付いたダニを捕食しており、まるで食事付きの豪華旅客機に乗る旅人のような生活を送る。
人間との関わり
人間の日常生活とほとんど関わりのない動物であるが、しばしな人工環境に住みながら書物を食害するチャタテムシを捕食するため、益虫として知られている。
触肢に毒はあるが、小さすぎる上で人間を襲うこともなく、心配は不用である。