節足動物門(Arthropoda)に分類される動物のこと。
特徴
外骨格のクチクラに覆われる体は体節に分かれ、名に現れるように、関節に分かれた付属肢(関節肢)をもつが特徴。成長に伴って脱皮をする。
知られる種類は動物界の8割以上を占め、地球上のすべての動物の中で最も種類が多い動物門である。陸上・地中・海水・淡水の別を問わず地球のあらゆる生物圏(バイオスフィア)に進出しており、端的に言うと地球上のほとんどの動物は節足動物である。節足動物の多様性は動物のみならず全生物の中でも突出しており、昆虫だけでも植物・真菌・節足動物以外の動物全種を足した数よりも多い。
多くの動物門と同様、知られる最古の記録は約5億年前のカンブリア紀まで遡るが、その時代の化石においても、節足動物は個体数・種数とも既に動物界最多に誇る。また、古生代シルル紀に登場した初の陸生動物(多足類)と、石炭紀に最初に飛翔能力を獲得した動物(昆虫)はいずれも知られる限り節足動物である。
ほとんどの節足動物は体重1gにも満たない小型種だが、種によっては個体数が膨大なので物質循環に与える影響は大きい。ナンキョクオキアミは1個体の体重はせいぜい2g程度だがおよそ5億トンのバイオマス(単一種としては最大)を有し、南極圏の動物のほとんどはこれを餌にしている。個体のサイズでは深海にすむタカアシガニは脚を広げると4m以上、ロブスターは体重20kgに及ぶものがある。陸生のものではヤシガニが4kgを超える。南極大陸にすむ唯一の昆虫ナンキョクユスリカは体長2-6mmと昆虫としてはありふれたサイズだが、実は南極大陸最大の動物である(ペンギンやアザラシは純粋な陸上動物ではない)。
系統
動物界の中では有爪動物と緩歩動物に近縁で、これらと同様に葉足動物から派生したグループと思われる。節足動物・有爪動物・緩歩動物・葉足動物という4グループは、まとめて「汎節足動物」という大グループを構成する。
これらの動物は、かつて似たような体節構造をもつ環形動物(ミミズ、ヒル、ゴカイの仲間)に近縁と思われたが、21世紀以降では別系統だと判明した(環形動物はむしろ軟体動物などに近い。詳細は前口動物を参照のこと)。
また、節足動物には「虫」と呼ばれるものが多い。
分類
鋏角類(鋏角亜門)
体の区分は頭胸部(前体)・腹部(後体)の2部。鋏角を有し、顎と触角はない。脚は頭胸部に4-5対をもつ。
多足類(多足亜門)
体の区分は頭部・胴部の2部。顎と1対の触角を有し、脚は胴部にたくさんもつ。
甲殻類(甲殻亜門)
体の区分と脚の数は系統によって様々。顎と2対の触角を有する。
- 軟甲綱:カニ・エビなど、フナムシ・ダンゴムシなど、ヨコエビ・ワレカラなど、アミ、シャコ、他多数
- 鰓脚綱:ホウネンエビ、アルテミア、カブトエビ、カイエビ、ミジンコ
- その他:フジツボ、カイアシ、ムカデエビ、他多数
六脚類(六脚亜門)
体の区分は頭部・胸部・腹部の3部。顎と1対の触角を有し、脚は胸部に3対もつ。
絶滅種のみからなる分類
- Artiopoda類:三葉虫、ナラオイア、シドネイア、他多数
- マーレロモルフ類:マーレラ、ミメタスターなど
- Megacheira類:ヨホイア、ハイコウカリス、レアンコイリア、他多数
- Hymenocarina類:カナダスピス、オダライア、他多数
- ディノカリダ:ラディオドンタ類(アノマロカリス、フルディアなど)、オパビニアなど
- その他:イソキシス、フーシェンフイア類、ユーシカルシノイド類
系統
「?」付きは位置付けに諸説のある項
節足動物の系統
┗┳━ディノカリダ:ケリグマケラ、パンブデルリオン
┗┳━ディノカリダ:ラディオドンタ類、オパビニア
「真節足動物」
┗┳━フーシェンフイア類
┗┳?━Megacheira類
┣━鋏角類
┃ ┗┳━ウミグモ
┃ ┗━カブトガニ、ウミサソリ、クモガタ類
┣?━Artiopoda(三葉虫など)
┣?━マーレロモルフ類
「大顎類」
┗┳━多足類
┃ ┗┳━ムカデ
┃ ┗━ヤスデ、エダヒゲムシ、コムカデ
「汎甲殻類」
┗┳━甲殻類:貝虫、ウオジラミ、シタムシなど
┗┳━甲殻類:軟甲綱、フジツボ、カイアシなど
┗┳━甲殻類:鰓脚綱(カブトエビ、ミジンコなど)
┗┳━甲殻類:ムカデエビ
┗━六脚類:内顎綱、昆虫など
関連タグ
生物 動物 虫 蟲 外骨格 触角 関節
ディノカリダ 三葉虫 鋏角類 多足類 甲殻類 昆虫
前口動物 葉足動物 カギムシ(有爪動物) クマムシ(緩歩動物)