オパビニア
おぱびにあ
古生代カンブリア紀に生息した古生物の種類(属)の一つ。カナダのバージェス動物群で見つかった「Opabinia regalis」(オパビニア・レガリス)という1種のみ知られている。
学名「Opabinia」は発見地(ブリティッシュコロンビア州、バージェス頁岩)の付近にあるオパビン峠(Opabin Pass)に由来する。現地の言葉で「Opabin」(オパビン)は「岩」を意味する。
その衝撃的な外見と後述する逸話から、カンブリア紀を代表するシュール動物として知られている。
また、そのどこか愛嬌のある姿から愛好家も存在するとか。
体長4-7cm。頭の上には(全てが複眼と思われる)大小五つの目がキノコのように盛り上がり、下から伸びた一本の掃除機のような吻にハサミがあるという個性的な姿を持つ。
発見時からその姿は話題になり、1972年にバージェス動物群の学会発表が開かれた際、イギリスの古生物学者ハリー・ウィッティントン氏によって本種の復元図が発表された時、会場は爆笑の渦に包まれたという逸話が残っている。
アノマロカリスなどのラディオドンタ類に近縁で(後述)、よく見るとラディオドンタ類と似た体制を持つ。数多くの鰭や鰓、扇子のような尾はもちろん、一見異質な吻もラディオドンタ類などに見られるような1対の腕から左右癒合したもので、そのため口はハサミにはなく、頭の下で後に向かって開いている。
因みに、その吻の先にあるハサミは(左右で対になる腕が元のため)左右に開閉するのが正しい構造とされているが、上記の学会で発表された1970年代の旧復元画のインパクトがよほど強かったのか何かと上下開閉構造に描かれがち。
海底を泳ぎ、その吻で他の小動物を捕食する肉食動物であったと考えられる。
また、その5つの目のお陰で視野が非常に広く、同じ生息地でより食物連鎖の上位にいる捕食者(例えばアノマロカリス)をすぐに発見するのに役立つと考えられる。
一見現生の動物群に全く似てない奇抜な姿で、かつては分類が困難な未詳化石の1つであった。後に研究が進み、アノマロカリスを含むラディオドンタ類と共に原始的な節足動物として広く認められるようになった。節足動物の特徴的な外骨格や関節を持たないが、盲腸・複眼・鰓の構造は節足動物的で、一見奇抜な目と吻も節足動物の特徴と嚙み合うとさせる(大小5つの目は節足動物の3つの単眼と2つの複眼に対応、左右の肢の癒合は節足動物でも見られる特徴である)。
長らく「オパビニア類」(オパビニア科)というグループの唯一の種類であったが、2022年にアメリカ産の同科の種類ユタウロラが記載されるようになった。