概要
古生代カンブリア紀に生息した古生物の種類(属)の一つ。グリーンランドのシリウスパセット動物群に属する Pambdelurion whittingtoni(パンブデルリオン・ウィッティント二)という1種のみ知られている。
学名「Pambdelurion」はギリシャ語の「pambdelyrion」(忌まわしい)から。前述した種の種小名は、バージェス動物群の研究で馴染みの古生物学者ハリー・ウィッティントンから。これは「忌まわしいウィッティントン」と訳していいでしょうか…?
特徴
頭の左右には2本の大きな腕(前部付属肢)が突き出して、腕から更に数多くの突起が伸びる。腹面の口は十数枚の鋭い歯に囲まれる。
一昔前では上のイラストのように目がないと考えられたが、後に口の左右に目立たない複眼を持つことが判明した。
胴部は両筋に沿って11対の鰭と柔らかい脚が並び、知られる筋肉構造はカギムシと似て原始的。尾部ははっきりしないが、1対の短い突起物がある模様。
同じ生息地の近縁ケリグマケラとよく似ているが、全体的にはケリグマケラよりマッシブな体型で、ケリグマケラのようなコブと長い尾を持たない。
カンブリア紀の巨大生物といえばアノマロカリスなどのラディオドンタ類(30~50cm位が一般的)が有名だが、パンブデルリオンの体長は最大55cmで、地味に並のラディオドンタ類よりも大きい。
生態
一昔前では腕の毛でプランクトンを篩い分けて食べると考えられたが、最近では肉食で、鋭い歯で餌を切り裂く腐肉食者か捕食者であった説が有力。腕は一見して強力だが、筋肉は貧弱で、採餌より感覚がメイン機能と考えられる。
鰭で泳げそうに見えるが、鰭の付け根に筋肉はなく、代わりに脚が発達で筋肉も多いため、むしろ海底を這いまわり、鰭はただの呼吸器(鰓)であったかもしれない。
分類
ケリグマケラ、オパビニア、ラディオドンタ類などと同様原始的な節足動物と考えられ、恐蟹類に分類される。節足動物の特徴的な外骨格を持たないが、盲腸と腕は他の原始的な節足動物と似ている。ただし他の恐蟹類と比べてもっと原始的で、発達した柔らかい脚などが節足動物に近い葉足動物(メガディクティオンなど)と似て、葉足動物扱いともされる。
中国のカンブリア紀の地層ではオムニデンスという、パンブデルリオンと同じ構造の歯化石だけで知られる近縁がいる。もしこの歯の持ち主はパンブデルリオンと同様な体の比率をしているのであれば、この古生物は1.5mの巨体を持ち、知られる中でカンブリア紀最大の動物である可能性が高い。