概要
カギムシ(鉤虫)とは、有爪動物門に分類される動物のこと。180種ほど知られている。
別名「有爪動物」(ゆうそうどうぶつ)。学名「Onychophora」は「爪を持つ者」の意味。いずれも脚の爪に因んで名付けられたが、別にこれがカギムシの決定的な特徴ではない。
英語ではその表皮の触感がビロードと似ていることから「velvet worm」(ベルベットワーム)と呼ばれている。
形態
体長1~15cmほど。体はワーム状でぷにぷにして柔らかく、細かな皺と瘤が満遍なく生えている。
頭部の正面には1対の太い触角、腹面には柔らかい突起(よく誤解されるが円形の歯ではない)に囲まれた口があり、その奥には1対の鋭い牙と似た顎が格納される。触角の付け根には小さな単眼、口の左右には粘液の噴射口がある。
長い胴部の両筋に数多くの短い脚(葉足)が並んでいる。脚は太い円錐状で、先端には肉球のような構造と、2本の小さな鉤爪が生えている。目立たないが、お尻には丸みを帯びた短い尾がある。
生態など
夜行性で湿潤な熱帯雨林に生息し、非常に見つかりにくい。体表に散在する気管で呼吸する。歩行は遅いが、顔の左右から粘液を噴き出して、昆虫などを絡め取って食べる捕食者である。繁殖は卵生、卵胎生、完全胎生と様々。
中央~南アメリカ、南アフリカ、東南アジア、オセアニアなどで局所的に分布する。
カギムシとして断言できる最古の化石は1億年前の白亜紀までしか遡れないが、後述の類縁関係によると、実際はもっと古い地質時代から既に現れたかもしれない。
分類
現生の動物の中ではクマムシ(緩歩動物)や節足動物(クモ、甲殻類、昆虫など)に近縁、共に「汎節足動物」に分類される。
約5億年前の古生代カンブリア紀には「葉足動物」という汎節足動物の古生物のグループが栄えて、カギムシ・クマムシ・節足動物はいずれも祖先がそこか派生したと思われる。カギムシが「生きた化石」と呼ばれているのは、その先祖と思われる葉足動物の特徴(特に表皮と脚)を色濃く残していたからである。
葉足動物の中では、アンテナカンソポディアが特にカギムシの祖先に近いと考えられ、太い触角や脚の肉球状構造がよく似ている。
葉足動物のハルキゲニアからカギムシと似た爪の多重構造が見つかり、これを基にハルキゲニアをカギムシの祖先に近いとする説もあるが、確実性が低い(この特徴は他の葉足動物での有無は不明のため、別にカギムシ特有でなく、単にもっと古い共通祖先の名残の可能性が充分ある)。
サブカルチャー関連
カギムシの中には学名が「Eoperipatus totoro」と命名される種がいる。これはカギムシの姿が、アニメ映画『となりのトトロ』に登場するネコバスを彷彿とさせることに由来する。
生物学者出身のエログロ漫画家蜈蚣Melibe氏が「恋人が魔法でカギムシに変えられても元に戻さなくていい」と証してかつてファンロードで話題となった生物である。
関連タグ
獏のエルムガイ夢:モチーフとしたキャラクター