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概要 🕷️🕸️編集

クモ(蜘蛛)とは、鋏角亜門クモガタ綱のうちクモ目(蜘蛛目、真正クモ目)に属する節足動物のこと。


8本脚、お尻からを繰り出し、昆虫などを餌とする捕食者としてよく知られている。を張って羽虫を捉えるイメージが一般的であるが、網を作らず、待ち伏せや地表を徘徊する種類も数多く存在する。


世界中から5万種以上が知られ、鋏角類の中ではダニ(約5万5,000種)の次に多い。日本には1,000種以上生息する。


英語は「spider」(スパイダー)。学名「Araneae」(アラネエ)は古代ギリシャ語でクモを意味する「Aráchnē」(アラクネ)に由来する。

日本語では古くは「ささがに」(細蟹)という異名があるが、これはクモの糸やサワガニをも指している。


形態編集

頭胸部と腹部(実際は「頭部と胴部」に相当する「前体と後体」)の間がくびれた8字状の体と8本の脚が目立つ。基本的に8つの単眼を先頭に持ち、正面に折り畳まれる鋏角(上顎)はである。鋏角と第1脚の間にある触肢は短い脚のような形で、これは原始的な種類だとやや発達のため、10本脚にも見える。

また、どの種も「糸疣」という突起を腹部の有し、そこからを繰り出す。

蜘蛛

フィクションデフォルメでは顔と脚の部分が別だったり、脚が腰や腹部から生えるように描かれることが多いが、実際は全て頭胸部にまとまり、他の鋏角類と同様「頭で歩く」わけである。


それ以外の外見的特徴は種類により様々で、大きさは1mm未満から10cm以上、体色は地味な茶色から鮮やかな虹色まで多岐にわたり、同種が雌雄により姿形が著しく異なるものもいる。後者は雄が雌より小型、もしくは鮮やかなケースが多い。


混同編集

昆虫などと並んで「」と呼ばれるが、同じく節足動物であること以外全く別である。

昆虫の体は「頭・胸・腹」の3パーツで6本脚触角を持つのに対し、クモ含めてクモガタ類の体は「頭胸・腹」(実際は「頭・胴」)という2パーツのみ、そして触角は無く、8本脚である。


ウミグモという発達した8本脚が特徴の海洋生物は、名前に反してクモではない。こちらは同じ鋏角類であること以外全く別で、クモのような牙や丸い腹部を持たない。


ザトウムシは8本の細長い脚が目立ち、しばしばクモ(特にユウレイグモ)と混同されるが、こちらは同じクモガタ類であること以外全く別で、まとまった本体にはクモのような牙やくびれを持たない。


生態編集

ほぼ全てが陸棲で、1種のみ水中を主に生活する。陸棲・水棲関わらず全てが空気呼吸で、腹部の書や気管を介して行われる。


ほぼ例外なく肉食性で、餌は主に昆虫などの小動物オオジョロウグモタランチュラ等の大型の種類は、たまにネズミ等の小型脊椎動物を餌にすることもある。センショウグモケアシハエトリの様に、他種のクモを専門に捕食する種類もいる。

固形物を摂食できず、代わりに消化液を吐き出して獲物を体外消化し、液体状に消化された成分を吸い込む。

一方、などをすする様子が散見し、1種のみだが植物成分を主食とするものも知られている。

くもキシノウエトタテグモ目玉蜘蛛

を張って飛来した虫を受動的に捉える・通りすがりの獲物を待ち伏せる・あらゆる場所を徘徊して獲物を探すという3つのハンティングスタイルが一般的。他にも巣穴から伸びるセンサーの糸にかかった虫に襲い掛かるものや、糸の先端に粘液を付けて振り回して獲物をくっつけるもの網を前脚に持たせて獲物を覆い被さるもの等、やや特殊な捕食方法も見られる。


一部の小型種や子グモはお尻から宙に伸ばした糸をタンポポ綿毛の様に使って、風に乗って遠いところへ散っていく。この移動手段は空を飛ぶ風船を彷彿とさせ、バルーニング(Ballooning)と呼ばれる。


繁殖編集

雄はペニスに該当する器官を持たず、繁殖での配偶子のやり取りは交尾ではなく、生殖器を直接繋ぎ合わせない「交接」である。

雄は触肢に精子を蓄える「触肢器」を持ち、腹部付け根の生殖孔から排出した精液をそこに蓄えてから雌を探す。交接の際にまたそれを使って精子を雌の生殖孔に注ぎ込む。さらに雌には「貯精嚢」と呼ばれる精子嚢があって、産卵まで精子はしばらくそこへ留まる。

交接の前に雄が雌に一連の求愛ダンスを披露するものもあり、徘徊性の種類が特に多い。雌がその気でなければ雄を襲って食べてしまうもともあるため、雄にとって命かけである。


卵は雌の糸で卵嚢にまとめられる。雌がこれに留まらず、卵嚢や孵化したての仔グモを巣穴で保護したり、身に付けて行動する種類も多い。


雄が交接の後、雌へわが身を提供するクロゴケグモ(「黒の未亡人」を意味する英語名「Black widow」の由来)、が孵化してしばらくするまで母親が密閉された空間で世話をし、その後が子グモに食われるカバキコマチグモイワガネグモ等、特異な生態を持つものがある。


分類編集

共に「」と呼ばれる昆虫と同じ節足動物ではあるが、クモは昆虫ではなく、別系統の鋏角類に属するクモガタ類の一グループである。クモガタ類の中ではウデムシサソリモドキ等が比較的クモに近い類で、牙状の鋏角や2対以下の書肺が共通する。


節足動物

┗┳━多足類ムカデヤスデ等)・甲殻類・六脚類(昆虫等)

鋏角類

 ┗┳━ウミグモ

  ┗┳━カブトガニ

 クモガタ類

   ┗┳━ザトウムシダニ

    ┗┳━サソリ

     ┗┳━クモ

      ┗━ウデムシサソリモドキヤイトムシ


主な種類編集

クモは主に次の3大系統に分かれている。ここではそれぞれの著名な種類のみ列挙する。

(▲付きは複数の種を含む総称であるもの)


古蜘蛛亜目ハラフシグモ

最も原始的なクモ。腹部が体節に分かれ、糸疣が腹部の真ん中にある。


原蜘蛛亜目

古蜘蛛亜目と似た原始的な体型だが、腹部の体節のなさと末端に付く糸疣は後述の新蜘蛛亜目に共通。


新蜘蛛亜目

一般的なクモが属する。牙が左右から噛み合うように動く。ほとんどの種類は1対以下の書肺を持ち、気管を持つものも多い。


各言語での呼び名編集

言語カナ表記綴り
ヨーロッパの言語
イタリア語ラーニョRagno
英語スパイダーSpider
ギリシャ語アラクネー(古代ギリシャ語) / アラフニ(現代ギリシャ語)Arakhne / Ἀράχνη / Arachni / Αράχνη
古英語アートルコッペAtorcoppe
ジョージア語オボバOboba / ობობა
スペイン語アラニャAraña
ドイツ語シュピネ / シュピンネSpinne
バスク語アルミアルマArmiarma
ハンガリー語ポークPók
フィンランド語ハマハッキHämähäkki
ポーランド語パヨンクPająk
マン島語ドゥーオーリーDoo-Oallee
ルーマニア語パヤンジェンPăianjen
ロシア語パウーク(男性形) / パウチーハ(女性形)Pauk / Pauchikha / Паук / Паучиха
アフリカの言語
アフェンマイ語アクパクパÀkpákpa
イゾン語アタマタマAtamatámà
イツェキリ語アクパクパAkpakpa
エド語アクパクパÀkpákpà
オロモ語サリーティーSariitii
スワヒリ語ブイブイBuibui
チェワ語カンガウデKangaude
ツワナ語セゴクゴSegokgo
マー語(マサイ語)オルケディO-lkedi
マダガスカル語ハラベHalabe
リンガラ語リンプルトゥトゥLimpúlututú
アメリカの言語
アルゴンキン語マムナッペフトMamunappeht
イヌクティトゥット語アーシヴァクAasivaq / ᐋᓯᕙᖅ
イヌピアック語アーシヴァクAasivak
ケチュア語クシクシ(小蜘蛛) / アパサンカ(大蜘蛛) / ウル(クスコ・ケチュア語)Kusikusi, Apasanka, Uru
ナバホ語ナアシチェイーNaʼashjéʼii
ナワトル語トカトルTocatl
ミクマク語コークェチチ / コーグェジチGo'gwejij
ヤーガン語アテカルワンカラAtekal-wankara
オセアニアの言語
ウィラドゥリ語ガンガGangga
サモア語アポガーレヴェレヴェ'Apogāleveleve
タヒチ語トゥートゥーラホヌイTūtūrahonui
トケラウ語アポガーレヴェレヴェApogāleveleve
ハワイ語ナナナナNananana
フィジー語ヴィリタラワラワViritalawalawa
マオリ語プアウェレウェレ / プーンガーウェレウェレ / プーンガイウェレウェレ / プーウェレウェレ / トゥートゥリPuawerewere / Puungaawerewere / Puungaiwerewere / Puuwerewere / Tuuturi
ロトカス語アカヴェAkave
西アジアの言語
アラビア語アンカブートAnkabut / عنكبوت
中央アジアの言語
ウズベク語オルギムチャクO'rgimchak
カラカルパク語オルメクシO'rmekshi
東南アジアの言語
インドネシア語ラバラバLaba-laba
キマラガン語コルットKorut
タイ語メーンムムMaeng Mum / แมงมุม
タガログ語ガガンバ / アンララワ / アララワ / ララワ / ラワ / ラワラワGagamba / Anlalawa / Alalawa / Lalawa / Lawa / Lawalawa
パンパンガ語ババグアBabagua
マレー語ラバラバLabah-labah / Lelabah / Laba-laba
ミナンカバウ語ラワLawah
ミャンマー語ピングーPingu
ラーオ語メーンムムMaeng Mum / ແມງມຸມ
東アジアの言語
アイヌ語ヤオシケプYaoskep
アミ語ファラロトン(蘭アミ語&秀姑巒アミ語) / フェラロトン(秀姑巒アミ語) / フォラロトン(秀姑巒アミ語)Falalotong / Felalotong / Folalotong
ウチナーグチクーバーKuubaa
カナカナブ語パトゥPatʉ
韓国語コミGeomi / 거미
サアロア語サラプSarapu
サイシャット語トカンガンTokangang
サオ語カカトゥKakatu
サキザヤ語カカトゥKakatu
セデック語プロボ(トゥクダヤ方言)Probo
タイヤル語キュキット(澤敖利タイヤル語) / カス(四季タイヤル語)Kyukit / Kasu
タオ語アーラウAaraw
タロコ語クルバウKrubaw
チェジュ語コムイGeomui / 거믜
チワン語トゥキャーウDuzgyau
ツォウ語カカトゥKakatu
パイワン語クマクマKumakuma
ブヌン語カトゥカトゥKatukatu / Katukatuh
満州語ヘルメヘンHelmehen
ミャオ語カーラウシャー(白ミャオ語)Kab Laug Sab
モンゴル語アールズAalz / Аалз
与那国語クブKubu
ルカイ語ヴァウヴァルク(霧台ルカイ語) / アルラルラヴァテ(霧台ルカイ語) / タクルラルラヴァテ(大武ルカイ語)Vawvaluku / Alralravathe / Takulralravathe

一般的な扱い編集

8本脚の見た目やクモの巣が印象的なのか、様々な神話伝承のモチーフとなっている。


媒体では不気味で恐ろしい有毒生物としてのイメージが強く、果ては攻撃的で人も躊躇なく嚙み付くとされている。「クモ恐怖症」(アラクノフォビア)というのが存在するほど、現代はクモが苦手な人も少なくない。

  • しかしその実態はほぼ風評被害である。人命に関わる程の毒を持つ種類は確かに存在するが、僅かでしかない。ほとんどのクモの毒は人体に対して非常に弱く、毒牙が皮膚を貫けるかすら問題である。
  • そして何よりクモから人への咬害は受動的な防衛手段であり、人から過剰な刺激を受けない限り自発的に噛む事はない。人間からの刺激を受けると、すぐに身を隠せないであろう大型種であれば先に毒牙を上げて威嚇するものが多いが、小型種の場合はまず精一杯逃げるのがほとんどである。

なお、人間にとっては害虫であるたちを積極的に捕食する事から、クモは益虫として代表的な存在でもある。

  • しかし、殺虫剤や農薬に弱い種が多く、不十分な農薬散布を行うとクモだけ全滅し、害虫がかえって増殖することがある。

コウモリと同様、地域や時間帯で縁起の良し悪しにばらつきがあり、日本では朝に見かける蜘蛛は神様の使いで縁起が良く、殺してはいけないという言い伝えがあり、一転して夜の蜘蛛は縁起が悪いとされる。

  • また、午前に現れた地域によっては財布や懐に入れる所もあるという。

一方、西洋では基本的に不気味なものとして扱われるが、背中に十字架模様のある蜘蛛は神聖とされ、殺してはいけないと伝えられている。

『辛坊強さ』や『女性グレートマザー』の象徴とされる事もある。


アメリカ土産のドリームキャッチャーという悪夢から身を守り、善い夢を捕まえるこのお守りは、蜘蛛の巣を模した物で、元はネイティブアメリカンが蜘蛛の神からのお告げによって作られた物が始まりとされている。


アイヌ文化ではヤウシケプ(網を編むもの)と呼ばれ、

網を張って悪い魔物を捕まえる神様だから殺したり追い払ってはいけないといわれている。


余談編集

コーヒーを飲ませると中核神経が麻痺して人間で言う酔っ払った状態になる。

これはトリビアの泉にて取り上げられた。


フィクション・創作関連編集

神話伝承妖怪編集

海外編集

スーパー戦隊シリーズ編集

仮面ライダーシリーズ編集

メタルヒーローシリーズ編集

ウルトラシリーズ編集

その他特撮編集

アニメ編集

ゲーム編集

星のカービィシリーズ編集

ポケットモンスターシリーズ編集



漫画編集

ZOIDS編集


関連イラスト編集

クモ少女タランチュラの体

蜘蛛トライバルっぽいやつ蜘蛛


関連タグ編集

くも/クモ スパイダー/spider:別表記。


蜘蛛糸/蜘蛛の糸 蜘蛛の巣/クモの巣

八つ目 八本足

 益虫 害虫


節足動物 鋏角類 クモガタ類

サソリ:クモと並んでメジャーなクモガタ類。

ウデムシサソリモドキ:近縁。

ウミグモザトウムシ:他人の空似。

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