概要
シドニージョウゴグモ(学名:Atrax robustus)とは、その名の通りオーストラリアのシドニーを中心に生息する蜘蛛の一種。
古くは日本のオオクロケブカジョウゴグモなどと共にジョウゴグモ科に分類されたが、現在はオーストラリア特有の近縁種と共に「オーストラリアジョウゴグモ科」に分かれている。
毒がとにかく人間に対し危険である事で知られ、南米産のクロドクシボグモ(バナナグモ)と共に世界で一二を争う程の有名な最凶の殺人グモである。
形態
学名にも「robust」とつけられる程に大きく屈強だが、体長最大5cm、脚を含めて6~7cm程度の中大型。
体色は全体的に主に漆黒、腹面の口元周辺のみ赤みを帯びる。頭の甲羅は無毛でつやつやしてて、脚・触肢(口元の短い脚のような肢)・牙(鋏角)は丈夫で毛が散在し、腹部はつや消しの灰色でキウイフルーツのように微毛が密生する。お尻から反り上げる指状の糸疣(出糸器官)も特徴的。
オスはメスよりほっそりしてて、第2脚にフック状の突起があり、これは交接の際に役立つ(後述)。
生態など
ジョウゴ(漏斗)グモと名付けられたことからわかるように奥の方が狭くなるトンネルのような巣を作り、入り口に糸を散りばめる。捕食方法は待ち伏せで、目が悪いが獲物が入り口の糸に触れるとその動きを感知、巣から飛び出して牙を刺し、毒を注入して仕留める。
危険を感じると体を大きく持ち上げて威嚇し、その凶悪な牙を見せつける。
暖かい季節になるとオスが交接可能なメスを求めて徘徊し、それは時に民家の中や庭に迷い込む事態を生み出す。オスは巣の中のメスを誘い出し、正面から前2対の脚でメスの体を持ち上げて抑えながら、触肢をメスの腹面に潜り込み、その先端に蓄えた精液をメスの生殖孔に注ぎ込む。この時のメスは威嚇姿勢であるが、交接の際はじっとしてて、事後でオスを捕食することも野外では確認されていない。
危険性
クロドクシボグモと並び人間に対し危険な猛毒で知られる。哺乳類の中でも霊長目にだけ滅茶苦茶効く。なんでさ。
相手1体に対しても全力で毒をぶち込むタイプであり、何度も何度も牙を振り下ろす。症状は1時間以内に発生し、子供は特に危険が危ない。だが牙が滅茶苦茶デカく、噛まれたらその痛みで間違いなく気付く。医学の発達により抗毒血清を使えば助かる現代、この牙の凶悪さはむしろ助かる要因となっている。血清ができる前は死亡も普通にあり得る毒を持つので…ありがたい…
ちなみに人が噛まれるのは主に徘徊しているオスによる物である。メスのシドニージョウゴグモに噛まれて重症となったケースは現在のところ報告されていない。
フィクション・創作関連
『金田一少年の事件簿』黒死蝶殺人事件で犯人・不死蝶の凶器に使用されたこともあったが、深山日影の迅速な対応により死者は出なかった。なお、アニメ版では「シドニージュウゴグモ」と呼ばれていた。