超人機メタルダー
ちょうじんきめたるだー
1987年3月~1988年1月まで、全39話が放送されたメタルヒーローシリーズの第6作目。
「宇宙刑事シリーズ」に端を発したそれまでの路線からガラリと趣を変え、よりリアリズムを重視した作品として企画・制作された。後述の通り、様々な挑戦的取り組みが試みられた。
しかし、裏番組が『シティーハンター』(更に関西ローカルでは『さんまのまんま』も放送されていた)だったのと、87年秋の『ニュースシャトル』放送開始の影響で日曜朝9時半へ移動するも、関連商品の売り上げ不振、及び視聴率低迷で全39話で打ち切りとなってしまう。
メタルヒーローシリーズ唯一の打ち切り作品で、話数も最少である(当初は1987年末の第37話で打ち切りの予定だったが、次回作の決定・製作遅延の為、数話延長となった)。ビデオも1992年に発売が打ち切りとなり、関東では再放送が実施されなかったことなど不運が重なった作品であった。昭和の日本のテレビ史上、地上波キー局においてゴールデンタイムにレギュラー放送された最後の特撮作品であり、本放送当時の時間枠移動から打ち切りの流れを「特撮の衰退」と捉えたファンは多い。(その後テレビ東京系で放送された「ケータイ捜査官7」が日本のテレビ史上、ゴールデンタイムで放送された最後(そして、レギュラーでは平成唯一)の特撮番組を更新した。)
その一方で、重厚かつ深みのあるストーリーや世界観、そして練り上げられたキャラクター造形には定評があり、後年には全話収録のLD・DVDボックスも発売された。次回予告の〆として用いられたナレーション「こいつはすごいぜ!」(声:政宗一成)の評のもとに、早すぎた名作として語り継がれている。
世界の影で暗躍する悪の組織「ネロス帝国」の野望を阻止するため、ロボット工学の権威・古賀博士は第二次世界大戦中に開発し封印した「超人機」剣流星ことメタルダーを復活させた。
この世に目覚めたばかりで、”生”も”死”も分からないメタルダーにその意義を伝えるべく、古賀博士は自らネロス帝国の凶刃に倒れる。その光景を目の当たりにし怒りに震えた流星はメタルダーに”瞬転”しネロスの軍団員を退けるが、”戦う”ということを理解していないメタルダーはネロス帝国最高幹部の一人、クールギンに敗れてしまう。
傷つきながらも立ち上がり、自らの存在意義を知りたいメタルダーは叫ぶ。
「風よ、雲よ、太陽よ、心あらば教えてくれ! なぜ、この世に生まれたのだ!」
かくして、メタルダーとネロス帝国との壮絶な戦いが始まった……!!
本作では、メタルヒーローシリーズ過去5作品の流れや、TVレギュラー放送特撮作品のセオリーに比して、数々の挑戦的な取り組みが行われた。
シリーズ初のアンドロイドの主人公
本作の主人公・剣流星/メタルダーは、従来のメタルヒーローのように強化服(コンバットスーツ)を装着して戦う人間や、東映ヒーローの別シリーズである仮面ライダーのような改造人間ではなく、シリーズ初の100%機械の身体を持つアンドロイド(=人造人間)である。
(※後年のシリーズ作には、一度死亡した人物をサイボーグとして蘇生した『機動刑事ジバン』や、人間態を持たない完全なロボットヒーロー『特捜ロボジャンパーソン』がある。)
メタルダーの起動直後に、開発者の古賀博士は彼を守り「死」の意味を教えるために自ら敵勢力ネロス帝国の手にかかり倒れたため、メタルダーはほとんど情緒も目的もまっさらな状態のまま残されてしまった。「メタルダー=剣流星の心の成長」が本作の大きなテーマのひとつとなっており、人間との交流の中で優しさを身につけ、その一方ネロス帝国との戦いを通じ悪や争いをにくみ平和を願う心を育てていく。(しかし、そうした感情が未発達な初期には生命尊重の意識が低く、第2話では敵の攻撃をしのぐために生身のヒロインを囮に使ったことすらある。)
シリーズ唯一変身前と変身後の声が違う
変身前の剣流星は妹尾洸氏が演技と声を当てていたが、変身後のメタルダーの声は飯田道郎氏が担当しており、このアイディアも本作唯一となってしまった。序でに下記の通り妹尾氏が病気療養で休養していた時に、流星の声を飯田氏が当てた事と、最終回でメタルダーの姿で妹尾氏が喋った事もあった。
制式武器なし
特撮ヒーローといえば、剣や銃砲などの、様々なギミックを秘めたカッコいい武器は定番の存在であり、メタルヒーローシリーズにおいてもギャバンのレーザーブレードを皮切りにどのヒーローも武器を使っていた。劇中で新武装の投入によるパワーアップも定番の流れであり、こうしたアイテムは玩具の販売という商業的な側面でも大きい。
が、メタルダーは「心の成長に応じて戦闘回路も成長する」という設定を活かすため(=武装によるパワーアップはこのテーマ性を弱めると考えられた)、シリーズ初の制式武器一切なしのヒーローである。メタルダー曰く「争いを好まぬ僕に武器はない」であり、様々な武器を用いる敵が登場するのに対して基本的には徒手空拳で応戦し、必殺技はエネルギーを腕に集めた手刀の一閃、レーザーアームである。
初陣で派手に敗北
普通、特撮ヒーローの初めての戦闘といえば、自らに与えられた強大な力にヒーローが不慣れなままどうにか敵を退けるとか、より古典的にはヒーローの(時に力を制御しきれていないほどの)圧倒的勝利で「強いヒーローの登場だ」を強調するとか、が定番といえよう。
が、起動直後にまるで精神が未発達(=戦闘回路も未発達)のまま戦場に放り込まれたメタルダーは、初陣で敵幹部の凱聖クールギンにぶった斬られ完全敗北した。当時の視聴者に衝撃が走ったのは言うまでもない。第2話でも、爆闘士ゴチャック(4大幹部の一人だった初回と違い、中の上クラスの戦士である)の格闘技に大苦戦、なんとか倒すも回路を大きく破壊されほとんど相討ちと、メタルダーは苦闘しながら徐々に心身両面で成長していった。
階級制を敷く敵勢力のドラマ
本作の敵勢力ネロス帝国は、帝王ゴッドネロスの下に4軍団×10階級からなる軍隊的な階級制度を敷いており、軍団員同士が功や昇格を争い、時には協力し時には裏切るせめぎ合いを演じるなど、敵勢力内のドラマにも重きが置かれた。中には放送時間の大半がネロス帝国側の話であり、主人公のはずのメタルダーはクライマックスで「立ちはだかる強大な敵」として出現するのみ、という回さえあった。
雑魚兵士ではない数十名の敵キャラが一堂に会す映像は迫力満点であり、当時の雑誌などに掲載された「ネロス軍団構成員一覧表」などは視聴者をワクワクさせるものであった。
しかしこのような作劇だと、放送開始時点ではとりあえず序盤の怪人だけ固めてあとは放送を進めつつ…とはいかない。第1話の時点で40種の敵キャラのスーツを用意せねばならず、その敵キャラ達が繰り返し登場するためスーツの補修に追われるなど、撮影現場の苦労は並々ならぬものがあったそうだ。
こうしたプロットの背景には、当時『キン肉マン』に『聖闘士星矢』と、敵方キャラクターの玩具もどんどん売れたアニメのヒットがあったという。
しかし…
上記のような取り組みから生み出された重厚なドラマ性は、高年齢の視聴者層にはおおむね高く評価された。ゆえに『超人機メタルダー』は打ち切り作でありながら、現在でも「早すぎた名作」として語り継がれ、シリーズ中でも人気の高い作品のひとつである。(pixiv上では、初代メタルヒーロー『宇宙刑事ギャバン』に次ぎ、『機動刑事ジバン』と2番手を争う作品投稿数である。)
が、誤算はその取り組みが本来の視聴者層である子どもにはイマイチだったのだ。
初陣で派手に完敗する主人公は、子どもには「今回のヒーロー、弱いぞ!?」というマイナスの第一印象を与えてしまった感があり、万全の強さを発揮するのにも時間を要した。武器がないことは玩具を買ってもらっての「メタルダーごっこ」のやりづらさに繋がるし、「説教ソング」と今でも評される重厚な主題歌も子ども向けとは言えない。出世のため、家族のため、名誉のため…ネロス帝国内部で繰り広げられる現実の会社にも似た内部闘争も社会人には刺さるものだが、子どもには難しく「いいからメタルダーを出せよ!」になりがちだったのである。
結果、中盤以降はテコ入れが行われ、ネロス帝国が運動会を行ったり、引田天功がゲスト出演しマジックを披露したり(※『電子戦隊デンジマン』『宇宙刑事ギャバン』にもゲスト出演歴があった)等、奇抜な回も混ざるようになった。それでも最終的に打ち切りの判断が下ってしまったのだが、終盤は本来のハードな展開を取り戻し、ビターエンドを以て最終話が締めくくられた(詳細はメタルダーの項目にて)。
メタルダーと関係者
演:妹尾洸(現:妹尾青洸)/CV:飯田道郎(第9 - 14話、及び劇場版)
本作品の主人公で、太平洋戦争末期に古賀博士によって造り上げられた人造人間。怒り等といった感情の高まりにより、体内に秘められていた全エネルギーが頂点に達した時、「怒る!(いかる!)」の叫びと共に剣流星の姿から超人機メタルダーへと「瞬転」を遂げる。
必殺技である「レーザーアーム」を始め、彼の使用する技はいずれも己の身一つから繰り出されるものばかりであり、また武器を使うにしても木の枝等といったその場にあるものだったり、敵の武器を奪って使用したりというケースが殆どで、メタルヒーローとしては珍しく固有の武器を持たないのも特徴のひとつである。
決戦兵器として造られてはいるが、搭載された「自省回路」の働きにより人間と変わらない心を持ち合わせている。人間であるヨロイ軍団員に対し、その命を取る事無く見逃すなど、特に序盤では博愛精神に富んだ行動も度々見られた。
また作られてから40年以上もの間起動されていなかった事もあり、当初はあらゆるものに対する知識に乏しかったため、舞を始めとする様々な人々、そして時には敵であるネロス帝国の軍団員との出会いを通じて、様々な事を学んで行く事となる。
古賀竜一郎
演:上原謙
戦時中メタルダーを造り上げた科学者。ロボット工学の権威であり、終戦後NASAで宇宙開発の仕事に携わっており、長らく日本を離れていたがネロスの活動の活発化を察知し、メタルダーを起動させるべく帰国を果たす。
平和を愛する博愛主義者であり、その精神は自省回路と共にメタルダーにも受け継がれる事となった。また戦時中、特攻隊として戦死した竜夫(演:妹尾洸)という息子がおり、流星の姿は彼のそれをモデルとしたものである。
スプリンガー
CV:林家源平
メタルダーと行動を共にするロボット犬。人語による意思疎通が可能で、メタルダーのサポートやメンテナンスを行うほか、時にはメタルダーに様々なアドバイスを行う事もある。
仰木舞
演:青田浩子
『週刊アップ』と契約を結んでいる女性カメラマン。流星が古賀博士以外で初めて出会った人間であり、彼女との交流を通して流星は世の中の様々な事を学んでいった。
※演者は元プロ野球選手・青田昇の5女。
北八荒
中盤より登場するモトクロスレーサー。初登場時にネロス帝国の陰謀に巻き込まれ、メタルダーに命を救われて以来、「ネロスハンター」を自称し彼の協力者となった。陽気だが二枚目半な性格で、些か頼りない面も目立つものの、時には持ち前の勇敢さでメタルダーを支えることもあった。
仰木信吾
演:有川博
舞の父親で、通信社のワシントン支局で特派員を務める。舞の依頼で古賀博士の情報を集めており、その足跡を追う中でゴッドネロスの正体に迫るが、その為に帰国後ネロス帝国から度々狙われる事となる。
元はネロス帝国戦闘ロボット軍団に属し、軍団幹部格の「暴魂」の地位にあったスナイパーロボット。黒を基調としたボディに赤い隻眼、右腕と比べて不格好かつ重厚なフォルムの左腕が特徴。『ゴルゴ13』に似たヒットマンをモデルに造られたとされており、その狙撃の腕前は非常に高い。
常に一対一のフェアプレイを信条とし、軍規を犯してまでもメタルダーとの直接勝負に臨んだが敗北。その為に処刑されかかり、脱走の途中で負傷したところをメタルダーに救われ、互いに再戦を誓い合った後彼の元を去っていった。
後にネロス帝国の卑劣なやり口に反感を持ち、帝国と袂を分かつ一方でメタルダーと共闘する事が多くなり、次第に彼とは強い信頼関係を築いていく事となった。
ネロス帝国
帝王ゴッドネロス/桐原剛造
自らを”神”と称する世界的な死の商人で、ネロス帝国の支配者。表の顔である桐原剛造は世界的な大企業「桐原コンツェルン」の総帥であり、慈善家としてもその名を知られる若き実業家だが、「私を夜の闇に包め」と秘書たちに命じることにより、醜悪な老人の顔を持つ世紀末の悪の帝王へと変貌を遂げる。
冷酷かつ非情な性格で、裏切り者や弱者に対し一片の情けもかけることはない。自らの欲望の赴くままに戦闘ロボットやモンスターを作り上げる一方、株価の市場操作や兵器売買により多額の利益を得ており、軍事・経済の両面から世界の支配を目論む。
演:美津井祐子(K)/ 山本恵美子(S)
常に桐原の傍で補佐に当たる側近。変装してのスパイ活動や、武器売買の交渉などが主な任務で、時には軍団員に対する制裁を与える役目も担う。
ネロス帝国軍4軍団
(画像は戦闘ロボット軍団)
ネロス帝国の誇る実働部隊。地下を移動する巨大闘技場「ゴーストバンク」を本拠とし、帝国の邪魔となる各国VIPの暗殺や他の大企業の妨害工作、それに動乱の続く外国における傭兵として、日夜暗躍を続けている。
サイボーグや強化服を着用した人間からなる「ヨロイ軍団」、高度な技能と多様な性格を有するロボットで構成された「戦闘ロボット軍団」、バイオテクノロジーによって生み出された合成生物が属する「モンスター軍団」、そして軍用兵器を元に造られた大量生産型のロボットを有する「機甲軍団」の4つの軍団が存在し、各軍団はそれぞれ時に協力し、また時にはしのぎを削る関係にある。
また軍団毎に10段階からなる階級制が敷かれており、軍団の外のみならず中でも立身出世を目指して熾烈な競争が繰り広げられている。
ヨロイ軍団の軍団長にして、帝国のNo.2に当たる実力者。帝国でも随一の剣の腕を持ち、初戦でメタルダーを打ち破って以来、彼にとって越えるべき大きな壁となる。
凱聖バルスキー
戦闘ロボット軍団軍団長。ロボットでありながらも誇り高さと厚い情を兼ね備えており、部下からの信望の篤さも他の軍団長の追随を許さない。
凱聖ゲルドリング
モンスター軍団軍団長。軍団のモットーたる「口八丁手八丁 卑怯未練恥知らず」を体現したかのような卑劣さと執念深い性格の持ち主で、関西弁や広島弁等が入り混じった独特の口調が特徴である。
凱聖ドランガー
機甲軍団軍団長。寡黙にして任務遂行にひたすら邁進する軍人肌であり、全身に装備された多数の兵装など、帝国の中でもトップクラスの攻撃力を持つ。
類似点のある作品
- ミカドロイド:1991年に東宝より発売された、特撮オリジナルホラービデオ作品。実際に当時の日本軍の技術力でメタルダーが造られたらどうなるかという、ある種の答えの一つとなっており、そこから転じて「リアルタイプメタルダー」と呼ばれることがある。ただし、メタルダーと違い此方はアンドロイドではなく、所謂サイボーグに近い存在である。
- 透明人間(1954年の映画):同じく東宝から上映された、旧日本軍の技術によって透明人間に改造されてしまった兵士のその後を描いた作品。ただし、此方もまた剣流星ことメタルダー本人と違い、れっきとした人間である。
- ???(リンク先ネタバレにつき、閲覧注意!):此方もれっきとした人間から転じた存在であるが、その誕生にも旧日本軍が大きく関わっている。また、本作はとある作品のリブートにあたるのだが、そのリブート元である作品もメタルダーと同時期に放送されていた。
コメント
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すべて見る57 VSモグラ獣人
お久しぶりです、そして遅くなりながら…明けましておめでとうございます。 今回は57段今年は辰年のため、辰→竜→土竜ととり、そしてめでたく仮面ライダーアマゾン50周年になったため、この勇気の士…の初登場シーンを書いて見ました。他のキャラも、大体5話目くらいのイメージです そして… 能登半島地震の被害に遭われた方々へ、心よりお見舞いを申し上げます 皆さまの安全と、一日も早い復興をお祈りしております これから復興支援をしたいと考えている民間の方…今はまだ支援物資を送ったり現場にいくのは危険と思われるので、それらが大丈夫と判断されるまでは、少しだけ待っていてください。現場の状況から送ったり来たりして大丈夫と判断されれば、例えばボランティア団体で、召集の依頼がくると考えられます6,227文字pixiv小説作品- プリキュア&ヒーローズ
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