概要
1986年(昭和61年)4月7日から1987年(昭和62年)3月9日まで、テレビ朝日系で毎週月曜日19:00〜19:30に全44話が放送された。
「スピルバン (SPIELBAN)」の名の由来はアメリカの映画監督スティーヴン・スピルバーグからだと言われている。
タイトルの初期案は『メタルマン』『スターロン』『星空児スペルバン』が挙げられた。
作品解説
本作は、これまでの宇宙刑事路線の集大成とも呼べる作品で、レギュラー出演者に『宇宙刑事シャリバン』で主役シャリバンを好演した渡洋史、『宇宙刑事シャイダー』の女宇宙刑事アニー役で見事なアクションを披露した森永奈緒美、多くの特撮番組で魔女や悪女を演じた曽我町子らといった豪華なキャスティングが実現した。
また、特撮ヒーローに欠かせない水木一郎による主題歌(更にその水木が主人公の父親役としてゲスト出演するというサービスも)、後に幾多の特撮作品を生み出すことになるマルチ作家雨宮慶太による秀逸なモンスターデザインと、かなりの力が入れられている。『宇宙刑事ギャバン』以来メインライターを務めてきた上原正三の、最後のメイン作品でもある。
前作『巨獣特捜ジャスピオン』同様、鍍金質のスーツや主人公側のメカニックなど、基本的なフォーマットは「宇宙刑事シリーズ」からの伝統を踏襲。主人公の変身時にその変身の原理を劇中で解説するなど、「宇宙刑事」お約束の演出も登場した。
また、本作に登場する悪の組織「ワーラー帝国」は「戦闘機械人」という、「宇宙刑事シリーズ」からの流れでは初の試みというべきロボット怪人を尖兵としており、その「戦闘機械人」が動く兵器そのものの奇怪かつ機能美あふれるデザインと設定コンセプトを盛り込んでいた。
更に本作独自の特徴としては、前述のヒロインの変身に加え、主人公の実父が改造されて悪の手先と化しており、更に生き別れの姉が主人公との再会を望みつつ、実はその姉までもが悪の女戦士に改造されていた……といった、家族のドラマが強調されている点が挙げられる。だが、終盤で姉がヘレンレディとして戦列に加わったため先述の悲劇的な雰囲気は拭払され、逆にコメディテイストの話が増えた。そして最終回では大きなどんでん返しが用意されていた。
なお、今作の効果音は多くの東映特撮のSEを担当した大泉音映ではなく、秘密戦隊ゴレンジャーや仮面ライダーストロンガーに参加した事があるフィズサウンドクリエイションのSEを採用している。会社名でピンとこない人もいると思われるが、ドラゴンボールや機動戦士ガンダムの効果音を作っている会社と言えばわかりやすいか。
ストーリー
地球の真水を奪うべく、ワーラー帝国が侵略を開始した。その野望を阻止する為、たった2人で立ち向かう戦士、スピルバンとダイアナの姿があった。
二人の故郷であるクリン星は14年前、ワーラー帝国の急襲により滅ぼされてしまった。生き残りの人々は宇宙船で2年間宇宙を彷徨ったのち、幼いスピルバンとダイアナに希望を込め、クリン星と環境のよく似た地球へと送り出した。到着までの12年間、生命維持装置の中で眠ることとなった2人は、地球の歴史や文化などの予備知識を与えられ、戦士へと成長していった。
故郷と仲間を失った2人に与えられた使命は、地球をクリン星の二の舞にしないこと。そして、ワーラー帝国に捕らわれたスピルバンの父・ベンと姉・ヘレンを救出すること。
しかし、スピルバンの目の前には非情な現実が襲い掛かる。父と姉が自分達の命を狙う敵として現れたのだ。ワーラー帝国の肉親の絆を断ち切る卑劣な作戦にスピルバンとダイアナは翻弄される。
それでも2人は共に励まし、支え合いながら、与えられた使命を果たすために戦ってゆく。
登場人物・キャスト
クリン星の人々
本編中では主に回想シーンで登場する。さまざまな人種が共存していることと高度な文明であるということが窺えるが詳細は不明。だが、最終回で思わぬ事実が判明する。
クリン星の生き残りの青年。20歳。城洋介は地球人としての仮の名前。
幼い頃から長期間、生命維持装置で眠っていたせいか、時々言動に幼児性が見受けられる。戦闘経験が浅い為、劣勢になりやすいが、怒りによって彼の潜在能力が発揮される。「結晶」のコードにより戦闘強化服ハイテククリスタルスーツを身に纏って時空戦士スピルバンとなり、ワーラー帝国と戦う。
スピルバンの武器
ツインブレード
筒状の柄から刃を伸ばす剣で、柄の両方から刃を出して使用。片方だけ刃を出すことも可能。
ツインブレードの刃を両方出し、エネルギーを注入してレーザー剣に変えて繰り出す必殺技。
ツインブレードを突き出すと共に刀身が伸びて相手を串刺しにした後敵に接近し、「アークインパルス!」の掛け声と共に両刃で交互に切りつける。
『スピルバン』DVDソフト化の際の座談会では、『スターウォーズ』に登場するダース・モールが両刃タイプのライトセイバーを使用していたことからスタッフの1人は「ルーカスはきっと『スピルバン』を見ていたんだろう」とこぼしている。
レーザースナイパー
スピルバンのハイテククリスタルスーツの右腰に収められている小型光線銃。100万度にも達するクリンレーザーを発射し、厚さ60cmの鉄壁をも貫通する。電子スコープを内蔵しており、その名前のごとく5km先からの狙撃で戦車を破壊することも可能。
後の話で改造が施され、威力が強化された。劇中ではキンクロンや戦闘機械人のみならず、ワーラー戦闘機や拠点防衛用の巨大なナバロン砲をも撃破して見せている。ダイアナのレディスナイパーと同時に射撃するダブルスナイパーという技もある。また、攻撃だけでなく非致死性のショックビームや治療効果のあるメディカルビームなどを発射できる。
スピルバンと同じくクリン星の生き残りで、彼の幼馴染み。18歳。ハイテククリスタルスーツを身に纏ってダイアナレディとなり、主にスピルバンのサイドキックとして戦う。活動的な性格で、それが災いして危機を招いてしまうこともあるが、自らを顧みず苦悩するスピルバンを慰める優しい心を持っている。変身前の得意技は、お尻から敵にのしかかるダイアナヒッププレス。ダイアナレディのハイテククリスタルスーツの腰部のホルスターにはレディスナイパーが収められている。
※イラスト右側の人物
スピルバンが幼い頃にワーラー帝国に拉致され生き別となった実姉。実の父であるドクターバイオにより少女仮面ヘルバイラ(下記参照)に改造されてしまい、彼女の意に反して弟のスピルバンと戦いを繰り広げることとなる。後に彼女の身を案ずるドクターバイオによってヘルバイラの変身を解かれ、逃亡の末にスピルバンと再会を果たすが、父に会いたいという一心でハイテククリスタルスーツを結晶するための厳しい特訓を受けヘレンレディとなり、戦いに身を投じることとなる。
スーツのデザインはダイアナレディと同じ(企画段階ではダイアナレディの色違いにするか、ヘルバイラのスーツをリメイクして流用する予定だったらしいが結局、どちらの案も没になっている)だが、レディスナイパーの代わりにヘレンカッターという鎌状の武器を用いて戦う。
ベン博士(演:水木一郎)
スピルバンとヘレンの父。生体工学の宇宙的権威だが、その頭脳に目を付けたワーラー帝国によってヘレン共々拉致され、ドクターバイオ(下記参照)へと洗脳・改造されてしまう。第43話で元の姿に戻り、スピルバン達のピンチを救うためにパンドラ生命機械人にウイルス菌を注射するが、パンドラ生命機械人の攻撃を受けて消滅してしまった。
アンナ(演:レイチェル・ヒューゲット)
スピルバンとヘレンの母。幼いスピルバンとダイアナに未来を託し、他の生き残りの人々と共に爆発する宇宙船と運命を共にした。
マリン(演:マリア・ヘルナンデス)
ダイアナの母。アンナと同じく、他の生き残りの人々と運命を共にする。
クリン星の生き残りの人々
ワーラーの侵略により滅びゆくクリン星を宇宙船で脱出し、2年間宇宙を彷徨ったが、遂に水と食糧の残量が大人1人分だけになり、彼らが最期の力と科学力を総結集させて作り上げていた戦闘艦グランナスカに幼いスピルバンとダイアナを乗せ、2人に未来を託して脱出させた後、幸せの歌を歌いながら自決。
宇宙船は爆発し、宇宙の塵となった。
発明ショップの人々
ショップの正式名称は「エジソン発明の店」で、言葉を話すロボットが客引きをしている。オーナーの小山大五郎は、ある事件をきっかけに城洋介と知り合い、以後彼等が店に訪れるようになるが、ワーラー帝国の起こす事件にたびたび巻き込まれてしまう。また、第30話以降は(最終回での回想シーンを除き)登場しなくなる。
小山大五郎(こやま だいごろう)(演:伊藤克信)
子供の心を忘れない自称発明家。「エジソン発明の店」で自らが製作した発明品を販売しているが、疑似科学的な内容のものも多く、お世辞にもその売れ行きは芳しくない模様。いったん売れた商品が返品されたこともある。一人称は「吾輩」で、非常に好色である。ダイアナに気があり、ワーラーに捕われた際には知能指数0と判定されたこともある。 古史古伝の類にも関心がある模様。
その名前と三枚目でお調子者な性格からも窺い知れるように宇宙刑事シリーズの大山小次郎的ポジションに相当するコメディリリーフ的な存在で、ストーリー前半から中盤の悲壮感漂う雰囲気を和ませる存在であった。
小山美和(こやま みわ)(演:佐藤美鈴)
大五郎の妹で彼の助手を務める。夢想家な兄の浪費癖に頭を悩ませながら家計のやりくりをしている。
トキオ(演:竹林潤一)
大五郎を慕い、発明品の製作を手伝う中学生。
健一(けんいち)(演:金杉太朗)、勝(まさる)(演:太田速人)、のり子(のりこ)(演:高橋美樹)
発明ショップへ遊びにやって来る小学生3人組。トキオと行動を共にすることが多い。
ワーラー帝国
守護神ワーラーを頂点とする悪の組織。ワーラーは綺麗な真水の中でしか生きられない為、ワーラーの生存と機械の洗浄に必要な水を狙って幾多の惑星を壊滅に追いやってきた。地球侵略の際、真水が豊富で、科学技術や産業が発展しているカナダを、第1話でスピルバンにカナダ基地を壊滅させられた後は日本を目標とする。空中に浮かぶ奇城ガメデスを本拠地としている。
ワーラー帝国の支配者。本体は液状の生命体で、真水の中でしか生きられない。
巫女として守護神ワーラーの意思を解することのできる唯一の存在。
ワーラー帝国機械軍団を率いる機械人間。
ワーラー帝国バイオ軍団を率いる幹部。その正体はスピルバンとヘレンの父・ベン博士。
リッキー(演:西脇美智子)
ワーラー帝国スパイ軍団を率いる女戦士。
シャドー(演:寺戸千恵美)
ガシャー(演:山科まこ)
リッキーの部下の女スパイコンビ。
23世紀の未来からやって来た守護神ワーラーの子孫。
ギローチンを20世紀に導いた、人語を話すゴールデンハムスター。
ヨウキ(演:須藤正裕)
守護神ワーラーが地球上に蓄積された人間の怨念から作り上げた新たな幹部。
少女仮面ヘルバイラ(CV:森永奈緒美)
スピルバンの姉ヘレンがワーラー帝国に変身装置を埋め込まれ、変身させられた姿。
デスゼロウ将軍が作り出すロボット怪人。
ドクターバイオが作り出す人工生物。
ギローチン皇帝が作り出した強化型の戦闘機械人。
ワーラー帝国のロボット戦闘員。
登場メカ
スピルバンとダイアナの地球での活動拠点となる超時空戦闘母艦。巨大ロボット形態のコンバットフォーメーション(ナスカロボ)、2連装エネルギー砲形態のカノンフォーメーションに3段変形可能。
ガイオス
グランナスカに搭載されている超時空戦車。上下2機のメカに分離可能で、コックピット部がX翼型戦闘機のジェットガイオスに、分離後の車体からドリルを展開した状態がドリル戦車のドリルガイオスとなる。ジェットガイオスは尾翼のガイオスビーム、ドリルガイオスは砲塔から撃ち出されるガイオスロケッターが主な武装。
ちなみに前作『ジャスピオン』のガービンとは違い、ジェットガイオスは全話を通してたった3回しか使用されなかった(初回以降はバンク映像の使い回し)。
ホバリアン
グランナスカに搭載されているスピルバン専用バイク。武装として車体前部にホバリアンレーザー2門を搭載し、主翼を展開しての飛行も可能。第14話でワーラーにクリンスターエネルギーを狙われ、鹵獲されて解体されかけるも、電子頭脳の進化によって自我を持つようになったことで脱出。同話のエピローグでは洋介にワインをかけてもらった。
スカルドン
デスゼロウ将軍が乗り込む戦車で、ガイオスと同様に車体上部がスカルスタッガー(スカルドンジェット)と呼ばれる戦闘機に、下部が巨大な回転ノコギリを備えた戦車のスカルローダー(スカルドンカッター)に分離する。毎回ガイオスとの体当たりに負けて崖から突き落とされたり、コンバットフォーメーションのグランナスカに蹴飛ばされる運命にある。
スカルジョーズ
ワーラー帝国の戦闘母艦。戦闘機や戦車を格納している。稲妻状のレーザーを放って地上にいるスピルバン達を翻弄するが、毎回カノンフォーメーションの的にされる。
余談
スピルパン、ダイアナ、ヘレンの結晶ポーズはそれぞれのイニシャル(S・D・H)をイメージしたものである。
どういう関係・経緯なのかは不明(恐らく開発者の趣味だと思われるが)だが、格闘ゲーム「ストリートファイター2」シリーズのキャラクター、キャミィの初登場作(スーパーストリートファイター2)での勝ちポーズの1つがまんまダイアナの結晶ポーズである。
関連タグ
東映特撮 メタルヒーロー(メタルヒーローシリーズ) スーパーヒロイン(変身ヒロイン) 巨大ロボット
巨獣特捜ジャスピオン→時空戦士スピルバン→超人機メタルダー
ネタバレ
以下、ネタバレ注意
クリン星とは1万年後の地球の姿であった。スピルバン達はワーラー帝国を追って、いつのまにかタイムスリップをしていたのだ。メインタイトルの「時空戦士」とはそういった意味があったのである。
そして、過去の世界でワーラー帝国が滅んだ事で歴史が変わり、クリン星は何事もなかったことになり復活するのだった。