曖昧さ回避
- タイムパラドックス(競走馬):本項目の現象から名前を採った日本の競走馬(1998~2022)。主な勝鞍はJCダート('04)、川崎記念・帝王賞('05)、JBCクラシック連覇('05・'06)。優駿揃いの2001年クラシック世代にあって遅咲きのダート馬として開花し、世代最高の9億7000万円超の賞金を獲得した。
- タイムパラドックス(Vaundy):Vaundyの曲。
概要
本来、時間は過去→現在→未来と一方通行であり、当然ながら後の時間に起こることは前の時間に起こっていたことを土台とする。
しかし過去にタイムスリップし、後の時間に起こる事に符合しない影響を与えてしまった場合、未来は変わってしまうことになる。そしてその結果がタイムスリップ行為そのものに影響を与えた場合、矛盾が生じてしまうことになる。
例を挙げると、ある人が自身の産まれる以前にタイムスリップして、自身を産む前の父母を殺害したとする。或いは殺害しなくとも別の人と結ばれるよう画策すれば、少なくとも「その人が」産まれてくることはない。しかしそれは即ち、上記で父母を殺害した(或いは婚姻を妨害した)人物もまた「産まれてこなかった」事になる。
そうすると必然的に上記の件も「起こらなかった」事になり、やはり「その人」は産まれてくるため、過去に行って両親を殺害することになり……と、堂々巡りが起こってしまう。
このように、「過去に遡ることが可能」と仮定すると起こってしまう矛盾(パラドックス)をタイムパラドックスという。
様々なパラドックス
- 親殺し:上記参照
- 情報のパラドックス
- その時点で存在し得ない情報が(スマートフォンが1970年代へ行くなど)過去へ行くと、矛盾が発生する。漫画の方の『キテレツ大百科』では、「キテレツ斎が未来から来た少年の乗り物を調査して大百科に著し、それを読んだ子孫が」という脳みそぐじゃぐじゃになるような話がある。同じく藤子・F・不二雄のSF短編『あいつのタイムマシン』ではこのパラドックスを逆利用し、「ただ念じる事でタイムマシンを手に入れる」という展開が描かれた。一方、アニメ『ゴジラS.P』では「パラドックスを発生させずに必要な情報を過去へ送る方法」が物語の鍵になっている。このようにして起源が存在しない情報やアイテムが発生することは因果のループやブートストラップ・パラドックスと呼ばれ、ある物理学者はどこからともなく現れるアラビアの妖霊にちなんでジンと名付けたりしている。
- いかさま師のパラドックス
- 生殖のパラドックス
- ある人が性転換してタイムトラベルし、過去の自分と子作りしてできた子を自分の生まれた時へ行って自分にする。タイムパラドックス云々の前に生物学的に無理。オメガバースのオメガ性だったらなんとか可能かもしれないが……。ロバート・A・ハインラインの古典的短編SF『輪廻の蛇』では、登場人物が先天的な半陰陽という設定で解決している。
- もう少し現実的なパターンだとチャールズ・L・ハーネスの小説『時の娘(原題:Child by Chronos)』が有名。母親との間に確執を抱えた娘が過去に行く。そこで娘はひとりの男性と出会い、その男性との間に子供ができる。しかし実はその男性こそが実の父親で、知らぬ間に近親相姦していた、というモノ。そして確執を抱えていた母親は、過去で自分自身を生み育てていた娘自身ということが判明する。この場合の問題は最初の女(一番初めに母親になった娘)はどこからやってきたのかということである。
- 広瀬正の小説『マイナス・ゼロ』や、未来版『シンプソンズ』といえるSFアニメ『FUTURAMA』、コロコロ連載の漫画『運命の巻戻士』の第27話(ネタバレ注意)にも、似たような展開がある。
- 「父親と息子が同一人物」だと上に挙げた『運命の巻戻士』の第35話(ネタバレ注意)の例がある。「母親と娘が同一人物」だとミトコンドリアDNAは母系遺伝のため問題ないが、「父親と息子が同一人物」だと父親由来のミトコンドリアDNAはまず受け継がれない(受け継がれることも稀にはあるが、母親とのミックスになる)(注)」ため、母親と父親はあらかじめ同じミトコンドリアを所持していないと息子と父親が同じDNAにならない。
- 自己成就の予言
- 予言や未来から得た情報を元に悲劇を避けようとしたが、悲劇を避けようと行った行為がむしろその悲劇を引き起こしてしまうケース。
- 起源は古く紀元前472年の古代ギリシャの悲劇『オイディプス王』において描かれている。テーバイの王ラーイオスは「お前の息子は父を殺し、母との間に子を成すだろう」という予言を聞き、生まれたばかりの息子を殺すよう部下に命じる。しかし殺せなかった部下は息子を山に捨て、隣国コリントスの王ポリュボスが息子を拾う。オイディプスと名付けられた息子が成長すると彼もラーイオスと同じ予言を聞き、ポリュボスを殺さぬため国を出て、偶然出会ったラーイオスを実の父と知らぬ間に殺してしまう。その後オイディプスは旅の途中で怪物スフィンクスを討伐、その功績で王の死去で混乱の最中にあるテーバイの王に選ばれ、先王の妻イオカステーと婚姻し4人の子に恵まれる。ラーイオスとオイディプスは2人とも予言を避けようとしたが、巡り巡りって予言を実行してしまっているのである。
- タイムトラベルのない現実世界でも比較的起こりえることで、災害時などに「〇〇の買い占めはやめましょう」とニュースで報じると危機感を持ってしまった人々が逆に買い占めてしまうことが度々報告されている。
- 予言や未来から得た情報を元に悲劇を避けようとしたが、悲劇を避けようと行った行為がむしろその悲劇を引き起こしてしまうケース。
解消の方法
- そもそも、干渉ができない
- タイムトラベル先で歴史を改変するような行動を試みると必ず何らかの妨害が起こって改変に失敗する(後述の『歴史に折り込み済み』と組み合わされる場合もある)。本末転倒になってしまうが、宇宙(の因果律)が矛盾を許容しないために、過去へのタイムトラベル自体がどうやっても不可能なパターンもある。「steins;gate」や「QuantumBreak」などでは観測してしまった事象は改変できないのでどのように回避するかが主題の一つになっている。
- 歴史に折り込み済み
- 「未来からタイムトラベラーが来て歴史改変した出来事が既に実際に起こっていた」「改変のために行った(はずの)行為が史実における結果をもたらしていた」というパターン。映画『サマータイムマシン・ブルース』や『ドラえもん』の一部エピソード、そして「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」などで採用されている。やや特殊な例としてはこの作品(ネタバレ注意)も該当例に上げられる。
- 自己無矛盾の法則
- 歴史の修正力
- 改変は局所的に成功するが、大局的には「本来の歴史」にそった流れに徐々に戻っていくパターン。事象の積み重ねで修正されるのでスタート時点からみて遠い過去ほど改変が困難。また、あまりにも極端な改変を行ってしまうと、修正力による反動も大きくなってしまい、因果応報に等しい末路を迎えてしまう事さえもあるとされている(例で挙げるなら、「未来における競馬や競輪の博打の記録を悪用し、過去の時代にて世界経済が傾いてしまう程の莫大な富を築いた」結果、「稼いだ本人が事故や暗殺によって突然死を遂げる事で、無に帰してしまう」等)。タイムマシンH.G.ウェルズ原作の映画『タイムマシン』(2002年版)などで採用。『T・Pぼん』でも一部この概念が使われているほか、ドラえもんがのび太の人生を改変してもセワシが問題なく生まれてくる理由はコレで説明される。テレビドラマ版『JIN-仁-』にて物語のキーワードになっていたので比較的有名な概念と思われる。その後、ある3Dアクションゲームでも採用された。
- パラレルワールド
- 詳細は当該項目を参照。この解決方法は更に、a:タイムパラドックスが発生した時点で分岐する説と b:元から分岐していた説がある。『ドラゴンボール』の人造人間編およびその続編エピソードで描かれている。『スクールガールストライカーズ』でも、Ep.3でこれについて言及するシーンがある。『仮面ライダー電王』はより現実的なa説を採用している。タイムラインを後からでも増やせるので連載モノや続編向き。インターネット上でタイムトラベラーを自称していたジョン・タイターはこの説を唱えており、「世界線は無限に分岐しており、移動した往路を正しく戻ってもよく似た別の世界にしか帰還できない。並行世界がタイムトラベルによって発生するのか元から存在しているのかはまだわかっていない」と説明している。
- 宇宙が消滅する
- タイムパラドックスが起こった瞬間にその宇宙がなくなることで矛盾を解消する。話が終わってしまうのでこれを採用した作品は滅多にない(あるいは設定上だけに留め、いよいよとなるまではタイムパラドックスな状況に至らないのを基本展開にする)と思われる。(例:SF映画バック・トゥ・ザ・フューチャー)
- 徐々に影響が出る
- 歴史改変の影響が段階的に現在世界に反映されていき、最終的に完全な別世界に塗り替えられてしまう。小説『サウンド・オブ・サンダー』が有名な他、厳密には違うが週刊少年ジャンプで連載されていた『封神演義』などがこの概念を理解しやすい。
- そもそも、矛盾していない
- 時間が過去→現在→未来へと順序よく並んでいるのではなく、過去と未来あらゆる時点が網目状に相互に結びついているので、「未来(であると同時に過去)に原因→過去(であると同時に未来)に結果」が普通に存在できる解釈。草野原々(節足原々)氏によるSF作品「最後にして最初のアイドル」(原題『「最後にして最初の矢澤」)で採用。
- その他
- 前述の『スクールガールストライカーズ』では結局、人智を越えた存在によって無理やり解決したと語られるシーンがある(ただし完全に解決した訳ではない)。このように、神などの高次元の存在によって、ご都合主義で解決させる方法もある。
- 一方『ウルトラマントリガー』のように、過去改変の結果起きたタイムパラドックスを無視して強行突破する例もある(作中の状況的には「歴史に折り込み済み」と「歴史の修正力」と「記憶改変でのつじつま合わせ」が同時に起こっており、物的証拠は改変後のモノ、記憶は基本的には分岐点までは改変前のモノという状態になっている)。これはこれで物語は成り立つが、人によっては話の筋が通りにくくなるという諸刃の剣でもある。『スタートレック ヴォイジャー』の主人公キャスリン・ジェインウェイも「タイムパラドックスを解消する方法は簡単よ、考えない事」という迷言を残している。
- 『仮面ライダーギーツ』では余りにも遠い未来、かつ滅亡の結末が定まっている為に改変自体が限りなく無影響に近いというある種の「答え」を出している。この結果当作の未来人の中で現代への配慮など全く考えない者が、現代世界を荒らし尽くす事態が何度か起きている。というか、本作のメイン要素自体が「こちらに無影響だから何をやっても良い」という意識を感じさせる仕様にもなっている。
脚注
父親由来のミトコンドリアDNAが発見され、「ミトコンドリア・イブ」が覆る可能性が示される
関連項目
パラレルワールド:上記パラドックスを解消させる手段の一つ。
タイムパラドクス:表記ゆれ
- Steins;Gate(世界線)
- 上記の解消方法すべてのいいとこどりをしたもの。
- METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER
- シリーズ第一作以前の時系列を描いた作品なのでゲームオーバーの際、コンティニューしないと「TIME PARADOX」扱いになる。また、後の時代の作品でも引き続き登場するキャラクターを殺傷した場合も「TIME PARADOX」となってゲームオーバーとなる。
- Quantum Break
- 起きた出来事の改変は不可能となっており、どのように干渉しようと同じ結果となるが、観測された出来事に矛盾しない範囲であれば改変が可能となっている。
- 同作にはタイムトラベルに由来する未来視により未来がどうなるかを知って選択をする場面があるが、まだ起きてはいない出来事の為か改変が可能となっている。
- タイムパラドクスゴーストライター
- タイムパラドックスを主題に置いていたが、描写の杜撰さから色々と物議を醸した。
- チャイヌ、ハイド(運命の巻戻士)
- タイムリープ系の漫画のキャラクターで、タイムパラドックスの被害者であるキャラクター。ネタバレ注意。