スマートフォン(英: smartphone)は、携帯情報端末(PDA)を融合した携帯電話(PHSを含む)端末。汎用のコンピューターとしての性質を備え、従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)と対置される存在である。略称は、「スマホ」「スマフォ」など。
2010年代以降の携帯電話端末の主流で、音声通話や通信機能だけでなく、ビジネス、コミュニケーション(SNS)、ゲームなど多種多様なアプリケーションが組み込み可能である。
概説
かつて(2000年代)このジャンルはPDAが得意とするスケジュール・個人情報の管理などに重きを置き、主にビジネスマンに愛用されていた。Symbian、WindowsCE、BlackBerryなどの多彩なプラットフォームがあり、ポインティングデバイスもペンやタッチパネル、トラックボールなど様々で、形態もスライド式キーボードがついたもの、テンキーのついた従来型携帯電話に近いもの、二つ折りのものなど混沌としていた。
現在の形態(大型のタッチパネルディスプレイを備えたスレート状端末)のスマートフォンを決定づけたのは2007年のiPhoneの登場による。当初iPhoneはソフトウェアの追加が不可能だったが2008年のiOS2.0でサードパーティにアプリを開放、スマートフォンとして機能するようになり、同年までに600万台を売り上げた。
これを見た各メーカーは同様にタッチパネルに最適化されたAndroidベースのスマートフォンを次々とリリース、現在ではこの市場はほとんどがAndroidとiOSの両OSに占められるにいたっている。
2000年代に日本国内で普及していた携帯電話ガラケーは、その大半にカメラ・電子メール・Webブラウザ機能などが搭載されており、サードパーティのアプリのインストールも可能(JAVA、BREW)など多機能であった。しかし、「搭載OSの技術情報が非公開である」「それによってフリーウェア等の開発・導入が困難である」など、PDAと呼ぶには汎用性・カスタマイズ性が欠けていた。このことから、従来の多機能携帯電話(フィーチャーフォン)はスマートフォンに含めないのが通常である。
従来の携帯電話と比べた場合、大画面の液晶画面を搭載し、通信量も多いので、バッテリーの持ちが悪いのが欠点だった。これを補うためモバイルバッテリーを持ち運ぶ人も少なくない。特に初期のAndroidでは待ち受け中も電力を食う「お行儀の悪い」アプリが少なからずあり、「いつの間にかバッテリーが無くなっていた」という事態がしばしば起こっていた。ただ時が経つにつれてスマートフォンの技術の成熟化とボディの大型化が進み、それに伴ってバッテリーの大容量化も進んだことから、従来のように即座にバッテリーが上がることはなくなってきている。
パソコンとスマホ
スマホやその派生であるタブレット端末は、ケータイをタッチパネル型に改良したような代物――に見えて、実は「携帯情報端末に電話機能を付加したもの」である。
もっとかみ砕いて言えば、スマートフォンやタブレットは「モバイル専用に一から作り直したパソコン」である。パソコンの(ハード的な)拡張性を削って無線環境に特化し、バッテリーをできるだけ食わないようにOSから工夫されている。
フィーチャーフォンと比較して便利な点は、パソコンのように「自分好みに機能を増やせる」点、そして「一度に複数の機能を使える」点であろう。ただし、パソコンとはソフト的な互換性がなく、従来のパソコンのアプリがそのまま動かない。しかし、現在では動画編集やフォトレタッチなどのクリエイティブ系のアプリや、ワープロや表計算などのビジネスアプリも充実し、パソコンのニーズの多くを置き換えるに至っている。
2010年代からはクラウドコンピューティングによる多数のデバイスの同期を前提に、PCとモバイルデバイスのOSが作られるようになり、PCからのデータの移行そのものを省略可能になった。
スマートフォン定着の裏側
登場以降、爆発的に生産数を伸ばし、かつての携帯電話を「ガラケー」と称して過去のものに追いやるなど、日本国内でも急激に台頭した。……というのも、旧来のケータイに比べて開発費が安く済むため、メーカーがその点に食い付いたというのが大きい。
旧来のケータイは、新機種の開発ごとに機体もソフトウェアも新規開発するという、大変に手間と予算のかかる作業を必要としていた。特にソフトウェア開発は、機体以上に手間も予算もかかるという。ガラケー時代末期にはauのKCP+など、キャリア主導でプラットフォームの共通化(基本的なハードウェア仕様とOSを共通とし、その上で端末メーカーが独自仕様を実装する)が試みられたこともあったが、こちらはこちらでハードとの相性やソフトウェア自体の重さに悩まされていた。
ところがスマートフォンは、ソフトウェアの主要部分はプラットフォームを提供している企業により既に開発されているため、新規開発部分は周辺機能だけでよく、開発にかかる予算を大幅にカットすることができる。大手メーカーでは既に従来型のケータイの開発は行われておらず、現在売られている従来型携帯電話は内部的にはAndroidが動いている端末となっている。
スマホの爆発的な普及はガラケーだけでなく、パソコン(コロナ禍のリモートワークの普及で見直されたが)やデジタルカメラをはじめ、テレビ、雑誌、新聞、腕時計(スマートウォッチの影響もある)、ゲーム機など様々なものを衰退に追い込んだ。
なお、Androidは正規のアプリストア以外でも野良アプリが自由にアプリを提供できるが、コンピュータウイルスの危険とも隣り合わせのリスクを抱えている。一方、iPhoneはアプリの配信をAppStoreのみに限られているが、不正アプリが紛れ込むリスクは極めて低く(正規アプリを装ってAppleの審査を潜り抜け、隠し機能で野良アプリストアに誘導する不正アプリは過去に存在した)、ウイルス対策ソフトが無い。
プラットフォーム
現行のOS
iPhone
iOS(旧iPhone OS) - Appleが開発した自社ハードウェア専用のOS。XNUカーネルやCocoa Touch、WebKitなどmacOSと共通するコンポーネントから構成される。セキュリティを高めることとユーザー体験の共通化を図る考えから、Androidやパソコン用OSに比べカスタマイズが大幅に制限されており、ユーザーインターフェース(UI)の統一性が高い。
Android
Android - Android社を買収したGoogleが開発しているOSで、世界的には市場の大半を占める。LinuxカーネルやBlink(WebKitから分岐したレンダリングエンジン)、Dalvikと呼ぶ独自の仮想マシンなどで構成される。端末メーカーによるカスタマイズが許可されており、OPPOのようにGoogleのものとは大幅に異なる独自のUIを実装しているメーカーも多い。カスタマイズが施されていない標準のAndroidは通称AOSP版と言われる。開発元であるGoogle自社ブランドの端末も存在する。
終息したOS
BlackBerry
BlackBerry OS - 企業利用を念頭に、遠隔管理とアクセス、メッセージングに重点をおいていたOS。初期のバージョンでは電話をかけることができなかった。キーボードが付いていたことで知られる。
Symbian
Symbian OS - S60やMOAP-SなどのUIレイヤと組み合わせて使用される。日本ではNTTドコモ向けの携帯電話で多数採用されているが、通常はS60またはUIQを搭載したもののみがスマートフォンに区分される。iPhoneやAndroidに押され終了した。
Windows Phone
Windows Mobile - UIはデスクトップ版のWindowsと似ている。2000年代末のスマートフォンでよく採用され、日本ではW-ZERO3シリーズの発売で広まったが、Windowsを名乗っていてもPC版Windowsのアプリが動くわけでもなく、2010年代半ばに終了した。
Firefox OS
Mozillaによって開発されたスマートフォンとタブレットなどの携帯情報端末を主なターゲットとして開発されたオープンソースオペレーティングシステム。言ってしまえば、androidの廉価版。
androidを母体としているものの、androidとは互換性がない。2016年2月4日にサービス終了した。
主なスマートフォンメーカー
- Apple
独自プラットフォームのiPhoneが日本市場では過半数を超えるシェアを獲得している。端末は比較的に高価格帯が中心であるが、ミドルレンジの入門機も用意している。金額ベースで世界市場シェア1位を誇る。
スマートフォン出荷台数世界1位を誇るAndroid端末の王者。Galaxyシリーズが有名で、ハイエンドから廉価モデルまで幅広く用意している。近年はスマホ市場は飽和状態であるため、スタイラスペン内蔵のものや、折りたたみモデルなどかなり尖った端末を発売している。
比較的低価格でコスパに優れたモデルが多いが、ゲーミングスマホのMateシリーズなど高付加価値のモデルもある。アメリカ政府とEUの制裁によりグーグルのアプリが使えないなどの影響があり、西側諸国では出荷台数を急速に落としている。
2010年にスマホ専業メーカーとして創業し、急速に台頭した新興家電メーカー。端末はハイスペックでありながら比較的に安いものが多い。現在ではスマホ以外のスマート家電も手がけている。基幹ブランドのXiaomiのほか、安価なRedmi、POCOといったサブブランドを持つ。
中国ではXiaomiに並ぶ大手スマホ専業メーカー。かつてはDVD・ブルーレイ再生機器やオーディオ再生機器なども手がけていた。中国国内ではVivoに次ぐ2位、世界ではサムスン、Apple、Xiaomiに次ぐ4位。日本では格安スマホのメーカーとして知られる。端末は自社工場で生産しておりハードウェアの信頼性は高いものの、Androidを独自にカスタマイズした独自UI「color OS」の評判は悪い。
中国の企業。欧米でも知名度が高く、世界シェア5位を占める。日本でも一時期シェアを急上昇させていたが、他の中国メーカーと同じく制裁の影響を受けた。現在の国内においてはエントリーモデルを中心に展開しているが、自社ECサイト内では国外向けのハイエンドモデルを購入可能である。
ZTEの元子会社で、現在は関連会社のスマートフォンメーカー。
内部に冷却ファンを備え、正面カメラを画面の内側に埋め込んだゲーミングスマホのREDMAGICを展開している。
- モトローラ・モビリティ
元はモトローラのモバイル通信機器事業の分社化により設立された企業。その後Googleが買収、更にLenovoに売却され、現在はLenovoの100%子会社。日本では日本向けエントリーの「moto g」シリーズ、ミドル~ミドルハイの「motorola Edge」シリーズが展開されている。
Google Pixelシリーズでスマートフォンを販売している。
台湾の企業。マザーボードやノートPCで知られるがスマホ事業も行っている。以前はミドル機も販売していたが、現在はハイエンド機を中心としている。以前はintel製のSoC採用した端末やフラグシップ級のDACを4基も搭載した端末等など一風変わった製品も出していた。現在は小型ハイエンド機の「Zenfone」と大型の「Zenfone Ultra」、ゲームに重きを置いたゲーミングスマホ「ROG Phone」を展開している。
日本のスマートフォンメーカー
かつて携帯電話などこの手の小型ガジェットは日本企業が大得意としたジャンルだったのだが、大半のメーカーが撤退に至り、平成電機業界最大の悲劇として語られる。
液晶テレビとの共通ブランドAQUOSシリーズで展開。鴻海傘下となり経営再建し、日本国内のシェアはAppleに次ぐまでとなった。日本国外では一部アジア諸国で展開しているが世界シェアは低い。ラインアップはエントリー~ミドル端末が中心で、キャリア専売のエントリーモデルも用意されている。
旧ソニー・エリクソン。Xperiaシリーズで展開し、日本国内のAndroidスマートフォン市場でシャープや富士通と1、2位を争っていたが2020年代は苦戦。端末は廉価モデルからミドルレンジが売れ筋だが、カメラや映像に音響の全てにこだわりたい人向けのハイエンド端末も用意している。日本以外ではアジア市場で展開し、2010年代前半にはサムスンなどと張り合う主要メーカーだった時期もあるが、その後は凋落した。
シニア向け「かんたんスマホ」や、高耐久モデル「TORQUE」シリーズなどを手掛ける。2021年にはバルミューダブランドのOEM製品を製造した。2023年5月に個人向け販売からの撤退を表明したものの、その後も新機種を発表し続けている。auなどのキャリアを通しての販売は「法人向け」という扱いらしい。
- FCNT
富士通から分社化したメーカー。エントリー~ミドルのarrowsや老人向けのらくらくホンで展開したが苦戦し、2023年5月末に経営破綻。現在はLenovoの傘下になっている。
2010年代前半、ELUGAブランドを主力に「Lumix」「TOUGHBOOK」などのブランドも使って展開していたが苦戦し、わずか2年余りで個人向けを撤退した。現在は法人向けのタフネスエントリー端末を細々と展開している。2017年にインド市場限定でPanasonic/SANYOブランドのELUGA Phoneを復活させている。
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