概要
ワードプロセッサを略した、コンピューター上で文書の作成・編集・印刷ができるシステムのことである。
上記をオールインワンで(プリンタ、ディスプレイ、キーボード、ソフトウェアを全て内蔵するか同梱)実現したワープロ専用機と、汎用のプラットフォーム上で動作するソフトウェアとして実装したワープロソフトがある。日本では単に「ワープロ」というと前者を指す場合が多かったが、専用機は既に廃れて久しく、若い世代には「ワープロ専用機」と呼ばないと通じなくなっている。
1990年代まではワープロソフトでも紙への出力を前提として文書を作成することが多かったが、2000年代以降はインターネットの普及によりペーパーレス化が進展。PDFや.docxなどのデジタルファイルをメールの添付ファイルとしてやりとりすることが多くなり、2010年代にはスマートフォンなどで外出先に電子文書を持ち出すことが容易になった。このため、ワープロソフトを使っていてもプリンタを持っていない人も増えている。
ワープロ専用機
コンピューターで日本語を入力するためには漢字かな交じり文に対応するため、かな漢字変換機能(インプットメソッド)を備える必要があった。
欧文ワープロは既に1964年に製品化されている(IBM MT/ST)。しかしアルファベットを使う文化圏では安価なタイプライターで十分対応できたため普及は遅れ、ようやく1970年代末になって一般家庭にも浸透しはじめたが、マイクロコンピュータ(パソコン)の普及と重なってしまった。日本では1960年代からかな漢字変換システムの研究が本格化するものの、日本語ワードプロセッサが実用化されるのは1970年代後半まで持ち越されることになる。
シャープは1977年に試作品を開発したものの製品化は遅れ、先を越すように1978年に東芝が日本初のワープロ専用機「JW-10」を発売。それから1年後にシャープも「書院WD-3000」を発売した。1980年代に入ると富士通、NEC、キヤノン、松下電器(現パナソニック)、ソニー、カシオ計算機、セイコーエプソンなど電機メーカー各社から相次いで専用機が発売され、価格も急激に廉価となり、それまでキーボードで文書を作成する習慣のなかった日本でも瞬く間に普及した。
大半は印刷機能を内蔵したオールインワンでプリンター部分は熱転写方式を採用していており、インクリボンという消耗部品を使って行うが、その原理上インクリボンなしで印刷できる感熱紙が使用可能だった。プリンターを内蔵せず、手のひらサイズで折りたたみできる携帯式ワープロ(OASYS Pocket、1991年)も登場した。
1990年代以降はWindowsパソコンとワープロソフトの普及に押されワープロ専用機の市場は縮小していき、2001年までに各社とも製造終了した。
しかし、年配の人には「ワープロ専用機の方がいい」という人も少なくはなく、ポメラや年賀状用フォトプリンタなどワープロ需要の一部を満たすものは存在するものもあるが、まだまだそれだけではカバーできない部分も多いため現在でもワープロの買取、修理、販売を手掛ける企業が存在し、たまに新聞広告を出したりしている。
富士通の「OASYS」は特徴であった親指シフトを引き継いだワープロソフトとなって続いていたが2021年5月に販売終了、2026年6月にサポート終了となる予定である。一方シャープの「書院」はスマートフォンの日本語入力システム「S-Shoin」として形を変えて活用され続けている。