DTP
でぃーてぃーぴー
"Desktop publishing"は、そのさきがけとなったページレイアウトソフト「PageMaker」の販売開始にあたって、Aldus社の社長、ポール・ブレイナードが1986年に提唱した言葉。同様に、Desktop prepressをDTPと言う場合もあるが、この場合は版下、製版フィルム、プレートなど印刷工程上の出力、もしくは印刷物を直接出力できる形にまですることであり、上記のDTPと区別するためにDTPr、DTPRと呼ぶ。
DTPの分野では、歴史的にMacintoshが多く利用されてきたが、これは当時唯一の実用的なWYSIWYGを実現したシステムであり、ハードウェアやアプリケーションソフトウェアが先行して充実していたことが理由。しかしWYSIWYGではなく、問題が多いとされるWindowsの環境でもアプリケーションの対応は進み、DTPにWindowsが使用される割合も増えてきている。
UnixおよびLinuxはDTPの流れの中で主人公ではない。しかし電算写植システムにはUnix上で動いていたものも多く、また1990年代後半からはDTP業務専用のファイルサーバなどの分野で、Linuxが勃興しつつある。現状では小さな動きだが、他の分野と照らし合わせると、将来的には無視できない存在。
DTPの発祥地はアメリカ合衆国であり、現在のDTPの萌芽はアメリカの3つの企業で芽生えた。最初の実用的なDTPアプリケーションを開発したのはAldus社であった。PageMakerというソフトウェアは、Apple社のMacintoshプラットフォーム上で動作した。PageMakerは、Adobe社の開発したページ記述言語、PostScript技術を用いて、WYSIWYGを実現したほか、コンピュータとプリンターの組み合わせが変わっても出力結果を維持するという「デバイスインディペンデント」(使用機器に依存しない)な性質を実現していた。
プラットフォームをつくりだしたApple、ページ記述言語を生み出したAdobe、そして実用的なアプリケーションを世に送り出したAldusによって、DTPはそのスタートを切った。この3社の頭文字を取って、これを『3A宣言』という。
なお、Aldusはその後Adobeに買収され、PageMakerはAdobe製品として販売されることとなり、現在に至っている。
印刷・出版業界、特に日本の業界においては、QuarkXPressがデファクトスタンダードであったことから、「Macで組む」という言葉は、「QuarkXPressで組む」という意味であることが多かった。前述の通り、最初に発売され、利用が進んでいたのはPageMakerであったが、Quark (XPress)は、早い段階でカラー対応を果たしたほか、扱いやすい操作性と軽快な動作などが受け入れられ、その価格(最も普及した日本語版3.3は約20万円)にも拘わらず、市場を席巻していった。
Macintoshによる組版は、仕上がりをその場で確認できることや、文字通り机上で、ぎりぎりまでデータ修正が可能なことなどのアドバンテージを持っていたが、当初は扱える書体が少なかった。だが活字・写植機向けに書体を開発していたベンダーや、あるいはDTP時代から書体開発を始めた新興勢力が次々と参入し、和文PostScriptフォントのラインナップを豊富なものにしていった。
そしてMacintosh対応のイメージセッターの発展や、印刷会社、あるいは製版専門の会社などにおいて対応がなされたことで足場が整い、また製作コストを下げたいという出版社の需要の中で、次第にDTPへの移行がなされていった。
DTPにおいては、2009年現在で世界のOS市場の9割を占めるWindowsではなく、Macintoshが圧倒的シェアを占めている。その要因としては、多くのDTPソフトがまずMacintosh向けに作られたことなど、DTPに使うための環境が整っていたことが挙げられる。
WindowsのDTPではTrueTypeフォントが使われることが多いが、スプライン曲線を使うTrueTypeは、ベジェ曲線を使うPostScriptフォントに比べ多彩な曲線の表現において見劣りがした点や、無数のTrueTypeフォントが乱立しデファクトスタンダードとなるフォントベンダーが出現しなかった点(これにより、データの標準化が困難となる)、ほかにも様々な要素がある。
しかし顧客の要望がMicrosoft Wordで作成したビジネス文書を印刷する、というものであるとすれば、印刷会社が「それはDTPではないので、うちではできない」と言うことはできない。印刷会社がWindows対応をしていく中、Windows向けDTPソフトも次第に充実していった。ただし、同じアプリケーションでも完全な互換性が確保できず、Windows版で作ったデータをMacintosh版で開くと文字がずれているなどの現象が時におきていた。それには(特に日本では)なによりもフォントの問題が係わっていた。WindowsとMacintoshでは採用している文字セットが異なるため、特に英数字や外字において完全な互換性を維持できなかった。また、横組みでは問題なくとも縦組みの箇所のみ画面表示に問題がある、などの例もあった。
和文フォントのトップベンダーとなっていたモリサワからはViewフォントと呼ばれる、Windows上で組版をする際に同社のPostScriptフォントを指定できるフォントが販売されて一定の支持を受けていたが、英数字などの互換性がないという問題があった。
しかし昨今においては、OpenTypeフォントと、それに対応したレイアウトソフトの登場によって新しい状況が生まれつつある。Adobe社のAdobe InDesignはいち早くOpenTypeに完全対応した。このソフトは同じバージョンで同じOpenTypeを使っている限り、Windows版とMacintosh版で完全な互換性があり、OpenTypeの各機能を扱える。
新たにDTP部門を立ち上げるなど新規の設備投資においては、Windows版が伸びている。現に、地方自治体による市政だよりなどの内製化においては、WindowsとMacintosh間における文字セットの差異の問題、異なるOSを並行稼動させるコスト・スキルの問題などのためにWindows版が主に導入されている。
Appleは従来のMac OS 9から、Mac OS Xへの移行を進め、2002年のWWDCにおいてMac OS 9の埋葬という演出までしてユーザーに新OSへの移行を奨めていたが、(アメリカにおいても)印刷・出版業界においてはなかなかそれは進まなかった。その最大の理由はQuarkXPressがMac OS Xに対応していなかったことと言われていた。2004年発売のQuarkXPress 6.5Jから対応しているが、Mac OS Xに移行するということは高機能で自由度が高いInDesignを中心としたAdobe Creative Suiteでのワークフローへの移行と同義になり、OpenType ProフォントやPDF導入によるコスト削減とともに移行が進み、2009年までに8割以上がMac OS XでのDTPとなった。
1990年代後半以降、爆発的に一般家庭へとパソコンが普及したことで、家庭でも手軽に印刷ができるようになった。そしてWebの急速な進化に伴い、印刷需要の激減していくDTP業界は大きな打撃を受けることとなった。そして近年では紙媒体から印刷の電子化という新しい形態へ移行が進んでおり、電子印刷や電子書籍など、この現状を打開すべくDTPはこれまでと違ったありかたを形成しつつある。
イラスト絵描きの作品が多い中、作品数の少ない珍しいジャンルに
同人マンガイベント用の印刷・製本、ポスター、チラシ、ステッカー、シール、POPなどが存在する。
(厳密にpixivではジャンル分けが存在しない。)
最終的に印刷を目的とし、IllustratorやPhotoshopで「デザイン」したりと、「描く」というより「組む」ことが主だが、製品パッケージや広告などのメッセージ性といった面で、人物画やキャラクターを描画することも。
しばしば「絵だけの物を美術・芸術的であり、文字入りはデザイン・メッセージ性からDTP」といった風に思われがちだが、必ずしもそうではない。
最終的に印刷するとディスプレイ表示した色とは異なる場合がある。これは、PC上でRGBからCMYKへ変換されていないことが原因。まれに変換してもプレビュー表示のようには印刷されないことがある。