概要
この行為は自主出版ともいい、対義語は商業出版である。この形式には2つの種類が存在する。
なお、「出版社が内部で企画して出版する」場合や「自ら出版のための会社を立ち上げ、書籍等を発行する」場合は「業として出版を行う」に該当しこれに含まれない。
1に関して
いわゆる同人誌などがこれに当たる。この場合、基本的に書店での流通は行われず、通販等による販売となる。なお、印刷や販売等を外注することがある。
2に関して
「本を出しませんか?」という広告を新聞等で見かけるかもしれない。これは一部出版社の副業として「書籍を出版し、流通に乗せる代わりに編集や印刷、流通等にかかる経費等を負担してください」という商売である。場合によっては作成のみで流通に乗せない場合も存在する。自身の作品を確実に世に送り出せる手段であるが、出版社による商業主義な面が強く、トラブルも存在したといわれる。
内容等
自伝や趣味、例えば詩や俳句、あるいは写真など、また自らの経験や主張をまとめたものなどが存在している。
電子出版
近年のテクノロジーの進化により「文字や画像をデジタルのデータに変換し、それに適合した形式で販売する」電子出版という形式が発生し、この形式であるならば個人でも出版が少し近くなったが、販売など、まだ個人やそれに類する集団による出版には大きなハードルが存在している。
備考
評価について
徳冨蘆花の『黒潮』や島崎藤村の『破戒』、武者小路実篤らが創刊した同人誌『白樺』など、当初は自費出版であった作品が高い評価を得て名作として読み継がれる例はそれなりに多い。
というか、近代になって製本・出版が大規模な商業化を迎える以前は、市井から発表された諸作品の多くが自費出版であった。
ただし、確定された商業ベースから発表されない以上は(よっぽどでない限りは)人の目に印象に残らないまま埋もれていく作品も多い。
事実、1924年(大正13年)に宮沢賢治が自費出版した童話集『注文の多い料理店』は当時の文芸界からまったく評価されず、周囲からもこれら賢治の活動が「ボンボンの道楽」のようにしか捉えられていなかったとされる。彼の諸作品が有名になっていったのは1933年(昭和8年)に賢治が没してしばらくたった戦中・戦後以降であった。それも、関係者による熱心な「布教活動」が行われたことに依るものである。
売れなかった作品は即絶版となり、もちろん在庫は著者が抱えることになるため、奇跡的にヒットしない限りは間違いなく赤字となる。
作品のクオリティについて
自費出版は出版社によるビジネスの一環であり、言ってしまえば出版社としては出来るだけ手間をかけずに出版した方が利益になる。
そのため校正をまともに行わず、素人作家による破綻した文法や読みにくい文章もそのままで世に出てしまうのが基本である。
また、よほど作り込んでいるか客観的な視野で推敲を重ねていないと、著作の世界観や構成が独りよがりの自己完結に陥ってしまうケースが非常に多い。
山田悠介のデビュー作にして自費出版である『リアル鬼ごっこ』は、そのショッキングかつ独特な世界観から当時の中高生からカルト的な人気を博したが、一方で滅茶苦茶なSF考証や崩壊した文章は、悪い意味でも文芸史に名を残すことになった。