概要
UNIX(ユニックス)を真似て作られた、UNIX系OSのひとつ。 フィンランドのヘルシンキ出身のエンジニアリーナス・トーバルズを中心に開発された。その源流はアンドリュー・タネンバウムがUNIX Version7互換のOSの教材用として開発したMINIXで、実用を目的としていなかったため機能に乏しく(タネンバウム自身も実用OSとして機能追加することには否定的だった)、それに不満を持ったリーナスによってゼロから作られたのがLinuxである。なおMINIXは現在は開発が行われていないが、読みやすくコンパクトなソースコードを持つため、学生の教材としては十分目的を達成していた。
「Linux」をどう発音するかは公式に定められておらず、英語では「リーヌークス」などと発音されることが多い。日本では「ライナックス」などと呼ばれていたこともあるが、しだいに「リナックス」に集約されていった。
厳密にはLinuxと呼ばれるのはOSの中核部分となるカーネルのみを指し、OSとして機能させるには多くの周辺ソフトウェアを揃える必要がある。そのため、通常Linuxは周辺ソフトウェアを同梱して、ディストリビューションとして配布されている。多くのディストリビューションが無料であり(ただしサポート付きの有料製品も存在する)、GPLライセンスで改良も自由に行える。ただし改良後,それを配布する場合は、ライセンスに基づき、ソースコードを公開することが必須条件になる。
家電製品や携帯電話など幅広い分野で利用されているが、カーネルに独自の改良を加える会社はソースコードの公開を嫌って、Linuxとは異なるライセンスで公開されているBSD系OSなどの他のOSを使っていることが多い(例:PlayStation4はBSDカーネルベースで作られている。しかしカーネルを改造しない場合Linuxベースのゲーム機であることも少なくない)。
また、サーバーマシンのOSとしても使われることがある。pixivのサーバもLinux(Debian GNU/Linux x64版)で動いている。(2009年9月現在)
スーパーコンピュータのOSとしても2004年頃から採用が急増し、2009年では9割を占めている。モバイルではAndroidの登場によって世界一成功したモバイルOSとなっている。
なお、開発初期は「Freax」と名付けて開発されていたが、プロジェクトの協力者が独断で候補案の1つであった「Linux」に書き換えて今に至る。初期名称の由来はFreak+Free+UNIX。しかし、Freaxが奇人変人を意味する「Freaks」に語感が似て変態OS扱いされるのを危惧した事から、プロジェクト名称を勝手に書き換えてしまったのである(後にリーナスも同意している)。Linuxは名前の候補にあったもののリーナスが選ばなかったのは「自己中心的な開発者にはなりたくない」と選択肢から排除していたため。巡り巡って自分の名前由来の名称になったのは因果なのだろうか。
いつも使うパソコンのOSとしてのLinux
Linuxを通常のパソコンで使用するユーザーも増えてきており、すこしずつではあるが盛り上がりを見せている。サポート付きのLinuxディストリビューションをプリインストールし、販売しているメーカーもある。
ウィンドウの見た目や操作感(デスクトップ環境)は、ユーザーの好みに応じて変更することが可能であり、GnomeやKDE、LXDE、Xfceなどの様々なデスクトップ環境が開発されている。
長所
- サポート無しで良ければ無料で利用できる。※サポート付きの有料ディストリビューションもある。
- マルウェアに狙われにくい。※ただし、昨今は愉快犯ではなく金銭目的のケースが中心になっているため、マルウェアの作成に相応の対価があると判断されれば、たとえLinuxであっても容赦なく標的にされる。
- 基本的な構成では、Windowsに比べると、起動・シャットダウンを含めて、高速である。※ソフトウェアの構成によるため一概には言えない。
- 記憶装置へのアクセスが少ないため、待たされることが少ない。
- ファイルシステムの設計上、あまりデフラグの必要がない。
- ただしWindowsなどの場合でも、デフラグよりはこまめなバックアップを重視した方がよいとされる。
- 様々なソフトウェアが無料で利用できる。商用版ソフトもあるが、少数である
- ソフトウェアをアプリストアのような方式で導入できる。(パッケージ管理システム)
- カスタマイズ性が高く、好みのシステムを構成できる。
欠点
- 周辺機器の一部が正常に動作しない場合がある(Linux用のドライバはWindowsより機能が少なかったり、正式サポートがない場合が多い)。ただし、プリンタドライバに関しては、OSXを含むUNIX系OSがCUPSというシステムを共有基盤としているため、OSXと遜色ない機能が提供される。その他の機器でも、Linux向けの正式サポートが提供される機種が増えている。
- ソフトウェア構成の自由度が高すぎるため、ソフトウェア間での相性問題が発生しやすい。パッケージ管理システムが依存関係を処理してくれる場合が多いが、メジャーなディストリビューションを選んでおくことが無難である。
- 当然だがWindows用ソフトウェアは基本的に使えない。ただし、Wine(互換レイヤー)を用いれば一部のWindows用ソフトウェアが使用可能である。また、ソフトの構成が.NET Flamework準拠で書かれたソフトは、一部機能が使えない場合があるものの多くは動作可能で、Windows特有の機能を落とした.net coreアプリの場合はソースをも変えずそのまま動作させることが可能である。また、wineの公式サイトではAPK形式の野良アプリとしてスマートフォンなどのモバイル端末向けのものも存在するが、起動の保証はない。当然ながらソフトウェア開発への不具合サポートは受け入れられないので注意。
- 動作するソフトウェアが日本語に対応していない場合がある(表記の一部分が突然英語になるなど)
発音について
日本では「リナックス」が多いが、言語圏や人によっては、
- リーヌークス
- リヌックス
- リヌクス
- ライナックス
- リーナクス
といった発音や表記の揺れがある。
ちなみに、日本の一般社団法人「日本Linux協会」のLinuxは「リヌックス」なので発音に注意。この発音は英語圏での発音を優先した形である。
主な配布元と関連リンク
※日本語のページもありましたら追加して下さい。
Debian系(ベースを含む)
- Debian Project
- Ubuntu Japanese Team
- Linux Mint(英語)
- パルパス(日本語)
- MIKO GNYO/Linux
- KNOPPIX 9.1日本語起動テスト(日本語)
- KNOPPIX-jp(日本語)
- Linux活用レシピ(日本語)
Red Hat系
- Red Hat(有料)
- CentOS
- Fedora
- PCLinuxOS(英語)
- Scientific Linux(英語)
- CERN Linux(英語)
その他
- OpenSUSE
- ChromiumOS(英語)
- Arch Linux(英語)
- Gentoo Linux(英語)
- liveCD配布リスト(日本語)
- LiveCD配布サイト(英語)
携帯端末向け
関連タグ
コンピューター オペレーティングシステム ソフトウェア フリーウェア(フリーソフト)
Ubuntu:現在最も人気のあるディストリビューションのひとつ。フランス国家憲兵隊にデスクトップPC用OSとして採用され、最終的には国家憲兵隊の所有するPCのほぼすべてのOSがUbuntuに移行する予定。
Debian:長い歴史がある。Ubuntuの源流。頭文字の.debという形式でソフトウェアを配布している。
RedHat:企業向けに実績のあるディストリビューション。.rpmという形式でソフトウェアを配布している。
Fedora:Red Hatの開発版。
CentOS:Red Hatの無償版。Ubuntuとの格差的なライバルであったが、Streamへの移行に伴い2021年に終了した。
CentOS_Stream:CentOSの後継OSとして2020年12月8日にRedHatが開発に注力を注いでいる事が発表された。
Red Star OS:北朝鮮が開発した、Red Hat Linuxベースのディストリビューション。北朝鮮のお国柄を反映して国内ネットワークにしか繋がらない(海外のリポジトリを設定しても繋がらない)、ファイルを勝手に改竄してしまい流出しても出所がすぐわかるようになっている。その代わり技術的にはかなり時代遅れで、簡単にrootを取れる致命的なセキュリティホールがあることがわかっている。
KNOPPIX:日本語の開発は総合産業研究所。同業者による開発・提供終了後は、同名の配布サイト(元)からダウンロードした有志らによって今でも開発や配布が継続している。
R言語:KNOPPIXなどのOSに組み込むプログラミング言語の一種。
Windows:ライバルOSのひとつ。
OSX:ライバルOSのひとつ。Linuxと同じUNIX互換製品であるが、こちらは正統なライセンスを受けたUNIX(BSD系)である。
Android(携帯情報端末):Google社の開発した携帯電話向けのプラットフォーム。実はLinuxカーネルを土台に開発されている。
GoogleChromeOS : こちらもGoogle社により開発された軽くて速いOS。GentooLinuxベース。
ArchLinux : 最小主義ディストリビューションの一種。
Tux:Linuxのマスコット。また、タックスペイントと言うペイントソフトがある。
プレイステーション2:PS2の開発環境のベースはLinuxであるというのは知られており、実際にSCEよりPS2をLinuxマシンにするキットが発売された。
ニンテンドースイッチ:Linuxの一部が使われている。
カードキャプターさくらの大道寺知世:Linuxのセキュリティ機構のひとつ「TOMOYO Linux」の名称の元ネタ。