概要
Ubuntuとは、南アフリカで開発された初心者も使えるLinuxディストリビューションである。
ベースとなったディストリビューションはDebian GNU/Linuxである。
ユーザー数が比較的多いことから、トラブル時の情報収集やコミュニティでのサポートが容易であることも初心者の使用に適していると言える。
派生ディストリも多く、様々な用途にあわせて改良が行われている。リリースは毎年4月と10月、半年おきに行われるが、2年おきに4月にリリースされるバージョンは5年間メンテナンスが行われる長期サポート(LTS)と位置付けられている(それ以外はサポートは9ヶ月)。
さらに、WSLによって、Windows上でネイティブに実行可能。
ソフトの導入
アプリセンター
Ubuntuには、MacやiOSにあるAppStoreやAndroidのPlayStoreに似た機能として「アプリセンター」が搭載されている。
これはGUI環境で、マウス操作だけによって一覧から欲しいソフトを自動的にダウンロード・インストールできる機能である。
従来のLinuxではソフト導入にrpm展開やコンパイルといった難解な操作を要したが、この機能が登場したことによりWindowsよりも簡単にソフトを追加できるようになった。
ソフトはカテゴリごとに分類されており、「芸術・デザイン」の項目を選択すると様々なペイントツールを見つけることが出来る。
過去には「Ubuntuソフトウェアセンター」やUbuntu Softwareにリブランドされた「GNOMEソフトウェア」などが搭載されていた。
コンソールからaptする
Ubuntuをベースに改造した派生ディストリビューションでは、Ubuntuソフトウェアセンターが削除されてしまっている場合がある。
(とくに軽量系では、軽量化のために排除されている場合があるので要注意)
その場合、UbuntuのベースになったDebianの機能である「apt」を使用することが必要になる。
使用方法は、ターミナルまたはコンソール(いわゆる端末)を開き、CUIコマンドを書き込む。
一例としてGIMPをインストールしたい場合、
sudo apt-get install gimp
と記述する。
構文の意味は
sudo →スーパーユーザー権限にする。パスワードがいる。
apt-get →apt機能を使用してソフトを導入します。
install →インストールします。他にupgradeなどもあります。
gimp →GIMPをインストールします。mypaintやtuxpaintなど必要なソフトの名前を書きましょう。
Bamboo・Intuosタブレットへの対応
近年のUbuntuには、ximput systemというLinux用タブレットドライバが標準装備されている。
そのため、一般的なWacomタブレットを接続すると、直ちに使用することが出来る。設定項目の中にも専用の項目が設けられている。
しかし、このドライバが排除されている軽量ディストリや、非対応のタブレットもあるので注意が必要。
Linux用ペイントソフト
Linuxにも様々なペイントツールが存在しているので一例を紹介する。
しかし、2014年3月現在ではSAIやPhotoshopに実装されている「レイヤークリッピング」に対応したものが存在しないため、彩色には工夫が必要である。(注:Kritaは「レイヤークリッピング」に相当する「アルファ相続」の機能を実装している)
GIMP
有名な画像編集ソフト。
Windows用と同じ機能を使用することができる。
かつては同梱されていたが最近は同梱されなくなっていて、必要な場合に導入する形になっている。
MyPaint
Linux用ペイントツール。
キャンバスサイズの設定方法が独特であり、巨大な紙に自由に絵を描くような感覚で仕上げられる。
Krita
総合的に使用できるペイントソフト。日本語UI対応。
画像編集ではなく絵を描くことに向いている。
アプリセンター経由でSnapパッケージ版を入手できる他、Steamで有料版を購入することもできる。
AzPainter(Linux)
Windows版AzPainter2の後継にあたるソフト。
秀逸な手ぶれ補正や自動選択ツールなどが追加され、非常に高機能である。
また、SAIやクリスタに実装されている「レイヤークリッピング」と同等機能である「レイヤマスク」が利用できる。Windows版のAzPainter2とは全く異なる高性能なツールとなっており利用価値は高い。2023年現在もアップデートがされるなど開発が続いている。
しかし、UbuntuやDebianのリポジトリには登録されていないので、READMEにしたがってインストールする必要がある。
TuxPaint
保育園児がおえかきを楽しむためのソフト。
MS-Paintの幼児用といった位置づけであり、しかも保存形式が独自である。
しかし、暇つぶしに遊ぶには愛嬌があって楽しい。
Pinta
WindowsのPaint.NETを参考に開発された。
操作性や見た目が似ていて、さらにGIMPよりも機能は絞られている代わりに軽快に動く。
公式フレーバー
Ubuntuでは標準のデスクトップ環境にGNOMEを採用しているが、標準のデスクトップ環境とアプリケーションを他のものに置き換えた派生バージョンも公式にリリースされている。Ubuntuに対応するパッケージを導入すれば、各フレーバー相当になる。ただし、LTSであってもサポート期間は3年と短い。
現在開発されているもの
- Kubuntu
標準のデスクトップ環境をKDEに置き換えた派生バージョン。標準のアプリケーションもKDEのものになっている。
- Xubuntu
標準のデスクトップ環境をXfceに置き換えた派生バージョン。軽量志向で、低スペックのマシンに向く。
- Lubuntu
標準のデスクトップ環境をLXQtに置き換えた派生バージョン。18.04(LTS)まではLXDEを採用していた。Xubuntuよりさらに軽量志向。
- Ubuntu MATE
標準のデスクトップ環境をMATEに置き換えた派生バージョン。以前のGNOMEの操作性に慣れた人にお勧め。
- Ubuntu Budgie
Solusのために開発されたデスクトップ環境、Budgieを標準のデスクトップ環境に採用した派生バージョン。動作が重いためややハイスペックなPC向け。
- Ubuntu Cinnamon
Linux Mint向けに開発されたデスクトップ環境、Cinnamonを標準にした派生バージョン。23.04から公式のフレーバーに加わった(それまでは非公式のCinnamon Remixという扱いだった)。
- Ubuntu Unity
18.04LTSからGNOMEに戻されたことで標準ではなくなったデスクトップ環境、Unityを継続して採用するバージョン。22.10から公式に復活した。
- Ubuntu Studio
マルチメディア編集に特化したフレーバーで、クリエイター向けの様々なアプリケーションが搭載されている。デスクトップ環境は以前は動作の軽いXfceだったが、現在はKDE。
過去のバージョンでは即応性能を高める為、カーネル(要はOSの更にコアの部分)そのものに修正を加えていたが、現在のバージョンではカーネルの設定変更以外は、他の派生版と同じカーネルを使用している。
- Ubuntu Kylin
中国向けの派生バージョン。デスクトップ環境はMATEをベースに、Windows風の見た目にしている。ソフトウェアセンターのアプリケーションも中国産のアプリケーションが多く、デフォルトのオフィススイートもLibreOfficeからWPS Office(Linux版はオープンソース)になっている。中国での利用を想定しているが、多言語対応しているので、日本語での利用も可能。
- Edubuntu
教育用に設計されたフレーバーで、学習者向けのソフトウェアを収録。開発者不足で14.04LTSを最後にリリースが長く途絶えていたが、Ubuntu Studioの開発者夫婦により23.04が9年ぶりにリリースされ復活した。教室で使うことが想定されているため、アプリケーションの並び方をアルファベット順・教科ごとに配置するといった配慮がされている。また、対象者の学年に合わせることにも配慮されていて、インストールの段階で幼稚園児から大学生まで幅広い年代に対応したアプリケーションを導入することができる。
- Ubuntu Server
サーバー向けに開発されたバージョン。
- Ubuntu Core
IoTデバイスや組み込みシステム向けに開発されたバージョン。
現在開発されていないもの
- Ubuntu GNOME
標準デスクトップ環境がUnityだった頃開発されていたフレーバー。本家がGNOMEに戻ったので、発展的解消という形で開発を終了している。
派生版
Ubuntuプロジェクト(Ubuntuの開発元)以外の個人・団体により作られた派生版の内、有名なものを以下に示す。
「誰でも使える」事を目的に作られた派生版。
デスクトップ環境が3種類あり、Cinnamon、MATE、Xfceが用意される。いずれも操作性や画面の構成(例えば、Windowsにおける「スタートボタン」に相当するボタンの画面上の位置や機能など)は統一されていて、違うのは設定メニューなど。
ベースにはUbuntuのLTS版を使っているが、Debianをベースにしたものもある。リポジトリはUbuntuと共有しており、UbuntuにMintのリポジトリを追加して必要なファイルをインストールすればMint相当になる。
スタイリッシュな見た目が売りの派生ディストリビューション。
見た目を様々にカスタマイズできるのが特徴。アプリケーションの充実した有料版「Pro」のほか、基本機能の備わった「Core」、Xfceをデスクトップ環境に採用した軽量版「Lite」、教育用「Education」の4種類が用意され、ProとEducationにも軽量のLiteがある(Liteはバージョン18以降はリリースされなくなる予定)。
同じく基本のリポジトリは共有するが、Proのアプリケーションは独自のリポジトリとなる。
Kubuntuよりもさらに新しいKDEデスクトップ環境に対応した、KDE公式のディストリビューション。
安定志向のKubuntuよりも最新リリースを重視しているのが特徴。