概要
KritaはKDEとKrita財団によって開発されているオープンソース(GPL)のペイントツール。豊富なブラシに加え、CMYKサポート、遠近法グリッド、カスタマイズ可能なドッキングパネル、フィルタ、描画補助線、強力な変形機能、キャンバス回転機能など、といった絵を描くことに特化した機能を提供している。もちろん写真編集にも使える。
かつての有料ソフト同等以上の機能を持ち、パネル配置と操作が直感的であるため、初心者にもおすすめできる。
また、英語になるがG'MICが使用可能。
LinuxとWindowsを正式サポート。AndroidとChromeOSもβ版が登場している。
Mac OSX版のビルドも公開しているが開発用ビルドという位置づけで、OSX版固有のバグも多く実製作には適さない。後述の日本語化設定もOSX版では問題が起こる。3.1でOSX公式サポートを予定している。
1999年から開発を開始、近年では毎年Kickstarterも行って開発資金を確保し、フルタイム開発者を雇用することで早いペースでの機能追加を行っている。2016年5月現在の最新バージョンは3.0。ほぼ一か月に1回、バグ修正版のリリースを行っている。最新バージョンの3.0では高解像度での処理の最適化及びアニメーション機能が追加された。
2015年2月にリリースされたバージョン2.9から日本語リソースが同梱された。2.9では初期起動時は英語表示になっているが、メニューのSettings>Switch Application Language(設定>アプリケーション言語の切り替え)でJapaneseを選ぶことでUIを日本語化することが可能になった。公式サイトも日本語化され、ニュースアナウンスも翻訳されている。
3.0からはアニメーション機能も追加。また、HDR描画、カラーマネジメント、ラップアラウンド表示、レイヤーの非破壊変形マスクといった他のアプリケーションでは珍しい機能も備えている。
"Krita" の発音について
Kritaという名前はスウェーデン語の「描く」或いは「クレヨン(チョーク)」という意味を持つ単語からの命名。日本では先だって刊行された解説本にそう表記された事から、「ケリッタ」と言う表記が使われる事があるが、本来のニュアンスやスウェーデン語、或いは英語圏での発音規則に従えば「クリタ」或いは「クリィタ」が近い。
公式での回答は…
- 決まった発音は無い。
- 開発本拠地のオランダでは「クリーター」と発音する。
~との事。Youtubeで数多く投稿されている解説動画内では早口が多いせいか「クリタ」と発音する事が多い模様(英語圏の投稿者が多いせいか?)。
>参考リンク - Google翻訳による発音例
マスコットキャラクターKiki
Tyson TanによってデザインされたKritaのマスコットキャラクタ。アルバニア語ではKritaがリスを意味することからリスの姿をしている。バージョンごとに姿が進化している。メイン画像は初期デザイン。
Krita DesktopとKrita Gemini
Kritaには公式サイトから無償で配布しているKrita Desktopと、Steamで有償ソフトとして配信されているKrita Geminiの二つのバージョンが存在している。有償配布しているのは開発資金集めの一環であり、Krita Gemini自体はオープンソースになっている。
Krita Geminiは通常のデスクトップPC向けのKrita DesktopのUIに加えて、タブレットPC向けに最適化したUIに切り替えられるという特徴がある。また、Steamのクラウドセーブ機能で環境設定を複数PCで共有が行える。
特徴
以下のリストのように絵を描くために必要な機能を豊富に備えている。
一方で、画像編集や文字編集などの機能には力を入れていない。ベクター図形を編集する機能は備えているものの、かなり扱いづらく、画像編集はGIMP、文字の扱いはGIMPやInkscapeなどと併用した方がよいであろう。ベクターと文字の扱いに関しては2016年のKickstarterで資金を集めて機能改善を行うことを計画している。
また、KritaはOpenGLを使用しているが、グラフィックカードとの相性によっては、OpenGLをオフにしたり、OpenGLのフィルタリング品質を落とさないと重くなるケースが報告されている。
- 豊富なブラシとブラシカスタマイズ
- フレームアニメーション機能(GIFアニメーション出力は3.1で対応予定)
- キャンバス回転
- 複数ドキュメントの編集
- 強力な自由変形ツール
- アルファ相続(クリッピングマスクに相当)
- 透明マスク
- 多彩なレイヤー合成モード
- レイヤースタイルサポート
- 水平対称描画、垂直対称描画
- 点対称描画(マルチブラシツール)
- ラップアラウンドモード(タイル状テクスチャ作成を簡単にするシームレス表示モード)
- CMYKサポート
- HDR描画
- カラーマネジメント対応
- 遠近法グリッド
- フィルタ
- G'micによる線画の自動色塗りわけ、色によるレイヤー自動分割
- 色調補正、トーンカーブ、コントラスト調整
- フィルタマスク、変形マスク、クローンレイヤーなどを使った非破壊編集
- 直線、楕円、集中線、パース線、魚眼レンズといった描画補助線
- 入力スムージング
- ベクターシェイプ編集
- PSD含む各種画像ファイルへの対応
- 2DスプライトアニメーションソフトSpriterへのファイル出力
- プラグインによる機能の拡張
ショートカット
基本的なものを紹介。通常のショートカットは「設定>ショートカットを設定」(2.9)「設定>Kritaを設定>キーボードショートカット」(3.0)で、キャンバスの移動回転などのショートカットは「設定>Kritaを設定>キャンバス入力の設定」でカスタマイズ可能。
Krita3.0からはSaiユーザ向けショートカット設定(paint_tool_sai_compatible)とPhotoshopユーザ向けショートカット設定(photoshop_compatible)への切り替えも可能になっている。
右クリック | ポップアップパレット表示 |
ブラシツール | Bキー |
ブラシサイズ変更 | [と]、もしくはShift+水平方向ドラッグ |
キャンバスのズーム | +と-、もしくはCtrl+中ボタン、ホイール |
キャンバスの平行移動 | スペース、もしくは中ボタン |
キャンバスの回転 | 4と6キー、もしくはShift+中ボタン、Shift+スペース+左ボタン |
キャンバスの回転リセット | 5キー |
色のピック | Ctrl+左クリック |
消しゴムモードへの切り替え | Eキー |
直前に選んでいたブラシプリセットへの切り替え | /キー |
直線ツール | Vキーホールド |
ラップアラウンドモードへの切り替え | Wキー |
左右反転表示 | Mキー |
色彩補正 | CTRL+U |
Pixivでの使用ツールとしての扱い
日本語化が遅かったため長らくpixivの使用ツール一覧に記載されておらず、タグとして表記するしかなかったが、2015年11月28日ようやく追加された。