曖昧さ回避
- コンピューターの周辺機器。タイプライターの文字入力スイッチが並んだ操作盤が原型となっている。
- ピアノやオルガン、鍵盤ハーモニカなど鍵盤楽器の操作部分。
- 2.を有する鍵盤式のシンセサイザーのこと(鍵盤を持たないシンセサイザーもある)。
本項目では主に1.と3.について解説する。
入力装置としてのキーボード
文字キーや制御キーといったキースイッチが並んでいて、コンピューターに文字を打ち込んだり命令を与えたりするための装置。パソコンには必須の入力機器であり、ノートパソコンには内蔵されている。
パソコンはマウスなどのポインティングデバイスだけでも操作できなくはないが、その場合でも文字やコマンドの入力のために画面に仮想的なキーボードを表示する必要がある。これをソフトウェアキーボードという。
キーボードの配列
多数の種類があるが、日本での主流は、世界的に使われているQWERTY配列から派生したJISキーボード。QWERTY配列をベースにカナ文字を刻印し、インプットメソッドの操作に必要なキーをいくつか追加したものである。カナと英数字以外に複数の文字や記号が刻印されているキーがあるが、シフトキーやオプションキー(Macintoshの場合。WindowsはAltキー)を同時押しして入力する。
日本語の入力方法はローマ字入力とカナ入力の2通りがあり、ローマ字入力の方が主流。ローマ字入力はカナ入力より打鍵数は多くなるものの、覚えるキーの位置が少なくて済むためである。アメリカ合衆国やイギリス仕様など英語圏のキーボードも同じくQWERTY配列に準拠しているため日本語入力に使うこともできるが、インプットメソッドの操作に必要なキーを他のキーで代用する必要があるほか、日本語特有の句読点などの入力は若干しづらくなる。なお、過去にはカナ入力の方式として親指シフトや五十音順などの配列も使われていた。
ラテン文字を使う言語圏は全てQWERTY配列なのかというとそんなことはなく、フランスなどではAZERTY配列という全然違うものを使っている。ドイツ語圏やハンガリーなどではQWERTYの配列を少し変えたQWERTZ配列が主流。QWERTY配列は英語圏発祥だが英語入力に特化した方式というわけではなく、むしろ英語の入力とは相性が悪い面もある。英語向けに特化したキー配列としてはDvorak配列というものがあり、一部に根強い愛好者を持つ。
パソコンのOSやアプリケーションは、よく使う機能をキーボードから一発で呼び出せる機能が用意されている(キーボードショートカット)。WindowsやUNIXはコントロールキーと他のキーの組み合わせ、macOSはコマンドキーと他のキーの組み合わせでの呼び出しが基本。
キーボードの機構
一般的な機構はメンブレンタイプと呼ばれるもので、デスクトップパソコン用キーボードでよく使われるラバードーム式と、ノートパソコンに使われるパンタグラフ式が主流。ラバードーム式はキーボードがラバーカップと呼ばれる柔らかい突起の上に乗っていて、キーを下まで押し下げるとラバーカップが潰れてスイッチが入る。パンタグラフ式はラバーカップが薄く、浅いストロークでも確実にスイッチのオン・オフを認識できるようにするためキートップが電車のパンタグラフの構造に似た支持機構によって支えられている。過去にはストロークが深いラバードーム式を好む人が多かったが、ノートパソコンに慣れた人が増えた今ではデスクトップパソコンでも打鍵の軽いパンタグラフ式の採用が多くなった。
他に金属バネを使用したメカニカルキーボードと言われるものがある。総じて高価であり、独特のカチャカチャとした音がすることからオフィスなどでの利用には向かない(オフィス対応の静音機種もある)が、PCゲーマーやプログラマーにはしっかりした打鍵感のあるメカニカルにこだわる人も一部いる。また、構造上キーが独立しているので特定のキーが壊れた場合は部分交換が可能な場合がある。
上記のキーボードは全て物理スイッチ、すなわち物理的な接点を持つが、電極同士が接近することで入力を感知する静電容量無接点方式のキーボードもある。これは物理的接点を持たないので耐久性がとても高く、大量の文字を入力するオペレーターやプログラマー等に愛用されるほか、PCゲームプレーヤーにも好む人がいる。また価格もメカニカルキーボードより高いことが多い。
特有の機能を持つキー
シフトキー(⇧)
通常、下から2段目の左右に配置され、他のキーと同時押しすることで、別の文字を入力させる修飾キーの役割を果たす。 大文字を入力する(英数字入力モードの場合)か、キーボードの上側の文字を入力するのに用いられる。タイプライターの時代から存在する伝統あるキーである。
Altキー(⎇):
シフトキーと並ぶ修飾キーだが、タイプライターにはなく、コンピュータで初めて設けられた。特殊文字の入力にも用いられるが、他の特殊キーと組み合わせて特殊な機能を果たすのに用いられることが多い。Macintoshではオプションキーに相当する。古くはAltキーを押しながらテンキーで文字コードを10進数で入力することにより、直接入力できない文字を入力することができた。
コントロールキー(^)
元はテレタイプ端末で制御文字を送信するための修飾キーだったが、現在では他のキーと組み合わせてキーボードショートカットを送信するためのキーとして用いられることが多い。
一般的なキーボードでは左下に配置されていることが多いが、MacintoshのJISキーボードなどではAの隣に配置されており、半角英数への変換やカタカナの指定にコントロールキーを用いる(現在のmacOSではWindows式のファンクションキーにも対応しているが)。
コマンドキー(⌘)
MacintoshやiPad(遡るとAppleⅡやNeXTやNewtonなども)などのApple系プラットフォームに特有のキーで、オプションキーと並んでキーボード最下段の左右に配置されている。役割としては他のキーと組み合わせてキーボードショートカットを送信する...要はWindowsなどのコントロールキーに相当する役割を果たすのだが、コントロールキーも別に存在しており、日本語環境ではインプットメソッドの操作などで多用される。
メタキー(◆)
主にUNIXワークステーションにあるキーで、Emacsの操作で多用される。現在の一般的なキーボードでは見られず、その役割はAltキーなどが担っている。
Windowsキー
キーボード最下段にあるWindowsロゴの描かれたキーのこと。もちろんWindowsプラットフォーム専用であるが、Macに接続した場合はWindowsキーがコマンドキーとして機能する。それなりに便利ではあるがWindowsの操作の上で必須ではなく、全く使わないユーザーも多い。
エスケープキー(Escキー)
通常、キーボードの一番左上に配置されるキー。キャンセルや中断などの役割を担うことが多い。
タブキー
タイプライター時代から存在するキーで、一般的なQWERTYキーボードではQの左隣に配置されることが多い。元々は文字送りに用いられていたが、現在は入力項目を移動したり、アクティブウィンドウを切り替えたりするために用いられる。
キーボードの最上段にF1から順にズラっと並ぶキー。一般的なノートパソコンやコンパクトキーボードではF1~F12までの12個だが、最大で24個まである。キーボードによっては音量の調整や戻る/進む、早送り/巻き戻し、画面切り替えなどの機能が割り当てられていることも多いが、Fnキーと同時押しすることで本来のファンクションキーとして機能させることができる。
日本語版のWindowsで利用頻度が高いのは編集モードに入れるF2、表示内容を更新(最新化)するF5、入力文字をカタカナにするF7、半角アルファベットに変換するF10といったところか。
Caps Lockキー
簡単に言えばシフトキーの入力を固定するためのキー。日本語入力ではほとんど使わない上、妙に押しやすいAの隣にあるため、不意に押されてパスワード入力失敗の原因になりがちなトラブルメーカーとして知られる。いらない子扱いされることが多く、無効にされたりコントロールキーと入れ替えられたりする。ただし、Shift+Caps Lockで半角文字に対しデフォルトを英小/英大の切換できるので、業務上で役立つ場合も少なくない。
Macintosh用のJISキーボードでは元々Aの隣がコントロールキーで、Caps Lockは左下にある。
ゲーミングキーボード
PCゲームに便利な機能を搭載したキーボード、PCゲームプレーヤー(PCゲーマー)に特化したキーボード。
普通のキーボードでのキー同時押しは3つまでだが、ゲーミングキーボードでは、4つ以上のキーの同時押しを認識するものがある(BMSに関しては、これがなければ高難易度譜面はプレイ不可能)。また通常のキーボードはオンとオフの2通りしかないが、ゲーミングキーボードにはキーを浅く押した時と深く押した時に別のアクションを割り当てられるものもある。暗い環境でも見えるようキーの文字が見えるようバックライトを搭載し、PCゲーマーの嗜好からイルミネーション式に光るキーボードも多い。
電子楽器としてのキーボード
ピアノやオルガンと同じように向かい合って両手で演奏するものが多い。
ギターのように肩から下げて演奏するものはショルダーキーボード(ヤマハの商標ではショルキー)と呼ばれ、片手で演奏することもある。
また、ニコニコ動画において、キーボードクラッシャーをメインに据えたMADで使用される「KBCがキーボードを叩きつける音」を楽器のように扱う手法を「キーボードラム」と呼ぶ。
これはもちろんキーボードの正式な運用法ではないが、KBCファンや職人からは伝統として親しまれている。この記事を読んでいるよい子はもちろんのこと、悪い子も真似しないように。