概要
ガチャガチャと特徴的な音を立てながら紙に活字を打ち込んでいく、電気が実用化される以前から存在した機械式の文書作成機。映画の冒頭などでカシャカシャと音を立てながらテキストが表示されていく演出は、タイプライターのタイピングを模したものである。
欧米で発明された物なのでアルファベットのみが打ち込める英文タイプライターが基本だが、日本ではカタカナを打つカナタイプライターや漢字なども打つことができる和文タイプライターも作られた。カナタイプライターは英文タイプライターとほぼ同じ構造だが、和文タイプライターは2000字を越える活字を操るのと縦書きにも対応させる関係から馬鹿でかくて構造も大きく異なる。なお韓国や北朝鮮では「ハンタ」と呼ばれるハングルタイプライターが使用されていた。
日本のワープロ・PCにおけるキーボードの「QWERTY配列」は、元々英文タイプライターで用いられいた配列である(ヨーロッパ語圏のタイプキー配列は、ラテン文字の地域に限っても何通りかに分かれる)。
なぜバラバラなキー配列になっているのかは不明で、早打ちで機械がジャムるのを防ぐために、わざと打ちづらい配列にしたとの説もあるが定かではない。ただ最初に作られたタイプライターはABC順の二段配列で、そこから母音を上に移動させて三段にしたりしている間に色々と配列が入れ替わっている。QWERTY配列もよーく見ると二段目がABC順に並んでいてLで下段に折り返している痕跡が覗える。
英文タイプライターは何故か数字の「1」が省略されているモデルが多い。この場合は小文字のLで代用する。
活字を綺麗に打ち込めることで誰でも読みやすい文面を作れるのが利点となるが、早く打つにはそれなりの技術を要するため、タイプライターが打てると言うだけで専門職(タイピスト)として成立した時代もあった。下手に早く打ち込むと活字を動かすアームが絡まり故障の原因となるため、独特のコツが必要だった。
日本では漢字の問題でワープロの時代までこの手の機械は普及しなかった、役所や法律事務所などでは公文書を作るのに和文タイプライターを使っていたほか(それ以外は原稿を業者に渡してタイプしてもらうのが一般的だった)、一部の意欲的な企業個人はカナタイプを導入した。なお「パンライター」と呼ばれる個人向けの和文タイプライターも15万円~20万円で販売されており、かい人21面相も声明文を作るのに愛用していた。
紙に直接打字するので、打ち間違えをしたらPCのようにバックスペースで消すことは不可能。ではどうしていたかというと、ホワイトのインクリボンで同じ文字を上から打ってマスクしていた(完全に消すことは不可能)。
ポータブルの英文タイプライターでは「赤バケツ」と呼ばれるオリベッティのバレンタインが世界的に有名。ヤフオク等で頻繁に出品されるため入手は容易であるが、出荷国に合わせてキー配列が諸々あるので購入の際は注意が必要である(日本向けは「¥」記号が付いている)。
特徴的な音からトミーガンの別名として言われる事も。→シカゴタイプライター