和文タイプライターとは、1915年に日本で発明された日本語用のタイプライター。邦文タイプライターとも。
概要
日本で一般的に使われる仮名、数字、漢字など2000から機種によっては3000種類以上の文字を打てるタイプライターである。
そのように書けば何やらすごい機械に思えるが、キーボードではなく2000字なり3000字が並べられたパネル(もしくは裏返った活字)から打ちたい文字をレバーでポイントし、タイプレバーを押し下げると活字が持ち上げられて印字されるというもの。
つまり英文タイプライターのように会話やテープを聞きながらタイプしたり、文章を考えながらタイプするものではなく、あらかじめ文章やレイアウトを決めて、活字で書かれた書類が作れるというものに過ぎなかった。
それでも、ワードプロセッサが普及するまでは、事務所などでの書類の作成は和文タイプライターか謄写版(ガリ版)印刷の2つが主流であった。
和文タイプライターの場合、同じ書類を大量に作る場合には向かないものの、カーボン紙で全く同じ書類を複数作成できたため、契約書などの作成に使われることが多かったようである。
「パンライター」と呼ばれる個人向けの和文タイプライターが15万円~20万円で販売されていた。かい人21面相の声明文や「どくいり きけん」の紙はパンライターで作成されたものである。小型のため全ての活字が機械に収まらず、使用頻度の低い活字は機械と別の活字箱に収められていて、いちいち箱から取りだして予備スロットにセットして使うという代物だった。
なお英文タイプライターと違って活字が機械に固定されておらず、機械をひっくり返すと活字が全部飛び散ってしまうので注意が必要である(万が一ひっくり返した場合はメーカーを呼んで活字を戻してもらう必要がある)。一見不便そうだが、活字箱を丸っと交換することで文字の向きを横書きから縦書きに変えたり、書体を変更することなども出来た。
資格
何せ文字数が多いので使いこなすには訓練が必要で、技能を証明する検定試験は4つの団体が実施していた。
このうち2団体はタイピストを養成する学校の団体で、残りの2つは簿記検定を主催している日本商工会議所(日商)と全国商業高等学校協会(全商)であった。
現在は4団体すべての資格が廃止されている。
その他
片仮名か平仮名だけであれば一般的な構造のタイプライターでも実現できるため、英文タイプライターに仮名を追加したモデルも存在した。
また、電電公社や国鉄では電報用に片仮名と数字、何種類かの記号に機能を絞った機種が使われた。