ベルト(帯、バンド)で腕に取り付けるタイプの時計。時刻や日付を知るという実用的な意味だけでなく、アクセサリー・ファッションアイテムとしての側面も持つ。
価格は数千円から最高級品は数百万円以上という、まさにピンからキリまでの世界である。高級品においては付加価値をつけるために素材に金やプラチナを使ったり、宝石を鏤めたりしたような商品もあるが、基本は数百以上の細密な部品を手作業で組み立てていくという、職人の手仕事が研鑽された工芸品としての価値が評価されている代物である。
2010年代のスマートフォン普及によって腕時計の利用者は減少し、さらにスマートウォッチの登場により従来型の腕時計の地位は脅かされているが、それでも根強い人気があり、「充電の必要がない」、「アナログの腕時計の外見が好き」「余計な機能がなく気が散らない」と、スマートウォッチから従来の腕時計に回帰する人もいるという。
ビジネスマン、特に営業マンにとっては筆記具(ボールペンや万年筆)とともに必須アイテムという意識も根強く残っており、業界にもよるが営業担当の身嗜みの一つとされている。現在は他の時計と同じく精度に優れたクオーツ式時計が主流であり、誤差が発生しない電波時計も普及しているものの、昔ながらの機械式も人気がある。
腕時計が最初に普及したのは軍事用途で、砲兵が懐中時計を腕にくくりつけていたのが普及のきっかけと言われている。当初は大型で不恰好なものだったが、20世紀に入ると小型化が進み、腕時計が多くの兵士の間で大々的に使われた第一次世界大戦後は、民間にも普及した。
時間と日付を表示するのが基本的な機能だが、機械式しかない時代からストップウォッチを備えたクロノグラフや、複数の時間帯の設定(GMT機能)、アラーム、潮の満ち引きや月齢を表示するなどの付加機能を持つ腕時計も普及していた。防水性を高める努力も行われ、潜水用の腕時計(ダイバーズウォッチ)も登場した。1970年代に安価で精度に優れるクオーツ式腕時計が急激に普及し、1980年代には小学生でも腕時計を持つのが当たり前になり、リズム時計による子供向けのアルバクオーツなどが人気となったほか、電子ゲームブームに肖り、ゲーム付き腕時計なども作られた。
近年のクオーツ式腕時計では、万歩計・心拍数計測・GPS・コンパス・高度計などの付加機能を持つものがあり、スポーツやフィットネス、アウトドアのお供として愛用される。
汎用のコンピューターとしての機能を持ったものはスマートウォッチというが、これはタッチパネルや音声で操作することができること、外見を大きく変更できること、アプリで機能を拡張できること、無線LANやBluetoothによる通信機能を持ちスマートフォンと連携できることなどにより、従来型の腕時計とは区別されるのが一般的である。ただし、従来型の腕時計でもコネクテッドウォッチといってスマートフォンと連動できるようにしたものもある。
20世紀後半(1950年代〜1990年代)のアンティーク腕時計も、今なお多く流通しており、実用品として愛用している人も多い。ただ、現代の腕時計は耐水・防水なのが常識化しているが、1960年代以前の腕時計は防水性がないものが多かった。また、たとえダイバーズウォッチであっても10年以上経過すればパッキンの劣化により防水性は低下していく。ましてや40年、50年以上経ったヴィンテージものはオーバーホールしていない限り耐水性能を期待できないと考えるべきである。
時計大国として知られるスイスでは、ロレックス、フランク・ミュラー、IWC、ピアジェ、ロンジンなどの伝統的な手工業の高級ブランドが名を連ねている。世界最大の時計企業スウォッチ・グループはオメガ、ブレゲなど多数の名門ブランドを傘下におさめ、有名ブランドへのOEMも少なくない。それだけでなくタグ・ホイヤーのように高い工学技術を備え電子時計で勝負をする企業もある。
日本はかつてスイスを凌駕する、世界最大の時計生産国だった時代があり、長野県の諏訪湖近辺は一大産地であった。だが、現在のSEIKO、CITIZEN、オリエント時計(セイコーに事業吸収)、CASIOなど大手各社はいずれも中国など国外生産が主力である上に計測器械、電子時計が主である。その中にあって、グランドセイコー、ザ・シチズン、オリエントスター、MR-G(G-SHOCKのハイエンドモデル)などは国内生産を貫き、価格帯も廉価品とは一線を画す。
このように現在、世界の過半数の時計は中華人民共和国で大量生産されている。中国の機械式腕時計も独自の伝統を持ち、海鴎(Seagull)、蘇州(Suzhou)ブランドなどは日本でもごく一部に熱狂的なコレクターも存在するものの、中国発で世界的なブランドになった腕時計メーカーは未だ存在しない。ただし、スイスの時計企業エテルナは中国企業傘下である。
アメリカ合衆国の腕時計は「アメリカンウォッチ」として世界を席巻した時代があり、アメリカ製ヴィンテージ腕時計はコレクターには人気がある。しかし、日本のクオーツ時計がアメリカ時計産業の息の根を止め、現在米国内で時計はほとんど生産されていない。ティファニーやハリー・ウィンストンなどの宝飾系ブランド、ルミノックスやノーティカなどの新興ブランドが知られるが、現在は生産をスイスや中国など米国外で行なっている。現在はスイスに本拠を移したボールウォッチも元々はアメリカ生まれのブランドである。
絵に描く時は、多くの場合は右利きの人物なら左手(絵なら、閲覧者から見て右側)に腕時計が付くので、注意して描こう。また、手の甲と手のひらどちらが表になるかだが、男性用は手の甲に時計盤が来るものが一般的。また、女性はかつて掌側に時計盤が来るものが主流だったが、昨今では男性用とそこまで相違ない(ジェンダーフリーの商品が増えている)。
ただし左利きでも左手につける人、右利きでも右手につけている人、ましては両腕につけている人もいる。推理作品では謎解きにおいて単に腕時計を付けている手だけで利き手は左だ右だといわれていることがあるが実際には効き腕に付ける人も少なくないためそれだけでは断定できない。
- 寄り添って時を刻み続ける。腕時計を描いたイラスト特集 - pixivision(2018年8月2日)
- 時を傍らに。腕時計を描いたイラスト特集 - pixivision(2023年12月14日)
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