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砲兵

ほうへい

陸上戦闘を行う兵科の1つであり、火砲・ロケット・ミサイルによる支援攻撃を担っている。 また、日本(陸上自衛隊)では「特科」と称されている。
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概要

砲兵とは陸軍兵科の一つ。遠距離から間接射撃によって目標を攻撃する。戦闘前面から離れた位置から射撃出来るため、直接射撃による攻撃を受けて部隊が損耗する危険が小さい。その為、防御面の弱点がある大火力を運用する事にも長ける。


航空機の爆撃と比較して低コストの砲弾を多量に投射出来る。大口径の火砲を多数並べて一斉に射撃する攻撃では極端に強固な陣地や構築物などを除いて殆どの地上目標物を広範囲に破壊できる。


歴史的に見ても砲兵の存在は極めて重要であり、野戦において重要な役割を果たしてきた。三十年戦争の頃の欧州に始まり、現代戦に至るまで戦場における決定力の一翼となっている。

それ故に現在の陸上自衛隊にも兵科として存在し、特科の名で呼ばれる職種がそれである。


砲兵から分化した兵科には高射砲対空砲を担当して主に航空機に対処するいわゆる高射砲兵もある。陸自での特科でも高射特科はこちらのタイプである。この記事は対地攻撃を主とする砲兵を扱い、高射砲兵については高射砲対空砲地対空ミサイルを参照のこと。


分類


直接支援(DS)砲兵

戦術階梯で運用される砲兵で、火力支援を主に、阻止攻撃を従にしている。

運用砲として重迫撃砲や軽砲を装備するのが一般的であるが、自動車化の進展による機動力の向上を受けて、現在では全般支援砲兵と同一の中砲を装備する場合が多い。


全般支援(GS)砲兵

作戦術・戦略階梯で運用される砲兵で、主に阻止攻撃や火力支援を従にしている。

運用砲としては、作戦術階梯においては中砲、戦略階梯においては重砲やロケット砲、ミサイルが装備される。


運用砲

砲兵は運用する砲の種類によって3つに分類できる。


軽砲

西側:75mm,105mm 東側:76mm,122mm

口径105mm〜122mmの軽榴弾砲は第一次世界大戦頃から、口径75〜84mmの野砲と共に師団/旅団所属砲兵の主力師団砲兵として運用されるようになり、第二次世界大戦時はどこの国の軍隊でも使用されるようになった。

戦後も長期にわたって使用されてきたが、近年はレーダーによって発射位置を特定されて反撃されることが増えてきた。そうなると自動車に積載してすぐ移動する必要が生じ、車載前提となると中砲との差別化が困難になってきた。こうして空挺部隊や山岳部隊など重装備の運用制限が厳しい部隊か発展途上国で使用される程度になってきている。



中砲

西側:150mm,155mm 東側:130,152mm

戦間期から第二次世界大戦にかけては軍団ないし軍司令部に直属する軍団砲兵・軍砲兵の装備として運用されており、区分も重砲であった。

第二次世界大戦ではアメリカ陸軍とドイツ陸軍が師団砲兵に1個大隊分の150mm級榴弾砲を野砲に変わって配備して火力増強を図った。

122mmや150mmクラスのカノン砲は同口径の榴弾砲と比較し、極めて大重量であり性能も異なるため軍団砲兵・軍砲兵として運用されている。

また、東側が第二次世界大戦後に制式化した130mm砲弾はM-46 130mmカノン砲で使用される程度であり、その長射程と大重量から軍団砲兵で運用された。

レーダーと連携して長距離の敵に対し短時間で火力を投射し、攻撃後は自走して素早く移動して反撃を回避する、といういわゆる自走砲の一連の戦術に適した規格である。

こうして現在の先進国の砲兵は、中砲の自走砲に集約化する傾向がある。


重砲

西側:203mm,240mm 東側:180mm,203mm

第一次、第二次両大戦において主に軍団砲兵・軍砲兵に配備され、攻城砲として要塞などの硬化目標の破壊や遠距離砲撃を任務としてきた。

要塞砲や沿岸砲としても使用されている。

対砲兵レーダーの発達によりある程度の機動力を求められる現代では、その重量が移動の妨げになってしまう。こうして航空攻撃やロケット砲にとって代わられ姿を消しつつある。


ロケット砲兵

ロケット砲を運用し、基本的に重砲の代替用途として、作戦術以上の階梯で運用される。MLRSやBM-30などの長射程・多連装のロケットランチャーとして主に利用されている。

中砲の自走砲に比べると精密な目標射撃には劣るが、一定範囲に集結した敵に遠距離から大火力を投入して殲滅するという戦術にはより適している。


ミサイル砲兵

短距離弾道ミサイルなどの地対地ミサイルを運用する。

基本的には核兵器などの戦略階梯で運用される。

破壊力は優れているが極めて高価であり、用途は限られる。


組織編成

国や時代によって様々な編制が存在するが、一般的な事例としては師団砲兵として1個師団に1個砲兵連隊が存在する。

1個砲兵連隊の編制は2〜4個大隊で、大隊は2~4個中隊で編成される。

砲兵は中隊単位でバッテリーと呼ばれるひとそろいのシステムになっており、砲撃は最低でも中隊単位で行う。

砲兵連隊の大隊数は同じ師団に属する歩兵連隊の数と関連しており、歩兵連隊数と同じ数の大隊が編成される。

また、歩兵連隊を直協支援する部隊とは別に全般支援を行う重砲を運用する大隊が存在していることも多い。

砲兵連隊は砲列を構成する中隊に指揮小隊と観測班小隊に弾薬を運ぶ段列が集まって大隊が構成され、大隊が集まって連隊となる。

砲兵はその運用に弾道学に基づく複雑な計算を必要とするために高い教育を受けた将校と下士官を必要とする。

教育水準の低い国では優秀な砲兵の確保が難しい場合も多く、砲兵の能力の低さから砲戦能力が制限されることも多く、砲兵将校の能力不足から間接射撃が行えずに直接照準に頼った運用が行われた。

特に第二次世界大戦中に確立されたソ連の砲兵ドクトリンはドイツアメリカより大規模かつ、効率的な運用を行った事で有名である。


運用術

対地攻撃を担っている野戦砲兵の任務の1つは戦闘前面で直接照準射撃を行う近接戦闘部隊を間接照準射撃によって後方から掩護攻撃することである。

また、これとは別に砲の長射程化とロケット・ミサイル等の発達により、砲兵と砲兵の火力戦闘、いわゆる対砲兵戦が前線の近接戦闘部隊の援護に先だって行われる事も多い。

初期の対砲兵戦に勝利出来れば以後の近接戦闘においても有利な戦闘が期待出来る。


砲兵の重要な作業は主に三つ「観測」「射撃」「移動」である。


観測

一見地味に思える事かも知れないが、対砲兵戦闘と戦局を左右する重要な仕事である。

野戦砲兵は砲兵隊員自身や他部隊の隊員による前進観測員からの射撃要請や航空機・人工衛星による攻撃目標情報の他に前線後方に位置する砲兵部隊自身が行う観測も含める。


■気象観測■

火砲は温度・湿度・気圧や風向・風速によって着弾地点は大きく変化するため、射撃に先立って随時、気象観測が行われる。

発射地点での温度・湿度は装薬の燃焼速度を変化させ、発射後の弾道経路の空中における気圧や風向・風速は弾道を変化させる。

発射地点での温度・湿度・気圧は容易に計測できるが、弾道経路そのものは無理としても、発射地点付近上空の風向・風速は、小さなバルーン、またはラジオゾンデによって観測される。

昼間の使用に限定されるバルーンの動きは目視観測によって追跡され、夜間でも使用可能なラジオゾンデは、追跡レーダーによって追跡され、同時に空中の温度や気圧が受信される。

ラジオゾンデは電波が敵に受信されることで砲兵の射撃準備が察知されるため、使用には配慮が求められる。


■音響観測■

音源評定とも呼ばれており、集音マイクを5-6個、広い範囲に事前配置して分析装置と有線接続する。

昼夜の別なく敵の初弾発射音からその位置を直ちに特定できるため、非常に有効であるが配置には手間が掛かる。


■対砲迫レーダ観測■

対砲迫レーダによって敵の砲弾が空中を飛翔している弾道を精密に測定し、発射地点を特定する。

アンテナの設置によっては放射可能なレーダー波の方向がある程度限定され、敵の射撃以前にレーダー波を放射すれば、自ら対砲迫レーダの位置を教えてしまう危険があるため通常は敵の初弾発射後に観測が開始できる。


■火点観測■

敵の発射炎や発射煙を観測して発射位置を特定する。

遠距離射撃が主体となった近代戦闘ではあまり発生しない。

射弾観測 砲弾の落着、あるいは曳火破裂した位置が目標に対してどのような位置関係にあったかを観測し、射撃修正の要不要や射撃諸元の修正程度を算出する。


これらの情報や他部隊部から情報も含めて、すべてを素早く伝達・分析して敵の位置を特定し有効な射撃を行う。

そのため、コンピュータとデジタル通信を活用した情報技術が導入されている。


射撃

詳しい内容は射爆理論を推奨する

野戦砲兵部隊の砲撃は綿密な射撃計画に基づいた「計画射撃」を行うことが多い。

だが、戦闘正面の部隊からの射撃要請によって開始する「要請射撃」、また野戦砲兵部隊の前進観測者が後方の野戦砲兵部隊に目標座標を伝達して行う「臨機目標射撃」もある。その射撃の方法には大きく分けて弾幕射撃と集中射撃がある。


■弾幕射撃■

特定の地点を狙うのではなく、敵のあらゆる行動を妨害、無力化することを目的とし、戦線に対して横一列に並んだ砲撃を加える射撃である。この弾幕射撃を戦闘部隊の前進と速度を合わせて前方に狙いを変えていけば、前進弾幕を行うことができる。前進弾幕を的確に行えば前進する部隊は敵の反撃を受けることなく前進することが可能である。


■集中射撃■

特定の目標に対する射撃であり、一点に砲撃が集中される。 これにより、強固な防衛陣地や敵部隊に対して絶大なな破壊効果を期待できる。

ただし、一定数の火砲と弾薬のストックが必要であり、これの実施には砲兵の高い練度と継続的な射撃を要求される。


移動

戦闘状況下における砲兵の移動は2種類に分かれる。

1つは、戦闘前面の移動や近接戦闘部隊の移動に合わせて開位置を移動することであり、随時行なわれているので、下記の様な緊急性はそれほどない。

もう1つは、敵への射撃後に予想される敵砲兵からの対抗射撃による攻撃を避けるために移動することであり、可能な限り素早く移動することが求められる。

もちろん、こちらから射撃を行わないうちに攻撃を受けた場合も素早く移動する必要がある。


歴史

火薬が発明されると、その軍事的実用化の方向性としては、より多くの火力をより遠距離に投射するという方向性、すなわち大砲が初期から重視されてきた。著名な例はオスマン帝国によるコンスタンティノープル攻略戦、テオドシウスの城壁を破壊したというウルバン砲である。だが、当時の大砲の火力ではその大城壁を破ることは出来ず、弾着地点もほぼ統制不可能であったという異説もある。欧州にも伝来したが、音響で敵の士気を挫くのが主な効果とされる程度の信頼性であったとされる。


三十年戦争の頃には威力も狙いも改善され、大砲をより多く確保した方が勝敗を決するようになった。このため大砲の陣地争奪が戦況の中心となっている。さらにそういった敵兵に奪われやすいリスクを避けて自在に火力を投入する為、ナポレオンは砲を馬でけん引して移動することを重視した。システム・グリボーヴァルというフランス独自の軽量で均質な大砲を供給する製造法もあって、フランス軍の砲兵は大陸を席巻した。また中世的な城に代わって、大砲の攻撃を想定した堅固な要塞がきずかれるようになる。当時の攻城戦では大口径の火砲が無いと強力な外壁を打ち崩せなかった。


19世紀に入ってさらに大砲の射程が伸び、目視不可能な敵をも攻撃できるようになる。このため、狙いを定める為の偵察や弾着観測、偵察と砲兵との通信といった役割が重んじられるようになる。こうして20世紀初頭以降、砲兵が多用する間接射撃による攻撃は目標への正確に弾着可能となり、自らの位置が露呈しない限りにおいては非常に有効な攻撃方法の一つとなった。


21世紀に入り誘導砲弾の登場により、前進観測員やドローン等による目標指示レーザーの照射、GPS座標の指示により、より精密な攻撃が可能となった。


関連項目

砲弾 塹壕 戦車 自走砲 ロケットランチャー

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