概要
フランス軍(フランスぐん、フランス語:Forces armées françaises)は、フランスが保有する軍隊。陸軍・海軍・空軍・国家憲兵の4軍で構成される。昔は徴兵制が存在していたが、2001年6月に廃止されて現在は志願制となっている。軍事費の総額では世界第8位に位置している。
機構
指揮官 | スタッフ |
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大統領 | 国防安全保障委員会など |
軍事大臣 | 軍事省 |
統合参謀総長 | 統合参謀本部 |
軍種 | 特徴 |
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フランス陸軍 | 世界最初の近代国民軍。過去にズアーブ兵という精鋭部隊が存在した。 |
フランス海軍 | 旧植民地の名残である海外領土が世界各地に点在していることから、カリブ海・南大西洋・インド洋・太平洋などでも小型艦艇を駐留させたり、大型艦を派遣したりしている。 |
フランス航空宇宙軍 | 1934年7月に空軍として陸軍から独立した後、2020年9月に発展・改組する形で創設された。 |
国家憲兵 | 地方圏での警察活動を担当する組織だが、憲兵活動など一部軍隊としての任務もある。 |
その他
歴史
フランス軍の誕生は、ジャンヌ・ダルクらの活躍によって100年戦争への勝利が見えて来たシャルル7世の時代に遡る。1445年5月に王はロレーヌ遠征に用いた傭兵隊を解散する際にその一部を常備軍に編成する事とした。かつてはアルマニャック派と呼ばれる貴族の派閥領袖に過ぎなかったシャルル7世も、この頃には国王に相応しい軍事力を求められるようになっていた。発足当時数千人程度の勅令隊の誕生である。これによってシャルル7世は貴族軍の寄せ集めや単なる傭兵ではない自らの戦力を確保でき、イギリス軍を駆逐してフランス全土を統一することに成功した。
1589年8月にブルボン朝の絶対王政が成立する頃には、フランス軍は数十万人規模に膨れ上がる。リシュリュー枢機卿・コルベール財務総監ら名宰相の活躍による財政基盤に支えられ、名実共に主力部隊となり、国王の私兵から対外的にフランスを守る国軍へと制度的発展が進む。この軍事力をもってルイ14世はネーデルラント・ドイツから多くの領土を奪ってフランスを拡大し、太陽王と呼ばれるに至る。
フランス軍が全盛期を迎えるのはフランス革命の時代である。革命の進展を危惧した全欧州の諸王が対フランス大同盟を結成して圧倒的な大軍でフランスに侵略してくる。国民議会が主導するフランス政府は、王ではなく国民自身を国民の軍が守るというナショナリスム (nationalisme)の思想・それを具体化した斬新な徴兵制という国民皆兵の制度・砲術と戦術の天才であるナポレオンという武器で反撃に出た。フランス皇帝となったナポレオンに率いられ、従属諸国の軍勢も合わせて、グランダルメ(Grande Armée、大陸軍)と名付けられたフランス軍は、その名の通り全欧州大陸を制覇する。イギリス・オーストリア・プロイセン・ロシア・列強は次々とグランダルメの前に敗走して講和を請う事になった。
しかしロシア遠征を機に守勢に回り、1815年6月にワーテルローの戦いに敗北してナポレオンが退位して以降は、フランス軍には苦難の時代が続く。ナポレオンの甥として皇帝になったナポレオン3世の時代には諸国の自由主義を支援してフランス帝国の復興を狙うが、普仏戦争で皇帝自身が捕虜となる惨敗を喫して挫折した。第三共和政は海外派兵に重きを置いて北アフリカを中心に植民地を拡大し、第一次世界大戦では800万人もの兵力を戦地に送って死者だけで150万人に及ぶ打撃を受ける。
当時の歩兵戦は互いに塹壕に籠って戦う持久戦であり、攻勢に出て敵塹壕を攻略すると攻撃側に大損害が出る仕組みになっていた。こうしてドイツとの戦いには勝ったが厭戦感情が蔓延する。来るドイツとの再戦にはマジノ線という大要塞ラインで損害を最小化して撃退する戦略が取られた。だがこの戦略はナチス・ドイツの電撃戦によって崩壊する。フランスは全面降伏の上国土の北半分をドイツに奪われて南半分のみを統治するヴィシー政権が成立する結果となった。
現代のフランス軍はド・ゴール将軍率いるナチスへのレジスタンス活動(「自由フランス」)から始まる。だが、ヴィシー政権を率いたフィリップ・ペタン将軍がヴェルダンの英雄としてフランス救国の絶大な人気を得たのに比べると、ド・ゴールの地味な経歴では自由フランスへの支持は広がらなかった。こうしてフランス本土での活動は難航するもアルジェリアやチュニジアなどのアフリカ諸国では自由フランス軍が順調に進撃し、ドイツ軍やヴィシー政権を次第に圧倒していく。
この展開はアフリカ人を中心に、戦後のフランスでの植民地人、有色人種の地位向上へと貢献することになった。戦後のフランス軍は各地における植民地戦争に敗北し、海外活動を縮小していく。アメリカの台頭への警戒からNATOの軍事部門脱退・核兵器保有など独自の軍事力整備を行う。兵器でも高い攻撃力を誇る主力戦車のルクレール、継戦能力に優れた戦闘機のラファールなど個性的な装備を自ら開発している。冷戦後、東西緊張の緩和進展と兵士の専門性を重視する為に、フランス国民軍の象徴であった徴兵制は1996年に廃止される。また2009年4月にNATOに復帰し、国際平和活動に重点を置くようになっている。
日本との協定
2018年7月13日に日本との間で物品役務相互提供協定が締結され、自衛隊と武器弾薬の相互提供など互いの物資を融通し合って軍事作戦の後方支援を実施する事が可能になり、準同盟関係となった。ヨーロッパではイギリスに次いで2ヶ国目である。
代表的兵器
個人携行武器
車両
- ルノーFT-17
- サンシャモン戦車
- ルノーAMR35
- AMC35
- ソミュアS35
- ホチキスH35/38/39
- B1bis
- AMX40(試作)
- ARL44
- ベスパ150TAP
- AMX-10RC
- AMX-13
- AMX-30
- ルクレール