概要
フランス共和国大統領(フランスきょうわこくだいとうりょう、フランス語:Président de la République française、英語:President of the French Republic)は、フランスの国家元首たる官職。歴史的経緯から、隣接するアンドラ公国の共同大公(国家元首)をウルヘル司教と共に務める。1958年10月に成立した第五共和政では任期は7年(再選回数制限無し)だったが、2000年9月の憲法改正で任期は5年に短縮された(当時は再選回数制限に変更無し)。2008年7月の憲法改正で連続した任期は2期10年までに制限され、他にも議会における大統領の演説が可能になった。
選出
第五共和政以降
大統領に立候補するには23歳以上のフランス国民である事が条件である。ただし国会議員・地方議員などから500人以上の署名を集める必要がある。本選挙で有効投票総数の過半数を占める候補がいない場合、最上位の2人が候補である決定選挙を2週間後に実施する。1965年12月の大統領選挙以降は、2017年5月までの全ての大統領選挙において決定選挙が実施されている。
権限
大統領は以下の権限を有し、自らは外交・安全保障、指名した首相に内政を担当させる事で行政権の全般を主導できる。議会に対しては解散権に加えて国民投票の実施権によって立法権への広範な介入すら認められるが、コアビタシオン(cohabitation)など国民議会の多数派を野党が掌握している場合は、何度首相を任命しても野党に議会で不信任を受けるリスクがある。この場合は内政ばかりか、外交にも一定の野党への譲歩を強いられる可能性を有する。ただし退任後も他の公職に就いていないという条件があるが、終身的に憲法裁判所の裁判官になる権利がある。
- フランス軍の指揮権
- 外交権
- 首相の任免権
- 国民議会の解散権
- 法律・条約・憲法改正案を議会を通さず、直接国民投票にかける権利
- 自身の免責特権・恩赦を与える権利
大統領官邸
1720年12月に建築家のアルマン・クロード・モレによって建設されたエリゼ宮という宮殿で、パリのフォーブル・サントノレ通りの一角の厳重に警護された区域に立つ。かつてはルイ15世の愛人にして権力者であったポンパドール夫人・ナポレオンの皇妃のジョセフィーヌなどが居住していた宮殿をそのまま使用している。それ故に内装は大変に豪華で、外交式典・閣議はここで開催される。1873年5月にパトリス・ド・マクマオン大統領が就任し、1874年9月以来大統領の官邸となっている。
歴代大統領
第二共和政
代数 | 氏名 | 所属 | 在任期間 | 特記事項 |
---|---|---|---|---|
初代 | ルイ・ナポレオン・ボナパルト | ボナパルティスト | 1848年12月 - 1852年12月 | 後の皇帝ナポレオン3世 |
第三共和政
代数 | 氏名 | 所属 | 在任期間 | 特記事項 |
---|---|---|---|---|
第2代 | アドルフ・ティエール | 元オルレアニスト・元中道右派・穏健共和派 | 1871年8月 - 1873年5月 | |
第3代 | パトリス・ド・マクマオン | 軍人・王党派 | 1873年5月 - 1879年1月 | |
第4代 | ジュール・グレヴィ | 穏健共和派・左翼共和派 | 1879年1月 - 1887年12月 | |
第5代 | サディ・カルノー | 穏健共和派 | 1887年12月 - 1894年6月 | |
第6代 | ジャン・カジミール=ペリエ | 穏健共和派 | 1894年6月 - 1895年1月 | |
第7代 | フェリックス・フォール | 穏健共和派・進歩共和派 | 1895年1月 - 1899年2月 | |
第8代 | エミール・ルーベ | 共和派 | 1899年2月 - 1906年2月 | 英仏協商締結当時の大統領。 |
第9代 | アルマン・ファリエール | 共和派 | 1906年2月 - 1913年2月 | |
第10代 | レイモン・ポアンカレ | 共和派 | 1913年2月 - 1920年2月 | 第一次世界大戦当時の大統領。 |
第11代 | ポール・デシャネル | 共和派 | 1920年2月 - 1920年9月 | |
第12代 | アレクサンドル・ミルランド | 無所属 | 1920年9月 - 1924年6月 | |
第13代 | ガストン・ドゥメルグ | 急進党 | 1924年6月 - 1931年6月 | |
第14代 | ポール・ドゥメール | 急進党 | 1931年6月 - 1932年5月 | |
第15代 | アルベール・ルブラン | 共和派 | 1932年5月 - 1940年7月 |
第四共和政
代数 | 氏名 | 所属 | 在任期間 | 特記事項 |
---|---|---|---|---|
第16代 | ヴァンサン・オリオール | 労働者インターナショナル・フランス支部 | 1947年1月 - 1954年1月 | 第二次世界大戦終結後に就任した最初の大統領。 |
第17代 | ルネ・コティ | 全国独立主義者農民センター | 1954年1月 - 1959年1月 |
第五共和政
代数 | 氏名 | 所属 | 在任期間 | 特記事項 |
---|---|---|---|---|
第18代 | シャルル・ド・ゴール | 新共和国連合・共和国民主連合 | 1959年1月 - 1969年4月 | 第五共和政で最初の大統領。 |
第19代 | ジョルジュ・ポンピドゥー | 共和国民主連合 | 1969年6月 - 1974年4月 | |
第20代 | ヴァレリー・ジスカール・デスタン | 独立共和主義者全国連盟・共和党・民主連合 | 1974年5月 - 1981年5月 | |
第21代 | フランソワ・ミッテラン | 社会党 | 1981年5月 - 1995年5月 | |
第22代 | ジャック・シラク | 共和国連合・国民運動連合 | 1995年5月 - 2007年5月 | |
第23代 | ニコラ・サルコジ | 国民運動連合 | 2007年5月 - 2012年5月 | |
第24代 | フランソワ・オランド | 社会党 | 2012年5月 - 2017年5月 | |
第25代 | エマニュエル・マクロン | 共和国前進 | 2017年5月 - 現職 | 史上最も若くして就任した。 |