概要
フランスのスパッド社がWW1中の1916年に開発した複葉戦闘機で、同大戦のフランス軍を象徴する機体である。
数多くのエースパイロットを輩出し、その中にはWW1唯一にして我が国最初のエースパイロットである滋野清武も含まれている。
速度性能などは優れていたが、武装は7.7mm機銃1丁のみで、2丁装備しているドイツ軍機に対して火力不足であった。
そのためエースパイロットのジョルジュ・ギンヌメールの提案により、エンジンをより強力なイスパノ・スイザ8Cbに換装し、プロペラ軸内に37mm砲を内蔵した(いわゆるモーターカノン)スパッドS.XIIが開発される。
37mmと言えば、口径だけならルノーFT戦車と同クラスであり、命中すれば当時の航空機など一撃で木っ端微塵にできた。
しかしパイロットが一発ずつ手で装填しなくてはならない上、弾が重いため真っ直ぐ飛ばず、使いこなすのは非常に難しかった。
そのため大量生産はされなかったものの、少数がエースパイロット専用機として配備された。
エース専用機というのはロボットアニメなどではよく登場するが、現実の戦闘機では(現地改修を除けば)このスパッドS.XIIのみではないだろうか。
翌年の1917年には正当な拡大発展型と言えるS.ⅩⅢ(エンジンを強化、機銃を2丁に)が開発され、主力機の座をそちらに譲ったものの、訓練機として運用は続けられた。
またかの名戦車である同国のルノーFT-17の例と同じく、S.Ⅶとその後継機であるS.ⅩⅢは英、米、伊といった当時の連合国でも運用された。
日本でも陸軍が試験的に購入した機体を運用していたが、制式採用には至らなかった(尚、後継機のS.ⅩⅢは丙式一型戦闘機として制式採用されたが、同時期に採用された同国のニューポール24こと甲式三型戦闘機があまりに好評だったため冷遇された)。
なお、前述通りこの機がモーターカノンの定義である『水冷V型エンジンのシリンダバンク間に機関砲を配置し、ギアで駆動するプロペラの軸内から発射する』という構造の始祖であることから、フランス語圏外でもmoteur canonとフランス語で書かれることが多く見られる。
性能諸元
スパッドS.Ⅶ
全長 | 6.08m |
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全高 | 2.20m |
翼幅 | 7.82m |
翼面積 | 17.85㎡ |
最高速度 | 時速212km |
武装 | ヴィッカース7.7mm機銃×1丁 |
スパッドS.ⅩⅢ
全長 | 6.25m |
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全高 | 2.60m |
全幅 | 8.25m |
最高速度 | 時速218km |
武装 | ヴィッカース7.7mm機銃×2丁 |
関連イラスト
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