曖昧さ回避
シュルクーフとも表記される。私掠船(国公認の海賊)船長ロベール・スルクフに由来。
潜水艦はフランス語読みの「スルクフ」、駆逐艦は英語読みの「シュルクーフ」と区別されることが多いが、潜水艦のほうも「シュルクーフ」と表記されることがある。
概要
…なのだが、潜水艦のくせに20.3cmの連装砲積んでいたり挙句の果てには艦載機まで積めたりというなかなかのビックリドッキリメカである。
正直、海を挟んだ宿敵を笑えない潜水艦だ。まあそんなことを言ったら今度は彼らから「潜水艦にガチの攻撃機を3機も積んだお前らに言われたくはないわ!!!」と返ってきそうだが。
ちなみにソイツが出るまでは世界最大の潜水艦だった艦でもある。
武装
最大の武器
スルクフの特徴はなんといっても司令塔前部の20.3cm連装砲。
巡洋艦ならともかくこいつは潜水艦だ。潜水艦にこんなものを積んでしまった。
ワシントン軍縮条約上で最大とはいえまさか本当に積んでしまうとは誰も思わなかっただろう。
主砲旋回角度は左右135度だが、実際には小型の船体に対して主砲の反動が大きいため、艦首を指向したまま撃つのが理想といわれている。
…だが、浮上した直後は撃てなかったり(初弾発砲まで約2分30秒)とかそもそも砲撃のために浮上したら艦自体がデカすぎていい的になってしまうとかお茶目な部分も色々あったとか。
もっとも船団護衛が確立する第二次世界大戦後期までは浮上砲撃は有効な戦術で、Uボートも行っていた。こいつの場合スケールがデカすぎるというだけで。
スルクフ「大砲だけかと思ったか?」
しかしスルクフのビックリドッキリメカぶりはなにも砲だけではない。
艦載機まで搭載できるのだ。
艦内に水上偵察機・マルセルベソンMB411を1機だけとはいえ搭載可能となっている。そう、この艦もれっきとした潜水空母だ。とはいえMB411のスケールは伊号潜水艦に乗せられていた零式小型水上機と大差ない。
MB411に固定の武装はなく(商船を攻撃するために爆弾の搭載が可能だったともいわれている)、もっぱら索敵に使われたという。
もっとも開戦当時は搭載されずに、格納庫も倉庫として使われていたらしいが。
ちゃんとした武器もある
連装砲以外にもオチキス機関砲も搭載している他、それぞれ口径の異なる魚雷発射管もちゃんと付いている。
艦首側に55cm魚雷発射管4門、さらに後部甲板に55cm4連装旋回式魚雷発射管と40cm4連装旋回式魚雷発射管各1基を搭載。55cm魚雷は対戦闘艦用、40cm魚雷は対商船用に区別されていたとされている。
対空火器であるオチキス機関砲は50口径37mm単装機関砲2門と76口径13.2mm連装機銃2基が搭載されていたが、後者は1942年にマキシム12.7mm連装機銃に換装された。
奇怪な潜水艦、その顛末
第二次世界大戦開戦時は西インド諸島マルティニークを拠点とし、ジャマイカからフランス本国を経由してイギリスに至る輸送船団の護衛任務にあたっていた。敵船団を強襲するために大砲を載せた潜水艦が味方の船団を護衛するというのも奇妙な成り行きである。
1940年にフランス本国が休戦協定を結び、スルクフは自由フランス軍に所属する形で活動を続けた。
しかし1942年2月18日、カリブ海クリストパル北北東70海里の海上でアメリカ船籍の商船「トムソン・ライク」と衝突、その損傷が原因で沈没してしまった。
ちなみに
イギリスもM級潜水艦という、30.5cm砲を搭載した潜水艦を作ったことがある。
こちらももともとは商船を強襲するために大砲を搭載したものであるが、30.5cmという大口径砲を搭載したのには要塞攻撃を視野に入れていたためとされている。しかもこいつは合計4隻の建造が計画され、うち3隻が完成している。
しかしそのうちの1隻「M1」がなんと主砲部分からの浸水が原因で沈没してしまったことを理由に残る2隻も主砲を撤去することになってしまった。
さらにイギリスは本艦と同じく商船攻撃用に13.2cm連装砲を搭載したX1という潜水艦を就役させている。こちらは居住性と整備性の悪さが原因で開戦前の1936年に解体処分されている。
…ヨーロッパ人はなんで潜水艦に大砲を積みたがるんだ。
まあこんなことを言ったところで「潜水艦に飛行機を3機も積んだお前らに言われたくはないわ!!!」と返ってきそうであるが。
フィクション
小説『終戦のローレライ』に日本海軍潜水艦『伊507』として登場。カリブ海で商船と衝突し、奇跡の生還を遂げた同艦がドイツに接収され、その後ドイツ敗戦に伴い日本に渡ったという設定。
特異なビジュアルが印象に残る艦ではあるが、いかんせんフランス製ということもあったり日本にも十分おかしな潜水艦がいることもあって意外と創作での登場は少ない。
関連イラスト
艦娘化
戦艦少女のスルクフ