定義
軍隊の駐屯する堅固で恒久的な防御設備。一時的な防御設備を陣地(野戦築城)という。
防御設備を持たない軍事作戦行動の拠点が基地、陸軍が平時に駐屯する拠点(そこで戦闘することを考慮していない)が駐屯地である。
歴史
ヨーロッパでは、中世的な城や砦ではない近代的な要塞はルネサンス期に大砲の威力が上がり、高い城壁で防ぐのが困難になってきたことで登場。近付いた敵を集中攻撃するために、星形要塞へと発達した。
だが、要塞は動けないので、交通の要衝に建てないと意味が乏しく、敵の軍隊に遠回りされると何の意味もない。フランスの「マジノ線」のように要塞を連続して線状に造れば解消できるが、これらは建設と維持に莫大な費用を費やすことになった。
もちろん、軍港や首都、または近郊の重要都市など、道中ではなく攻略目標自体となる地点はまわり道しようがないため頻繁に要塞化され、コンクリートで固めた「永久要塞」と呼ばれる大規模なものは近代初期の実戦でも大活躍し、攻撃側に多大な出血を強いた。
要塞は陸上戦闘だけでなく、艦砲射撃を狙ってくる敵艦からの防御にも重要であり、退役した戦艦などから取り外された主砲塔を装備した沿岸要塞は海にも睨みをきかせた。
一見同じ砲を持つ同士なら動ける戦艦の方が有利なようにも思えるが、ユトランド沖海戦で証明されたとおり、軍艦の速度程度の速力では砲撃戦で防御の足しにならない。
動けないが故に要塞の砲は周辺海域の測距、照準も終えており、地面に固定されているため揺れる艦上からの射撃に比べると10倍以上、文字通り1ケタ違う命中率を誇った。もちろん、どこへ当たっても痛い軍艦と違って要塞側は設備自体に被弾しなければほぼほぼノーダメージであり、艦船側は大口径砲を持つ要塞と撃ち合ってはいけないとされた。
実際、第一次世界大戦、第二次世界大戦ともに要塞が参加した戦闘自体が少ない中、欧州では要塞側が攻め寄せてきた主力艦側を撃沈する戦果を見せている。
日本やアメリカも要塞を整備しており、「もし日本海軍が(要塞のある)ハワイを攻略するには連合艦隊がもう1セット必要」と言わしめる程恐れられた。アメリカ側も圧倒的有利な戦争末期の日本本土攻撃に於いてさえ、要塞の存在する地点は避けている。
第二次世界大戦でナチス・ドイツが「電撃戦」によってマジノ線を迂回してしまったことで堅固な要塞線の存在意義が揺らぎ、航空機の発達もあって要塞の戦略的意義は薄れた。
日本では、幕末にヨーロッパの理論を取り入れた沿岸防備のための台場(砲台)が各地に造られ、有名なのが品川台場である。本格的なヨーロッパ風城塞は、箱館の五稜郭が唯一だったが、結局それほど役に立たなかった。
明治時代になって、海岸沿いの要所(東京湾、瀬戸内海の入り口、津軽海峡、対馬など)や軍港周辺(佐世保、舞鶴など)に要塞が造られ、第二次世界大戦まで機能していた。
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要塞に例えられるもの
京浜急行電鉄京急蒲田駅をはじめとする要塞駅…複雑さはないが、駅のホームが縦に積み上がっている立体構造から要塞と呼ばれる。地下が主体の場合は「ダンジョン」。