概要
銀河帝国軍が自由惑星同盟と帝国を繋ぐ回廊の一つ、イゼルローン回廊に建設した軍事用人工天体である。元ネタは言わずもがなスターウォーズのデススター。
イゼルローン回廊における戦略補給基地、および帝国の同盟に対する抑止力として建設されたもので、多くの同盟軍人を消滅させてきた無敵の要塞である。デススターと違ってイゼルローン要塞自体に航行能力はない。
スペックは原作・アニメ版においてかなり異なっている。アニメ版では本体が緩衝材の役割も兼ねた流体金属で覆われており、さながら宇宙に浮かぶシャボン玉のような美しさを誇っている。
しかし、そんな美しい見た目とは裏腹にその戦闘能力は凶悪の一言である。
500万人の人員と2万隻の宇宙艦艇を収容でき、多数の強力な兵器を内蔵しているため抜群の防御能力を誇っている。特に要塞主砲「雷神の鎚(トゥールハンマー)」は劇中屈指の威力を持った兵器であり、下手な艦隊なら丸ごと消し飛ばす事も出来る。
居住空間も快適で各種インフラも充実しており、娯楽施設を備えた一つの都市としても機能している。これらの都市部や軍事施設を維持するための必要物資を独自生産できる工場や、酸素生産も兼ねた広大な食用植物製造プラントを備えているため、このイゼルローン要塞ひとつで自給自足をまかなうことも可能である。まさに完成された軍事都市であり、正攻法では絶対に陥落させることの出来ない難攻不落の大要塞である。
しかし、自由惑星同盟の誇る魔術師ヤン・ウェンリーの奇策によって無血占拠されてしまうと状況は一変。所有者がコロコロ変わることとなるのである。また、別の回廊であるフェザーン回廊がラインハルトによって占領されてしまうとその価値を失い、宙ぶらりんな存在になってしまった。
ヤン・ウェンリーやその仲間達にとってはかけがえのない家であり、ヤン亡き後はイゼルローン共和政府の名の下に民主主義最後の牙城となった。
歴史
イゼルローン回廊内に帝国の手によって膨大な費用を費やして建設された。予算と運用の関係で完成までに数十年の時を費やしたが、兎にも角にも完成してからはその凶悪な攻撃力を持ってイゼルローン回廊を支配してきた。
大小関係なく同盟軍の軍事行動を文字通り消し飛ばし、第一次~第六次攻略作戦まで同盟軍のイゼルローン要塞攻略は全て失敗に終わった。
第五次イゼルローン攻防戦において同盟軍宇宙艦隊司令長官・シドニー・シトレ大将は帝国軍艦隊の出発ゲートに同盟軍艦隊を突っ込ませて乱戦状態とし、帝国軍にトゥールハンマーをはじめとする迎撃兵器を使わせない作戦をとったが、要塞陥落を恐れた当時のイゼルローン要塞防御司令官は味方艦隊ごと攻撃するという暴挙に出、作戦は失敗に終わった。しかし、一時たりとも要塞を無効化させたこの作戦は同盟軍首脳部に「結果として失敗したが、この作戦はイゼルローン要塞の厚化粧を一枚はがすことに成功した」と自己満足気味な評価をされ、シトレ大将は元帥に昇進、同盟軍統合作戦本部総長に任じられた。
ヤン・ウェンリー提督の名を銀河にとどろかせた第七次イゼルローン攻防戦において、それまでの戦いとは打って変わった心理戦術によってイゼルローン要塞は内部から陥落し、駐留艦隊も同盟軍に乗っ取られた「トゥールハンマー」によって霧散消失させられた。ヤンとしてはイゼルローン要塞が手に入ったことで政治的に有利になった自由惑星同盟が銀河帝国と和平交渉することを期待したが、鮮やかすぎる勝利を収めたことが却って民衆の戦意を高揚させ、歴史的大敗となる帝国領侵攻戦を誘発する結果となってしまった。
第八次イゼルローン攻防戦では、同規模の要塞であるガイエスブルグ要塞を丸ごとワープさせてイゼルローン要塞と対決するという帝国軍の大胆な戦術に苦しめられたが、これは辛くも撃退した。
自由惑星同盟への遠征である「ラグナロック作戦」が発動されると、前哨戦としてイゼルローンへの陽動作戦が展開され、オスカー・フォン・ロイエンタール上級大将主導の下苛烈な攻撃にさらされることとなった。この際、ヤンはラインハルトと対峙するためにイゼルローン要塞を放棄するという大胆な行動に出たため、再びイゼルローンは帝国のものとなった。
しかし、その後同盟を追われたヤン一派によってイゼルローン要塞再奪取作戦が決行され、放棄する前にあらかじめ要塞内コンピューターにプログラムされた指示を起動されたことで、イゼルローン要塞は無力化・再奪取されることになった。
その後はヤン・ウェンリー一派の拠点となり、後にイゼルローン共和政府が誕生することになる。