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ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ

うぃりばるとよむひむふぉんめるかっつ

ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ(Wilibard Joachim von Merkatz )とは、田中芳樹原作の小説「銀河英雄伝説」に登場する老将である。
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概要

 銀河帝国下級貴族の出身で元は旧銀河帝国(ゴールデンバウム王朝)側の宿将だったが、旧王朝終焉の戦いにおいて敗北、自決を試みるが副官のベルンハルト・フォン・シュナイダー中佐に制止され、彼の勧めでヤン・ウェンリー大将をたよって自由惑星同盟に亡命、ヤン艦隊の客員提督(中将待遇)となる。
 銀河帝国側での最後の戦いでは敗北を喫したものの、その手腕はヤンラインハルト、或いは帝国軍の双璧に比肩すると称されており、ラインハルト陣営の将の尽くに一目おかれている。
 性格は温厚にして重厚、実直な人柄で、亡命後も旧帝国の軍服を着用し続け、自ら「亡命者」であるという立場を保ち続けている。
 乗艦は帝国軍時代はネルトリンゲン、ヤン艦隊時はシヴァからヒューベリオンとなっている。
 アニメにおいて声を担当した声優は納谷悟朗

人物

 確かな手腕と長年の経験によって培われた、当代随一の艦隊指揮能力の持ち主である。貴族出身の将帥だが、部下に対しても居丈高に振る舞うことのない誠実な人格の持ち主であり、その人望も厚かった。
 ただし元から誠実であったかと言うと、そうでもない。若いころは、他の貴族と同じく選民思想の持ち主であったことを、シュナイダーに公言している。現在の様に一般兵士に対しても公平な人物になった由縁は、兵士達との交流が原因であった。この事から、自分の考え方に疑問を持ち始め、選民思想に捕われない考え方になったと思われる。
 実直な性格から帝国軍上層部からは「扱いづらい」と判断されており、実力に反して軍内部では冷や飯を食わされていた。ミッターマイヤーをして、当に元帥になっていてもおかしくは無いと評されていたほどなのにである。
 自由惑星同盟に亡命し、ヤン艦隊の一員になってからも実直かつ誠実な態度を取り続けた。当初は参謀長・ムライ中将の不信の目にさらされていたが常に自分の立場を弁えており、求められたときのみ発言する姿勢を貫いていた。時には指揮権を借りて戦う事もあった。
 この様な振る舞いによって、「ヤン艦隊随一の紳士」として信頼を得ていく。また、時間にキッチリとした生活をしているためか、ヤン艦隊の兵士達は彼の行動に合わせて時間を合わせているとも言われている。また、次第にヤン艦隊の雰囲気に馴染んでいき、時には新年を祝う中にあって、シャンペンをグラスに開けず、瓶で口にして兵士達に祝いをアピールしていた事もあった。
 ヤン亡き後も、多くの将兵がイゼルローン要塞を去ることを決意した後も留まり続けることを決め、腹心のシュナイダーにこう告げた。

「儂は60歳近くになるまで、失敗を恐れる生き方をして来た。だが、そうではない生き方もあるのだと、ようやく分かってきたのでな。それを教えてくれた人達に、恩なり借りなり、返さなくてはなるまい」

そう言って、彼は新司令官となったユリアン・ミンツを蔭ながら支えていく。

波瀾万丈の生涯

 銀英伝は乱世の物語であり、数奇な運命に翻弄されるキャラクターも多いのだがメルカッツ提督はその代表格である。数十年にわたって帝国軍人として戦場を渡り歩いた彼だが、ラインハルト・フォン・ローエングラムの出現によって波瀾万丈の晩年を送る事になるのである。

ゴールデンバウム王朝

 作品時系列的に見て、第6次イゼルローン要塞攻防戦にて初登場した。当時は大将の地位にあり、要塞防衛艦隊の要として同盟軍と激闘と繰り広げている。なお、彼以外にどれほどの艦隊指揮官が居たのかは不明である。
 次にアスターテ会戦に一軍を指揮して参加。この時は帝国軍上層部が、ラインハルトの実力を測る為と称して、別の艦隊を授けて同盟軍へ侵攻させた。また、急成長している彼を確実に始末する為、貴族たちの情報漏えいが図られていた。同時に、実は融通の利かないメルカッツ自身も、厄介払いさせるつもりではなかったか、とロイエンタールは予想していたようである。
 ラインハルトとの直接的な面識を持ったのは、この会戦の時である。最初こそ各個撃破と言う方針に戸惑いを見せてはいたものの、その思惑とは別に戦果を挙げていく様子に対して「もはや、我々のような老兵の時代は去ったのかもしれん」と、ラインハルトの実力を認めている。

リップシュタット貴族連合軍

 皇帝フリードリヒⅣ世が斃れた後、エルウィン・ヨーゼフⅡ世を新皇帝としたリヒテンラーデ候とラインハルト一派と、現政権に反旗を翻した名門ブラウンシュバイク公とリッテンハイム候一派(貴族連合)による、皇帝の座を巡る後継者争いが勃発。
 これに対してメルカッツはどちらにも組せず、中立を取る立場を明示していた。しかし、ブラウンシュバイク公から、家族の安全に対する脅迫を仄めかされてしまったため、止む無くラインハルトとの敵対を余儀なくされてしまう。
 ブラウンシュバイクの意向によって貴族連合軍総司令官の地位を得たものの、命令されることになれなず、自制心の効かない尊大な貴族ばかりの軍で、彼はアーダルベルト・フォン・ファーレンハイト中将やレオポルド・シューマッハ大佐ら多くの軍人たちとともに四苦八苦する事となる。貴族を率いること自体が大きな足枷になっていると言っても過言ではなかった。
 その懸念は現実となる。序盤戦でシュターデン艦隊が敗走、オフレッサー上級大将率いるレンテンベルク要塞も陥落し、彼自身もスパイ疑惑で取り乱した末にアンスバッハ准将が止む無く射殺。高級指揮官の戦死が相次いだ。一時は彼自身が前線に出てきてシャンタウ星域を堅守し、オスカー・フォン・ロイエンタール中将を退けさせた。
 しかし、貴族の勝手な振る舞いは後を絶たず、メルカッツの知らぬ間にブラウンシュヴァイク公と主導権争いをしていたリッテンハイム候率いる5万隻の大艦隊が出撃していた。しかもジークフリード・キルヒアイス率いる艦隊によって完敗し、リッテンハイム候も敗死した上にガルミッシュ要塞も奪取されてしまい、兵力の多くを失うに至った。

ゴールデンバウム王朝滅亡

 軍事的敗北と政治的敗北を重ねた結果、兵力を激減させた貴族連合軍であったが、それでも職務を放棄せずに最後まで全うしようとした。だがブラウンシュバイクの無謀な最後の決戦に対して、ファーレンハイトは本拠としていたガイエスブルグ要塞に籠って「ラインハルト軍の補給線が延びているから、あせらずに時期を待つように」と主張、「出撃は敗北を早めるだけだ」と反対したが、絶望を感じていたメルカッツは王朝滅亡に殉じようとして参加。
 結局は敗北し、自決しようとしたところで、副官・シュナイダー中佐に止められる。捲土重来を図ることを提案された末に、自由惑星同盟へ亡命する事を決意するに至った。

自由惑星同盟へ亡命

 ヤン・ウェンリーを頼りイゼルローン要塞に客員提督として在籍しヤン艦隊のアシストを勤める。客員提督(中将待遇)としてヤン艦隊のオブサーバー的役割を担う。亡命者としての域を出ぬように立場を取り続けていた。第7次攻防戦ではヤンのいない中で、指揮権を借りてイゼルローン要塞の防衛に奮闘した。この時初めて、同盟軍艦隊を指揮する事となった。

銀河帝国政党政府

 帝国貴族の亡命政権「銀河帝国正統政府」によって、勝手に軍務尚書の肩書を与えられてしまい、ハイネセンへ転属を余儀なくされた。しかし、ラインハルトによる遠征「ラグナロック作戦」が発動、フェザーンを占領されたことによって正統政府自体は資金援助も期待できず、さらには「ランテマリオ会戦」の敗北等によって、自然瓦解してしまう危機に陥る。
 そんな中にあって、メルカッツは律儀に首魁であるレムシャイド伯に許可を得てヤン艦隊のもとに帰る。「バーミリオン会戦」を戦い抜いた。

自由惑星同盟降伏後

シャーウッドの動く森

 同盟政府の事実上の降伏に際し、小規模部隊を率いた「シャーウッドの動く森」部隊の指揮官として、今後に備えてもらうようヤンから依頼される。ヤンが危機的状態に陥るまでに、メルカッツは廃艦予定にあった戦闘艦艇の奪取を行い、徐々に戦力の結集を図っていく。
 さらにイゼルローン要塞攻略部隊の指揮官として参加。ヤンが仕掛けて置いた罠と秘密のキーワードを駆使して見事に再占領に成功する。

エル・ファシル革命政府

 革命予備軍の一提督として艦隊を率いていく。その堅実な手腕と指揮ぶりは見事なもので、帝国軍の侵攻を食い止めていく。しかし、ファーレンハイト艦隊とビッテンフェルト艦隊との戦闘で、アスターテ会戦や貴族連合軍の一員としてともに戦い、戦友でもあったアーダベルト・フォン・ファーレンハイトが戦死してしまったという報告を耳にした時は、会議を欠席して喪に服していた。

イゼルローン共和政府

 ヤン亡きあとも、共和政府軍の一角として戦闘に参加。ユリアン・ミンツが初めて艦隊指揮を執った時も、別働隊を率いてワーレン艦隊を影から挟撃する等の手腕を見せつけ、これを退ける。
 しかし、後のシヴァ会戦において、猛り狂ったように突進してきたビッテンフェルト艦隊の猛攻には、少数しかいない艦隊では支えきれず、遂には彼の乗艦であるヒューベリオンにも被弾。その影響で瓦礫の下敷きになり致命傷を負ってしまう。
 脱出を即すシュナイダーをやんわりと断った。シュナイダーは自身の亡命進言が、余計ではなかったかと反省の言葉を口にするも、「嘆くような人生ではあるまい」と、逆に感謝していた。

「何と言ったかな、そう、伊達と酔狂で皇帝ラインハルトと戦えたのだ」

 最後の最期で「伊達と酔狂」という、普段の彼なら口にしないであろう言葉を発して、彼は満足な気持ちに浸りつつも、そのまま息を引き取ってしまった。その軍歴はヤンとラインハルトの軍歴を凌駕するとされている。


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