「誰かが責任を取らなきゃならん。誰も責任を取らない社会よりはマシってもんだ」
人物像
CV:キートン山田(OVA)、川島得愛(Die Neue These)
OVA版(左) | 藤崎竜版 |
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Die Neue These(右) | |
自由惑星同盟におけるデスクワークの達人であり、補給を筆頭にあらゆる事務処理を有機的に処理できる第一人者である。事務処理能力のみで三十代で将官に登りつめた、いわゆるエリートであり、戦記物の登場人物には珍しい兵站のプロと言える。士官学校時代に提出した組織に関する論文を読んだとある一流企業からスカウトが来るほどの能力の持ち主で、同盟軍きってのテクノクラートともいえる存在である。
理知的な物腰に反して気さくで面倒見がよく、部下たちの信頼は厚い。その一方で、反骨心旺盛な毒舌家であるがため、一部上層部の受けは悪いとされている。またヤン・ウェンリーは士官学校時代からキャゼルヌに世話になっており、そのために何かと頭の上がらぬ存在である。一方で夫人であるオルタンス・キャゼルヌには、さしものキャゼルヌも頭の上がらぬ一面がある。
また、フレデリカ・グリーンヒルをヤンの副官にしたのも、ユリアン・ミンツをヤンの被保護者に当てたのも他ならぬキャゼルヌであり、加えてユリアンの父親がキャゼルヌの下で働いていた経緯もあった模様。
能力
後方勤務や事務処理に特化した能力により、イゼルローン要塞の事務的処理は彼が行ってきた。事実上の市長とも言え、キャゼルヌがいなければ都市が機能しないことは、病気で休職したときに事務が延滞したことからも証明されている。ユリアンいわく「その気になれば要塞を占領できる」とまで言われ、それに対してヤンは「要塞司令官までやってくれたら楽ができる」と返している。
また得意分野が後方勤務主体であるため、戦闘指揮には向いていない。ヤンが要塞を留守にした際のガイエスブルク要塞侵攻では、慎重な姿勢を崩さず、終始守勢かつ後手に回り、(シェーンコップは批判的であったが)将兵にヤン不在の緘口令を敷いた程である。だが彼自身己の領分をわきまえていたので、ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ客員提督が艦隊指揮権の一時譲歩を願い出た時には、素直に承諾して見せるなど柔軟な判断力を発揮している。
イゼルローンをヤンが帰還するまで持ちこたえさせた際にも、パトリチェフの『至急、ヤン提督に戻っていただかねば……』という失言(パトリチェフ自身、すぐさまこれを自覚した)に対しても、普通ならオレでは駄目なのかと立腹しかねないところを、即座に肯定して見せるという度量を示した。
こういった器量の大きさから人望も厚く、メルカッツに艦隊指揮を任せたり、シェーンコップやユリアンの意見を取り入れる(後者には教師の様に理由を伺う事もあるが)など周囲の人間と上手く連携し、ヤンの来援まで無事にイゼルローンを守り抜いた。
さらに、ある意味で悪い方向でも手腕を発揮する。同盟政権降伏後、ボリス・コーネフの商船を弁償するために、軍の新造輸送艦を書類上で廃棄処分扱いした上で、彼に引き渡している。結果が良ければ手段の是非を問わない、彼ならではの手際であろう。
家族関係
妻のオルタンス・キャゼルヌ(旧姓オルタンス・ミルベール)、長女のシャルロット・フィリス、そしてもう1人の妹(名称不明)の4人家族である。毒舌家であるキャゼルヌだが、それを上回る御仁が、このオルタンス・キャゼルヌで、同盟軍兵士(ダスティ・アッテンボロー談)をして『イゼルローンの真の賢者』または『白い魔女』(読者の間でも様々な呼び方もあるが)と言わしめる、ある意味で最強の夫人である。
彼でさえ、妻との会話の応酬で勝てた事は無く、いつも彼の方が身を引いている程で、それを見ていた娘に対して「いいか、父さんはな、負けたんじゃないぞ。身を引いて女房の顔を立てるのが、家庭を守る秘訣なんだ」等と半ば負け惜しみを言ってごまかしている。
彼は自分の長女をユリアンの嫁にしよう、と画策していた様子であるが、まさかのワルター・フォン・シェーンコップの娘であるカーテローゼ・フォン・クロイツェルの登場で失敗してしまった模様。
経歴
中佐時代
作中に登場した時は中佐の階級で、統合作戦本部ビルに勤務していた。そこで英雄扱いされていた待命中のヤンに対して「英雄の新しい仕事だ」と言って730年マフィアことブルース・アッシュビー元帥に関する調査を命じたのが最初である。
ヤンがエコニアの収容所勤務になった時には、何とか早く帰ってこられるように手を回そう、と気を使ってくれている。また、そこでヤンが出会った帝国軍の捕虜ケーフェンヒラー大佐が、釈放されハイネセンに異動する途中で死亡した際に、ヤンの要望に応えて手早く葬儀の手配を済ませるなど、事務面での迅速さを見せている。
准将~少将時代
第6次イゼルローン攻防戦に際しては、准将にまで昇進。同盟軍総旗艦アイアースにあって、後方勤務参謀として補給整備に勤しんでいた。もっとも、この時には別の後方勤務担当のシンクレア・セレブレッゼ中将が、ヴァンフリート4=2の戦いにて捕虜になってしまった為に、全ての補給関係の仕事が回ってきてしまった。
その際、補給に注文を付けてきた一報に対して、「ミサイルが無い、食糧が足りない? あぁ、そうかい。そりゃ使えばなくなるだろうよ。で、俺にどうしろってんだ!」と皮肉を言いつつも、補給に手抜かりの無い仕事をしてしまう辺り、流石デスクワークの達人である。
その後は昇進して、シドニー・シトレ元帥の次席副官を勤め上げ、後の帝国領侵攻作戦の時には補給責任者としてイゼルローン要塞にて後方勤務に就くこととなる。しかし、帝国軍の日干し作戦により、同盟軍将兵の物資補給に余裕がなくなってしまったことに唖然とし、彼は無理を承知でラザール・ロボス元帥に上申。しかし護衛の手抜かりで補給を絶たれてしまい、結果として大敗した。この敗戦の責任を取る形で、ロボス、シトレ両元帥は退役、総参謀長・グリーンヒル大将は査閲部長に降格、キャゼルヌは家族を妻の実家に預けた後、辺境基地の司令官に就任、左遷されることとなった。
だがヤンがイゼルローン要塞駐留艦隊司令官に任命された後、要塞事務監に赴任。そこで要塞の事務的な処理を手掛けることになる。時にはヤン不在の間に起きた、ガイエスブルク要塞の来襲で四苦八苦するが、メルカッツに指揮を任せたりするなどして、戦線を維持しえることに成功した。
要塞の放棄を決めた時は、民間人脱出計画(方舟作戦)を立案するも、老朽船も含んだ民間宇宙船500隻をアッテンボローが軍事作戦の為に勝手に爆破してしまい、一時的に水泡に帰す。当然のことながら、この身勝手な作戦に異議を申し立てている(アッテンボロー本人はその場から逃走)。そのため、軍艦にも民間人を分譲させると言う半ば強引な方法ではあるが、民間人全員を乗せて避難させることに成功させるなど、その手腕を発揮している。
中将時代
ハイネセンに帰還後、中将に昇進するも、そのままヤン艦隊に同乗。バーミリオン会戦後は、退役願いが却下されて後方勤務部長代理の任に就くこととなったが、ヤン艦隊の幹部であったことから常に帝国軍の監視下にあった。しかし、後にヤンの暗殺未遂が発覚したあげくにシェーンコップ率いる薔薇の騎士連隊が、ヤンを救助するために行動を起こすことになる。
一連の事件を受け、ハイネセン脱出の際に連絡を受けた時には、直ぐに同行することを決意している。家族とともにハイネセンを離脱することとなった。その際に統合作戦本部長のロックウェル大将に引き止められ「君を正式な後方勤務部長にしよう」と手を打ってきた。
しかしキャゼルヌは、不快な表情でこれを「フン!」と鳴らして本部長の座を蹴りとばしてしまった。この後は、事務面での手腕を持って、ヤン率いるイレギュラーズ(曰く「家出息子の集団」)をサポートし続けることとなる。
それはヤンが地球教の手によって死亡してしまった後も続く。ユリアンを新たな司令官として擁立し、キャゼルヌを筆頭とした大人達が彼の足元を支えて続けて行くこととなる。
「オーベルシュタインの草刈り」によってムライ中将、シドニー・シトレ元帥らが逮捕され、帝国から惑星ハイネセンに出頭を命じられたおりには、同行を許されたのはアッテンボロー中将、オリビエ・ポプラン中佐らであって、同行を望んだ彼は幹部たちの総意によって外され、フレデリカ・グリーンヒル・ヤン、ウィリバル・ヨアヒム。フォン・メルカッツととともにイゼルローン要塞に残留することを望まれた。表向きは彼までいなくなると要塞の行政が滞り、幹部が皆そろって敵地に向かうと即処刑の可能性があるからとされていたが、裏の事情では彼が幹部唯一の妻帯者であることが問題となったからであった。
帝国との講和成立後もイゼルローンに残留、帝国と取引するためイゼルローン要塞を引き渡すために行う事務を総括することを快諾している。