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「なぜだぁーーーーーーーーーーッ!?」


概要編集

声優:古谷徹(石黒版)、神谷浩史(Die Neue These)


階級は准将で、自由惑星同盟の軍司令部において作戦参謀を務める。士官学校を首席で卒業したエリートだが、プライドが高く尊大で陰湿、そして何よりも幼稚であった。


第13艦隊司令官ヤン・ウェンリー少将によってなされたイゼルローン要塞陥落を契機に、銀河帝国領侵攻作戦を立案する。しかし、この作戦は第10艦隊司令官ウランフ中将から指摘されたように作戦目的が曖昧で、作戦遂行も「高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処する」の一点張りで、中身の薄いものであったが為に第5艦隊司令官アレクサンドル・ビュコック中将からは「要するに、行き当たりばったりじゃな」と酷評されたほどのレベルだった。

案の定、補給面で無理が祟り、ウランフ提督、第12艦隊司令官ボロディン中将(アニメではさらに第8艦隊司令官アップルトン中将)ら多くの有能な人材を失い、2000万人もの戦死・行方不明者を出す同盟軍の大惨敗となった。


しかも、この帝国領侵攻作戦は、個人的な出世願望とヤン・ウェンリーへの対抗心から個人的ルートによって首脳部に持ち込まれ、採用されたと言う経緯がある。

フォーク自身は、作戦途中における撤退の是非を巡って最前線に立つビュコックと意見を対立させる。この時、空虚な弁舌に呆れたビュコックから「他人に命令していることが自分に出来るかどうか、やってみたらどうだ!」と激しく叱責されたため、ヒステリー(一時的に視力を失うもの)を起こして倒れ、そのまま病院送りとなってしまったが、撤退を開始した同盟軍艦隊は帝国軍の執拗な追撃を受け壊滅的打撃を受けてしまう。


敗戦直後の救国軍事会議によるクーデターにも参加、クブルスリー本部長を暗殺しようとするが失敗している。もっとも本部長はこの傷が元で長期入院・そのまま退役となったのも事実で、そういう意味で質量ともに同盟軍に多大な損害を与え続けたと言っていい。


同盟はこのように戦力の大半を失ったことが大きく響き、滅亡してしまう。かろうじてヤン・ウェンリーが残存兵力をまとめて帝国に対し抵抗していたが、そんな中フォークが入院させられていた精神病院が火事で炎上、フォークが行方不明となる事件が発生する。

アンドリュー・フォーク

些細な出来事として片づけられたが、これは地球教による陰謀の一端であった。地球教大主教であるド・ヴィリエから「民主共和制の英雄」、「ヤンを殺して地位を回復しろ」と唆されてしまい、精神も真面ではなかったフォークは既に同盟が滅亡していたことも理解できずにそれに乗ってしまう。彼には武装商船を与えられ、帝国との和平交渉の会談に赴くヤンを襲撃するよう仕向けられたが、実はそれさえも地球教の計画の一端であり、帝国軍に偽装した地球教の駆逐艦によって背後から攻撃を受け、フォークは武装商船もろとも爆散し死亡することとなった。

(※)詳細はこちら



なお外伝では、その当時に宇宙艦隊指令長官であったロボス元帥から高く評価されるなど、お気に入りの幕僚であった。そのため、ヤン・ウェンリー大佐が参謀長ドワイト・グリーンヒル大将を通して提出した作戦案やウィレム・ホーランド少将の提示した作戦内容と似た作戦を、フォークが提示した為に採用するに至ったという。

このことから、ダスティ・アッテンボローには「作戦の内容じゃなくて、作戦案を作った人で決まるんですか!?」と嘆かれていた。

実質、フォークは能力以上にコネと派閥で出世していると言う所が見受けられる。



醜悪な人間性編集

上記通り士官学校を首席で卒業し、いずれ軍で最高の地位つまりは統合作戦本部長の地位を得ようとしているが、強力すぎるライバルとしてエル・ファシルの英雄つまりはヤン・ウェンリーがいるために彼を目の敵にしている。ヤン自身がフォークに何かしたわけでも無く、自分こそが同盟の英雄という誇大妄想に浸るフォークは自分の出世の邪魔をしている程度の認識しか出来ていない。


更に人間性については上記のとおりでシトレからは「他者を貶めて自分を偉く見せようとする」、ビュコックから「チョコレートを欲しがり泣き喚く幼児と同程度のメンタリティしか持たない」、クブルスリーから「自分を特別扱いする」、更には捨て駒にした地球教のド・ヴィリエ大司教からも「実力もなく栄光を求めた愚者」、「士官学校を卒業したときに死んでいれば、恥多い生涯を送ることもなかった」と実力、人格共に酷評されている。極めつけはアッテンボローから「フォーク自身が死ぬのが文明と環境のため」と吐き棄てられ、存在そのものを否定されている。


軍人の能力も皆無で自分の才能を実績ではなく弁舌で証明するという自分の実力でやろうという気も皆無で、作戦について何か問題を指摘されても聞こうとせず、無理矢理承認させようとする有様。安全な場所から大層な演説を並べて他者に苦労を押しつけ、自分は何もしようとしないヤンが最も嫌っている同盟の政治家達の同類で、ウィレム・ホーランドなどの出世以外頭にない腐敗した同盟軍人の中でも特に酷い部類であった。同類として代表的なのがヤンの同期生のマルコム・ワイドボーンであり、同様に他者を貶める傾向がある上に試験でヤンに負けた事に難癖を付ける始末である。


ヤンをライバル視していたとはいえ、本来フォークは一介の作戦参謀に過ぎず自分には権限が無いにもかかわらず勝手に規則を作って前線の邪魔をして、ロボスの後ろ盾もあってか将官級の中で一番下の准将であるにもかかわらず階級が上のヤンや他の将軍達に対しても遠慮せず無礼な態度をとり、作戦会議の最高責任者であるシトレ元帥から発言の許可が出ていないのに勝手に喋りだす上、求められていない自己PRで目立とうとしたりと、組織内の上下関係すら理解していない。


そもそも帝国領侵攻の作戦案は本部長のシトレからの決裁も得ず、無断で私的ルートで評議会に持ち込むという不正を行って、それを自画自賛している。クブルスリー本部長暗殺未遂の際も予備役から現役に即座に復帰しようと人事部で正式な手続きもせずロボスのように本部長権限を頼りにして、アポ無しでしかも本部内で移動中に呼び止め直談判するという組織内の基本的な規則すら守れておらず、それを正論で咎められればたちまちに逆上してクブルスリーを射殺しようという暴挙に出ており、協調性すら皆無である。


万が一にもクブルスリーが知己のよしみで復帰を承認していたら、救国軍事会議の情報を売り渡していた可能性も皆無ではなく、そうなればおそらくトリューニヒト派に迎え入れられて本当に英雄と祭り上げられて増長が止まらない最悪の事態に発展し、軍を私物化して同盟は二度のラグナロック作戦を待たずに自滅していただろう。


自分に都合の良い規則を勝手に作って「どれだけ地位が高くても規則を守るように」と、もっともらしいことを言いつつ他人に無理矢理押し付けておきながら、いざ自分が規則を守る側になれば平気でそれを無視して自分の望みを叶えようとし、それを咎められれば逆ギレして暴れだすという、軍人以上に組織人として見ても協調性が無くマナーやモラルすら欠落している問題児以前の社会不適合者であり、普通ならば即刻クビ確定な組織にとってこの上なく有害な邪魔者、すなわち無能な働き者に過ぎない。


あまりにも幼稚で自己中心的な上に能力も皆無という門閥貴族と大差ない低能ぶり。アムリッツァの醜態での治療法も「逆らわず、挫折感を与えず、全てがフォークの望むように運ぶ」という戦争でなくとも不可能なものであった。これはド・ヴィリエによって洗脳される時に顕著に表れており、その時既にフォークの精神は失調し完全に狂人そのものであったものの「君こそが民主共和制の真の救世主」、「ヤン・ウェンリーはフォークの元帥の地位を盗み、民主主義を帝国に売り渡した裏切り者」、「今頃は君こそが若き元帥となって同盟全軍を指揮している」等々、フォークの願望をこれでもかと肯定されおだてられた途端に生気を取り戻しヤンへの憎しみを増大させてあっさり地球教の良いように操られたほどで、シェーンコップからは『ヤンを凌駕するのは生涯をかけた大事業』、『実績で及ばなければ競争相手を殺す境地に達した』と洗脳されたとはいえ同盟が滅亡した後でそう考える低能ぶりを侮蔑された。ここまで来ると、フォークの頭の中では『エル・ファシルから始まるヤンの実績の数々も本当は自分のもので、ヤンが横取りした』、『アムリッツァの大敗は自分のせいではなく、ヤンとビュコックが邪魔をした』となっていると邪推できる。


この時、恐らくフォークは『ヤンを殺せば同盟全土が自分を英雄として称え、同盟政府が自分に元帥の地位を返してくれる』、『自分が同盟軍を指揮する若き英雄にして史上最年少の元帥となってラインハルトを打倒し、宇宙に民主主義を回復する真の英雄である』という事になっていたのだろう。


『ヤンを殺せたところで、フォークの名誉の回復に繋がるわけがない上に民主主義の芽すら完全に喪われる』、という事さえ理解できていないこの有様は『既に取り戻せるはずのない9世紀前の栄光にしがみつく地球教』や『自分達では何もせずに先祖の偉業に胡座を掻いている門閥貴族』と全く同じである。付け加えれば、この時フォークは明らかに『自由惑星同盟が既に滅亡しているという事さえ理解できていない』有様で、或いは理解していたとしても『ヤンを殺せば同盟が復活する』と思い込んでいたのだろう。


何をどうしたら、ここまで幼稚で自己中心的で現実を認識せずに、誇大妄想だけにしがみついているのかが不思議なほどに低能な存在である。


いずれにせよ、断言できることは一つ。要するにフォークは徹底的に甘やかされ、物事の一から百の全てが自分の思い通りに行かなければだだをこね、自分が悪いことを理解できないし認めない幼児もしくは幼児未満の精神年齢、なのである。明らかに現実を現実として認識できていない低能と精神年齢からして、おそらくエルウィン・ヨーゼフ二世と同程度の精神年齢だろう。下手をしたら、それ未満かも知れない。



アムリッツァの愚行編集

存在そのものが悪行と言っても良い、彼の悪行はいずれも同盟に致命的な打撃を与え続けてきたが、最も代表されるのがこの帝国領侵攻作戦、別名アムリッツァの愚行。


作戦立案の経緯と裏事情編集

イゼルローン要塞をヤンが無血攻略したのが原因で政府や市民は帝国への勝利が容易と錯覚してしまい、和平を望むヤンとシトレの思惑とは裏腹に更なる攻勢に出ることになってしまう。しかも、最悪なことにこの当時の政権は支持率が大幅に低下しており、アスターテの戦死者の遺族補償やイゼルローンの捕虜達の食事の費用によって経済が圧迫され、社会面でも軍備維持のための民間からの人材移動による社会システムの悪化が市民の生活に打撃を与え、これらの不祥事で政権の支持率はイゼルローン攻略で回復しきれるものではなかった。ジョアン・レベロホワン・ルイがイゼルローン攻略という絶好の交渉材料を得たためにそれによる停戦条約の締結を主張していたのだが、帝国打倒という安っぽいヒロイズムに傾倒した上に、それが可能か否かを真剣に検討したこともないコーネリア・ウィンザーらは社会の窮状を理解せずに次の選挙で確実に勝つために今回の作戦を軍部に命じた。それこそ、ヤンを超える戦果を望むフォークが私的ルートで政府に持ち込んだこの作戦なのである。最悪のタイミングで最悪の存在同士の利害が一致してしまい、反対したのは社会や財政という観点及び政府の度の過ぎた権限濫用から反対したレベロとルイ、そして国防委員長だったヨブ・トリューニヒトの三人であった。


作戦内容は大軍を持って帝国領内に侵攻して帝国人の心胆を寒からしめる。そのために高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応するという具体性など皆無で、侵攻の限界点や帝国領内の要塞の存在などが全く考慮されていない無謀で杜撰極まりない、到底作戦と呼べるようなものではなかった。帝国領土への侵攻を今定めた理由さえも、ただ「戦いには機があり、仕掛けるべき時に仕掛けなければ運命に抗う」と具体的に答えようとせず、ヤンが『今攻勢に転じるべき』かを問いかけると、『大攻勢』と声高に訂正し、イゼルローンから帝国領に侵攻すれば敵は狼狽し、為す術も無い。同盟軍の空前の大艦隊が長蛇の列をなし、自由惑星同盟正義の旗を掲げて進むところに勝利以外無いと豪語するなど、始める前から勝った気になっていた。


メタなことを言えば、もう半年ほど待っていればそれこそ絶好の機会である、皇帝フリードリヒ4世の崩御に伴う跡目争いが起きるのだが。ただサンフォード政権的には、選挙が終わった後の絶好の機会など(自分たちの地位と権力の維持には)何の意味もない代物であることは言うまでもないであろう。


ヤンは敵の指揮官が天才のラインハルト・フォン・ローエングラムであることや長すぎる隊列に伴う連絡や補給の滞り、分断の危険を意見するがフォークは聞く耳を持たずにヤンを侮辱し、『Die Neue These』ではアスターテの惨敗という例を持ち出したビュコックに『戦略的には帝国の侵攻を防いだ』で済ませる。そもそもアスターテの侵攻阻止はただ政府の体裁を取り繕っただけの結果論で、実際には第4・第6の2個艦隊が壊滅し、残る第2艦隊も半壊した上に百万人以上(原作小説では200万人、石黒版OVAでは150万人)もの戦死者を出したうえ、帝国軍の損害は同盟軍の10分の1程度に過ぎないという現実の被害と結果を戦術家の考えと一笑に付して高度な戦略家を気取り、そもそもヤンの活躍が無ければ第2艦隊すら壊滅していたという状況すら完全に無視していた。アレックス・キャゼルヌの占領政策に伴う物資の不足と補給計画の滞りの懸念も総司令官のラザール・ロボスは最初から現地協力をあてにしている上に「何とかするのが君の仕事」と全く聞かず、本来フォークを窘めるグリーンヒルまでもが「ラインハルトは若いからミスをする」という一方的な期待をする始末。もはやフォークの作戦の修正は不可能でフォーク自身も聞こうとせず、『同盟軍が解放軍として帝国人民を救えば、彼らは進んで協力する』、『敵に地の利や新兵器があっても怯むわけにはいかない』などとまたしても勝手な憶測と弁舌を並べる。挙句の果てには『遠征に反対するならそれは結果的に帝国に味方する者=反対者はみんな敵だ』『自分が何か間違ったことを言っているか?』という暴言まで口にして反対者を無理矢理黙らせようとする始末であった。


Die Neue Theseではヤンが内心で「それこそ予測ですら無い、一方的な期待にすぎない」、「帝国人民が現実の平和より空想上の自由と平等を求めているとどうして言える?遠征計画そのものも無責任なら運用も無責任極まりない」と今回の決定を侮蔑し、まだ軍属で無かったユリアンも一部始終をヤンから聞いて「やめちゃえば良いのに」と言ってのけた。


しかし、やめたくてもこの無謀で無責任で杜撰な作戦を認めた政治家達を選んだのは他ならぬ同盟市民であり、民主主義の末期症状は既に回復不能の状態に達していたのである。


結局、修正も出来ないまま作戦の実行が決定され、シトレはせめて最少の犠牲で失敗することを祈るしか出来なかった。『惨敗すれば、アスターテの比較にならない犠牲を出す』、かといって『勝てば主戦派がつけ上がり、政府や市民のコントロールを受け付けずに今度はオーディン侵攻とでも言い出すのが分かりきっていた』。そして、シトレがヤンの辞表を却下したのもフォークのような輩による軍そのものの私物化を防止するためでもあったとヤン本人に明かしている。


作戦の開始と破綻編集

実行されたこの作戦は当初こそ順調で敵の姿もなく、同盟軍は無傷で帝国の惑星を制圧していった。しかし、意図を読んだラインハルトの意向で前もって占領地の惑星は食料が接収されており、解放軍である同盟軍は自分達の食料を供与するしか無かった。しかも、占領地が際限なく拡大していき、最初にイゼルローンに補給申請が届いた時点で同盟軍が養うべき市民は5000万人。今回動員した将兵の二倍近くに上っており、占領地の拡大に伴って更に増え続けるのである。


全軍の二倍近い捕虜を食べさせる補給計画など立てられるはずも無く、キャゼルヌはロボスに帝国が焦土作戦を展開すると共に更に前線部隊の物資を涸渇させるために補給部隊を攻撃する可能性を進言するが、ロボスは補給については「本国に要求すれば良い」とまともに取り合わず、フォークも補給部隊への攻撃を本質的にはまだ敵陣であるというのに、「同盟の占領下にあるから問題ない」とまるで聞き入れなかった。『Die Neue These』ではあろうことかロボスは「臆病心には付き合っていられない」と補給をないがしろにして、フォークも「大義のための戦いで、リスクを支払わずして勝てない」と例によって今度は補給計画の破綻を危惧したキャゼルヌを侮辱する始末である。『自分は安全な場所で何もしようとせず、現場に全て押しつけて滞ればそれを嘲笑する』フォークとやる気のないロボスとそれらを止めようともしないグリーンヒルによって既に司令部は機能不全を起こしていた。


評議会でもこの際限のなさと、帝国が同盟の経済破綻を狙っていると推察したレベロが撤兵を主張するが(あながち間違いではないが、それ以上にこんな状態で無傷の敵に襲われればひとたまりもない危機)、この期に及んでも選挙しか頭にないウィンザーらは状況を理解せず(というよりも、実行してようやく遠征の無謀さに気づいたが、ろくな戦果も無しに遠征を中止すればそれこそ落選必至なので作戦成功のわずかな可能性に縋って)、作戦の続行が決議された。


しかし、派遣された補給部隊はジークフリード・キルヒアイスによって壊滅されて同盟は補給線を絶たれてしまった。既に艦隊の物資が底をつき始めたというのにフォークは言うに事欠いて『足りないものは現地で調達せよ』=『略奪せよ』と言いだしてきたのである。


『そもそも占領地にないから自分達の物資を提供した』というのに、無いものを略奪できるはずもなく、辛うじてあったものを奪おうとした結果、占領地で暴動が発生して『フォークの一方的な期待』は崩壊して占領政策が破綻する。しかも石黒版ではキャゼルヌの進言を無視して輸送部隊が全滅したのに全く悪びれもしないばかりか、責任を前線のヤン達に全て押し付けてくる始末だった。


あらかじめ破綻を見越したヤンはビュコックを通じて撤退を上申する。しかし、ビュコックの通信に現れたのは総司令官のロボスでは無く、作戦の決定権を持たないフォークであった。にもかかわらず、フォークは「ロボスへの上申は自分を通せ」と自分が勝手に作った規則を持ち出して、司令部を乗っ取っていた。怒りを煮えたぎらせながらもビュコックは撤退を具申するが……以下、Die Neue Theseに準拠する。


「撤退ですと?ヤン提督はともかく、勇敢を持ってなるビュコック提督までもが戦わずして撤退を主張なさるとは意外ですな?」


作戦の破綻を多少なりと聞き及んでいる筈にも拘わらず、フォークはまるで状況を理解しないばかりか、ビュコックだけでなくこの場では関係ないヤンまで下劣な言い方で嘲笑する始末である。この状況下でもフォークは元々自分の作戦が無謀で杜撰であったというのを認めず、占領政策の破綻を前線のせいにして自分を偉く見せることしか頭になかった。ビュコックは激しい怒りを抱きながらこの無謀な出兵案の責任を自覚しろと言うが、「帝国軍を一撃で屠る好機であるのだから、自分ならば撤退しない」と大言壮語を吐く。それに対してビュコックは「では、自分が代わってやるからイゼルローンから前線へ来い」と言うと………フォークは今度は逆に「出来もしないことを仰らないで下さい」と大口を叩いた途端に拒絶する。要するに、楽に出世したいフォークは前線に行きたくないのである。


その自分勝手な言い分についにビュコックも堪忍袋の緒が切れ、「不可能事を言い立てるのは安全な場所から動かずにいるフォーク」だと非難し、フォークも「侮辱するか?」と反論するが……ビュコックから完全に論破される。


「大言壮語を聞くのに飽きただけだ。貴官は自己の才能を示すのに弁舌でなく、実績を持ってすべきだろう。他人に命令することが自分に出来るかどうか、貴官自らやってみたらどうだ!」


至極もっともな正論で叱責されたフォークはヒステリーを起こし、藤崎版では顔を奇怪に歪ませ、道原版では奇声を上げた(Die Neue Theseでは両方)上にそれによる盲目で倒れてしまう。挫折感が異常な興奮状態を引き起こす事が原因で、治療方法は「逆らわず、挫折感を与えず、全てがフォークの望むように運ぶ」という幼児のワガママそのもの。ビュコックはフォークの末路を「フォークがやめればいい」と断言し、改めて総参謀長のグリーンヒルにロボスの所在を問うが、何とロボスは作戦行動中に昼寝をしており、しかも「敵襲以外で起こすな」などと不適切の域を超えて任務放棄としか言いようのない愚行に及び、グリーンヒルもその命令を守るという形で愚行に協力していた(※)。ロボスとフォークだけで無く、グリーンヒルにも愛想を尽かしたビュコックは通信を切り、ヤンの提案は文字通り時間の無駄に終わった。


結末編集

当然ながら干上がった同盟軍はラインハルトが率いる名将達に蹂躙され、ロボスはただの負けにしたくないというもはや無意味な見栄のために撤退では無く全軍をアムリッツァ星域に集結させた。この時点での同盟軍はヤンの第13艦隊とビュコックの第5艦隊以外は殆どが全滅か降伏しており、もはや敗北は決定したようなものであった。しかも、この無意味な決定でただでさえ甚大な被害を受けた同盟艦隊は更に犠牲を出す結果になってしまう。


ヤンの奇策もあって辛うじて同盟軍艦隊はアムリッツァからの撤退に成功はするが、同盟軍は作戦に投入した20万隻の内、全艦艇の八割を失って参加した3000万将兵の内2000万つまり3分の2が戦死または行方不明になった。各艦隊も第13艦隊以外は壊滅状態に陥り、もはや艦隊の再建は不可能となって辺境星域のパトロール艦隊に回されるなどの形で解体された上に第13艦隊自体も全体の3割を失い、イゼルローン駐留艦隊への再編に伴って、人員の入れ替わりが起きて実質的な戦力が低下した。これにより、首都直営の第1艦隊と作戦不参加の第11艦隊そしてヤンの第13艦隊以外の艦隊戦力を同盟は失ってしまった。


尚、この愚行の元凶であるフォークは治療のために入院及び予備役准将となると共に『アムリッツァで2000万の将兵を殺した低能』とその悪名を広めた。そして、愚行の片棒を担いだ挙げ句にただの負けを歴史的大敗に悪化させたロボスも当然のことながら軍内部の信用を完全に失って辞任し、同じく片棒を担いだグリーンヒルは査閲部に左遷となった。また、作戦失敗の責任を取ったシトレも辞任を余儀なくされ、補給計画失敗の責任を負ったキャゼルヌも僻地の補給基地へ左遷された。


どう考えても非が全く無いキャゼルヌとシトレの処分はロボス、フォーク、グリーンヒルの愚行による明らかなとばっちりであった。石黒版でアッテンボローはキャゼルヌの左遷に納得しておらず、「あの作戦自体が狂っていた」と作戦そのものを非難した。その狂った作戦の結果、同盟政府も作戦そのものへの反対及び撤兵を主張したトリューニヒト、レベロ、ルイ以外はこの歴史的大敗の責任を取って辞任したが、トリューニヒトが議長になったことで同盟は更に深刻な事態へと追いやられる。幸いだったのはキャゼルヌがすぐにヤンの要請によりヤン艦隊の一員に加わり、イゼルローン要塞運営の総責任者となってくれたことである。また、壊滅した第10艦隊の分艦隊指揮官であったアッテンボローも同様にイゼルローンへ着任する。


軍事面では言うに及ばず、経済面に於いてもただでさえアスターテでの戦死者150万人分の遺族補償にその十倍以上の遺族補償が嵩み、もはや経済破綻を起こしているのは明白であった。社会では2000万人分の戦死者の枠をまたも民間から人員を割くことになり、不足しがちなベテランを更に失って医療や交通といったインフラのシステムも破綻を起こす事となり、それは遂に軍需工場にまで及んだ。もはや同盟の社会構造は崩壊寸前であった。


『失敗すれば、自分達の選挙どころか国そのものが崩壊しかねない事を理解できない政治家が杜撰な選挙戦略のために3000万もの将兵を死地へ向かわせ』、『自分勝手でワガママな幼児が立てた杜撰な作戦』、『作戦中に昼寝をして何もしない総司令官』と、『問題と知りながらもそれらを排除しようとすらしない総参謀長』、あまりにも最低最悪な要素が重なり合った杜撰の域を超えたこの最低の愚挙はこの有様であった。しかも、評議会の議員達は見苦しい言い訳をしてこの大惨事を正当化するという、どうしようもない腐臭をまき散らしていた。シトレが危惧していたとおり、同盟は文字通り谷底へ転落していくこととなり、元凶の一人は更なる暴挙に出て、谷底へ落ちる速度を上げてしまう。


結局、フォークと議員の私利私欲のためだけに実行された狂った作戦は同盟に軍事、社会、経済の全てに於いて壊滅的な打撃を与えるだけの結果に終わった。これはただ政治家が選挙に勝つためだけに功績目当ての軍人が立案した杜撰極まりない作戦を実行した挙げ句に多大な犠牲を出すと共に社会を壊滅させるという同盟の腐敗の最たる例として後にビュコックが『投機的な冒険』と称している。


人気編集

ゼロ、もしくはマイナス以下と言っていい。作中登場人物のほとんどから嫌われていたと言っても過言ではなく、まともに擁護しようとする人間も皆無だと言って良い。実際のファン人気もまともにあるかどうか疑わしいが、極めつけは演じた古谷徹にも笑っていいとも出演の際「思い入れの無い一番嫌いなキャラ」として挙げられるほどである。


作中には同様に「嫌われキャラ」としてパウル・フォン・オーベルシュタインヨブ・トリューニヒトハイドリッヒ・ラングなどがいるが、オーベルシュタインのように怜悧で卓越した知性を備えていたわけでも、トリューニヒトのように優れた人心掌握術と異様な生命力を持っていたわけでも、ラングのように私人としては善良だったわけでもない。

こんな無能&傲慢キャラなのに、なぜロボスに気に入られて26歳で准将(主人公ヤン・ウェンリーが准将になったのは28歳なので、それより出世速度が速い)になれたのかというのは作中における謎のひとつである。

要は人格も才能もあまりに最低すぎるため、銀英伝でも数少ない「ファンが皆無」なキャラの一人と言われる。


マイナス方面にネタ要素が極めて強い人物ではあるので、そういった面ではネタ要員として使われがちではある。

また、彼の台詞「高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処する」も、その使い勝手の良さから、先の予定を決めかねている時に修辞的に使われる。

実際、軍事、特に前線においては、物事が予定通りに行くことはまずあり得ず、その場で臨機応変な対処が求められるのが普通である。その意味で、この台詞自体は決しておかしなものではないのだが、最終目的も何も決めず「とにかく臨機応変に」の一点張りで済ませてしまっているところに、この台詞のおかしさがある。



擁護(無理矢理)編集

  • ロボスの心情を察した上で、その意に沿ったその時点では有望な作戦を立案する能力に恵まれていた為にロボスの信任を得て異例の出世を遂げるなど重用されたのかも知れない。
  • 帝国領侵攻作戦も当初は、何れ帝国領に侵攻するにしてもその前段階としてイゼルローン回廊の帝国側の入り口付近の帝国軍基地を掃射して万全の防禦態勢を整える程度の作戦だった筈が、国民の支持を得る為に成果が必要な政治家、帝国領の資源や作業人員などが欲しい財界人がイゼルローン要塞陥落に自信過剰となり、際限ない要求を求めた為にその要求を満たして彼等の受けを良くしたいロボスの意を察したフォークの作戦修正も次第に進出限界点まで定かでない際限ないものと変化したのかも知れない。
  • その時点で無謀な計画であるが、それでもフォークがその作戦を遂行しようとしたのは、帝国領に侵攻すれば当然ながら民衆の動揺を防ぐ為に進出幾ばくもなく帝国軍の激しい抵抗に遭い、自ずと作戦限界点も決まり、補給も負担は少なく、それで帝国領に侵攻して華々しい戦果を挙げたとお茶を濁し作戦を終了させ、政治家・財界人の要求もある程度満足させ、ロボスの顔も立てれるつもりであり、それ故に作戦立案者ながら会議で彼の説明が曖昧であり、問題の「高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処する」もそういう意味で空気を読んでくれと言う彼の艦隊司令官達への無茶振り(いい迷惑だが)だったのかも知れない。
  • しかし、彼の願望に反して帝国軍は自由惑星同盟と違い民衆の不満などは考慮せず、またラインハルトは徹底的な焦土戦術で自由惑星同盟軍をあわよくば完膚なきまでに叩き潰すつもりであり、自身の予想に反して際限なく広がり、帝国から解放した地区への食料供給や艦隊への補給で補給線が破綻し戦う前に敗北している戦況だが、言い出した自分がその案を破棄出来ないプライドの高さや体面、ロボスへの顔向けもあり、彼の精神状態は追い詰められ、ビュコック提督の詰問にヒステリーを起したのかも知れない。

……そんな訳無いでしょうが。


とは言え、フョードル・パトリチェフ曰く「答えのある問題を解決させるなら手際よくやれただろう」と評しており、帝国領侵攻作戦に関しても、

  • 目先の選挙以外は、国家百年の計も作戦の成否の可能性すら考えず、無謀な出兵を気軽に行う政治家ども
  • 何もかもフォークに丸投げし、チェックすらしないロボス
  • 若さ故に失敗すると、敵の失敗を期待する発言をして、ヤンのフォローをしなかったグリーンヒル(しかも、自軍の若者と老指揮官がやらかしてしまっている)

と、フォークだけが悪いわけではない。尚、グリーンヒルの場合は作戦行動中に昼寝をしてしかも、「敵襲以外で起こすな」等という総司令官としても軍人としても最低最悪の行動に出たロボスに律儀に付き合うという本物の利敵行為に出ている。


(※)さらに石黒監督版OVAにおいてはビュコックとの通信より遥か前に輸送部隊が文字通りに敵襲されて全滅という緊急事態が発生しているにもかかわらず、グリーンヒルはロボスを起こそうとしないばかりかフォークを野放しにし続けたまま何も行動を起こそうともしておらず、総参謀長としての責務もロボスと一緒に放棄したも同然な最悪の行為をしでかしている。


ここで彼が二人を拘束或いは殺害していれば、彼自身は処罰や銃殺刑を免れなくともアムリッツァの愚行を回避できた可能性は高い。


なお、パトリチェフの評価に関しても、シトレが「戦争に於いて明確な答えや方程式など存在しない」と断言しており、それこそアムリッツァの時に本人が言っていた臨機応変の対応をしなければならない。その臨機応変にしても、目指すべき基本戦略(例えば、占領地の維持と敵艦隊の撃滅のうち、どちらを優先すべきかなど)を明確化してこそ意味があるものであり、それすら決めないようではそれこそビュコック提督の評価「要するに行き当たりばったり」でしかない。


ただ、これはあくまで指揮官・参謀といった高級士官の話であり、例えば一兵士、一艦長程度の職権ならば(兵士と艦長では責任範囲が雲泥の差だが)、必ずしもこうした対応は必要ない。むしろそうした末端が臨機応変に(ともすれば自分勝手に)動いてしまっては、軍と言う物は成り立たない。

「上官の命令」と言う問題に対して「命令の遂行」と言う回答を満点で提出出来る下士官は、間違いなく有能な存在である。そもそも士官学校を首席で卒業している以上は、周囲の人間と比べても優秀であった事は確かなはずである。実際、コネと派閥を利用して准将の地位にまで昇り詰めたのも、軍人として全く正道ではないとはいえ、立派な能力とは言える。

その能力を活かせる地位ならば、十分に活躍出来た可能性はある。


……もっとも、彼の肥大化したプライドでそうした地位に甘んじる事が出来るか、甘んじたとしてもそこで周囲の人間と友好関係が築けるかどうか……と言うと、微妙な所ではあるのだが。

結局の所、彼の一番の問題点は能力の不足ではなく、ビュコックが幼児と同程度と酷評したような、自分の妄想と現実を区別する事が出来ないと言う人格面の破綻である。

これが改まらない限り、どのような職についても失敗する可能性は高いだろう。


あまりにもいい所が無いためか二次創作で活躍させる際は声優ネタで「実はパイロットとして才能があった」とか「裏方ならそれなりに活躍できる」とか「軍人じゃなくて政治家として適性がある」とかもうやけくそ気味に才能を付け加えられている。


また、「『銀河英雄伝説』は後世の歴史家が書いた創作であり、作中の描写は必ずしも事実ではない」と言う視点から本当の歴史(言わば「三国志演義」と「正史」の関係性)を妄想するタイプのマニアからは、「英雄であるヤンと敵対したせいで過剰に貶められているのでは?」「そもそもフォークは『都合の良い悪役』として後世に創作された架空の人物なのでは?」といった妄想のタネになるため、ある意味で人気はある。



モデル編集

石黒版フォークのキャラクターモデルはユダヤ人俳優のコンラート・ファイト。

ナチスに抵抗しつつ生涯で100本以上の映画に出演した名優である。

彼の「笑う男」はバットマンシリーズの悪役ジョーカーのモデルとしても知られている。


また、日露戦争のとき、あっという間に戦線を放棄して旅順まで戦線を後退させてしまい更には旅順攻防戦で自分の手持ちの軍を碌に使わず降伏したアレクサンドル・フォークという少将がいた。アンドリュー・フォークとは別の意味で愚将ともとれる彼だが、国民から非難されつつも軍事裁判では上司のステッセルが全責任を擦り付けられ死罪になりかけ、フォーク小将は無罪であったがのちに陸軍での地位をはく奪された。


関連タグ編集

銀河英雄伝説 自由惑星同盟 魔術師、還らず

ヤン・ウェンリー アレクサンドル・ビュコック マルコム・ワイドボーン ラザール・ロボス

無能

※大人です...漫画版等でビュコック提督にチョコレートを欲しがる幼児並みのメンタリティしか無い奴と評されている。


インパール作戦第二次世界大戦で大日本帝国軍が実行した作戦。内容、結末ともにアムリッツァ同様に凄惨極まるもので、現実の戦争である分アムリッツァ以上の地獄絵図。しかも立案者までがフォークと同じ始末で、生還者からは終始憎悪された上に、死ぬまで自己弁護までしていた無責任の域を超えた有様。恐らく、フォークとアムリッツァのモデルの一つ。

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