概要
旧銀河帝国ゴールデンバウム王朝で民衆や敵対勢力を弾圧してきた秘密警察組織「社会秩序維持局」の局長を務める。ラインハルト・フォン・ローエングラムの独裁が固まってからは存在を忌避され、維持局も解体されるが、自らオーベルシュタインに売り込み社会秩序維持局改め「内国安全保障局」の局長として復帰する。
この頃までは、自分の分際を弁えた真面目な官僚であった。
新帝国設立以降、軍議においてオスカー・フォン・ロイエンタールから痛罵を受けて彼を逆恨みし、さらに秘密警察の地位を利用して帝国を陰から支配しようという野心に走り、旧フェザーン自治領主のアドリアン・ルビンスキーと結託する。(ロイエンタール自身があえて彼らの姦計に乗るという予想外の要素もあって)ロイエンタールを反乱に追い込むことに成功したが、結局は自身による冤罪でっち上げ事件が明らかになり逮捕、処刑される。
帝国内においてラインハルトからはその存在を軽視されており、当のラング自身も自分の存在を目立たせないよう静穏に振る舞っていた。秘密警察出身ということもあってラインハルト陣営の将校からは好意的に見られず、密な関係を持っていたオーベルシュタインも、ラングのことは単なる道具としてしか見ていなかった。公人としては自身の野望成就のために職権を利用したり、私怨から他人を陥れたりする悪徳官僚でしかないが、一方で家庭内では妻子を大切にする善良な父親であり、彼の死後には、下級官僚だった頃から給料の一部を福祉慈善事業に匿名で寄付していたことが明らかになるなど、単純な悪役とは言い切れない二面性を有していた。
もしかすれば2010年末からのいわゆる「伊達直人騒動」の影で、このようなハイドリッヒ・ラングの類似系がいたのかも知れない。ようやく時代が追い付いたと言える。
悪逆非道な公人と善良篤実な私人という相反する二面性を内包する存在は、彼の取り調べを担当したケスラーをはじめとするラインハルト陣営の者達に複雑な思いを抱かせた。悪辣ながら小心者の小悪党だった彼の方が、高潔で誇り高いロイエンタールやラインハルトよりも幸せな家庭を構築し得たのは、一種皮肉と言うほかない。
なお、悪徳官僚と化したのは自分を公然と罵倒してきたロイエンタールに対して抱いていた私怨に加え、これに付け込んだルビンスキーに憎悪と出世欲を煽られた結果であり、それまでは公人としての権力を私的に乱用することがなく、貴族達からは奇妙に思われる存在であったという。
秘密警察の長官としてではあるが、腐敗した旧体制ではそれなりに真面目で立派な官僚であったのに、開明的な新体制に移行すると悪徳官僚と化したのは、時代の激変によって自身の価値観が悪い方向に変化したためであろうか。
本件から得られる教訓は、「人前で恥をかかせてはならない」という事である。
この事は現実でも人前で指摘・注意、特に叱責時において人前で行ってはならないという社会常識が存在する…のだが、真っ当な人間や企業以外には守れていないのが現状である。
ちなみに、藤崎竜の漫画版では、石黒版のデザインをベースにNHKの某人形劇風のキャラクターデザインにしてみたような容姿となっている。
久々にワロタ
そんなラングだが2ちゃんねるにおいては、なぜかラングのAA(アスキーアート)が「久々にワロタ」のコピペと共にアニメ、漫画系以外の板を問わず2ちゃんねる各方面で貼られることとなり、銀英伝やラングの名前は知らなくても「久々にワロタ」とAAについては圧倒的な知名度を誇る。なぜ広まったかについての詳細は不明。また原作、アニメにおいても「久々にワロタ」という台詞は存在しない(なお、逮捕後の取り調べの最中、ロイエンタールが敗死したことを聞かされ、一時間にも渡って笑い続けたという場面がある)。
ことの是非は後世の歴史家の手によって語られることであろう。